新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、工場や火力発電所から排出されたCO2を活用地・貯留地まで低コストで大量・安全に輸送するための研究開発と実証事業に着手すると発表した。2030年頃のCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の社会実装を視野に入れ、年間100万t規模のCO2排出地から貯留・活用地への長距離・大量輸送と低コスト化技術の確立を目指す。
CCUSやカーボンリサイクルは、脱炭素社会を実現する技術とし注目を集めているが、CO2排出地と貯留・活用地が離れていることが多く、CO2の安全で低コストの輸送技術の確立が普及に向けた課題となっている。
今回、最適な温度・圧力条件で液化したCO2の出荷・輸送・受け入れまでの一貫輸送システムの確立に向けた研究開発と実証を行う。研究開発項目は「液化CO2の船舶輸送技術を確立するための研究開発」「年間1万t規模のCO2船舶輸送実証試験」「CCUSを目的とした船舶輸送の事業化調査」で、委託予定先は日本CCS調査、エンジニアリング協会、伊藤忠商事と日本製鉄。事業期間は今年度からの6年間、予算は160億円の予定だ。
同事業では、まず長距離・大量輸送に適したCO2の液化・貯蔵システムと、輸送船舶の研究開発や設備機器の設計に必要な検討を行った上、2023年度末頃からは、京都府舞鶴市の石炭火力発電所で排出されたCO2を出荷基地で液化し、船舶での輸送を経て、北海道苫小牧市の基地で受け入れる一貫輸送システムの運用と操業に必要な技術を検証する。
また、安全規格や設計基準の検討に必要な基礎要件を実証試験データから収集・分析し、液化CO2の長距離・大量輸送に求められる国際的なルール形成にも取り組む。さらに、CO2輸送に関する実効性あるビジネスモデルの検討も進める。
NEDOは安全で低コストの船舶によるCO2大量輸送技術を確立し、CCUSの社会実装と2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していく考えだ。