【バイオプラ特集・各社の動向】カネカ 

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2019年11月8日

生分解性ポリマー事業の本格展開へ、製造設備を増強

 カネカは「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の本格的な事業展開を進めている。欧州でPHBHの海水中での生分解に関する認証を取得したほか、EUの全食品用途でPHBHの使用が可能となった。米国ではFDA(米国食品医薬品局)の食品接触物資に登録されている。

 国内でもポリオレフィン等衛生協議会の食品用器具・容器包装のポジティブリストに掲載されるとともに、セブン&アイ・ホールディングスや資生堂と製品の共同開発を開始した。このように、事業拡大に向けた環境が整ってきたことから、同社では今後、製造設備の増強と研究開発を促進していくことで、国内外で拡販を図っていく方針だ。

100%植物由来

 植物油脂を主原料とするバイオポリマーのPHBHは、3‐ヒドロキシ酪酸と3‐ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルである。バイオマスを主原料に、土肥義治東京工業大学名誉教授(共同研究当時は理化学研究所理事)との共同研究による菌株育種・培養技術によって、微生物体内にポリマーを高度に蓄積させ、それを精製して取り出すクリーンプロセスで生産する。

 日常の使用条件下では安定である一方、生分解性が優れ、自然環境下でも分解されてCO2と水になる。100%植物由来であるため、化石資源由来のポリマーと比べ、CO2の増加が抑制され、地球温暖化防止に貢献することができる。

 また、共重合体の3‐ヒドロキシヘキサン酸の比率が増加するにつれ、柔軟な性質が出てくることから、共重合比率をコントロールすることで、硬質から軟質まで幅広い物性を示し、ポリエチレンやポリプロピレンに類似した物性も実現可能だ。

 バイオポリマーとして用途が広がっている硬質のポリ乳酸(PLA)に比べ、優れた耐熱性・生分解性・耐加水分解性・水蒸気バリア性を持っている。開発は科学技術振興機構(JST)の委託開発事業として行われた。

 研究では、土壌微生物の一種が脂肪酸や植物油を炭素源としてPHBHを生産することを見出だしたが、当初発見した野生菌の生産能力は、目的とする組成のPHBHを工業生産レベルで製造するには著しく低いものだった。その後の開発の結果、野生菌からPHBH合成遺伝子などを複製することで、単位培養液当たりの生産能力を高め、数千tから数万t規模の培養生産が可能なPHBH高生産菌の開発に成功した。

高効率のプロセスを開発

 開発のポイントとなる水系での大量発酵生産については、

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【バイオプラ特集・各社の動向】クラレ 

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2019年11月8日

植物由来ガスバリア材「PLANTIC」を展開

 クラレはガスバリア材のラインナップの1つとして、バイオマス由来の「PLANTIC」を展開している。

 同社にはプラスチックの中で最高レベルのガスバリア性を持つEVOH樹脂「エバール」がある。「エバール」は優れたガスバリア性により内容物の劣化を防ぐことから、食品包装用途を中心に幅広く使われており、世界シェアで約65%(同社推定)を占める。「PLANTIC」はそのバリエーションで、エバールに近いガスバリア性に、生分解性を併せ持たせた。

 「PLANTIC」はオーストラリアの産学連携研究により開発されたでんぷん由来の生分解樹脂であり、同国のPLANTIC社が2003年に商業化した。2009年にハイバリア包材を商業化したことで、2011年に同国の大手スーパーマーケットに採用され、食肉包装用にPETと組み合わせたトレーとして使われている。

 クラレは2014年に日本と韓国で「PLANTIC」フィルムを販売する代理店契約を結び、翌年、PLANTIC社の全株式を取得して傘下に収めた。

 「PLANTIC」の環境性については、単層HPグレードがTUV Austriaの生分解性認定(活性汚泥中・土壌)、コンポスト性認定(工業・家庭)、バイオマス認定を受けている。また、PETと「PLANTIC」を組み合わせた多層フィルムのトレーは、PETの再生工程中に「PLANTIC」層が溶出し影響を与えないことから、リサイクル容器として認定されている。

 一方、日本では多層フィルムが日本有機資源協会のバイオマスマーク製品に認定されており、「PLANTIC」の焼却で発生するCO2は、日本のCO2発生量から除外される。現在、「PLANTIC」フィルムはPLANTIC社で製造され、国内外に供給している。

米社に樹脂を供給

 米州でも、これまでグローバルに食品包装材料を供給する米シールドエアー社と、米国・カナダ・メキシコでの食肉・魚介類などの生鮮食品に使用する「PLANTIC」製食品包装用フィルムの販売代理店契約を結んでいた。

 このほど、さらに事業を進展させることになり、クラレの100%間接出資子会社であるクラレアメリカとシールドエアー社との間で樹脂供給契約を結び、樹脂をシールドエアー社に供給し、同社がフィルムに加工することになった。

 樹脂についてはクラレが

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【バイオプラ特集・各社の動向】帝人 

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2019年11月8日

植物度70%の「プラネクスト」、自動車部品で採用

 帝人の「PLANEXT(プラネクスト)」は、トウモロコシの実などから製造されるイソソルビドをベースとした樹脂で、その植物度は約70%にもなる。透明性・耐薬品性・耐傷付き性・耐久性に優れることから、自動車・エレクトロニクスや光学用途、医療、食品、化粧品用途など、幅広い市場で用途開発を進めている。

 その1つが昨年2月に発表した、耐ガソリン性と成形性を両立した「プラネクスト」製のフィルム。独自のポリマー改質技術と製膜技術を駆使することで、スマートエントリーシステム用のドアハンドルへの対応を可能にした。

 また、このフィルムに加工メーカーの特殊金属蒸着技術を付加することにより、クロムメッキに代わる金属メッキ代替フィルムの生産も行うことができ、ホンダロック(宮崎市)のスマートエントリーシステム用のドアハンドルに採用された。

 近年、自動車用のドアロックとして、ドアハンドルに触れるだけで施錠・開錠が行える、スマートエントリーシステムの開発が進められている。スマートエントリーシステムは、センサーの誤作動防止のため、ドアハンドル部分を非導電性とする必要があるが、導電性のあるクロムメッキをベース樹脂の表面に使用したドアハンドルでは、実現できなかった。

 一方、金属蒸着したプラスチックフィルムは非導電性で、すでに金属メッキの代替フィルムとして、自動車の外装用途に実用されているものの、ドアハンドルには耐ガソリン性と成形性の両立が求められるため、使われていなかった。これに対し、帝人は「プラネクスト」を独自のポリマー改質技術で改良することにより、耐ガソリン性と成形性を両立した「プラネクストSN4600」を開発し、量産化に成功した。

 また同製品に特殊な製膜技術を加えることにより、ドアハンドルを含む自動車外装用途に使用可能なフィルムの開発も実現した。開発したフィルムは「プラネクスト」の特性である耐薬品性・透明性・高表面硬度に加え、優れた耐ガソリン性と成形性、耐候性を備えている。

 ポリマー改質技術により耐ガソリン性を付加されたことで、セルフ式ガソリンスタンドなど、ドライバーの手にガソリンがつきやすい状況下での使用に適している。

 また、耐熱性と製膜条件を最適化することで成形性を高め、複雑な形状の成形を可能にした。さらに、優れた耐候性基材を保護するためのUVカット機能をフィルムに付与することによって耐候性を高め、紫外線による基材の変色を防止している。帝人はこのフィルムをドアハンドル以外の自動車部品にも積極的に用途展開し、拡販を図っていく方針だ。

植物由来成分30%のPETも

 同社には植物由来の素材として、もう1種類、グループ会社の帝人フロンティアが展開している「PLANTPET(プラントペット)」がある。これは、PET樹脂を構成する成分の一部を、植物由来原料に置き換えたものだ。

 PET樹脂を構成するエチレングリコールを植物由来に切り替えたことで、成分の30%強が植物由来となっており、これは放射性炭素年代測定法(14C年代測定法)により検証することができる。素材の1部を植物由来とすることで、化石資源の消費を抑えることができ、温室効果ガスの削減効果が示されている。

 有限資源を再生可能な資源に転換することは、環境負荷の低減につながり、物性・品質は化石由来のPETと変わらないことから、すでにPETボトル用途では世の中に広く普及し始めている。それ以外では、カーシートやユニフォームが多く、衛生材料や産業資材などでも使われている。

 PETボトルをめぐる環境負荷低減への取り組みということでは、帝人フロンティアは回収したPETボトルを溶かし、マテリアルリサイクル技術により再生したポリエステル繊維「ECOPET(エコペット)」を製品化している。

 その取り組みの一環として、野外音楽フェスでのPETボトルリサイクル活動を支援しており、8月に総合エンタテインメント企業エイベックスグループの夏の野外ライブイベント「a‐nation(エイ・ネーション)2019」、9月には山梨県山中湖村の野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI(マウントフジマキ)2019」に協賛し、リサイクル活動をサポートした。

 「エイ・ネーション2019」は、エイベックスグループが2002年から毎年開催しており、会場内で発生した使用済みPETボトルを回収するリサイクル活動「LOVE.PEACE&CLEAN」を行っている。同社がサポートするのは10回目。「地球に優しいfes.」と「地球に優しい企業」のコラボレーションによって、世の中に環境に優しい活動を発信し、その継続と拡大を目指している。

 今回は「エイ・ネーション2019」の最終公演となる8月17、18日に開催される大阪会場(ヤンマースタジアム長居)で実施した。同社はこのリサイクル活動の啓蒙・推進に貢献するとともに、ペットボトルの回収に協力した来場者に、「エコペット」を使用したボンフィン(ミサンガ)を配布し、地球環境への負荷を低減していきたいという思いを伝えた。

 一方、「マウントフジマキ2019」では、同フェスとして初めての試みとなるPETボトルのリサイクル活動をサポートした。同社は「エコペット」を使用したリストバンド型チケットを提供するとともに、会場内で発生する使用済みペットボトルを回収するエコブースを設置し、社員がエコブースへの誘導や資源ゴミの分別・回収をサポートした。

 回収したペットボトルは「エコペット」へとリサイクルし、資源の循環に協力する。また、リサイクルを身近に感じてもらえるよう、来年「マウントフジマキ」が開催される際には、オフィシャルグッズやリストバンド型チケットに「エコペット」を使用してもらう予定だ。

【LCP特集3】ポリプラスチックス

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2019年10月25日

世界トップシェア、5G向け低誘電グレード開発

 ポリプラスチックスは1985年に液晶ポリマー(LCP)の輸入販売を始め、翌年にはコンパウンドの生産を開始、96年に富士工場に年産2800tのポリマープラントを完成させた。現在は1万5000tまで拡大し、4割近いシェアをもつ世界最大の供給メーカーとなっている。

 コンパウンド拠点は富士のほか、台湾と中国にあり、世界需要のおよそ半分を占める中国市場に製品を供給している。現在、米中貿易摩擦の影響もあって「需要は踊り場状態」(同社)にあるが、中長期的には今後も堅調に伸びていくことが見込まれることから、来年初めに

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【LCP特集2】東レ 特徴あるポリマー開発、自動車用途への展開図る

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2019年10月18日

 東レは「シベラス」の製品名で液晶ポリマー(LCP)事業を展開している。1973年に重合研究を開始し、1997年から愛媛工場で本格生産を始めた。2008年に増設して、現在の生産能力は2000t/年。「シベラス」の最大の特長は薄肉流動性で、主にスマートフォンのSMTコネクターやカメラモジュールで使われている。

 市場の伸びという意味では、大きく急速に伸びているポリマーではないが、スマホが売れた2016-17年は、供給が追い付かないほどの伸びを示した。ただ、18年の後半からスマホの売れ行きが鈍ったことに伴い、需要の伸びが鈍化している。

 「スマートフォン

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【LCP特集1】5G・自動車での拡大見込む

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2019年10月4日

 液晶ポリマー(LCP)は固体時だけでなく、溶融時にも結晶性を示すスーパーエンジニアリングプラスチックの総称である。

 物理的状態で定義されるため、ポリマー骨格構造はメーカーやタイプによって異なり、ポリマー設計によって耐熱性や機械強度など、さまざまな特性を持つポリマーが開発されている。成形時の流動性が良く、強度に優れた精密成形品の素材に適している。耐熱性が高く、難燃性・耐薬品性・制振性・寸法安定性にも優れている。

 特に電気・電子部品の

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【PBT特集4】ポリプラスチックス

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2019年9月13日

欧米のティア1開拓へ、技術支援体制の拡充を推進

 日本のポリブチレンテレフタレート(PBT)の草分けであり、「ジュラネックス」ブランドでPBT事業を展開するポリプラスチックスは、より迅速かつ効率的な事業運営のため、子会社のウィンテックポリマーを今年4月に吸収合併した。

 ポリプラスチックスがPBTの輸入販売を開始したのは1970年。79年にコンパウンドの生産を始め、84年には富士工場にポリマープラントを完成させた。2000年に事業拡大のため、同社60%、帝人40%の出資比率により、ウィンテックポリマーを立ち上げ、ここでPBT事業を行ってきたが、両社の事業再構築によって、ウィンテックポリマーは2016年に、ポリプラスチックスの100%子会社となっていた。

 「吸収合併により、名実ともに『ポリプラ』ブランドとしてのPBT展開を再開した」(事業戦略統括室PBT事業戦略室・江藤彩子室長)。生産体制としては、日本とマレーシア、台湾、中国に自社コンパウンド拠点を持つほか、中国(複数)とアセアン(同)、米国、メキシコの協力会社に生産を委託している。

 同社では顧客に対し、PBT

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【PBT特集3】三菱エンジニアリングプラスチックス

2019年9月6日

需要増にらみ製造設備増強、加工委託先の拡充も

 三菱エンジニアリングプラスチックスは、先進運転支援システム部品などで、自動車を中心にさらなる市場の拡大が見込めるポリブチレンテレフタレート(PBT)について、需要状況に対応して供給体制の整備を進めている。

 同社は「ノバデュラン」のブランド名でPBT事業を展開している。非強化やGF(ガラス繊維)強化、難燃などの各標準グレードのほかに、低反りタイプや耐加水分解性タイプ、耐ヒートショック性タイプなど種々のグレードを持ち、用途に応じて最適なグレードを提供している。

 販売量が多いのは非強化の標準グレード「5010R」シリーズで、主に

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《取材こぼれ話》熱電発電の効率化に求められる素材とは

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2019年9月5日

 NEDOはこのほど、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電材料を、汎用元素だけを用いて開発し、モジュール化にも成功した。実証試験では、5℃の温度差で発電するモジュールを用い、IoT機器の自立電源としての有用性を示した。

画期的な鉄-アルミニウム-ケイ素系熱電発電モジュール
画期的な鉄-アルミニウム-ケイ素系熱電発電モジュール

 同事業で材料開発や材料合成、性能評価を行った、物質・材料研究機構(NIMS)の高際良樹主任研究員は、今後想定される研究課題として、人体に装着するセンサーの自立電源への応用などを挙げた。

 体温と外気の温度差はせいぜい1℃。この温度差で装置を動かすには、熱電材料の高性能化もさることながら、熱をどう効率的に吸収するか、どう逃がすかが問題になってくるという。

 熱電素子の両面の温度差で発電する熱電発電モジュール。たとえば、熱を受ける上部には熱伝導率の高い受熱シートが必要になってくるし、下部には放熱に有効なシートが求められる。高際主任研究員は、素材の提供・開発といった側面から、化学メーカーの参加を呼び掛けていた。

 NEODは省エネルギーの観点から、未利用熱の革新的な活用技術研究開発を推進している。未利用熱とは、製造プロセスの中で利用されずに排出される工場の排熱や、自動車のエンジン回りから出る熱をはじめ、エアコンの排熱、住宅の窓や壁から放熱とさまざまなものがある。

 石油や天然ガスといった1次エネルギーをベースにすると、その60%は未利用熱として排出されているという。この未利用熱の活用法の1つとして、熱を電気に変換する熱電材料の開発が進められている。いわば熱のリサイクルだ。

 今回の開発が画期的なのは、汎用元素の鉄、アルミニウム、ケイ素のみからなる熱電材料を開発したことだ。200℃以下の低温熱源を利用する熱電材料の場合、ビスマス‐テルル系の化合物が知られているが、どちらも希少元素(レアメタル)である上に、テルルは毒性が非常に強いことなどの課題があった。

 高際主任研究員は、開発した革新的な鉄(Fe)‐アルミニウム(Al)‐ケイ素(Si)系の熱電材料(Thermoelectric Material)を、その頭文字から「FAST(ファスト)材料」と命名した。

 FAST材料のさらなる高性能・高機能化には、化学メーカーが提供する素材がカギとなりそうだ。

 

【PBT特集2】東レ コンパウンド技術で差別化、非日系にも拡販へ

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2019年8月23日

  東レは1975年から「トレコン」の製品名で、ポリブチレンテレフタレート(PBT)事業を展開している。現在は愛媛工場(2万3000t/年)と、2006年に稼働を開始した、BASFとの合弁会社であるマレーシアのプラント(6万t/年)でポリマーを製造している。

 コンパウンドの拠点は日本(名古屋事業場)と中国の3カ所(蘇州・深圳・成都)、タイ、インドネシア、米国にあり、インドの新拠点が9月から量産を開始する予定だ。これらグループ会社のほか、ベトナムと

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