エア・ウォーター 環境対応ビジネスへの展開を強化

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2021年7月13日

 エア・ウォーターはこのほど、バイオ由来化学品の事業創出に向け地球環境産業技術研究機構(RITE)発のバイオベンチャーGreen Earth Institute(GEI、東京都文京区)へ2億円出資した。「地球、社会との共生による循環型社会の実現」に向け、SDGsに関連した事業開発に大きく貢献できるとの判断だ。

 GEIは「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念に掲げ、食料や飼料と競合しない「植物の茎・葉」や「農業・食品工場残渣」などの非可食性バイオマスも原料とするグリーン化学品やバイオ燃料の開発・事業化を、国内外企業と連携して行っている。同社の「バイオリファイナリー技術」は脱炭素化・資源循環型社会において、人と自然の共生による地球資源の再生と地球環境の保全に貢献できる化学品生産技術・プロセス技術だ。

 エア・ウォーターは今後、GEIとの連携を深め、既に同社グループの川崎化成工業で事業化している生分解性樹脂原料の石油由来のコハク酸に加え、バイオ由来の「バイオコハク酸」の開発を進めていくなど、環境問題対応素材の開発やケミカルリサイクルなど、環境ビジネスへの進出を図っていく。また、産業、医療、農業・食品事業との連携も深め、スマート社会・循環型社会に対応した事業への変革を加速していく考えだ。

エア・ウォーター 未利用バイオガスをLNG代替で活用

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2021年7月7日

 エア・ウォーターはこのほど、家畜ふん尿由来のバイオガスに含まれるメタンを液化バイオメタン(LBM)に加工し、液化天然ガス(LNG)の代替燃料として牛乳工場へ供給するサプライチェーンモデルの構築と実証を北海道十勝地方で開始すると発表した。

 この「未利用バイオガスを活用した液化バイオメタン地域サプライチェーンモデル実証事業」は、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の優先テーマとして採択。メタン純度99%以上のLBMを年間360t製造する計画で、全量がLNGの代替で消費されるとサプライチェーン全体でのCO2削減量は年間7740t、温室効果ガス(GHG)削減率は60%以上になる。

 バイオガスはメタン発酵設備で家畜ふん尿から取り出され、メタン約60%とCO2約40%からなる。そのメタンを分離・液化したものがLBMで、熱量は一般的LNGの90%程度。北海道でのバイオメタンの潜在製造能力は年間約30万tで、北海道の工業用LNGの年間消費量約50%に相当する。現在バイオガスは主に酪農家で製造されて自家発電などに使われるが、ガス導管網や余剰電力売電用の送電網などのインフラ整備が限られるため、バイオガスの製造・活用は限定的だ。

 今回、大樹町の酪農家で作ったバイオガスを捕集し、帯広市のセンター工場でLBMに加工し、十勝地方の牛乳工場でLNG代替燃料として使用する、地域循環型のサプライチェーンを構築する。なお、バイオガスからのLBM製造は国内初の取り組みだ。将来的には、近隣工場のボイラーやLNGトラック、ロケット用燃料として活用し、LBM製造時に発生するCO2はドライアイスなどに加工・販売することも検討している。

 LBMは持続可能でクリーンな国産エネルギーで、製造・供給には既存のLNGインフラが活用でき、大規模な設備投資なしでサプライチェーンの脱炭素化に貢献できる。下水処理場や食品残渣から発生するバイオガスにも適用でき、国内全域や海外への展開も可能だ。脱炭素社会の進展を見据え、LBMを新たなエネルギー製品と捉え、早期の社会実装を目指し技術開発を進めていく考えだ。

エア・ウォーターなど 小名浜バイオマス発電所運転開始

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2021年5月25日

 エア・ウォーターと中国電力の共同出資会社エア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜はこのほど、小名浜バイオマス発電所の営業運転を開始した。バイオマス専焼発電所として国内最大級の規模と最高レベルの発電効率を誇る。

 東日本大震災で製塩事業の操業停止を余儀なくされた日本海水小名浜工場跡地を有効活用するための事業で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)を活用し、木質ペレットやPKS(搾油後のパーム椰子種の殻)を燃料として年間約5億kWhの発電を予定している。

 エア・ウォーター&エネルギア・パワー小名浜は、再生可能エネルギー発電に取り組むことで、年間約43万tのCO2削減効果による地球温暖化防止への貢献はもとより、福島県が目標とする「県内エネルギー需要量の100%相当量を再生可能エネルギーで生み出す」ことに寄与する。さらに、東日本大震災の影響を受けたいわき市の地域活性化の一助となることを目指している。

エア・ウォーター 小規模農家用乾式メタン発酵システム

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2020年12月22日

 エア・ウォーターはこのほど、グループのエア・ウォーター北海道(北海道札幌市)が北土開発(北海道芽室町)、帯広畜産大学と共同で国内初の小規模酪農家向け乾式メタン発酵プラント(バイオガスプラント)を開発したと発表した。乳牛飼養百頭前後の小規模酪農家に適したバイオガスプラントの実用化に取り組む新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業「小規模酪農家向けエネルギー自給型乾式メタン発酵システムの開発」の一環。

 小規模酪農家は一般的に乳牛を「つなぎ飼い」し、麦わらなどの長繊維が混合した半固形状ふん尿が排出され、メタン発酵には適さない。現在北海道で稼働する約100基のバイオガスプラントの多くは液状ふん尿を原料とする湿式メタン発酵プラントであり、半固体状ふん尿の処理には高額な大型設備を必要とする。そのためバイオガスプラントの導入は資金力のある大・中規模農家に限られ、約75%を占める小規模農家での導入はハードルが高い。また近年、濃厚飼料の給餌量増加や堆肥化用の水分調整資材の高騰で、家畜のふん尿による完熟堆肥化が困難になり、メタン発酵処理に切り替える動きも背景にある。

 今回開発した「乾式メタン発酵システム」は原料自動投入装置、原料前処理槽、高温乾式メタン発酵槽、固液分離装置、ガス発電機(25kW)、燃料電池から成り、1日の処理能力は6.2t。高温発酵(約50℃)によりメタン発酵効率が30%向上した。現在バイオガス(メタン約58%)の多くをガス発電機に供給し、ほぼ24時間、電気と温水を牛舎に安定供給している。

 余剰のバイオガスは高純度メタンガス(98%以上)に精製し、さらに水素に改質し、燃料電池から牛舎や住宅に電気を供給する。蓄電池を利用したエネルギーの最適化や再配分、長期連続運転による設備の安定性や製造コストの低減などを検証する予定だ。なお、メタン発酵の副産物である消化液や固形残渣は、酪農家の代替肥料や再生敷料として活用する。

 今後、このシステムを小規模酪農家を中心に提案し、系統電力に頼らない自給自足型のエネルギー分散型基地として普及させ、酪農家の営農コストの低減と地産地消型エネルギーの推進、CO2排出量の削減に寄与することを目指す。

エア・ウォーター、宇宙ベンチャーのロケット開発に協力

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2020年11月4日

 エア・ウォーターとエア・ウォーター北海道(北海道札幌市)はこのほど、スペースウォーカー(SPACE WALKER:東京都港区)と北海道大樹町で打ち上げを計画する同社のサブオービタルスペースプレーンの設計・開発・運用での協力関係構築の基本合意書を締結したと発表した。

 スペースウォーカーは東京理科大学発の宇宙ベンチャー企業で「宇宙が、みんなのものになる。」というスローガンの下、飛行機に乗るように自由に宇宙を行き来できる未来を目指している。弾道軌道で高度約100㎞に到達し、有翼飛行で帰還・着陸するサブオービタルスペースプレーンの設計・開発、運航サービスの提供を目的に2017年に設立。現在は技術実証機の設計・開発や、2020年代前半の打ち上げに向け同スペースプレーンの設計・開発を進めている。大樹町では「北海道スペースポート構想」の下、官民一体となり「宇宙のまちづくり」を進め、発射場の整備や滑走路の延伸・新設など航空宇宙産業の形成を推進中だ。

 一方、エア・ウォーターは1970年代から宇宙ロケット開発に携わり、供給設備の納入や大学との研究開発のほか、北海道内トップの産業ガスメーカーとして製造・貯蔵・運搬・使用方法の豊富な知見と技術をもつ。搭載予定のLOX(液体酸素)/メタンエンジンでの燃料メタン(LNG)などの産業ガスの利用を検討する。

 今後、ロケット打ち上げ時の液体酸素やメタンなどの供給、バイオ液化メタンのロケット燃料での実証試験や地上設備に関する検討を共同で行う。宇宙産業という先進技術への挑戦を通じて、北海道の未来に貢献していく考えだ。

エア・ウォーター ごみ焼却炉CO2回収設備の開発着手

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2020年10月14日

 エア・ウォーターはこのほど、環境省の実証事業「清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業」で、ごみ焼却炉排ガスからCO2を回収する商用規模の設備の開発に着手した。清掃工場から回収したCO2のメタネーションによるエネルギー資源化は世界初の取り組み。代表事業者である日立造船からCO2の分離・回収に係る事業範囲の再委託を受け、2018年度の事業開始当初から参画し、設備の設計・製作・実証を担当してきた。

 神奈川県小田原市環境事業センターでの小規模実証試験で所定のCO2純度・回収率を達成したため、今年から規模を拡大する。設備仕様はCO2純度80%以上、回収量125N㎥/hの予定。

 同社グループは長年、産業ガス事業で培ってきたガステクノロジーや多彩な事業領域に対応する技術開発を深化させ、脱炭素社会に対応し環境負荷の低減に貢献する取り組みを進めている。

 

エア・ウォーターなど 家畜由来水素で土木学会環境賞を受賞

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2020年7月8日

 エア・ウォーター、鹿島建設、日鉄パイプライン&エンジニアリング、日本エアープロダクツの4社が共同で実施している「家畜ふん尿由来低炭素水素を活用した水素サプライチェーン実証事業」がこのほど、2019年度の「土木学会環境賞(Ⅱグループ)」を受賞した。同事業は、環境省の委託事業「地域連携・低炭素水素技術実証事業」として、2015年度から実施している。

 北海道河東郡鹿追町に家畜バイオマス由来の水素製造供給施設「しかおい水素ファーム」を設置し、バイオガスの新用途としての水素利用の有効性を実証した。家畜ふん尿による環境汚染や廃棄物の課題解決と、エネルギー使用によるCO2排出削減など、酪農地域での水素エネルギー適応性を明らかにした点が評価された。家畜ふん尿のメタン発酵施設「鹿追町環境保全センター中鹿追バイオガスプラント」で製造するバイオガスを用いて、同センター内の「しかおい水素ファーム」で水素ガスを製造している(設備能力は約70N㎥/h)。

 水素は、センター内の定置型水素ステーションで燃料電池(FC)自動車・フォークリフトのほか、純水素型燃料電池によるセンター内のチョウザメ飼育施設のエアレーション電源・水温保持熱源としても利用しており、昨年9月までは、畜産農家や帯広市内の観光施設にも水素を運搬し、電気と温水を供給していた。

 今後、水素サプライチェーンの他地域への展開に向け、水素運搬・貯蔵、災害時の活用など、さらなる課題解決のために実証期間を2年間延長(2021年度まで)する予定。帯広市内、鹿追町内の農業倉庫でのFCフォークリフトへの水素供給のほか、帯広市内で非常時電源にも対応した水素吸蔵合金・FC利用システムの実証を行う。製造・利用一貫の水素サプライチェーンを構築し、地産地消の水素エネルギー社会の実現に貢献していく考えだ。

エア・ウォーター 歯髄幹細胞による再生医療事業に参入

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2020年7月7日

 エア・ウォーターはこのほど、歯髄関連事業を企画・推進するグループ会社のアエラスバイオ社(兵庫県神戸市)は、同社と連携する「RD歯科クリニック」の再生医療等提供計画が厚生労働省で受理されたことに伴い、歯髄幹細胞を用いた再生医療を開始したと発表した。

 歯髄再生治療は、自らの不用歯の歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯で神経を喪失した歯に移植して歯髄を再生する治療で、世界初の実用化となる。現在、ひどい虫歯には抜髄治療が施され、国内で年間600万症例ほど行われているが、歯が折れやすくなり、細菌防御反応や歯髄組織の修復機能も失う可能性が高まる。こうした中、同再生治療で神経や血管を再生し健康な歯を取り戻せるため、QOL向上や健康寿命の延伸が期待される。

 同社医療関連事業は、医療用ガスや病院設備などの「高度医療分野」の強化に加え、歯科や衛生材料などの「くらしの医療分野」への拡大にも注力。2011年に歯科関連事業に参入、18年にアエラスバイオ社を設立して歯髄再生治療の事業化に着手、昨年「エア・ウォーター国際くらしの医療館・神戸」内に歯髄幹細胞の培養・加工・保存設備を整え、安全性や有効性の検証を進めてきた。

 今回一連の治療システムが完成し、歯髄再生治療が可能となった。「RD歯科クリニック」での治療は抜歯~培養~移植~検査から成り、1回の費用は50~70万円程度、期間は約1年である。

 今後アエラスバイオ社は、エア・ウォーター関連会社の歯愛メディカルの歯科医院向け通信販売ネットワークを活用して同治療の普及を進め、医師向けの講習会や技術支援を行う予定。

 今秋には、培養した歯髄幹細胞を長期間冷凍保存する「歯髄幹細胞バンク事業」も立ち上げ、これら関連事業も合せて3年後には年間売上高10億円規模を目指す。また、乳歯や二親等以内の親族の歯から採取した幹細胞による治療も実現も目指す。さらに、歯髄幹細胞は血管や神経組織への誘導能力が高いことから、脳梗塞、脊髄損傷、血管障害など歯科関連以外の再生医療への適用も視野に入れ、引き続き研究・開発に取り組んでいく考えだ。

エア・ウォーター 熱膨張性黒鉛事業、合弁会社化で成長

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2020年6月2日

 エア・ウォーターはこのほど、これまで単独で事業運営を行ってきた熱膨張性黒鉛(TEG)事業を、同社と東洋炭素および南海化学の3社の合弁事業とするために合弁会社を設立した。

 TEGは、天然の鱗片状黒鉛を硫酸によって層間化合物処理することで熱膨張特性を与えた特殊黒鉛製品であり、国内では唯一、エア・ウォーターが製造を行っている。加熱によって膨張することから、様々な形状に圧縮成形することが容易であり、熱や腐食に強く、気密性の高い素材として、自動車用エンジンガスケットや化学プラント用パッキンなどのシール部品材料として使用されている。

 また、膨張前のTEGをゴムや樹脂などの可燃性物質に混ぜておくと、火災時に膨張して断熱層を形成し、燃焼が広がるのを抑制する効果があることから、建築用断熱材や航空機用シートの難燃剤としても使用されている。

 同社は日本製鉄和歌山製鉄所構内でTEGを製造しているが、生産体制の効率化と新用途の開発が事業成長の課題であった。こうした中、製造技術とノウハウを持つエア・ウォーター、TEGの最大ユーザーであり豊富な技術とノウハウを持つ東洋炭素、製造に不可欠な廃酸リサイクル処理設備を持つ南海化学の3社が合弁会社を設立。緊密に連携することによって、これらの課題を解決し、TEG事業のさらなる成長を図る。

 今後、合弁新会社は、2022年4月の完成を目途に和歌山市内に新工場を建設する予定で、コスト競争力と安定供給力を備えた生産体制を構築し、放熱材などの電子材料分野をはじめとした用途開発に取り組む考えだ。