NEDO 石炭火力のCO2固体吸収法の実証研究を開始

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2020年8月5日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、はこのほど、CO2分離・回収コストの大幅低減が期待される固体吸収法について、実際の石炭火力発電所で燃焼排ガスを使用するパイロット規模の研究開発に着手すると発表した。川崎重工業と地球環境産業技術研究機構に委託し、石炭火力発電所での燃焼排ガスのCO2分離・回収の長期連続運転試験を行う。事業期間は2024年度までの5年間。

 CO2排出量の大幅削減には、分離・回収したCO2の地中貯留(CCS)や、原料として利用するカーボンリサイクルの推進が重要になる。経済産業省の「カーボンリサイクル技術ロードマップ」はCO2分離・回収の重要技術として固体吸収法を挙げ、今年の「革新的環境イノベーション戦略」で同手法による燃焼排ガスの研究開発の方針を示した。固体吸収法は化学吸収法(液体)と異なり、CO2の脱離に要するエネルギーは少なく、分離回収コストを半減(CO 2 1t当たり2000円台)できる可能性がある。

  NEDOは、2018年から固体吸収法の実用化研究を進め、ベンチスケール試験(日産数t規模)でCO2分離・回収エネルギー1.5GJ/tを達成(化学吸収法の約6割)。吸収方式はアミン担持多孔質材料の移動層方式。実燃焼排ガス使用のスケールアップ試験用に、石炭火力発電所に試験設備(数十t/日)を設置し、CO2分離・回収の長期連続運転試験を行う。同時に固体吸収材の性能向上、製造技術・シミュレーション技術の高度化も進め、スケールアップ試験に反映させる。2030年までに、固体吸収法の技術確立を目指す。

三洋化成 川崎重工の無人潜水機で全樹脂電池の実証試験を開始

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2020年7月28日

 三洋化成工業はこのほど、関係会社のAPB(東京都千代田区)が次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」を、川崎重工業が開発する自律型無人潜水機(AUV)に搭載し実証試験を開始したと発表した。

今回使用される全樹脂電池(ケース外観)
今回使用される全樹脂電池(ケース外観)

 全樹脂電池は、APB代表取締役の堀江英明氏と三洋化成が共同開発したバイポーラ積層型リチウムイオン電池。三洋化成が開発した樹脂で被覆した活物質を、樹脂集電体に塗布した電極を使用している。

 この独自の製造プロセスにより、従来のリチウムイオン電池に比べ工程の短縮と製造コスト・リードタイムの削減に加え、高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現。部品点数の少ないバイポーラ積層型でかつ樹脂製であるため、電極の厚膜化やセルの大型化、形状の自由度といった特長もある。

川崎重工製AUV外観
川崎重工製AUV外観

 一方、川崎重工が開発するAUVは、海中設備の保守・点検用で、深海などの過酷な環境で長時間の水中作業を行う。動力源は、APBと川崎重工が共同開発した耐水圧型の全樹脂電池で、大型化や積層化により電池容量を増やすことで、長時間走行も可能になる。川崎重工神戸工場内岸壁の試験エリア内でのAUV出力試験後、連続航続距離、充電特性や耐水圧性などのAUV実機試験を行う予定。

 同実証実験を皮切りに、大型定置用蓄電池などの用途展開を促進し、将来は新しい社会インフラとなるよう挑戦を続ける考えだ。

住友商事 日豪間の水素サプライチェーンの実証事業に参画

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2019年11月25日

 住友商事はこのほど、川崎重工業、電源開発(Jパワー)、岩谷産業、丸紅、豪AGL Energy(AGL)が取り組んでいる、豪ビクトリア州ラトローブバレーの褐炭から製造された水素を液化し、日本へ輸送する国際的なサプライチェーン(Hydrogen Energy Supply Chain Project)構築の実証事業に参画すると発表した。

 住友商事を含む6社は、豪州連邦とビクトリア州政府の補助金を受け、水素ガス精製、液化水素製造、陸上輸送および積出のパイロット実証と、水素サプライチェーンの商用化に関する検討を行う。実証設備の建設は、今年から順次開始しており、最初の水素製造と輸送試験は、2020~2021年の間に実施を予定している。

 住友商事は同実証を通して、豪州連邦とビクトリア州政府が取り組んでいるCarbonNet Projectとのコミュニケーションを促進する役割を担い、将来のCO2フリー水素サプライチェーンの構築を目指し実証事業の完遂に貢献していく。

 川崎重工と岩谷産業は、液化水素積荷基地の建設と運用評価を担当し、Jパワーは、褐炭をガス化し、製造された水素ガスの精製設備を担当している。また、丸紅はそれぞれの実証を基に将来の商用サプライチェーン構築に向けた具体的な道筋の構築を行い、AGLは、褐炭の供給とガス精製設備の建設地を提供している。

 住友商事は、昨年5月に事業部門横断の「水素関連ビジネスワーキンググループ」を立ち上げ、水素関連のビジネス機会の可能性を追求している。今後も、水素社会の実現に向けた取り組みを加速させていく考えだ。