東大など 水の「負の誘電率」発見、高エネ密度の蓄電可能に

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2019年3月15日

 東京大学と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」を発見した。これにより、高エネルギー密度の蓄電デバイスの開発につながることが期待される。

 電気を蓄えるデバイスの一種である電気二重層キャパシタ(EDLC)は、繰り返しの利用による劣化がほとんどなく、リチウムイオン電池に比べ高出力であるなどの特徴がある。

 この特徴を生かして、小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された、小型移動ロボットの動力源として利用されるなど、幅広い用途で利用されており、今後、省エネルギー社会で電力の高効率な利用を可能にする蓄電デバイスとして、応用範囲の拡大が期待されている。

 EDLCは電気二重層と呼ばれる、電子とイオンがペアになる現象により電気を蓄える。このため、より効率的に電気を蓄えるためには、ナノ空間で高密度に電子とイオンを閉じ込める必要がある。

 これまで、イオンをナノ空間に閉じ込める際、イオンに結合している水分子も一緒に閉じ込められることが知られていたが、この水分子の特性は不明なままで、水分子が共存するナノ空間で、効果的に電子とイオンを閉じ込める方法論も知られていなかった。

 東大大学院工学系研究科の山田淳夫教授と大久保將史准教授らのグループは、産総研の大谷実研究チーム長、安藤康伸主任研究員との共同研究により、「マキシン」と呼ばれる層状化合物の層間ナノ空間に、リチウムイオンとともに閉じ込められた水分子が、通常の正の値ではなく「負の誘電率」を持つことを発見。従来未開拓であったナノ空間での水分子の異常な物性を明らかにした。

 さらに、この「負の誘電率」を利用すると、少ないエネルギーでイオンを高密度に蓄えることが可能となるため、高エネルギー密度のEDLCの開発にもつながることが示された。