クラレの1-9月期 販売数量減や市況悪化受け減収減益

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2019年11月13日

 クラレが12日に発表した2019年12月期第3四半期(1-9月期)連結決算は、売上高が前年同期比5%減の4289億円、営業利益は同22%減の423億円、経常利益は同27%減の379億円、純利益は同42%減の194億円となった。営業利益については、数量・操業度で同90億円、交易条件で同5億、経費その他で同25億円のマイナスとなり、全体として同120億円の減益となった。

 セグメント別に見ると、ビニルアセテートは減収減益。ポバール樹脂は景気減速により販売量が減少し、光学用ポバールフィルムは液晶パネルの在庫調整の影響を受け、出荷が減少した。PVBフィルムは、建築用高機能フィルムの需要は拡大したものの、自動車用途は販売量が減少した。

 一方、水溶性ポバールフィルムは個包装洗剤用途の需要が伸長し、販売が拡大した。EVOH樹脂「エバール」は、ガソリンタンク用途で自動車生産台数減少の影響を受け、食品包材用途も販売が低調だった。イソプレンは減収減益。

 イソプレン関連では、ファインケミカル、熱可塑性エラストマー「セプトン」とも景気減速の影響を受け、販売量が減少した。耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」は、車載用コネクタ向けの新規採用が進展したが、電気・電子デバイス向けは需要の停滞に伴い、数量が減少した。

 機能材料は減収減益。メタクリルは、樹脂の販売数量の減少と市況悪化が響いた。メディカルは、歯科材料の審美修復関連製品を中心に堅調に推移。カルゴン・カーボンは、北米の飲料水用途の需要が拡大したが、欧州は需要の停滞に伴い、販売が伸び悩んだ。一方、炭素材料は高付加価値品の販売が拡大した。

 繊維は減収減益。人工皮革「クラリーノ」は、ラグジュアリー商品用途が引き続き堅調に推移した反面、靴用途の販売量は減少した。繊維資材は、ビニロンでセメント補強用の輸出が低調だった。またゴム資材向けも自動車生産台数減少の影響を受けた。生活資材は、「クラフレックス」で汎用品の数量が減少した。

 なお、通期業績予想については、主力事業のビニルアセテートとイソプレンで、自動車用途などを中心に需要が低迷していることから、各項目を下方修正した。売上高は5780億円(前回予想比220億円減)、営業利益570億円(同100億円減)、経常利益520億円(同105億円減)、純利益285億円(同95億円減)を見込んでいる。

【バイオプラ特集・各社の動向】クラレ 

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2019年11月8日

植物由来ガスバリア材「PLANTIC」を展開

 クラレはガスバリア材のラインナップの1つとして、バイオマス由来の「PLANTIC」を展開している。

 同社にはプラスチックの中で最高レベルのガスバリア性を持つEVOH樹脂「エバール」がある。「エバール」は優れたガスバリア性により内容物の劣化を防ぐことから、食品包装用途を中心に幅広く使われており、世界シェアで約65%(同社推定)を占める。「PLANTIC」はそのバリエーションで、エバールに近いガスバリア性に、生分解性を併せ持たせた。

 「PLANTIC」はオーストラリアの産学連携研究により開発されたでんぷん由来の生分解樹脂であり、同国のPLANTIC社が2003年に商業化した。2009年にハイバリア包材を商業化したことで、2011年に同国の大手スーパーマーケットに採用され、食肉包装用にPETと組み合わせたトレーとして使われている。

 クラレは2014年に日本と韓国で「PLANTIC」フィルムを販売する代理店契約を結び、翌年、PLANTIC社の全株式を取得して傘下に収めた。

 「PLANTIC」の環境性については、単層HPグレードがTUV Austriaの生分解性認定(活性汚泥中・土壌)、コンポスト性認定(工業・家庭)、バイオマス認定を受けている。また、PETと「PLANTIC」を組み合わせた多層フィルムのトレーは、PETの再生工程中に「PLANTIC」層が溶出し影響を与えないことから、リサイクル容器として認定されている。

 一方、日本では多層フィルムが日本有機資源協会のバイオマスマーク製品に認定されており、「PLANTIC」の焼却で発生するCO2は、日本のCO2発生量から除外される。現在、「PLANTIC」フィルムはPLANTIC社で製造され、国内外に供給している。

米社に樹脂を供給

 米州でも、これまでグローバルに食品包装材料を供給する米シールドエアー社と、米国・カナダ・メキシコでの食肉・魚介類などの生鮮食品に使用する「PLANTIC」製食品包装用フィルムの販売代理店契約を結んでいた。

 このほど、さらに事業を進展させることになり、クラレの100%間接出資子会社であるクラレアメリカとシールドエアー社との間で樹脂供給契約を結び、樹脂をシールドエアー社に供給し、同社がフィルムに加工することになった。

 樹脂についてはクラレが

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クラレ バイオ由来ガスバリア材を日本包装産業展に出展

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2019年10月23日

 クラレは、29日から幕張メッセで開催される「JAPAN PACK 2019(日本包装産業展)」に出展する。

「PLANTIC」を使用したコーヒーパウチ
「PLANTIC」を使用したコーヒーパウチ

 同展は、包装業界と関連業界の国内外の最新鋭機器・技術・サービスと、そのユーザー・バイヤーが一堂に会する2年に一度の展示イベント。同社はCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)展示コーナー内で、環境対応型包装材料のガスバリア材「PLANTIC(プランティック)」と、水溶性フィルム「PVOH」を紹介する。

 「プランティック」は、バイオマス由来の生分解性ガスバリア素材。優れたガスバリア性による食品の品質保持や賞味期限の延長、カーボンニュートラルによりCO2削減に貢献する。他のバイオマス、生分解性素材との組み合わせによる環境性能の高い包装材の設計も可能だ。

 一方、「PVOH」はクラレの技術・ノウハウを生かした水溶性フィルム。水に速やかに溶解する性質により、ゴミの減容化など新たなパッケージングソリューションを提案し、自然環境と生活環境の向上に寄与する。

 なお29日には、同製品に関するプレゼンテーション「水溶性フィルムのサステナブル包装」(午前11時半~午後12時半)を、企画プレゼン会場で行う予定。

クラレ プラスチック・ゴム産業展「K2019」に出展「セプトン」などを紹介

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2019年10月15日

 クラレは10月16~23日にドイツのメッセ・デュッセルドルフで開催される、世界最大規模のプラスチック・ゴム産業展「K2019」に出展する。

 バイオ由来水素添加スチレン系エラストマー「セプトン」BIO‐シリーズ、EVOH樹脂・フィルム「エバール」、バイオマス由来のガスバリア材「PLANTIC(プランティック)」、人工皮革「クラリーノ」、水溶性PVAフィルム、熱溶融成形が可能なPVA樹脂「MOWIFLEX」など、同社の特長のある製品を紹介する。

 「セプトン」BIO‐シリーズは、バイオ由来の新規共役ジエンモノマーである「β‐ファルネセン」を原料とした、水添スチレン‐ファルネセン共重合体。ウェットグリップ性に優れ、濡れても滑りにくいという特長を持つ。

 「エバール」はプラスチックの中で最高レベルのガスバリア性(気体遮断性)を持つ、EVOH(エチレンビニルアルコール)樹脂。優れたバリア性により、食品の保存期間延長と食品ロスの低減に貢献する。展示会ではリサイクルしやすい新グレード品を紹介する。

 「プランティック」はバイオマス由来の生分解性ガスバリア素材。優れたガスバリア性による食品の品質保持や賞味期限の延長、カーボンニュートラルによりCO2削減に寄与する。他のバイオマス、生分解性素材との組み合わせによる環境性能の高い包装材の設計も可能だ。

 「クラリーノ」は天然皮革のような自然な外観・風合いを持つ人工皮革。環境にやさしい製法で製造された製品を紹介する。水溶性PVAフィルムは生分解性で、水に速やかに溶解し、環境負荷が小さいという特性を生かし、衣料用洗剤や食器洗い機用洗剤、農薬など、粉体・液体の個包装用途で採用が拡大している。

 熱溶融成形が可能なPVA樹脂「MOWIFLEX」は、生分解性と水溶性を特長とするクラレのポリビニルアルコール(PVA)樹脂。同製品を使用した3Dプリンター用フィラメントは、優れた印刷適正に加え、空気中では吸湿しにくく、冷水には溶解する特長がある。

 

クラレ 「農業資材EXPO」に人工樹脂培地など出展

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2019年10月10日

 クラレは幕張メッセで開催中の、日本最大の農業資材見本市「第9回国際農業資材EXPO」(農業Week内)に出展し、農作業の様々なシーンに使用されている同社グループの素材・資材を紹介している。

 主な出展製品は、親水性樹脂培地「ソフィテラ」や、「エバール」のガスバリア性を生かした穀物保存袋、農業散布に使用できる活性炭入り保護マスク、水溶性合成樹脂「クラレポバール」、傷ついたトマトの枝の応急手当に使用する「トマトの包帯」など。

 「ソフィテラ」は親水性をもつ人工樹脂培地で、洗浄・消毒して繰り返し使えるため、土壌病害による連作障害が起きにくいという特長がある。適度な粒度で通気性がよいため、根腐れしにくく、収穫時の根離れにも優れる。

 保護マスクには、同社が製造する独自の高性能活性炭「クラレコール」を使用。農薬散布時の不快な臭気を強力に吸着・軽減する。粒状農薬・肥料の物性や取り扱い性を高めるバインダーに使われている「クラレポバール」には、種子のコーティング剤としての用途もあり、発芽率改善や機械播種時の粉じん抑制に寄与するほか、土壌改良剤や展着剤など幅広い用途がある。ブース番号:18‐24。11日まで。

クラレ 「カムバック採用制度」導入、元社員を対象に

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2019年10月4日

 クラレは退職した元社員に対する「カムバック採用制度」を新設し、9月20日から開始した。復帰を後押しする仕組みとして、退職した元総合職社員と同社が情報交換できるSNSも導入する。

 再入社を希望する元社員を積極的に採用する制度で、元社員が再入社を希望する場合、人事担当部署で復帰後に従事可能な職務について検討の上、通常の中途採用と同様の方法(論文、面接など)で選考を行う。また、円満に退職した元社員を対象に、アルムナイ(同窓生)SNSシステムを導入し、交流を継続する。

 同社からはSNSを通じて、求人情報や社内トピックスなどの情報を提供する予定。元社員が再入社を希望する場合、SNSを通じてその旨を人事担当者に伝えることができる。

 同社はグローバルに事業拡大を続けており、近年は新卒採用に加え、中途採用による人材確保にも努めているが、同社を退職する社員も一定数存在しており、その定着対策も課題の1つとなっている。そのような状況で、退職した元社員の中には、再度入社を希望する人材がいるとの情報も寄せられていた。

 同社についての理解も深く、早期に活躍が期待できる元社員の復帰は、同社にとっても利点があることから、「カムバック採用制度」の導入を決定した。

クラレ 人事(10月1日)

2019年10月2日

[クラレ・人事](10月1日)▽イソプレンカンパニーエラストマー事業部クラリティ事業推進部長兼同カンパニー同事業部同部販売マーケティンググループリーダー岸井史郎▽同カンパニー同事業部品質・商品開発部長森口信弘▽同カンパニージェネスタ事業部長池森洋二▽同カンパニー同事業部営業部長宗澤裕二▽同カンパニー同事業部開発部長兼同カンパニー同事業部同部開発グループリーダー兼同カンパニー同事業部同部技術サービスグループリーダー山下隆▽鹿島事業所エラストマー研究開発部長兼同事業所同部ポリマー研究開発グループリーダー桑原重直。

クラレ 「ホワイト物流」推進運動で自主行動宣言を提出

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2019年10月2日

 クラレはこのほど、国土交通省・経済産業省・農林水産省が提唱する「ホワイト物流」推進運動に賛同し、自主行動宣言を提出した。

 「ホワイト物流」推進運動とは、深刻化が続くトラック運転者不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済成長への寄与を目的に取り組む運動。トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化や、女性や60代以上の運転者も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現を目指している。

 クラレは、主に運送内容の見直しと安全の確保を中心に、7つの自主行動を宣言した。①物流の改善提案と協力では、物流会社からの改善提案に対し、真摯に協議に応じていく。②パレット等の活用では、荷役時間の軽減を図る。③保管場所の集約では、複数個所での積み込みをなくし、拘束時間短縮と効率改善を図る。④輸送効率改善では、トラックから船や鉄道へのモーダルシフトを一層拡大する。⑤混雑回避では、2020年オリンピック・パラリンピック開催時の混雑を回避する(鹿島港の利用拡大)。⑥物流システムの標準化では、WEBによる出荷情報を事前提供し、輸送手配を容易にする。⑦荷役作業時の安全対策では、危険物の出荷・充填設備を改善し、手順を見直す。

 同社は近年、鉄道コンテナ輸送によるモーダルシフトの推進や、また、専属トレーラーを導入し、製品・原料・荷材回収を含めた事業所間のラウンド輸送を実現することで、輸送能力の安定確保と大容量化を推進している。

 モーダルシフトの推進では、特に長距離輸送(岡山―関東間、岡山―新潟間)は、食品メーカーなどとの提携輸送を実施。その実績を評価され、昨年5月に鉄道貨物協会から「鉄道貨物輸送功労者賞」を受賞した。

 

クラレ 事業部間の横串を強化、自動車用途の拡大図る

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2019年9月17日

 クラレは、グループ一丸となって自動車用途の拡大を図っていく方針だ。先日、自動車用途に関するクラレグループの市場展開について会見を行った。

 同社は自動車用途では、すでにガソリンタンク向けの「エバール」やガラス中間膜のPVBフィルム、エアコンフィルター用の活性炭など20以上のアプリケーションで採用実績を持つ。ただ自動車産業は「100年に一度の変革期」を迎えており、「CASE」や脱化石燃料への転換など新しいトレンドへの対応が大きなテーマとなっている。

 同社は製品・技術の貢献が期待される3つの領域を設定し、用途拡大を推進。①「5G(技術・インフラ)と自動化の進展」のフォーカスエリアでは、センシング材料向けに銅張積層板「ベクスター FCCL」の量産設備導入を決定。次世代コネクタでは、メモリDDR5向けに耐熱性が必要となることから、独自PA系エンプラ「ジェネスタ」の評価が進んでいる。また、ヘッドアップディスプレイの高度化では、安全をキーワードに微細加工技術によりマイクロレンズアレイに注力している。

 ②「電子制御化・EV化」のフォーカスエリアでは、電子制御部品の小型化、熱マネジメントニーズの高まりに応える「ジェネスタ」の採用拡大や、LIB材料の負極材向けにバイオハードカーボン「クラノード」の評価が進む。軽量化ニーズでは、「ジェネスタ」に加え、PVB中間膜「トロシフォル」でガラスの薄膜化を目指している。

 ③「フューエルマネジメント(HV・PHV/FCV)」のフォーカスエリアでは、新たなフューエルマネジメントシステムの提案、ガスバリア性などの特長を生かした燃料電池車(FCV)タンクの提案などを進めている。

 一方、今後の成長に向けた取り組みでは、事業部の横串ワークの強化・推進、外部とのコラボレーションによる「協創」、米国(デトロイト事務所)、欧州、アジア(タイ新工場)の拠点を活用したグローバル展開などに注力。自動車の新たな変化に対応し、いかなる環境下でもサスティナブルなビジネスモデル構築を目指す考えだ。

クラレ バイオ由来のバリア材事業で海外展開を加速

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2019年9月12日

食品包材に加え新規用途開発、売上高目標1億ドル

 クラレはバイオマス由来のガスバリア材「PLANTIC」事業で、食肉包装用途での豪州以外における展開に加え、新規用途・製品の開発を加速し、2026年に売上高1億ドル超を目指す方針だ。

山口執行役員
山口執行役員

 11日に開催した定例会見で、エバール事業部長の山口勝正執行役員が、同事業のこれまで経緯と今後の戦略について説明した。

 豪Plantic社が開発した「PLANTIC」は、もともとでんぷん由来の生分解性樹脂の事業化を目指し開発されていた。そうした中、フィルムにした場合、ガスバリア性を発現することからバリア包材に研究が絞られ実用化。豪州では、食品包材向けに単層、多層のフィルム・シートとして事業が展開されている。

 クラレは2015年に同社を買収。ガスバリア性を持つ「エバール」と合わせ、食料の

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