エア・ウォーターなど 家畜由来水素で土木学会環境賞を受賞

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2020年7月8日

 エア・ウォーター、鹿島建設、日鉄パイプライン&エンジニアリング、日本エアープロダクツの4社が共同で実施している「家畜ふん尿由来低炭素水素を活用した水素サプライチェーン実証事業」がこのほど、2019年度の「土木学会環境賞(Ⅱグループ)」を受賞した。同事業は、環境省の委託事業「地域連携・低炭素水素技術実証事業」として、2015年度から実施している。

 北海道河東郡鹿追町に家畜バイオマス由来の水素製造供給施設「しかおい水素ファーム」を設置し、バイオガスの新用途としての水素利用の有効性を実証した。家畜ふん尿による環境汚染や廃棄物の課題解決と、エネルギー使用によるCO2排出削減など、酪農地域での水素エネルギー適応性を明らかにした点が評価された。家畜ふん尿のメタン発酵施設「鹿追町環境保全センター中鹿追バイオガスプラント」で製造するバイオガスを用いて、同センター内の「しかおい水素ファーム」で水素ガスを製造している(設備能力は約70N㎥/h)。

 水素は、センター内の定置型水素ステーションで燃料電池(FC)自動車・フォークリフトのほか、純水素型燃料電池によるセンター内のチョウザメ飼育施設のエアレーション電源・水温保持熱源としても利用しており、昨年9月までは、畜産農家や帯広市内の観光施設にも水素を運搬し、電気と温水を供給していた。

 今後、水素サプライチェーンの他地域への展開に向け、水素運搬・貯蔵、災害時の活用など、さらなる課題解決のために実証期間を2年間延長(2021年度まで)する予定。帯広市内、鹿追町内の農業倉庫でのFCフォークリフトへの水素供給のほか、帯広市内で非常時電源にも対応した水素吸蔵合金・FC利用システムの実証を行う。製造・利用一貫の水素サプライチェーンを構築し、地産地消の水素エネルギー社会の実現に貢献していく考えだ。

エア・ウォーター 歯髄幹細胞による再生医療事業に参入

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2020年7月7日

 エア・ウォーターはこのほど、歯髄関連事業を企画・推進するグループ会社のアエラスバイオ社(兵庫県神戸市)は、同社と連携する「RD歯科クリニック」の再生医療等提供計画が厚生労働省で受理されたことに伴い、歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始したと発表した。

 歯髄再生治療は、自らの不用歯の歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯で神経を喪失した歯に移植して歯髄を再生する治療で、世界初の実用化となる。現在、ひどい虫歯には抜髄治療が施され、国内で年間600万症例ほど行われているが、歯が折れやすくなり、細菌防御反応や歯髄組織の修復機能も失う可能性が高まる。こうした中、同再生治療で神経や血管を再生し健康な歯を取り戻せるため、QOL向上や健康寿命の延伸が期待される。

 同社医療関連事業は、医療用ガスや病院設備などの「高度医療分野」の強化に加え、歯科や衛生材料などの「くらしの医療分野」への拡大にも注力。2011年に歯科関連事業に参入、18年にアエラスバイオ社を設立して歯髄再生治療の事業化に着手、昨年「エア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸」内に歯髄幹細胞の培養・加工・保存設備を整え、安全性や有効性の検証を進めてきた。

 今回一連の治療システムが完成し、歯髄再生治療が可能となった。「RD歯科クリニック」での治療は抜歯~培養~移植~検査から成り、1回の費用は50~70万円程度、期間は約1年である。

 今後アエラスバイオ社は、エア・ウォーター関連会社の歯愛メディカルの歯科医院向け通信販売ネットワークを活用して同治療の普及を進め、医師向けの講習会や技術支援を行う予定。

 今秋には、培養した歯髄幹細胞を長期間冷凍保存する「歯髄幹細胞バンク事業」も立ち上げ、これら関連事業も合せて3年後には年間売上高10億円規模を目指す。また、乳歯や二親等以内の親族の歯から採取した幹細胞による治療も実現も目指す。さらに、歯髄幹細胞は血管や神経組織への誘導能力が高いことから、脳梗塞、脊髄損傷、血管障害など歯科関連以外の再生医療への適用も視野に入れ、引き続き研究・開発に取り組んでいく考えだ。

エア・ウォーター 熱膨張性黒鉛事業、合弁会社化で成長

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2020年6月2日

 エア・ウォーターはこのほど、これまで単独で事業運営を行ってきた熱膨張性黒鉛(TEG)事業を、同社と東洋炭素および南海化学の3社の合弁事業とするために合弁会社を設立した。

 TEGは、天然の鱗片状黒鉛を硫酸によって層間化合物処理することで熱膨張特性を与えた特殊黒鉛製品であり、国内では唯一、エア・ウォーターが製造を行っている。加熱によって膨張することから、様々な形状に圧縮成形することが容易であり、熱や腐食に強く、気密性の高い素材として、自動車用エンジンガスケットや化学プラント用パッキンなどのシール部品材料として使用されている。

 また、膨張前のTEGをゴムや樹脂などの可燃性物質に混ぜておくと、火災時に膨張して断熱層を形成し、燃焼が広がるのを抑制する効果があることから、建築用断熱材や航空機用シートの難燃剤としても使用されている。

 同社は日本製鉄和歌山製鉄所構内でTEGを製造しているが、生産体制の効率化と新用途の開発が事業成長の課題であった。こうした中、製造技術とノウハウを持つエア・ウォーター、TEGの最大ユーザーであり豊富な技術とノウハウを持つ東洋炭素、製造に不可欠な廃酸リサイクル処理設備を持つ南海化学の3社が合弁会社を設立。緊密に連携することによって、これらの課題を解決し、TEG事業のさらなる成長を図る。

 今後、合弁新会社は、2022年4月の完成を目途に和歌山市内に新工場を建設する予定で、コスト競争力と安定供給力を備えた生産体制を構築し、放熱材などの電子材料分野をはじめとした用途開発に取り組む考えだ。