ADEKA 次世代二次電池用活物質のサンプル提供を開始

, ,

2018年12月19日

 ADEKAはこのほど、次世代二次電池用活物質「硫黄変性ポリアクリロニトリル」(SPAN=エスパン)のサンプル提供を開始した。2020年度の製品化を目指す。

外観
外観

 SPANは、ポリアクリロニトリル(PAN)と硫黄を反応させたもの。電極材料に用いた試作電池では、長期にわたり安定した電池性能を保持することが確認されており、硫黄を超える活物質として期待されている。

 これまでは、製造時に発生する多量の硫化水素により量産化は困難とされていたが、同社は硫化水素処理技術やノウハウを駆使し、産業技術総合研究所と豊田自動織機が開発した製造方法をもとに、量産化検討を推進してきた。

 二次電池は、スマートデバイスや電気自動車など、現代の豊かなくらしに欠かせないものであり、小型化やエネルギー密度の増大、長寿命化といった、よりいっそうの高性能化ニーズが高まっている。

SEM 図
SEM 図

 また、リチウムイオン二次電池に用いられているレアメタル(希少金属)は、その需要増加に伴い、資源枯渇とコスト増化が懸念されている。性能面やレアメタル問題を解決する次世代電池向け活物質として、以前から硫黄が注目されていたが、充放電時に生成する反応中間体が電解液へ溶出し、寿命を悪化させることから、二次電池向け活物質としては広く実用化には至っていなかった。

 ADEKAは、次世代二次電池のレアメタルフリー化と軽量化、充放電サイクル長寿命化を可能にする活物質として、SPANを有望視。サンプル提供を通じて次世代二次電池向け活物質の標準となるよう、市場開発を加速していく考えだ。

 また同社では、次世代二次電池向け材料として、グラフェン(導電助剤)や電解液添加剤の開発も進めている。特に、電池業界のトレンドである全固体電池への材料開発を拡大するなど、環境・エネルギー材料分野での研究開発を推進し、持続可能な社会の実現に寄与する製品の創出を目指していく。

東洋紡 中空糸型FO膜がデンマークの発電プラントに採用

,

2018年12月18日

 東洋紡は17日、中空糸型の正浸透膜(FO膜)が、デンマークの浸透圧発電パイロットプラントに採用されたと発表した。今年9月から実証実験を開始しており、早期の実用化を目指している。

中空糸型正浸透膜
中空糸型正浸透膜

 この事業は同社がデンマークにある浸透圧発電のベンチャー企業ソルトパワー社、産業機械メーカーのダンフォス社、エンジニアリング会社セムコ・マーチン社と4社共同で運営するもの。

 今回採用されたのは、中空糸を円筒形の圧力容器に高密度に充填したFO膜で、水分子を通し一定の大きさ以上の分子やイオンを通さない半透膜の一種である。

 東洋紡は1970年代に、繊維事業で培った紡糸技術を応用し、中空糸型半透膜を開発した。海水を淡水に変える逆浸透膜(RO膜)として、性能や耐久性などが高く評価され、1980年代初めから主に中東湾岸地域の海水淡水化施設で採用実績を重ねてきた。

 デンマークで運転を開始した浸透圧発電プラントは、地下から汲み上げた地熱水と呼ばれる塩水と、淡水の塩分濃度の差を利用して発電するシステム。塩分を通さずに水を通す性質をもつFO膜を隔てて塩水と淡水を接触させると、浸透圧差により塩水側に水流が発生。この水流を利用してタービンを回すことで発電する。

 地熱水を活用した浸透圧発電は、太陽光や風力に比べ、天候や昼夜に左右されない新しい再生可能エネルギーとして注目を集めている。

正浸透膜が採用された浸透圧発電プラント 2
正浸透膜が採用された浸透圧発電プラント

 同社のFO膜は、高密度に充填された中空糸によって水が効率的に流れる内部構造を持ち、発電用タービンを回すための水流を安定かつ低ロスで発生させる。また、効率的な浸透圧発電に必要な高い水圧に対して、RO膜用途で実証してきた優れた耐圧性能を備えていることなどが高く評価され、今回の採用となった。

 同プラントは、同型の浸透圧発電方式としては業界最大で、一般的な家庭約50世帯分の電力に相当する20kWを発電。これまで実験的な浸透圧発電設備はあったが、実用規模の浸透圧発電プラントが運転を開始するのは世界で初めて。

 来年9月ごろまで実証実験を行い、2021年までに東洋紡製の浸透膜を採用した、1㎿規模の浸透圧発電プラントをデンマーク国内で建設するとともに、他の欧州地域にも同規模のプラントを導入していく予定だ。

三菱ケミカル 難燃性内装材向けに消臭・抗菌付きの新製品を投入

, ,

2018年12月18日

 三菱ケミカルは17日、難燃性を高めた内装材向けのアルミ樹脂複合板「ALPOLIC(アルポリック)/fr INNER LIGHT」に、消臭・抗菌機能を付加した新たなグレードを今月下旬から発売すると発表した。

 同製品は、アルミニウム合金の表面の塗膜が、排泄臭や生ごみ臭、たばこ臭などの原因となるアンモニアや硫化水素などの悪臭物質を吸着し、室内の不快な匂いを低減。また、食中毒や下痢などの要因となる黄色ブドウ球菌や大腸菌に対しても抗菌効果を発揮する。今後、抗菌製品技術協議会(SIAA)が制定した抗菌シンボルマーク「SIAAマーク」取得にも対応していく予定だ。

 同社では不燃性能に加えて消臭・抗菌機能を持つ同製品を内装仕上げ材のラインアップに追加することで、たばこの分煙化が必要な飲食店や公共のトイレ、病院、福祉・介護施設、レストランの厨房や住宅のキッチンなどを最適な用途と位置づけ、より幅広い分野での拡販を目指す。

 また同製品は、製造ラインで一括してプレコーティングすることにより、消臭・抗菌機能をもつ塗料を後工程で塗布したり、施工現場で塗装したりすることなく、より低コストで提供できる。加えて、表面がアルミニウムのため、金属調の意匠性に優れるほか、割れや破片が飛散するなどの危険性も低減できる。

 「アルポリック」は表面にアルミニウム、芯材に樹脂を使用した3層構造からなるアルミ樹脂複合板。さまざまな意匠・加工性・耐候性を持つシリーズを取り揃え、幅広い用途で使用されている。1970年代の生産・販売開始から現在に至るまで国内トップシェアを誇り、海外でも世界130カ国以上への販売実績がある。

 今年10月に、今回の新製品のベースとなる「アルポリック/fr INNER LIGHT」を発売。新たに開発した難燃性が高い芯材を採用することで、単位重量当たりの潜在燃焼発熱量を従来品の十分の一に低減し、高い評価を得ている。

 

JSR LIBの高容量化などを実現する技術を開発

, ,

2018年12月18日

 JSRは17日、リチウムイオン電池(LIB)の高容量化や安全性向上などを実現する「ロールtoロール方式」の連続リチウムプレドープ技術を開発したと発表した。来年1月27~31日にフランスのストラスブールで開催されるAABCヨーロッパで発表する。

 LIBでは、電池内部でリチウムイオンが電解液を介して正極と負極間を行き来することで充放電が行われる。電池容量や出力に優れるシリコン系やハードカーボン系などの負極材のニーズは高いものの、これらの負極材では初回充放電時の副反応で、一部のリチウムイオンを消費してしまうため、電池本来の充放電容量を最大限発揮できないことが課題とされていた。

 同社のプレドープ技術は、初回充電時のリチウムイオン消費分をあらかじめ負極材に添加させることで、この課題を解決し、電池を高容量化することができる。例えば、シリコン系負極材に同技術を適用すると、電池の容量を従来対比で20~40%程度向上させることが可能だ。

 また、正極材を過剰に使用しなくて済むため、LIBの安全性も向上するほか、負極の劣化が抑制されることでLIBの寿命が延びるなど、LIBの技術水準を底上げする革新技術である。

 同社では、長年にわたりリチウムプレドープ技術の研究開発を行っている。連結子会社のJMエナジーでは、 プレドープ技術を使用した蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタの量産実績もある。その知見を生かして今回、ロールtoロール方式のプレドープ技術の開発に至った。

 同方式は、LIB製造工程で通常採用されている方式のため、LIBメーカーは材料や製造工程を大きく変更することなく、技術の導入が可能となる。

 近年、省エネルギー化・低炭素社会の実現に向け、LIBを中心とした蓄電デバイスの重要性が高まっており、さらなる高容量化・高出力化・安全性向上などが求められている。同社は今後もさらに検討を進め、LIBをはじめとする各種蓄電デバイスの付加価値向上に最適なソリューションを提供し、この分野の発展に貢献していく考えだ。

 

ダウ・アグロサイエンス日本 疫病菌などに有効な殺菌剤2製品を新発売

,

2018年12月17日

 ダウ・アグロサイエンス日本はこのほど、「ゾーベック」(一般名:オキサチアピプロリン)を有効成分とする2つの園芸用殺菌剤を販売開始した。新製品は「ゾーベック・エンカンティア」と「ゾーベック・エニベル」。

 米国デュポン社が開発した同製品の有効成分ゾーベックは、疫病菌やべと病菌に対して有効作用を持つ。新製品は、作用性の異なる成分からなる混合剤で、耐性菌の発達リスクを抑えるとともに、従来品「ゾーベック・エニケード」の防除効果はそのまま保たれている。また、浸透移行性や耐雨性に優れ、病原菌の生活環の全ステージにわたりこれらの作用をもたらす。

 登録作物は、ゾーベック エンカンティアがばれいしょ・レタス・ハクサイ、ゾーベック・エニベルがトマト・きゅうり・ブドウ。

旭化成ファーマ 関節リウマチ治療薬のAI製剤を発売

, ,

2018年12月13日

 旭化成ファーマはこのほど、関節リウマチ治療薬「ケブザラ」の新剤形、「ケブザラ皮下注150㎎オートインジェクター、同200㎎オートインジェクター」(一般名:サリルマブ〈遺伝子組み換え〉)を発売した。

150㎎キット
150㎎キット

 効能・効果は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ。用法・用量は、通常、成人には1回200㎎を2週間隔で皮下投与する(患者の状態により1回150㎎に減量すること)となっている。薬価は、150㎎1キットが4万4945円、200㎎1キットは5万9509円。製造販売元はサノフィ。

 同剤の発売により、「ケブザラ皮下注」には従来のシリンジ製剤に加え、オートインジェクター(AI)製剤が新たに加わった。シリンジ製剤と同様、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤。同剤は、リウマチ患者が扱いやすい形状・機能を追求したユーザー中心設計のコンセプトで設計された。

 本体は、人間工学に基づき設計された握りやすい形状で、関節のこわばりや痛み、変形を訴える患者にとっても扱いやすくなっている。本体内にはあらかじめ1回量の薬剤が充填されている。リング式のキャップを外し、本体を皮膚に押し当てるだけで、注射針が患者の目に触れることなく自動的に皮膚に刺さり、薬液が注入される。

 また、視認性の良い薬液確認窓から薬剤の注入の状況が目視でき、薬剤注入の始まりと終わりを音で知らせる機能もあるので、患者自身が安心して自分で注射できる設計となっている。

 同社は、AI製剤という新しい治療の選択肢を提供することで、日本の関節リウマチ患者や医療関係者への一層の貢献を図る。今後も、同剤を含む「ケブザラ皮下注」の適正使用の推進と情報提供を続けていくとともに、患者のQOLの改善に注力していく考え。

 

帝人 機能性食品素材の第2弾、発酵性食物繊維を発売

,

2018年12月11日

 帝人は10日、発酵性食物繊維「イヌリア」の販売を開始すると発表した。同社ではスーパー大麦「バーリーマックス」に続く機能性食品素材の第2弾となる。製品仕様は、1箱30包入り(3g/包)、価格は1280円(税別)、製造元はファイン。アマゾンや楽天市場などで通信販売を行う。

 帝人は、水溶性食物繊維の代表的な素材であるイヌリンで、世界第2位のシェアを誇るオランダの食品素材メーカー・センサス社と、日本でのイヌリンの独占販売契約を締結しており、国内で「イヌリア」ブランドでの展開を図っている。そのマーケティング活動の加速のため今回、同素材を使用した自社製品の販売を始める。

 同社が国内で展開する「イヌリア」は、オランダ産チコリの根を抽出して製造するもので、高い腸内発酵力を特長としており、鎖長の異なる複数のラインアップにより、幅広い用途に使用できる。また、自然の甘みを生かして砂糖代替として、あるいは脂肪代替として用いることができ、カロリーを抑え、かつ食物繊維が摂取可能な飲料や食品の設計を可能にする。

 厚生労働省が実施した国民健康・栄養調査によると、日本人の食物繊維の平均摂取量は減少傾向にあり、2011年には1952年に比べて30%以上減少。2016年の1日当たりの平均摂取量は13.6グラム程度とされており、健康増進法で設定されている男性20g、女性18gという目標量に対して大きく不足している。

 こうした中、主にキク科の植物であるチコリなどから作られる、水溶性食物繊維の一種イヌリンは、水に溶けやすく、飲料や食品に容易に使用できることから、現代の日本人に不足している食物繊維を手軽に摂取できる食品素材として期待されている。

 帝人は「イヌリア」製品の販売開始を契機に、センサス社との連携を強化し、さらに製品開発や顧客開拓などのマーケティング活動を展開していく考え。機能性食品素材事業では、生まれた日から最後の日まで、人々の健康を支えることを目指して、今後も研究開発に取り組み、機能性食品素材のラインアップの拡充を図っていく。

宇部興産 塩野義製薬と新規抗RSウイルス薬創製で共同研究

,

2018年12月11日

 宇部興産は10日、塩野義製薬の新規抗RS(respiratory syncytial)ウイルス薬創製に関する創薬プログラムで、共同研究契約を締結したと発表した。

 両社は低分子創薬に強みをもつ。感染症を重点疾患領域とする塩野義製薬の創薬力と、有機合成力に支えられた宇部興産の化合物デザインをもとに、SAR(Structure‐Activity Relationship:構造活性相関)研究での相乗効果を高めることで、新規抗RSウイルス薬の開発候補化合物の早期創出を図る。

 RSウイルス感染による呼吸器感染症は、2歳頃までにほぼ100%の人が少なくとも一度は罹患し、生涯にわたり感染を繰り返す疾患。特に生後数週間~数カ月間の時期では、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす恐れがあることが、国立感染症研究所から報告されている。抗RSウイルス薬は未だ存在しないため、アンメット・メディカルニーズが高く、有効・安全性の高い治療薬が求められている。

 

DNP 植物工場向けシート型の面発光LED照明を発売

, ,

2018年12月7日

 大日本印刷(DNP)は6日、食料自給率の向上や安定供給、食の安全性向上などを背景として、今後の伸びが期待される人工光を利用した植物工場向けLED照明「DNPフレキシブルLEDシート」の量産を開始し、本格的な販売を開始すると発表した。

近年、従来の露地栽培による農作物の生産は、天候や病気、害虫の被害などによる影響を受けやすく、植物工場を利用した安定供給に注目が集まっている。また、食の安全意識の高まりも、無農薬・低農薬で栽培が可能な植物工場の需要増につながっている。

 同社は、印刷技術を発展させたフィルム加工技術と微細加工技術を活用して、高い反射性から光を有効活用して農作物の光合成を促進するとともに、防汚性にも優れた「DNP反射フィルム リフレモ」を提供。今回、植物工場向けに、薄くて軽く、栽培装置の天面や側面などに設置可能なシートタイプの面発光LED照明「DNPフレキシブルLEDシート」の本格展開を開始する。高い反射性を持つDNPの反射フィルムと組み合わせて利用することで、農作物の育成向上が図れる。

 植物工場向け栽培装置メーカーや植物工場の運営企業などに、同シートと反射フィルムを販売し、2021年までに年間25億円の売上を見込んでいる。今後も同社は、植物工場の生産性向上につながる製品、技術の開発に取り組み、「食」の安定供給、安心・安全に貢献していく考え。

 なお、幕張メッセで開催されている「第9回高機能フィルム展」(5~7日)の同社ブースで同製品を紹介している。

帝人フロンティア 「2020春夏スポーツウエア素材展」を開催

,

2018年12月6日

 帝人フロンティアは2020春夏スポーツウエア向けに、「新世代スポーツウエア」コンセプトと、新製品の「デルタSLX」などを提案する。4、5日に東京都中央区のプラザマームで開催した「2020春夏スポーツウエア素材展」で紹介した。

「新世代スポーツウエア」の製品例
「新世代スポーツウエア」の製品例

新世代スポーツウエアのコンセプトは、東京オリンピックの開催が迫る中で、スポーツ機能やスポーツテイストを生活全体に取り込んだスポーツライフスタイルウエアが求められているとの認識を基に提案。展示会では多様な快適素材を使った、スポーツでも、アスレジャーとしても使えるウエアの製品例を披露した。

 その一つ、高通気フィールドジャケットとパンツは、高通気素材の「エアインプレッション」を使用。ジャケットは高通気を保ちながら撥水性をもち、春夏の活動的なシーンを快適に過ごすことができる。パンツは高通気で衣服内コンディションを高め、快適運動と新しいシルエットを可能にした。

 また、新快適トラックジャケットとマルチフィールドパンツは、ポストジャージをコンセプトに開発。物性・機能・品位を高次元で融合させた「デルタ」を使い、リラックス感と表情豊かな外観、レトロなデザインにフレッシュな素材を加え、スポーツミックスの着こなしを可能にした。

 一方、素材の中で特に注力していたのが「デルタSLX」である。高バランス素材の「デルタ」とPTT繊維「ソロテックス」を糸の段階で融合させ、理想的な着圧感と高密度でナチュラルな質感を実現した。「デルタ」のソフトな伸びと「ソロテックス」の優れた復元性を複合することで、独自のストレッチ性も生み出した。さらに、吸汗速乾性、撥水性、強度・形態安定性、UVカット性・防透性なども兼ね備えている。

 同社ではこの新素材を、スポーツをはじめ、ファッション、学生服・ユニフォームなどの機能性衣料などへと幅広く用途展開する方針だ。展示会では、このほかに「涼感」「汗対応」「防水・防風」「ストレッチ」の快適四テーマに沿った素材など、スポーツの新しい流れをとらえた多様な素材を紹介していた。