東レは19日、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂「トレリナ」の耐トラッキング性と強度を向上させた新グレード「A660HV」で、国際的な製品安全規格のUL規格で「ランク0(ゼロ)」、IEC規格で耐トラッキング性の最高ランク「材料グループⅠ」を取得したと発表した。
600V以上の耐電圧特性をもつ同製品を、高耐圧化・小型化が進む新エネルギー車の電装部品など、高い耐トラッキング性が求められる用途へ展開する。
PPSは難燃性に優れた素材だが、ナイロンやポリエステルに比べ炭化導電路を形成しやすく、耐トラッキング性が低いことで知られている。
同社はこれまで、トレリナ耐トラッキング性グレードをパワー半導体モジュール用途を中心に販売してきたが、従来の同グレードはフィラーを高充填しているため靱性が低く、強度が不足する傾向にあった。
この問題に対し、同社は複数のポリマーをナノメートルオーダーで分散させることで、優れた特性を発現させることができる「NANOALLOY(ナノアロイ)」技術を用い、PPSに耐トラッキング性ポリマーを微分散することで、難燃性と耐トラッキング性を両立しながら、強度の向上を実現した。
一般的なPPSに比べ、絶縁設計で沿面距離を約半分に縮めることが可能となり、製品の高耐圧化・小型化への貢献が期待される。
同社は今後、同製品を鉄道や太陽光発電に使われるパワー半導体モジュールのハウジング用途に加え、高耐圧化・小型化のニーズが高まる新エネルギー車のパワーコントロールユニットやバッテリー、充電器などへの提案を進めていく考えだ。