BASFの4-6月期 コロナ禍により需要減で減収減益

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2020年8月26日

 BASFはこのほど、2020年第2四半期(4-6月期)の業績を発表した。売上高は127億ユーロ(前年同期比12%減)、特別項目控除前営業利益は2億2600万ユーロ(同77%減)、純利益はマイナス8億7800万ユーロとなった。コロナ禍による経済的影響は強く、自動車産業の需要後退がマイナス影響したが、洗剤・洗浄剤産業と食品産業の需要は安定していた。

 M・ブルーダーミュラー会長は、「コロナ禍は難題だが、変化を促し物事を新しい形で行うチャンスでもある。素早く適応し、社内や顧客とのオンライン・コミュニケーションを積極的に取り入れた。柔軟で意欲的な社員、多様なポートフォリオ、堅固な財務基盤などの強みを足がかりに成長できる」と述べている。

 セグメント別に見ると、ケミカル事業の売上高は18億ユーロ。原材料価格と需要低迷による大幅な製品価格下落で、石油化学品が大幅な減収となった。

 マテリアル事業の売上高は大幅減の21億ユーロ。パフォーマンスマテリアルズは、自動車産業の悪化により大幅に販売量が減少し、消費財や建設関連も販売量が減少した。ソルベイのポリアミド事業統合が売上に寄与した。

 インダストリアル・ソリューション事業は大幅減収の18億ユーロ。パフォーマンスケミカルズは燃料・潤滑油ソリューションと油田用化学品の需要低迷により販売量が減少。ディスパージョン&ピグメントは半導体向けの販売量が増加したものの、他の減少を補えなかった。

 サーフェステクノロジー事業の売上高は、微減の31億ユーロ。自動車需要の低下によりコーティングスが大幅に減少した。ニュートリション&ケア事業の売上高は、微増の16億ユーロ。ニュートリション&ヘルスは大幅増収となり、ケア・ケミカルズは堅調だった。

 アグロソリューション事業の売上高は、微減の18億ユーロ。欧州以外で販売量が増加し価格が上昇した一方で、南米、アフリカ、中東地域での為替のマイナス影響があった。

 2020年通期業績予想については、不透明な状態が続き、経済的推移が読みづらいため具体的発表はなかった。例年の需要動向などから、第3四半期に営業利益の大幅な改善は見込めないと予測している。

BASF JA全農とデジタルプラットフォームで協業

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2020年7月8日

 BASFはこのほど、子会社であるBASFデジタルファーミング社が、AIベースの栽培管理最適化デジタルプラットフォーム「xarvio FIELD MANAGER(ザルビオフィールドマネージャー)」を来年4月に日本で上市することを目指し、JA全農と新たに協業を開始することで合意したと発表した。

 BASFデジタルファーミング社のデジタルプラットフォームは、圃場ごとのリアルタイム情報と、それらの情報をもとにAIが分析した推奨作業を提供することで農業を支援。生産者は、気象データや衛星データから得られる作物の生育段階や病害、雑草のリスクに関するシミュレーションと栽培管理に関する推奨作業により、効率的に最適な栽培管理の意思決定を行うことができる。このAIベースのデジタルプラットフォームは、PC、タブレット、スマートフォンで利用できるようになる予定だ。

 日本の農業は近年、農地の集積が加速している一方で、各圃場は従前どおり小規模なまま分散している。生産者がより大規模経営を目指す場合、分散した圃場を同時に管理することは容易ではなく、農業生産の効率化を阻む要因の1つとなっている。

 「ザルビオフィールドマネージャー」がグローバルに展開するソリューションは、様々な作物モデルが対象。日本では、水稲と大豆に関するソリューションを来年4月から提供する予定で、今年は、全国各地で実証実験を行っている。また、「ザルビオフィールドマネージャー」と、JA全農が開発・運用している営農管理システム「Z‐GIS」が連携することで、利用者のデータ管理機能が強化される。さらに、ドローン、GPSナビゲーション付きのトラクターや収量コンバインなどとの連携も予定している。

 BASFは、「ザルビオフィールドマネージャー」のさらなる開発と対象作物の拡大、および、すでに一般公開している病害虫雑草の画像診断システム「xarvio SCOUTING(ザルビオ スカウティング)」と連携した機能強化を図り、日本での生産者のスマート農業の総合的かつ信頼できるプラットフォームを提供することを目指す。

BASF 技能五輪支援で塗装熟練技術者の育成を推進

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2020年7月3日

 BASFはこのほど、技能五輪国際大会の主催団体であるワールドスキルズ・インターナショナルと新たに2年間のグローバルインダストリーパートナーシップ契約を締結した。同社の世界レベルでの熟練した車体塗装技能者の育成推進の一環として、来年、中国・上海で開催される技能五輪国際大会を支援する。

 技能五輪国際大会は、熟練者の知名度と認知度の向上、経済成長と個人の成功につながる技能の重要性を示すことを使命とし、1950年に創設。世界中の若い技能者が磨き抜かれた技能を競う競技大会で、技術の向上に加え、技能者としての情熱を育むことにも貢献している。上海大会に合わせて、技能に特化した世界初の博物館「世界技能博物館」(上海)がオープンするが、BASFはその常設展もサポートする。

 一方、同社は、独自のグローバルSTAMPPプログラム=塗装業務の簡素化と改善=により、若い車体塗装技能者を対象とした1年間のインターンシップトレーニングを行っている。また、車体塗装分野への参入に必要な技能とビジネス背景を教える複数のトレーニングセンターを展開しており、昨年後半にはメキシコ・トルカにオープンした。

 コーティングス事業本部グローバル戦略マーケティングディレクターのボスケッティ氏は、「サステナビリティ、デジタル化および次世代の車体塗装技能者の多様性に焦点を当てるため、同大会との提携は有意義だ。若者、産業界、政府、教育機関が集まり、この産業の利益を促進し、熟練した車体塗装技能者がこの分野に参入することへの情熱を駆り立てるだろう」と期待を述べている。

BASF 界面活性剤「APG」、生産開始25周年に

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2020年7月2日

 BASFはこのほど、ドイツ・デュッセルドルフ工場にて、アルキルポリグリコシド「APG」の生産開始から25周年を迎えたと発表した。同拠点で操業開始以来、生産量は100万t以上となる。1995年の操業当初はヘンケルが運営していたが、2000年にコグニスに所有権が移管され、2011年にBASFの製品群に加わった。

 「APG」は、再生可能原料であるデンプンと植物油に由来するオールラウンドな界面活性剤で、パーソナルケアやホームケア、さらには業務用や工業用途での幅広い処方に、マイルドさと泡立ちの良さを提供する。

 パーソナルケア向けの「Plantacare(プランタケア)」は100%植物由来製品。糖構造をベースとしたオールラウンドな界面活性剤で、幅広い洗浄用途に適している。ホームケア/業務用洗浄向けの「Glucopon(グルコポン)」は、各種の要求性能に対する多くの問題を解決することができる。界面活性剤としての機能特性と、環境に優しいソリューションに対する様々なニーズを、優れた方法で組み合わせている。工業用途向けの「Agnique(アグニーク)」は、塩との相溶性が高く、農薬の付着を向上させる展着剤として有効。乳化重合用乳化剤「Disponil(ディスポニル)」も、塗料、接着剤、ゴム産業などで優れた環境プロファイルを示す。また各種エコラベルの要件を満たし、重合工程中にホルムアルデヒドを一切放出しない乳化剤として認定されている。

 これらの「APG」関連製品は、洗浄製品や産業工程助剤に対する近年のニーズを満たし、パーソナルケア、ホームケア、業務用・工業用途での最新素材であり続けている。同社はサステナビリティと天然由来原料に対する消費者や顧客の期待を原動力に、市場展開を推し進める考えだ。

BASF 新型コロナへの有効成分を特定、データを無償提供

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2020年7月1日

 BASFはこのほど、新型コロナウイルスに効果のある有効成分の探索支援のため、同社の数百万件に及ぶ化合物質ライブラリーの中から特定した物質データを、学術研究グループに無償提供するとともに、公的研究プロジェクト向けに、有望な分子をスーパーコンピューターにより同定し最適化したと発表した。

 同社は新型コロナウイルス感染症の対策支援活動として、総額約1億ユーロ超を投じた「Helping Hands」キャンペーンを実施。手指消毒液やマスクの寄付にとどまらず、治療用の有効成分を探索する学術研究グループへの支援も行っている。

 世界中の学術機関が、新型コロナウイルスに対する有効成分を迅速に同定するために、他のウイルス性疾患向け承認薬の有効性試験を細胞培養で行っている。しかし、これら化合物の有効性が不十分な可能性があり、活性成分の誘導体を探索する必要がある。同社は、類似化合物を探すために、数百万分子に及ぶ同社ライブラリーからコンピューター支援検索し、150の有望な候補を特定。これら分子の特許請求はせず、学術研究グループが無料で利用できる。

 また、スタートアップのPostEra社の「COVID‐19ムーンショット」プロジェクトによる、ウイルスの必須酵素である主要プロテアーゼの阻害物質(ウイルスの複製防止)の探索にも参画。BASFのスーパーコンピューター「Quriosity」を用いた分子設計とシミュレーションにより、主要プロテアーゼの活性部位へ最も適合する分子20個を見つけ出し、同プロジェクトに無償提供している。

 一方、これら仮想分子の合成可否と実現性は不明であるため、合成可能な化合物の中からの探索検討も行った。同プロジェクトの委託製造会社が原理的に合成できる約12億個の化合物について、主要プロテアーゼ阻害の可能性をスーパーコンピューターで評価。これにより、可能性のある全ての分子を迅速に合成し実験でテストできる。なお、これらの結果は、同プロジェクトを通して公開する予定だ。

 BASFは、150年以上の研究実績と知見、大規模物質ライブラリー、さらにスーパーコンピューターや分子設計用プログラムなどの研究力で有効成分の研究を支援し、コロナウイルス対策に貢献していく考えだ。

 

BASF 生分解性コポリエステルの生産で中国企業と協業

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2020年6月29日

 BASFはこのほど、中国・レッド・アベニュー・ニュー・マテリアルズ・グループに、生分解性脂肪族―芳香族コポリエステル(PBAT)について、BASFの生産技術を用いて生産・販売するライセンスを供与した。

生分解性コポリエステル(PBAT)の中国生産でRed Avenue New Materialsと協力
生分解性コポリエステル(PBAT)

 レッド・アベニュー・ニュー・マテリアルズ・グループは年産6万tのPBAT工場を上海に建設。2022年に稼働する予定で、BASFの生分解性樹脂「ecoflex(エコフレックス)」向けなどポリマー市場に供給を開始する。バイオプラスチック(生分解性プラ+バイオマスプラ)の世界市場は、年率15%の成長が見込まれている。多くの国で新たな法律や規制が施行され、堆肥化可能な素材が包装材や農業用マルチフィルム、袋などに使用されることで、積極的な市場展開が続くと予測されている。

 BASFのグローバル・ビジネス・ユニット、スペシャルティ・ポリマーズ責任者のオリビエ・ウブリッヒ氏は、「当社の『エコフレックス』と革新的素材の生分解性コンパウンド樹脂『ecovio(エコバイオ)』は、この成長市場ですでに大きな役割を果たしている。PBATの増産により、当社の市場での立場がさらに強化される」と述べている。

 「エコバイオ」は「エコフレックス」をコンパウンド材料として配合した生分解性コンパウンド樹脂。一部が植物由来の生分解性樹脂であり、有機性廃棄物袋、ラップフィルム、青果用袋、農業用マルチフィルム、食品包装など、幅広い用途での使用が可能。食品廃棄物の回収だけでなく、農作物の生産性向上、包装・貯蔵時の優位性も認められている。食品廃棄物が減少し、栄養分が大量の堆肥として土壌に還元され、土壌中のプラ蓄積が回避されることにより、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現する。

BASF 知財権保護に成功、HMO類似品は販売停止

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2020年6月23日

 BASFと米Glycosyn(グリコシン)社はこのほど、BASFが特許を持つ過敏性腸症候群(IBS)に有効なヒトミルクオリゴ糖(HMO)製品について、米Amazon.comでの類似品の販売無効化に成功したと発表した。

 BASFは米国特許に基づいてアマゾン模造品対策プログラム(特許中立評価)を申請、知的財産権侵害を申し立てていた。グリコム社(デンマーク)製品「ホリゴス(Holigos)IBS」と「ホリゴスIBSレストア」の削除を求めていたもので、これによりこれら製品のアマゾンでの購入はできなくなった。

 BASFは、ヒト母乳特有のオリゴ糖2,フコシルラクトース(2,‐FL)に関する特許と技術情報を、グリコシン社からライセンス供与されている。グリコシン社は、HMOの開発を専門とする世界有数のテクノロジー企業で、胃腸の健康を改善するHMOの生産と使用に関する知財とノウハウを確立・所有している。BASFは、2,‐FL製品「PREBILAC(プレビラック)」を昨年発売し、消化器系の健康をサポートする栄養補助食品の商品化に、顧客と共に取り組んでいる。また新たな科学的根拠により、2,‐FLが健康的な腸内フローラと免疫調節機能に貢献することも判明。2,‐FLのプレバイオティクス機能はヒトの胃腸の健康をサポートし、消化器系疾患に対する抗炎症剤としても作用する。

 BASFは、「当社は他の企業と個人の知的財産を尊重している。今回の手続きは、当社の知的財産とライセンス供与を受けた知的財産の保護と強化に対する継続的な取り組みの一環」と説明している。

 

BASF プラの循環型ソリューション、共同開発を締結

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2020年6月2日

 BASFはこのほど、セキュリティ・マターズ社(豪州)と、プラスチックのトレーサビリティと循環型のソリューションを開発する共同開発契約を締結した。

 プラスチックは、その特性を生かして適切に使用されると、持続可能な資源効率の良い未来に貢献できる。しかし、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)に転換するには、より多くの廃プラを回収し再利用する必要がある。リサイクルではマテリアルリサイクルが一般的だが、再生品はバージン品と比較して物性と品質が劣っていること、インフラ設備も高価で複雑なため多くの地域で整備されていないことが課題だ。

 両社は共同で、この課題に対するソリューションの提供を目指している。セキュリティ・マターズ社は、クローズド・ループ・リサイクル(同品質材料への再生)での物理的およびデジタル追跡を可能にし、サスティナビリティ認証や廃プラの分別精度を高める技術に貢献。

 同社の追跡・トレースが可能なソリューションは、永久的に変更不能な化学物質ベースの「バーコード」で物体をマークし、デジタルツイン(サイバー空間で再現し連動させる仕組み)に接続するもの。バーコードは、製造やリサイクル工程で変化せず、物体の外観や性能にも影響がない。独自の「リーダー」を使用してバーコードを読み取り、プラスチックに埋め込まれた様々な情報を集めてリサイクルに生かすことができる。

 一方、BASFは、プラスチック添加剤および規制のノウハウといった専門知識や、プラスチック・バリューチェーンの豊富な経験を、このパートナーシップに活用する。また、契約の一環として、両社の研究開発能力とリソースを統合していく。

 BASE欧州パーフォーマンス・ケミカルズ事業部シニア・バイス・プレジデントのアヒム・サイツ氏は、「両社は、ポリマー情報とプラスチックの生産・流通プロセスでの追跡情報を把握できる、革新的な技術を共同で開発している。リサイクル材料を使用して、原材料の価値や、資源の生産性を高めることを望んでいる顧客やバリューチェーンのプレイヤーに、最適な添加剤パッケージを提案していく」とコメントしている。

BASFの1-3月期 コロナ禍でも強み発現し増収減益

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2020年6月1日

 BASFはこのほど、2020年第1四半期(1-3月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比7%増の168億ユーロ、特別項目控除前営業利益は同6%減の16億ユーロだった。今回のコロナウイルス感染拡大で困難な市場環境下にあるものの、多様なポートフォリオが強みとなり、特に川下分野の事業では大幅な改善が見られた。

 セグメント別で見ると、ケミカル事業セグメントとマテリアル事業セグメントの営業利益は同39%減の3億8300万ユーロ。エチレンとプロピレンのバリューチェーンでの粗利、ならびにイソシアネートとポリアミド前駆体の粗利が減少した。パフォーマンスマテリアルズ事業で大幅な増益となったが、モノマー事業の減益を相殺するには至らなかった。

 インダストリアル・ソリューション事業セグメントの営業利益は同3%増の2億7300万ユーロ。ディスパージョン&ピグメント事業が固定費の減少などで大幅増益となり、製紙用薬品、水処理剤事業をSolenisグループに譲渡したパフォーマンスケミカルズ事業の減益を相殺した。

 サーフェステクノロジー事業セグメントの営業利益は同46%増の2億2000万ユーロ。触媒事業は貴金属取引の評価替えにより大幅な増益。コーティングス事業は自動車業界の需要低下により大幅な減益となったが、原材料価格の低下や固定費の減少により一部相殺した。

 ニュートリション&ケア事業セグメントの営業利益は、主にニュートリション&ヘルス事業の大幅な増収により、同14%増の2億5400万ユーロ。コロナ危機の中で需要が増加している顧客産業に、より多くの製品を提供することで対応できた。ケア・ケミカルズ事業は固定費の減少により利益が微増した。

 アグロソリューション事業セグメントの営業利益は、主に新型コロナの感染拡大に伴う早期の需要による増収と固定費の減少により、同9%増の8億900万ユーロだった。

 なお、2月に発表した今年度の売上高・利益の予測は、未達の見通しとなったため撤回。現時点では、拡大範囲、封じ込めの対策などを確実に予測するのは不可能であるため、確実な予想ができるようになった時点で、売上高・利益の今後の推移予測を数値化する予定だ。

BASF 再利用可能なスピンオンフィルターを開発

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2020年4月27日

「Ultramid® Structure LFX」を使用した、再利用可能なスピンオンオイル式フィルター

 ドイツの大手化学メーカーのBASFは、自動車用フィルターメーカーのヘングスト社と連携し、世界初となる再利用可能な自動車用樹脂製スピンオン式オイルフィルターモジュール「ブルー・オン」を開発した。

 「ブルー・オン」はフィルター交換時にモジュールを取り換える必要がなく、再利用とリサイクルが可能であることに加え、金属代替として軽量化にも貢献する。すでに大手自動車メーカーに採用されており、今後、サステナビリティ製品としてスタンダードとなることが期待される。

 自動車業界ではオイルフィルター交換が主要な課題となっている。フィルターユニットはオイル交換時に全体を交換・廃棄され、その数は毎年約20億個に上り、また、残油は有害廃棄物として処理され、大量の廃棄物となる。ただ、フィルターユニットには高い負荷がかかるため、リサイクルするには高い耐久性が求められる。

 そのサステナブルな解決策が、BASFの高性能ガラス長繊維強化樹脂「ウルトラミッド・ストラクチャー LFX」によって実現した。

 「ウルトラミッド・ストラクチャー」グレードは特殊な特性を持ったガラス長繊維強化ポリアミドで、高温での機械的特性に加え、寸法安定性に優れている。ガラス繊維が長いため繊維配向が安定し、射出成形プロセスのパーツ内で3Dネットワークを形成し、非常に良好な表面品質が得られることで、スピンオンの概念を革新的なものにした。

 「ブルー・オン」は3つのコンポーネント(フィルターハウジング、エンジンへの接続エレメント、フィルターエレメント)で構成され、オイル交換時にはフィルターのみが交換可能。樹脂製モジュールはエンジン耐用年数まで使用でき、自動車のライフサイクルの最終段階では、すべてのコンポーネントをほぼ完全にリサイクルできる。さらに、金属製モジュールと比較して23%の軽量化を達成した。

 今回の開発では、両社のパートナーシップが成功への道を開いている。BASFのパフォーマンスマテリアルズ事業部シニア・キー・アカウント・マネージャーのクリスティアン・ジャネバ氏は、「金属製ハウジングと同等の性能を持ちながら省資源である製品の開発をヘングスト社から提案された。当社は、サステナビリティを中心とした総合エンジニアリングパッケージと材料開発により、開発プロセスを建設的に支援した」と述べている。

 なお、「ブルー・オン』は量産開始前の2018年に、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州のイノベーション賞を受賞している。