NEDOなど 持続可能な代替航空燃料を定期便に供給

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2021年7月1日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などはこのほど、木くずや微細藻類から製造したバイオジェット燃料を、持続可能な代替航空燃料(SAF)として定期便に供給したと発表した。

SAF実証事業 バイオ燃料一貫製造プロセス
SAF実証事業 バイオ燃料一貫製造プロセス

 国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は、温室効果ガスの排出量削減による地球温暖化抑止対策を共通のテーマとして掲げており、持続可能なSAFの導入は有効な手段の1つとして位置づけられている。

 こうした中、NEDOはSAFの商用化を視野に、原料となる木くずの調達および微細藻類の培養から純バイオジェット燃料まで一貫製造する体制の実証と、航空機への給油までを含めたサプライチェーンを具体化させることを目指し、2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業」を推進。

 固体の木質セルロースをガス化した後に液体燃料を合成するガス化FT合成技術では、JERAの施設内に建設したパイロットプラントで原料に木くずを使用し、SAFを一貫製造する実証試験を実施。JERAが原料調達とオペレーション、三菱パワーが原料のガス化、東洋エンジニアリングが生成ガスの液体炭化水素燃料化(FT合成)・蒸留と混合以後のサプライチェーン構築を担当し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がSAFの性能特性試験を実施した。

 一方、微細藻類由来の油を精製する水素化精製技術では、IHIが鹿児島の既存施設とタイに新設したパイロット屋外培養施設を使い、大規模培養からSAF製造までの一貫製造技術の確立と以後のサプライチェーン構築に取り組んだ。いずれも、SAFの国際規格「ASTM D7566」への適合を確認している。これらの成果を踏まえ、両技術で完成したSAFを羽田空港出発の定期便に供給した。

 NEDOは引き続きSAFの大規模安定技術や製造コスト低減に向けた効率的な製造プロセスの確立を目指して、SAF生産研究開発事業を実施していく。これにより2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、航空分野の温室効果ガスの排出量削減に貢献する。

NEDO バイオジェット燃料の飛行検査で普及に一歩

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2021年6月21日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、助成先のユーグレナが製造したバイオジェット燃料を国土交通省航空局の飛行検査機に提供し、6月4日に東京国際空港(羽田空港)から中部国際空港まで飛行する飛行検査業務を行ったと発表した。

 この燃料は、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)由来の油脂と使用済み食用油(廃食油)から製造され、4月にバイオジェット燃料国際規格「ASTM D7566」の適合試験に合格。さらに既存の石油系ジェット燃料と混合したものも合格している。

 NEDOは2030年頃のバイオジェット燃料の商用化を目指し、2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業」を進めている。2020年度からはバイオジェット燃料の原料調達から航空機への搭載までのサプライチェーンの構築に向け、ユーグレナが「油脂系プロセスによるバイオジェット燃料商業サプライチェーンの構築と製造原価低減」事業を開始。神奈川県横浜市に米国で開発されたバイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術(BICプロセス)によるバイオ燃料製造実証プラントを建設し、実証試験を行っている。

 今後も生産技術の拡張や製造コスト低減などの課題解決に取り組み、バイオジェット燃料の普及に道筋をつけ、航空分野の温室効果ガスの排出量削減に貢献していく考えだ。

富士石油 バイオジェット燃料の製造で共同研究締結

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2020年12月9日

 富士石油はこのほど、環境エネルギー(広島県福山市)およびHiBD研究所(福岡県北九州市)とバイオジェット燃料の製造に関する共同研究契約を締結したと発表した。

 持続可能な社会の構築に向けて脱炭素化の議論が行われる中、航空輸送分野でもCO2排出量削減の取り組みが進められている。国際民間航空機関(ICAO)は「国際民間航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)」を導入し、来年以降に国際線を運航する航空会社が、決められた排出量を超えてCO2を排出した場合、排出枠を購入しオフセットすることが求められる。こうした中、燃焼しても大気中のCO2総量を増加させないバイオジェット燃料は、CO2排出削減の有効な手段と期待され、導入の気運が世界的に高まっている。

 環境エネルギーとHiBD研究所は、2018年の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」でバイオジェット燃料の製造技術の開発に取り組んでいる。今回の共同研究契約の締結により、富士石油グループの石油精製の知見を活用しながら連携して技術開発を行う。

 同社グループは「事業を通じて社会に貢献しながら持続的な成長を目指す企業であるべき」との信念の下、低炭素社会への貢献に向け積極的に取り組んでいく考えだ。

NEDO バイオジェット燃料普及の研究開発6件を始動

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2020年10月19日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、バイオジェット燃料の普及に向けた市場形成や社会実装のためのサプライチェーン構築とカーボンリサイクルのための原料基盤技術を強化する研究開発に着手すると発表した。事業化スキームや経済性を検証し、バイオジェット燃料の市場形成に向けたサプライチェーン構築を促進する。

 航空業界にとってCO2排出量削減による地球温暖化抑止対策は喫緊の課題だ。バイオマス由来のバイオジェット燃料導入は実現可能性が高く、海外では廃食用油由来のバイオジェット燃料が実用・商用化され、国内でも今年中のバイオジェット燃料の国内定期便デモフライトを予定するなど、事業化の動きが加速している。

 こうした中、NEDOは2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」を実施しており、2030年ごろの商用化を目標に一貫製造技術の確立を目指した研究開発に着手する。

 実証を通じたサプライチェーンモデルの構築では、製造技術ごとに「油脂原料からの水素化・脱酸素化処理」(ユーグレナ)と「短繊維パルプ由来エタノールの脱水重合」(Biomaterial in Tokyo、三友プラントサービス)の一貫製造技術の確立と、原料調達・製品供給などの事業スキームや経済性を検証する。

 微細藻類基盤技術開発では、特長の異なる大量培養方法「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養」(電源開発)、「熱帯気候・屋外環境下での発電所排気ガスを利用した大規模微細藻類培養」(ちとせ研究所)、「微細藻バイオマスのカスケード利用」(ユーグレナ、デンソー、伊藤忠商事、三菱ケミカル)の実証と生産コスト低減や副生物の有効利用にも取り組む。また微細藻類研究拠点の整備と商用化の課題解決・標準化を図る「微細藻類研究拠点および基盤技術の整備・開発」(日本微細藻類技術協会)も採択した。事業期間は2024年度までで、今年度予算は49.5億円。

 同事業を通じてバイオジェット燃料の普及に道筋をつけ、航空分野での温室効果ガスの排出量削減に貢献するとしている。

JXTGエネルギー NEDOの委託事業にバイオジェット燃料が採択

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2019年11月14日

 JXTGエネルギーはこのほど、同社が取り組むバイオジェット燃料の製造実証テーマ2件がNEDOの2019年度の委託事業に採択されたと発表した。

 航空需要は今後大幅に拡大すると予測されていることから、地球温暖化対策は航空業界においても喫緊の課題となっており、バイオジェット燃料はCO2排出量の削減の切り札として世界的に導入の機運が高まっている。

 今回、委託事業に採択された2件のテーマは、バイオジェット燃料の一貫製造技術の確立に加え、サプライチェーン全体での事業性評価を行い、202後年以降の商業化を目指すもの。

 採択テーマは、①アルコールからジェット合成(ATJ)技術を活用した本邦バイオジェット燃料製造事業の事業性評価②バイオジェット燃料製造に最適なガス化・FT(フィッシャー・ トロプシュ)合成による一貫製造プロセス・サプライチェーン構築の事業性評価の2件となっている。

 同社は、JXTGグループ行動基準に定める「環境保全」と「価値ある商品・サービスの提供」に則り、日本最大のジェット燃料のサプライヤーとして、バイオジェット燃料の開発を通じて低炭素・循環型社会の形成に貢献していく考えだ。

 

NEDO バイオジェット燃料製品化で昭和シェルと連携

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2018年12月7日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、純バイオジェット燃料をバイオジェット燃料として最終製品にするために、NEDO事業実施者と昭和シェル石油が連携を開始したと発表した。

 同事業は、純バイオジェット燃料製造の技術開発を進めるもので、三菱日立パワーシステムズ、中部電力、東洋エンジニアリング、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、IHIの5者が参画。今回の連携により、2030年頃のバイオジェット燃料商用化に向けた技術開発を目指す。昭和シェルは今後、純バイオジェット燃料と従来燃料の混合設備の仕様や運転方法、出荷体制などについて検討を行っていく。

 地球温暖化問題などを踏まえ、石油に代わる新しい燃料として、バイオジェット燃料の市場規模拡大が予測され、CO2排出削減効果などが期待できるバイオジェット燃料の製造技術開発が必須となっている。

 そこでNEDOは、2つのテーマで、バイオマスから純バイオジェット燃料生産までの安定的な一貫製造技術開発を行っている。一つは、微細藻類由来による技術開発。現在タイで大規模な培養池を設置し、高速で増殖する微細藻類が生成する藻油からの燃料製造プロセスの技術開発を進めている。

 もう一方は、セルロース系バイオマスを原料とする技術開発で、本年内に国内でガス化・液化技術を用いた実証設備の建設を開始する。両テーマとも、2019年度には純バイオジェット燃料の製造を開始する予定だ。 

 純バイオジェット燃料を航空機に搭載するためには、国際品質規格(ASTM International)などに適合することが必須となる。純バイオジェット燃料の品質が規格(ASTM D7566)に適合していることを検証し、さらに同規格に従って従来の燃料である石油系ジェット燃料と混合後、改めて従来燃料の規格(ASTM D1655)との適合性を検証する。これらの過程を経て、初めて搭載可能なバイオジェット燃料となる。

 また、バイオジェット燃料の製品化のためには、様々な課題の抽出とその解決が必要となる。具体的には、純バイオジェット燃料と従来燃料の混合設備の仕様とその運転方法、混合後の品質検査体制、出荷体制などの実現が不可欠となる。