帝人 米社を買収し航空・宇宙用途で炭素繊維事業を拡大

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2019年2月28日

 帝人は27日、航空・宇宙用途向けに高耐熱熱硬化プリプレグを製造・販売する米国のレネゲード社(オハイオ州)の全株式を、今年4月をめどに取得し完全子会社化すると発表した。プリプレグとは、炭素繊維シートに樹脂を染み込ませたもの。

 今回の買収により、エンジン部材などへの適応が可能な、未来の最新鋭航空機に向けたラインアップとなる高耐熱性プリプレグを獲得でき、これまで以上に幅広い潜在ニーズへの対応が図れるようになる。同時に、同社が蓄積してきた炭素繊維や中間材料のノウハウや評価設備、販売チャネルなどを活用することで、レネゲード社製品のより幅広い展開が可能となり、航空・宇宙用途向け炭素繊維事業のグローバル展開をよりいっそう強化していく。これらの施策を通じ、2030年近傍までに同用途で年間9億ドル超の売上を目指す。

 レネゲード社は、1993年創立の樹脂メーカーを母体とし、2007年に設立された航空・宇宙用途向け高耐熱熱硬化プリプレグメーカーで、耐熱性樹脂には高いノウハウをもつ。特に、技術的に難しいとされる低毒性原料を用いたポリイミド樹脂による、高耐熱性と熱サイクル耐性に優れるプリプレグの製造が特徴。欧米をはじめとする航空機メーカーや航空機エンジン関連メーカーなどから高い信頼と採用実績を得ている。

 一方、帝人グループは炭素繊維事業では、特に航空機分野に注力しており、炭素繊維原糸からCFRP(炭素繊維複合材料)に至るまでのラインアップを拡充し、用途開発を強力に推進する。先ごろは、米国・ボーイング社の一次構造材向けに認定された熱可塑性プリプレグなど、将来の最新鋭機に向けた、新たな中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいる。

帝人 高機能素材や技術で安全な社会構築に貢献

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2019年2月27日

 帝人グループは重点領域の一つとして「安心・安全・防災ソリューション」を掲げている。昨年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震などの災害が記憶に新しい中で、東日本大震災の発生日である3月11日を前に、災害時の安全確保に貢献する同社グループの製品・サービスを、プレスに紹介する説明会を22日に開催した。

帝人の防災関連製品
帝人の防災関連製品

 製品・サービスは大きく「災害への備え」と「災害発生時の安心・安全確保」に分けられる。「災害への備え」では、超軽量天井材「かるてん」、防煙垂れ壁「かるかべ」、火山噴石対策用アラミド繊維織物、新防災素材「プルシェルター」、河川増水危険警告灯、透水セル、制菌難燃素材毛布「もうたんか」など、「災害発生時の安心・安全確保」については、メタ系アラミド繊維使用の防護衣料、緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール」などを紹介した。

 このうち「かるてん」は、帝人フロンティアのポリエステル製タテ型不織布「V‐Lap」を基材としていることから、従来の天井材に比べて柔らかく、重さが約10分の1と軽いのが特徴。このため、万一、天井が落下しても、被害を最小限に抑えることができる。吸音性能や断熱性能に優れ、建築基準法で定められた不燃材料の規定にも適合しており、徳島空港をはじめとする空港やショッピングモールなどで採用されている。

 「かるかべ」は火災時に煙の流動を防ぐ不燃シート性の防煙垂れ壁。従来のガラス製と同等の透明性を持ちながら、重量は約10分の1と軽く、割れにくい。熊本地震の際、ガラス製の防煙垂れ幕が落下して

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帝人 急性期脳梗塞の新治療薬を目指し臨床試験を開始

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2019年2月7日

 帝人は6日、ヒト(同種)歯髄由来幹細胞(DPC)を用いた再生医療等製品「JTR‐161」が、第1例目となる被験者に投与されたと発表した。同治験製品は、JCRファーマ(兵庫県芦屋市)と共同開発を進めているもので、このたび急性期脳梗塞患者を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験で被験者の組み入れが開始された。今回の試験は、静脈内投与した際の安全性と有効性を、探索的に検討することを目的としている。

 帝人グループでヘルスケア事業を展開する帝人ファーマが治験依頼者として実施し、試験に用いる治験製品はJCRファーマが製造を行う。「JTR‐161」は、人の抜歯体から単離したDPCを原材料とする再生医療等製品。抜歯体を利用するため、骨髄などに比べて細胞採取時の侵襲性が低く、国内で細胞ソースを調達できるのが特徴となっている。

 また、ヒト(同種)歯髄由来幹細胞は、体内に投与しても拒絶反応が起こりにくいとされており、同治験製品は、免疫調整因子産生による炎症抑制や、栄養因子産生による臓器保護・再生促進などの効果が期待されている。

 帝人とJCRファーマは、2017年7月に、日本国内でのDPCを用いた急性期脳梗塞を適応症とする同治験製品の共同開発契約と実施許諾契約を締結し、研究開発を進めてきた。両社は、「JTR‐161」が急性期脳梗塞の新たな治療選択肢となることを期待し、患者のQOL向上を目指すために同製品の一日も早い上市に向けて連携強化を図っていく。

帝人の4-12月期 増収も原料上昇などで営業減益

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2019年2月5日

 帝人が4日に発表した2019年3月期第3四半期の連結決算は、売上高が前年同期比7%増の6597億円、営業利益は同15%減の481億円、経常利益は同10%減の513億円、純利益は特別利益の計上が寄与し、同3%増の408億円となった。

 マテリアル領域では販売が堅調に推移した一方、原料価格上昇や、複合成形材料事業の新規受注に伴うプロジェクト立ち上げ費用増の影響により増収減益。ヘルスケア領域でも薬価・診療報酬改定の影響を販売増でカバーしたものの、前年同期の新規アルツハイマー病治療薬候補化合物の導出対価(30億円) がなくなった影響で、増収減益となった。

 マテリアル領域の売上高は同417億円増の4987億円、営業利益は同69億円減の173億円。マテリアル事業では、パラアラミド繊維「トワロン」の光ファイバー用途の販売などが堅調。炭素繊維分野では「テナックス」の航空機用途やコンパウンド用途での販売が堅調。樹脂分野は急速な市況価格の下落が利益を押し下げた。

 繊維・製品事業は衣料機能性素材などの販売が好調。複合成形材料事業ほかでは、北米での自動車向け部品の販売が好調だった。いずれの事業も原料価格上昇の影響を受けた。ヘルスケア領域の売上高は同13億円増の1201億円、営業利益は同8億円減の313億円だった。

 通期の連結業績予想については、繊維・製品事業と電池部材分野のセパレータの販売量が、前回見通しに対し未達となることから、第2四半期業績発表時点で修正した予想を下方修正した。売上高は前期比7%増の8900億円、営業利益は同14%減の600億円、経常利益は同9%減の620億円、純利益は同1%増の460億円を見込んでいる。

帝人 熱可塑性炭素繊維中間材をボーイング社へ供給開始

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2019年2月1日

 帝人は31日、熱可塑性樹脂を使用した一方向性プリプレグテープ「テナックス TPUD」が、ボーイング社の認定を受け、航空機の一次構造材向けに供給を開始すると発表した。

テナックス TPUD
テナックス TPUD

 同社は、2016年にボーイング社との間で炭素繊維中間材料の材料認定契約を締結し、供給に向けて共同開発を進めてきた。

 今回、ボーイング社への供給を開始するテナックス TPUDは、熱可塑性樹脂を母材としたテープ状のプリプレグ(炭素繊維シートに樹脂を染み込ませたもの)で、耐熱性や耐衝撃性、耐疲労特性などに優れているほか、成形時間の大幅な短縮が可能で、製造工程におけるコスト効率の向上に大きく寄与する。

 今回の認定取得により、ボーイング社が今後就航を予定している次世代航空機への本格採用を見込み、今後2年以内に、ボーイング社指定の航空機部材メーカー向けに同製品の供給を開始する。

 帝人は炭素繊維事業の拡大に向け、航空機用途を注力分野に設定。高強度高弾性率炭素繊維や熱可塑性樹脂を使用した一方向性プリプレグテープのほか、炭素繊維強化熱可塑性樹脂積層板、熱硬化性プリプレグ、一方向に並べた炭素繊維の束を化学繊維糸で縫いつけたシートであるノンクリンプファブリックなど、グローバル市場で川上から川下までの用途開発を強力に推進している。

 今回の認定を皮切りに、航空機向け炭素繊維製品のマーケットリーダーとしてソリューション提案力を一層強化し、2030年ごろまでに航空機用途で年間900万ドル以上の売上を目指していく。

帝人 航空機向け炭素繊維強化 英社への供給期間を延長

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2019年1月29日

 帝人は28日、英ボンバルディア・エアロストラクチャーズ・アンド・エンジニアリング・サービスのエアバスA220向けの、炭素繊維「テナックス」の供給契約を延長したと発表した。

ボンバルディア社の翼部材製造工程
ボンバルディア社の翼部材製造工程

 両社は2010年に「テナックス」の供給契約を締結し、主翼やセンターウィングボックス(翼胴結合部)、尾翼などの構造材向けの指定原糸として供給してきた。新たな供給契約の締結により、契約期間は2025年まで延長されることになる。

 帝人は炭素繊維事業の拡大に向け、航空機用途を注力分野の一つとしている。高強度高弾性率炭素繊維をはじめ、熱可塑性樹脂を使用した一方向性プリプレグテープ、炭素繊維強化熱可塑性樹脂積層板、熱硬化性プリプレグ、一方向に並べた炭素繊維の束を化学繊維糸で縫い付けたシートのノンクリンプファブリックなど、幅広い製品展開により、強力に用途開発を推進している。

 今回の契約延長を機に、航空機向け炭素繊維製品のマーケットリーダーとしてソリューション提案力を一層強化し、2030年ごろまでに、航空機用途で年間9億米ドル以上の売上を目指す。

帝人 複合成形材料事業の中国展開を強化、新工場建設へ

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2019年1月15日

 帝人は11日、帝人グループの米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)の中国合弁であるCSPヴィクトール社(中国・唐山市)が、同市に続き、常州市の武進国際ハイテク工業区内に、第2の工場を新設すると発表した。

 CSPは軽量複合材料製品の開発・生産・販売を手掛けている。常州市は長江デルタ地帯にあり、GMやフォルクスワーゲン、ランドローバーといった欧米の自動車メーカーだけでなく、CATL、江鈴汽車、上海汽車集団、吉利汽車、奇瑞汽車、北京汽車(常州)といった中国の有力自動車メーカーが集積した上海近郊に位置する。

 CSPヴィクトール社は、中国の鉄道向け部品とモジュールメーカーであるヴィクトール社とCSPの合弁で2014年に設立され、15年から唐山市で自動車向けコンポジット製品と、その中間材料であるGF‐SMCを製造している。GF‐SMCとは、熱硬化性樹脂をガラス繊維に含浸させ、シート状にした成形材料のこと。

 第2工場の新設により、中国国内で急速な伸びが期待されている電気自動車向けのバッテリーボックスや、自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観を特徴とした外板部品と、ピックアップトラック向け部品などを含む多様な製品を中国市場へ積極的に投入していく。

 帝人グループは中期経営計画で「自動車向け複合材料事業の展開」を発展戦略の1つとして掲げており、今後も複合化を強みとした技術開発にいっそう注力し、車体軽量化のソリューションプロバイダーとしてグローバルに事業を展開していく方針だ。

 

《化学企業トップ年頭所感》 帝人 鈴木純社長

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2019年1月9日

 私たち企業には、テクノロジーを活用し、これまでの常識を打ち破る新たな価値を創造していくことが求められている。その鍵となるのは「人間らしさ(Humanness)」の追求だ。未来の社会の変化を先取りし、事業機会を取り込むためにも、「人間らしさ」を中心に据えたものの見方、考え方を意識してほしい。

 昨年、100周年記念プロジェクトの一環として「THINK HUMAN PROJECT」がスタートし、9つのテーマで、未来の社会、未来の技術、未来の人々にとってのソリューションについて考察した。私たちに何ができるか、さらに深く考え、一つでも多くのアイデアが新たな事業機会の創出につながっていくことを期待している。

 中期経営計画の基本となるのは、「成長戦略」による基礎収益力の強化と「発展戦略」による新規コアビジネスの確立である。2025年近傍を見据えると、新たにコアとなる事業を確立し、利益貢献できるよう育成できなければ、次の100年の飛躍という目標から遠ざかってしまう。事業ポートフォリオの変革は平時から常に行っていくものであり、次の100年への礎をしっかり築いていきたい。

 次の100年への飛躍に向けて新たな一歩を踏み出すにあたり、企業理念に立ち返り、思いを語りたい。①「Quality of Life」。帝人グループは、社会や人々に新たな価値を提供し、人々が豊かな生活を享受できるよう貢献を続けてきた。ヒトを中心に考え抜いた考察を元に社会や人々を幸せにする未来を想像しながら、大きな夢を描いていこう。

 ②「社会と共に成長します」。企業の存在意義は、社会の持続的成長に貢献することにある。自分たちに何ができるかを考え、社会貢献につながるポジティブな面を伸ばしながら、事業活動を通じて生じるネガティブな面を極小化することに取り組み、社会と共に生き、共に成長していきたい。

 ③「社員と共に成長します」。会社も社員も、日々進化し、少しでも昨日より成長することが重要である。一人ひとりが好奇心や外に開かれた心を持ち、会社という「場」を使って、活き活きと自分の能力を存分に発揮できる自己実現につながる挑戦をしてほしい。最後に、次の百年への飛躍に向けて、大きな夢と誇りを持ち、次の世代、未来の帝人グループ社員のために、共に挑戦を続けていこう。

帝人 アラミド繊維をシャープ製スマホ背面パネルが採用

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2018年12月27日

 帝人はこのほど、パラ系アラミド繊維「テクノーラブラック」が、シャープのスマートフォン「AQUOS zero」の背面パネルに採用されたと発表した。

 「テクノーラ」は、同一重量の鉄の8倍の強度をもち、耐衝撃性、耐熱性にも優れる、帝人が開発した共重合タイプのパラ系アラミド繊維。ロープ、エンジンのタイミングベルト、競技用車両のシートやボンネット、航空宇宙用途などに幅広く採用されている。

 テクノーラブラックはテクノーラの紡糸段階で顔料を混練させたもので、耐候性の高さから、消防服やヨットセールなど屋外で使用される製品への採用が進んでいる。

 アラミド繊維を複合した強化プラスチックは、軽量で絶縁性があり誘電率が低いため電波障害が起こりにくい。この特長から、高速通信化が進むモバイルデバイスへの貢献が期待されている。特に、テクノーラブラックはアラミド繊維の特性に加え、対候性と意匠性にも優れている点が評価され今回の採用となった。

 同社は今後も、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンの実現のため、多彩な高機能素材を活用し、さまざまな分野に向けてソリューションを提供していく考え。

 なお、AQUOS zeroは今月21日に発売されたフラッグシップモデル。背面パネルにテクノーラブラック、ディスプレイに有機EL、筐体フレームにマグネシウム合金を採用している。素材にこだわり、軽量化(約146グラム)と高強度を実現した。

帝人 ヘルスケアやモビリティで独自の方向性打ち出す

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2018年12月13日

 帝人は、ヘルスケアやモビリティなどで独自の方向性を打ち出す。ヘルスケアについては「ニュートラシューティカル」という造語により、新しいカテゴリーを設定。モビリティではヘルスケアや環境などの観点から「人が活きるモビリティ」とは何かを探り、その具体的な在り方として「ロースピードビークル」の取り組みを開始した。

 12、13日に東京・渋谷のヒカリエで開催の「THE NEXT 100 THINK HUMAN EXHIBITION」で紹介している。

プレゼンテーションを行う鈴木社長
プレゼンテーションを行う鈴木社長

 ニュートラシューティカルは明確な科学的根拠に基づき、健康の維持・増進や疾患予防に貢献するもののこと。展示会ではその例として、老化と寿命の制御に重要な役割をもつサーチュインというタンパク質を活性化させる、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)の研究を紹介した。

 サーチュインを脳内だけで増えるように遺伝子操作したマウスを作って調べたところ、メスで16%、オスで9%、集団として寿命が延びることが確認された。人間もNMNを効率よく摂取すれば、寿命が延ばせる可能性がある。NMNは

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