BASF 高摺動・耐久ポリエーテルスルホン樹脂を発売

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2020年9月10日

 BASFはこのほど、特に高温オイルと接する自動車部品に適したエンジニアリングプラスチックを上市した。

 ポリエーテルスルホン(PESU)「Ultrason E0510 C2TR」は、卓越した摩擦特性、高耐油性、優れた寸法安定性をもち、広範囲の温度変化にも対応。炭素繊維10%配合の射出成形グレードで、マイナス30℃からプラス180℃の温度範囲で使用できる。粘度が低く流動性に優れ、加工も容易。世界各地に供給する。

 同製品はオイルポンプ、オイルコントロールピストン、圧力バルブ、オートマチック/マニュアルギアボックス内の高速コンポーネントなどのオイルと接する自動車部品や、代替駆動システム向けの新用途に使用可能。

 流動性を生かし、厚さ1mm未満の部品でも安定性や耐久性、耐油性を損なうことなく射出成形できる。熱膨張係数は10.4マイクロ/Kと寸法安定性は高く、低温から高温への急激な温度変化にも耐える。国際規格準拠の試験で、低摩擦熱可塑性樹脂を上回る摺動性(滑りやすさ)を示した。耐摩耗・耐薬品試験でもほとんど変化せず、優れた耐薬品性、耐加水分解性、難燃性と温度安定性、高い剛性と強度といった「Ultrason」の特性も備えている。

 「Ultrason」は今回のポリエーテルスルホン「Ultrason E」のほか、ポリスルホン「Ultrason S」、ポリフェニルスルホン「Ultrason P」などのスルホン系樹脂製品群のブランドで、電子機器、自動車、航空宇宙産業にとどまらず、ろ過膜や、温水や食品と接する部品にも使用され、熱硬化性樹脂や金属、セラミックの代替としての利用もある。

 

BASF PPSUで新製品、射出成形の流動性を向上

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2020年1月24日

 BASFは低粘度グレードである「ウルトラゾーンP」の製品ラインアップを拡充している。

 「ウルトラゾーンP2010」は新しいポリフェニルスルホン(PPSU)で、「ウルトラゾーンP」の優れた機械特性を維持しつつ、射出成形での流動性を向上した。これにより、外食産業や航空機内での使用に適した洗練されたデザインの食器や耐熱容器など、より大きく複雑な形状の部品を製造することが可能になった。

 さらに、低い射出圧力と温度で充填できるため、原材料を加工する際のエネルギー消費量と部品重量を減らすことができる。「ウルトラゾーンP2010」ナチュラル(透明色)を、現在グローバルで販売している。

 新素材は高い耐薬品性と134℃までの過熱蒸気滅菌への耐性、耐火性、既存の「ウルトラゾーンP3010」が持つ優れた衝撃耐性と安定性をも兼ね備えている。ノッチ付き衝撃強度は、他の非晶質構造を持つ耐熱素材に比べ約10倍で、高温でも耐性を発揮するため、洗浄と消毒を繰り返してもほとんど影響がない。

 透明高耐熱プラスチックは、EUと米国で食品の接触に対する適合性が認められている。最適な用途の1つが外食産業や航空機用設備。容器や鍋は調理だけでなく、食品の保存や保温にも使用できる。

 ホテルやレストランでは、滅菌と洗浄剤に対する高い耐性が求められ、航空機内では耐火性が特に重要となる。このため、火災時に熱や有害物質の放出が少ない難燃性の特殊プラスチックは、食器だけではなく、座席や照明器具、通気孔、頭上の荷物棚などにも理想的だ。

 「ウルトラゾーン」はポリエーテルスルホン「ウルトラゾーンE」、ポリスルホン「ウルトラゾーンS」、ポリフェニルスルホン「ウルトラゾーンP」を含む、BASFのスルホン系樹脂製品群の登録商標。これらの高性能素材は、電子機器・自動車・航空宇宙産業にとどまらず、ろ過用メンブレンや、温水や食品と接する部品にも使われている。

 「ウルトラゾーン」ブランドは優れた特性により、熱硬化性樹脂・金属・セラミックの代替として利用されている。

東レ 5G回路基板向け革新的なPPSフィルムを開発

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2019年12月20日

 東レは19日、従来に比べて40℃以上耐熱性を高め、融点に近い温度でも変形しにくい寸法安定性を持つPPSフィルムを創出したと発表した。

PPSフィルムを使用したロールサンプル(右)とFPCケーブル
PPSフィルムを使用したロールサンプル(右)とFPCケーブル

 同開発品を5Gなどに用いられる高速伝送用のフレキシブルプリント基板(FPC)に適用することで、通信デバイスの高周波での伝送ロスを低減し、高温・高湿度などの幅広い環境での高速通信を安定させることが期待できる。すでにパイロットスケールでの技術確立が完了。今後、2020年度中に量産体制を整え、急拡大する5G向け通信機器の早期普及に貢献していく。

 5Gは、高速・大容量・多数の同時アクセス、低遅延を可能にする次世代の通信技術として注目が高まっている。ただ、FPCを構成する基板材料には、高周波数帯域で伝送ロスを少なくする誘電特性と、回路基板加工時のはんだに対する耐熱性などの特性が要求される。すでに、液晶ポリマー(LCP)フィルムが実用化されているものの、高コストに加え加工性に課題があった。

 こうした中、同社はオンリーワン製品である二軸延伸PPSフィルム「トレリナ」の特性を維持しつつ、5Gに対応する製品開発に注力。PPSフィルムは、優れた難燃性・耐薬品性に加え、高周波数でも伝送損失が小さく、特に温度や湿度の影響を受けにくいといった性質を持つ一方、高温域ではフィルム自体が変形しやすく、回路基板への加工時のはんだ耐熱性が不足していた。

 そこで同社は、PPSフィルムの結晶構造を制御する独自技術を開発し、耐熱性を大幅に高めることに成功。開発品は、250℃の加熱テストでフィルムが変形しないことを確認しており、耐熱性を高めたことで既存の加工設備が使用できるようになった。

 一方、長年蓄積してきたフィルム内の分子鎖の配向を制御する技術により、低い厚み方向の熱膨張係数98ppm/℃も実現。これにより回路基板の多層化による小型化設計が可能となった。これらの特長を生かし、5G用の伝送ケーブルやアンテナなど幅広い用途への展開が期待できる。

 同社は、開発品の高い熱寸法安定性とコスト競争力のメリットを生かし、まずは5Gスマートフォンを中心としたFPC市場での採用を進める。すでにサンプルワークを開始しており、顧客からは高い評価を得ているもよう。さらに車載用途や基地局用途など、5Gの普及に合わせ用途展開に注力し、5、6年後には同製品の売上規模20億~30億円を目指していく考えだ。

ポリプラスチックス ブリスター特性に優れたLCPを開発

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2019年11月27日

 ポリプラスチックスは26日、ブリスター特性に優れた液晶ポリマー(LCP)「ラペロスLCP」を開発し、ブリスター発生を制御する最新技術を発表した。

 LCPは、高流動性、高寸法精度に加え、高耐熱性を兼ね備えたスーパーエンジニアリングプラスチック。その特性から小型化、表面実装(SMT)化が進むスマートフォンなどのコネクタ市場で幅広く採用されている。また、近年ではIoTの活用や5Gの実用化に向け、自動車分野、家電・OA分野でもLCPの検討や採用が拡大している。

 その一方で、SMT方式ではんだ付けする際に、260℃まで加熱された部品表面に微細な「ふくれ=ブリスター」が発生して問題となる場合がある。今回の「ラペロスLCP」の開発グレードは、従来の材料に比べて大幅なブリスター抑制効果が確認されており、生産性の向上が期待できる。

 またLCPが多く採用されているコネクタのような厚みに変化がある部品では、段差の不安定界面の形成を決定する拡張流動の大きさには、材料のスウェル特性(膨張現象)が大きな影響を与える。スウェル特性は、ポリマー種、フィラー種によって大きく異なることから、グレード選定の際には考慮すべき点だ。

 同社では、この知見をもとに、急激な肉厚変化部で発生するブリスターを抑制するグレードの開発に成功した。

ポリプラスチックス PBTの新グレード開発、耐加水分解性を向上

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2019年9月27日

 ポリプラスチックスは26日、PBTの新しい低そり・難燃・耐加水分解グレード「ジュラネックス 750AM」を開発したと発表した。

 今回開発したグレードの特長は、低そり性、難燃性に加えて、耐加水分解性の向上にある。同社には従来から、UL‐94(燃焼性試験規格)V‐0の低そりグレードがあったが、今回初めて、耐加水分解性を向上させたことで、より厳しい環境下での使用が可能となった。

 新グレードは、これまでの電子部品に加えて、通信機器やEV・HEVの高電圧部品などの自動車電装部品について、V‐0が必要な場合に好適な材料となる。なお今回の開発に合わせて、そり対策のメカニズムと、低そり・難燃・耐加水分解PBTの解説記事をウェブサイト(https://www.polyplastics-global.com)に公開した。

 同社の「ジュラネックス」PBTには数多くのグレードがあり、採用分野も電子部品、電子機器から自動車電装部品まで、多岐にわたる。しかし、樹脂の収縮特性と製品形状のアンバランスから変形が発生する場合があり、製品の開発・設計時の課題となっている。

 同社のPBT低そりグレードは、変形要因の影響を減少させることで市場を獲得してきたが、解説記事では、変形要因と樹脂材料の開発方法について詳細に説明している。

三菱ガス化学 カメラレンズ用特殊PCで世界最高の屈折率

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2019年9月19日

 三菱ガス化学は18日、小型カメラレンズ用樹脂としてスマートフォン(スマホ)のカメラレンズなどに使用されている特殊ポリカーボネート(PC)「ユピゼータ EP」シリーズの最新グレードとして、世界最高の屈折率1.68を誇る「ユピゼータ EP-10000」の販売を開始したと発表した。

「ユピゼータEP」を用いたスマートフォン
「ユピゼータEP」を用いたスマートフォン

 スマホやタブレットなどのカメラレンズ素材には、高屈折率(レンズの薄型化に寄与)と低複屈折性(画像の鮮明化に寄与)を兼ね備えた特性が求められる。同社の特殊PC「ユピゼータ EP」はこれらを高い次元で両立し、さらに成形性も兼ね備えた光学材料である。

 スマホのカメラ性能の高度化がますます求められる中、マーケットニーズに応えるカメラレンズに欠かせない材料となっている。今回、販売を開始する「ユピゼータ EP-10000」は世界最高の屈折率1.68を有し、「ユピゼータ EP-9000」の屈折率1.67を凌ぐ材料で、薄さを維持しながらカメラ性能のさらなる高機能化を可能としている。

 同社は、「ユピゼータ EP-10000」の拡販を通じ、〝情報・通信〟領域のさらなる事業展開を進めていく考えだ。

東レ 超高硬度と耐屈曲性の革新的な透明フィルムを開発

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2019年3月26日

 東レはガラス並みの硬度を持ち、屈曲半径1mmの折り曲げに耐える透明アラミドフィルムを開発した。25日に本社で開催した技術説明会で、フィルム研究所の佃明光研究主幹は「当社は独自のポリマー設計によりアラミドのフィルム化を達成していたが、今回、新規ポリマーデザインにより無色透明化に成功した」と語った。

アラミドフィルム
透明アラミドフィルム

 同開発品の特性は、無色透明、耐熱性(耐熱温度300℃)、剛直性(ヤング率(縦弾性係数)10GPa、熱膨張係数(CTE)0~5ppm/K)となる。透明ポリイミドとの比較では、「ガラス転移点は同レベルの性能だが、剛性や

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ソルベイ 高品質付加製造向けに3つの医療用グレードを上市

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2018年11月22日

 ベルギーの特殊ポリマーサプライヤーのソルベイはこのほど、ヘルスケア事業で使用する3つの医療用グレード商品を上市した。高品質付加製造(3Dプリンディング、AM)用途向けの、高機能フィラメント製品群の拡充のため。

 非強化「キータスパイア」ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)AMフィラメント(NT1 HC)、10%炭素繊維強化キータスパイアPEEK AMフィラメント(CF10 HC)、非強化「レーデル」ポリフェニルサルホン(PPSU)AMフィラメント(NT1 HC)の3種類。体液/組織との接触が24時間未満の、制限付き接触用途向けの同社初の医療用グレードAMフィラメントとなる。

 キータスパイアPEEK AMフィラメントは、プリント層の優れた融合を可能にし、Z軸方向を含め、高い部品密度と比類ない部品強度を実現する。レーデルPPSU AMフィラメントも、透明性・高い引っ張り伸び率・強靭性に加え、プリント層の優れた融合を提供する。

 同社のスペシャリティ・ポリマー・グローバル・ビジネス・ユニットのジェフ・フリヴナック・マネージャーは「フィラメントは単回使用や繰り返し使用可能な医療機器の複雑なコンポーネントなどに使用できる」と述べている。

SABIC ポリカーボネート製高耐熱フィルムの新製品を発表

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2018年11月19日

 サウジアラビアの石油化学大手サウジ基礎産業公社(SABIC)はこのほど、ポリカーボネート(PC)製高耐熱フィルム「LEXAN CXT」の新製品を発表した。

 高温プロセス環境下で優れた熱安定性と寸法安定性を発揮するとともに、高い光学的透明性と設計柔軟性を兼ね備えている。このため、急速に成長するフレキシブルプリントエレクトロニクス市場で利用される電子基板など、高い加工温度や使用温度にさらされる様々な用途に対し、高性能で、コスト効率に優れたソリューションを提供する。

 ガラス転移温度は196℃なので、より高い加工温度が求められ、熱に関する要求が厳しいプロセスで必要とされる寸法安定性に適合する。フレキシブルプリント電子基板をはじめ、正確なパターン転写が要求される各種のアプリケーションに高い設計柔軟性を提供する。

 代表的な50µm厚で、最高90%という卓越した光透過率を示す。黄変も非常に少なく、長期間にわたり、ガラス同様の透明性を確保しなければならない用途に最適だ。

 フレキシブルプリント電子基板のほか、ハイエンドタッチスクリーンやディスプレイの導電層といった積層構造のアプリケーション、半導体業界で部品のアニーリングや硬化プロセスに使われる、高耐熱性の透明熱成形トレイなどの用途が考えられている。

ランクセス ポリアミドなどのコンパウンド製品群を拡充

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2018年11月5日

 ドイツの特殊化学品メーカーのランクセスは、自動車や電機・電子などの複雑形状のプラスチック部品に適した、ポリアミド6やポリアミド66などのコンパウンドの新製品を発表した。いずれもレーザー透過溶着で汎用的に使われる、近赤外線波長領域での優れたレーザー透過性が特徴だ。

 ポリアミド6の新製品は「デュレタンB31KH3.0LT」と「デュレタンBG30XH3.0LT」。前者は非強化ポリアミド6で、高い靱性要求の部品に特化したグレードである。後者はガラス繊維とマイクロガラスビーズ配合の強化グレードで、精巧な電子機器ハウジングやコネクターのように、極めて変形や収縮寸法変化を嫌う部品に有効だ。

 新コンパウンドの中でも特筆すべき製品は、ポリアミド66のハロゲンフリーの難燃性「デュレタンAKV30FN04LT」である。通常、1.5mmまでの肉厚でレーザー溶着される波長域で、優れた光透過性を示す。

 また、非常に高い耐トラッキング性をもち、米国のUL94規格(アンダーライター・ラボラトリース社)の難燃性試験で、最高クラスのV-0/0.4mmを獲得した。熱安定性も最適化されていて、射出成形時に成形品表面に付着する、モールド・デポジットの発生リスクを大幅に低減している。

 このコンパウンドには金属やハロゲン化合物を使用しない熱安定システムが採用されており、導通部品との接触で電食も起こりにくくなっている。これは高電圧バッテリーや安全スイッチ部品で非常に重要になるという。

 同社のハイパフォーマンスマテリアルズビジネスユニットの溶着技術専任者であるフランク・クラウス氏は「この製品群は、例えば車両走行の電動化や運転者支援システムから自動運転に必要な、センサー・ハウジングやコントロール・ユニット、ディスプレー・システムを主な成長分野のターゲットに挙げている」と述べている。