日本触媒は24日、データサイエンス(DS)を駆使して、吸収量や吸収速度などの機能を従来比で10%以上高めた新しい高吸水性樹脂(SAP)の開発に成功したと発表した。
SAPの主用途である紙おむつは、新興国では子供向け、先進国では大人向けを中心に需要が世界で拡大。紙おむつに求められる、ドライ感、もれない、かぶれない、コンパクトである、といった性能の実現にはSAPが重要な役割を果たしている。
同社は1985年にSAPを製品化して以来、継続的に新製品を開発してきたが、近年の多様化、高度化するニーズに対応できる研究開発、商業化のスピードアップが課題となっていた。そのため、経験と勘に依存することの多かったSAPの研究開発にDSを導入し、顧客ニーズを的確に反映した製品設計から商業化までを迅速に行い、顧客へ提案する体制を整備した。現在では全てこの手法で新製品の開発を行っている。
SAPには、体重が加わった想定での加圧下および無加圧下の吸収量、吸収速度、液の拡散状態などの性能向上が求められる。これに対し同社は、これまで蓄積してきた紙おむつ性能とSAP性能の相関性や合成時の挙動解析、SAPの表面制御技術をデジタル情報化し、これにディープラーニング(機械学習)やインフォマティクスなどDSを駆使することで、性能を10~20%アップすることに成功。開発期間も従来の約半分程度に短縮された。
姫路製造所をはじめ世界各地の生産拠点でこの新規SAPを生産し、2025年には全体の4割に高めていく計画。同社は、新規SAPを世界で展開することで、おむつ使用者の様々なニーズに応えていく考えだ。なお、今年6月にデータサイエンス&インフォマティクス推進室を発足。SAPをはじめとして、洗剤原料、アクリル酸触媒など、様々な製品分野でDSの活用を推進している。