《化学企業トップ年頭所感》 JSR 小柴満信社長

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2019年1月9日

 昨年は当社グループにとっても比較的良好な事業環境だったが、米中の緊張状態をみると、表面的な貿易や関税の問題から、いよいよ本丸の先端技術の覇権争いが本格化してきている。地政学や地経学的な見地に加えてGeo‐Technologyという要素が加わり、世界情勢はさらに複雑で不安定な方向に向かっていると思われる。

 各国が先端技術の獲得競争を繰り広げる中で、今後、先端技術の流れを規制する貿易管理や、AI(人工知能)使用上の倫理などサイバー空間での新たな規制が生まれ、事業環境は想像もできない方向に変化していくかもしれない。自由主義経済の中でグローバル化を目指していた世界の産業界が、新しい方向性を模索し始めるのがこの2019年だと思う。

 世界情勢は先端技術を中心に驚くべき速度と大きさで変化しており、とくに当社グループが戦略事業領域と位置づけているAI技術、半導体技術、ゲノム編集を含めた生命科学の分野ではその傾向が顕著だ。不確実性の高い世界でどう生きるか、そして生き残るか。その答えは、先進技術開発とイノベーションの創出が最も重要と考えている。

 先端技術開発においては、デジタル技術が基幹技術となるので、デジタル変革を粘り強く実行していく。また、人材・事業領域・地域・性別など、あらゆる多様性を取り込むとともに、目標達成の鍵となる日頃の工夫の積み重ねにより、働き方改革も実現していかなければならない。

 当社グループは、組織の変革と同時に日本の製造業としての誇りのもとに、現場の安全や設備保全を確保しつつ、高品質な製品やサービスを安定的にお客様に提供し、信頼と信用を獲得していくことで、存在価値を高めていきたいと考えている。