ポリスチレン 値上げ交渉本格化、原料高に対応

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2020年9月9日

需要は回復傾向も、コロナ影響で先行き不透明に

 ポリスチレン(PS)メーカー3社の原燃料高に対応した値上げが出揃い、10月1日の実施に向けユーザーとの交渉が本格化している。改定幅は、PSジャパン、DIC、東洋スチレンとも「10円/kg以上」で打ち出した。

 PS価格は、原料ベンゼンACPやナフサ価格、また為替を前提に、四半期ごとに価格の見直しを行う。今年は、昨年後半からの原油価格上昇に連動し、1Q(1-3月期)にACPが上がったことで、4月の価格改定では値上げとなった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大したことや、OPECなどの協調減産の混乱により原油価格が暴落したことから、2Q(4-6月期)のACPは1Qから345ドル急落。そのため7月の価格改定では40円以上の値下げとなった。ただ原油価格は、5月に協調減産が再開されたことや中国経済の回復などもあり上昇基調を強めた。それに伴いACPも400ドル以上に値を戻し、3Q(7-9月期)は2Qから78.3ドル上昇する結果となった。

 こうした状況を踏まえ、PSメーカー各社は10月からの値上げを発表。ユーザーへの安定供給を行い、再投資可能な事業とするためにも、今回の値上げ交渉を速やかに決着させていく考えだ。

 一方、PSの国内需要は2Qに前年比20%減と大きく落ち込んだ。コロナ禍の影響で川下製品の需要が停滞したことや、7月からのPS価格の下落を前に買い控えの動きが強まったことが背景にある。それを反映し、2Qの在庫月数は2.3ヵ月分と平常時に比べ大きく積み上がっており、適正在庫に戻すために稼働調整を行う動きもあるようだ。

 こうした中、コロナ禍が落ち着いてきたことや7月の値下げ効果もあり、PS需要は回復傾向にある。7月の内需は包装用途や雑貨・産業用途を中心に伸び、3月以来4カ月ぶりに前年比で上回った。また政府も、8月の月例報告で国内景気の判断を「持ち直しの動きが見られる」と発表しており、年末に向けてPS需要の盛り上がりが期待される。

 とはいえ、コロナ禍は未だ収束のめどが立たっていない。感染者が再び増加傾向となれば消費が落ち込む可能性もあり、今後も先行き不透明な状況が続きそうだ。

 

DIC 泡消火薬剤の型式試験で不正行為、再発防止へ

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2020年9月8日

 DICはこのほど、2013年に発売した泡消火薬剤「メガフォームIH‐101‐5」(型式番号:泡25~1号)に関して、消防法に基づく型式試験の際に不正行為があったことが、社内調査により判明したと発表した。総務省消防庁に報告し、聴聞が行われる予定。

 同社は、製品の発売前に実施する型式試験(検定機関による試験)の申請にあたり、申請書類に記載した組成と異なる組成の泡消火薬剤サンプルを提出。その後、規格に適合し消防法に基づく型式承認を得ていた。

 同社は今回の件を重く受け止め、背景や原因などについて、第3者も交えた調査を実施している。なお、これまでの調査の結果、すでに出荷している製品については使用条件に関し、消火性能に問題がないと判断している。

 同社は、「関係者の方々には多大なるご迷惑ご心配をお掛けし、大変申し訳ございません。今後、再発防止ならびにお客様への対応については万全を期してまいる所存です」とコメントしている。

DIC 水処理事業で米デュポンと戦略的パートナーシップ契約を締結

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2020年9月4日

 DICは3日、同社と米国グループ会社サンケミカルが、水処理用中空糸脱気製品の世界的な拡販を目的に米デュポンと戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。

 今後、工業用の水処理用途で使われる大型中空糸脱気モジュール「セパレル」シリーズのグローバルでの販売独占権をデュポン・ウォーター・ソリューションズに付与することで、アジア、米国、欧州地域の販売を拡大し、2021年には同事業の売上高を2019年比で約2倍の増収を目指す。

 デュポンは、限外ろ過膜、逆浸透膜、イオン交換樹脂など、世界をリードする水の浄化と分離技術のポートフォリオをもつ。水処理設備メーカーなどの顧客は、DICの中空糸脱気モジュールとデュポンの製品を組み合わせて使用することが多いため、今回の提携は、顧客に対してトータルソリューションサービスの提供が可能になる。

 今後は、DICの中空糸脱気関連製品「セパレル」シリーズのうち、水処理用途の製品ブランド名をデュポンのブランド「LIGASEP」へ変更する予定だ。なお、デュポン・ウォーター・ソリューションズとの独占的パートナーシップは、水処理市場にのみ適用。DICグループは、引き続き「セパレル」を製造し、独自の脱気技術を活用してインクジェットインキ市場を含む他の産業市場へ販売していく。

 DICグループは、中期経営計画「DIC111」の中で、環境に配慮した製品や高機能製品を社会へ提供することで、社会貢献と成長の実現を目指すことを事業方針に据えている。今後も中空糸膜モジュールの市場要請に対応した高機能な製品を提供し、世界的な事業規模拡大に努めていく方針だ。

DIC ポリスチレン製品などを10円/kg以上値上げ

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2020年9月4日

 DICは3日、ポリスチレン製品およびスチレン系製品について、10月1日納入分から値上げすると発表した。改定幅は、「ディックスチレンGPPS」「ハイブランチ」「ディックスチレンHIPS」「エラスチレン」の各製品とも「10円/kg以上」。

 昨今の国産ナフサ、ベンゼン価格の高騰およびその他のコストの増加により、ポリスチレンの原料調達価格も上昇している。同社は、引き続き自助努力による吸収を続けてきたが、原材料価格の上昇を吸収することは極めて困難な状況にあり、今後の安定供給と事業継続を図るためには価格改定が避けられないと判断した。

 

DIC 統合報告書「DICレポート2020」を発行

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2020年9月3日

 DICは、同社グループの事業や財務、サステナビリティ活動についてまとめた「DICレポート2020」(ハイライト版・詳細版)を発行した。

 今年度は、社会課題を解決する「社会的価値」を表すものさしとして独自のサステナビリティ指標や、事業ポートフォリオ転換を目指した資本政策の基本方針(CFOメッセージ)、そして新たな社会価値創出に貢献する製品の特集などを主なハイライトとして紹介している。

 同レポートはより多くのニーズに応えるため、要点を簡潔にまとめたハイライト版(冊子およびPDF)と、より詳しい情報やデータを盛り込んだ詳細版(PDF)を発行。見やすさと分かりやすさの観点から、見る人の色覚タイプに左右されない「カラーユニバーサルデザイン」を採用し、CUD認証を取得するとともに、SDGsの目標と同社グループの取り組みとの関連を、SDGsのアイコンを用いて紹介している。

 また、同レポートの冊子は、DICグラフィックス社の製品である100%植物油を使用した「環境調和型インキ」で印刷し、環境へも配慮している。

 なお、レポートの作成にあたっては、ガイドラインとして「ISO26000:2010」や「レスポンシブル・ケア・コード」、レポーティングの国際基準となっている「GRIスタンダード」を採用。ステークホルダーが必要とする情報を提供している。

統合報告書「DIC レポート2020」
統合報告書「DIC レポート2020」

 

DIC QII協議会の設立に合意、量子コンピューティングを実現

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2020年8月20日

 DICはこのほど、東京大学との間で、「量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)」の設立に合意し、設立メンバーとして参画すると発表した。

 東大が設立したQII協議会は、産官学協力の下にわが国全体のレベルアップと実現の加速化を図り、広く産業に貢献することを目的としている。量子コンピューティングを実現する日本国内の科学技術イノベーションを独自の形で集結させ、量子コンピューティングのためのエコシステムを構築することで、戦略的に重要な研究開発活動を強化する。

 DICはQII協議会の一員として、量子コンピュータの産業利用の価値を高めるため、量子コンピューティング利用分野の探索と技術の構築を行う。特に、東大と連携して、材料開発に有益な化学シミュレーションに資する技術の研究と開発に注力する。

 コンピュータを使った化学シミュレーションは、化学材料の設計や化学反応の解明に大きく貢献することが期待されるが、計算の複雑さのため利用が限られている。量子コンピュータは、そのような複雑な計算を難なく行える能力をもっており、材料開発に革新的な変革をもたらす新たな技術として期待されている。

 同社では、量子コンピュータを使った化学シミュレーションによる未来の材料開発を見据え、量子コンピューティング技術の開発とエコシステムの構築を他社に先駆け積極的に行う。そして化学シミュレーションを主軸とした革新的な材料開発体制を構築することを目指す。

 その革新的な材料開発体制の下では、実験に関わる時間とコストおよび危険が大きく削減され、安全で快適な材料開発が行われることが期待される。また、コンピュータ上では自由自在に分子を作ることができ、発想力と創造力を生かした幅の広い研究開発が可能になる。

 なお、東大が事務局を務めるQII協議会は、慶應義塾、JSR、東芝、トヨタ自動車、日本アイ・ビー・エム、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカル、三菱UFJフィナンシャル・グループなどが参加を予定。さらに、志を同じくする参加メンバーを広く募集している。

QII協議会で目指す成果
QII協議会で目指す成果

 

DICの1-6月期 コロナ影響による出荷減で減収減益

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2020年8月19日

 DICは11日、2020年度上期(1-6月期)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比11%減の3437億円、営業利益3%減の178億円、経常利益18%減の156億円、純利益21%減の103億円となった。

 オンラインの決算会見の中で、古田修司執行役員・最高財務責任者は「4-6月期にコロナ影響を大きく受け、自動車関連や建設関連で出荷数量が大きく落ち込んだ。5月を底に回復傾向にはあるものの、減収減益となった」と総括した。

 セグメント別に見ると、パッケージング&グラフィックは売上高9%減の1901億円、営業利益9%増の87億円。欧米ではパッケージ用インキが引き続き堅調な出荷となり現地通貨ベースでは前年並みとなったが、 “DICの1-6月期 コロナ影響による出荷減で減収減益” の続きを読む

DIC 世界的なESG投資の構成銘柄に2年連続で選定

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2020年7月16日

 DICは15日、世界的に代表されるESG(環境、社会、ガナバンス)投資指標の1つである「FTSE4Good(フィッチ・フォー・グッド)Index」、および同指標の日本企業で構成される「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に2年連続で選定されたと発表した。

 「FTSE4Good」は、英ロンドン証券取引所グループの子会社であるFTSE International社が2001年から発表しているESG投資インデックス。企業が公表するESGに関するマネジメントや取り組み実績に関する情報をもとに、独自のESGレーディングに基づいて評価が行われ、一定のスコアを満たすことによりインデックスに組み入れられる。またこれにより、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資インデックスとして採用する「FTSE Blossom Japan Index」にも継続して組み入れられたことになる。

 DICグループは、環境負荷の低減、納税の透明性、コンプライアンスなどへの取り組みや、購買およびレスポンシブルケア活動に関する情報開示の充実化などが全般的に評価され、今回の選定に至った。

 同社グループは、ESGに関わる活動を重視しサステナブルな社会を実現するためにはESGの視点が必須であるとの考えの下、世界で約170社のグループ企業とともに事業に取り組んでいる。ブランドスローガン「Color & Comfort」を掲げる企業として、引き続き事業活動と連動したESGに対する取り組みの強化と開示を進めながら、「サステナビリティ基本方針」に基づきESGに関する社会の要請を的確に把握し、持続可能な社会づくりに貢献していく考えだ。

DIC 全事業対象に「サステナビリティ指標」を設定

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2020年7月15日

 DICはこのほど、全ての事業を対象に「環境負荷の低減」と「社会への貢献」を測るものさしとして、グループの「サステナビリティ指標」を設定した。

DICグループのサステナビリティ指標概念図
DICグループのサステナビリティ指標概念図

 同社は、中期経営計画「DIC111」に基づき、利益貢献につながる「経済的価値」と社会貢献につながる「社会的価値」が両立する事業領域の確立を目指しており、化学メーカーとして様々な社会課題に対する解決策を提供することで持続可能な社会の実現に取り組んでいる。

 今回策定したサステナビリティ指標は、廃プラスチック問題などに代表される社会課題に対し、同社が為しうる「社会的価値」を客観的に示す指標となるもの。具体的には、バリューチェーンでの原料調達から製品出荷までにかかる「環境負荷の低減」と、製品出荷から使用後までに果たす「社会への貢献」の2つの要素を同時に評価することで、事業と製品が社会的価値の向上につながっているかを、全てのステークホルダーに客観的かつ分かりやすく示していく。

 同社ではすでに食に関する社会への貢献をテーマに、「脱プラスチック」「フードロス削減」「食の多様化・バリアフリー」などにつながる技術・製品開発に注力しているが、今回設定したサステナビリティ指標を通じて、こうした社会への貢献に重点化した事業ポートフォリオへの転換を一層促進していく考えだ。

 今後は、全ての事業がサステナビリティ指標の評価対象となるため、各事業の評価を行った上で、2022年度から始まる次期中期経営計画にグループの目標値を設定する計画。

 DICのサステナビリティへの積極的な活動は、評価が高い。代表的なものでは「ダウジョーンズサステナビリティインデックス アジアパシフィック(DJSI AP)」の構成銘柄に5年連続採用されるなど、国内外のESG投資の構成銘柄に選定されている。これからも、サステナビリティ指標の運用を通じて、バリューチェーン全体に関わる同社のリスクと機会を特定し、的確な対策を進めることで、世界的な取り組み「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献し、社会から愛され、尊敬される企業を目指す。

 

太陽インキ製造 高周波対応新シードフィルムで初受賞

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2020年7月13日

 太陽ホールディングスはこのほど、子会社の太陽インキ製造(埼玉県嵐山町)が「高周波対応配線形成用新シードフィルム」で「第16回JPCA賞」を受賞したと発表した。

高周波対応配線形成用新シードフィルムの外観
高周波対応配線形成用新シードフィルムの外観

 同賞は日本電子回路工業会が主催・運営する「第50回国際電子回路産業展」の出展者を対象とした、電子回路技術および産業の進歩・発展に貢献した製品・技術への表彰制度として2005年に創設されたもの。今回、太陽インキ製造にとって初の受賞となる。

 同開発品は次世代通信規格5Gの高周波帯域用の電子機器向けにDICと共同開発したもので、ナノメタルからなるシード層を両面にコートしたフィルム。5Gの普及に伴い、使用周波数帯域であるSub6やミリ波帯で高周波信号をロスなく伝送する銅配線技術が重要となる。高周波であるほど電流は銅配線表層しか流れず、表層が平滑でなければ伝送損失が増す。そのため、配線の表面や側面を平滑にする銅配線形成技術が求められている。

本開発品による銅配線形成例
本開発品による銅配線形成例
銅配線の厚み=8μm 斜め配線L/S=10/10 縦配線L/S=8/8(um)

 従来の銅シード・モディファイドセミアディティブプロセス(MSAP)では、シード層の銅のエッチングにより銅配線も溶解し、表面や側面の凹凸が大きくなる課題があった。今回シード層を銅以外の金属とすることで、エッチングによる銅配線の溶解をなくし、表面や側面が平滑なファインパターンが得られた。主な用途として、低損失の高周波伝送配線、高品質アンテナ、高精度配線・高密度配線などが期待できる。