旭化成・名誉フェローの吉野彰氏が、リチウムイオン二次電池(LIB)の開発者として、欧州特許庁(EPO)が主催する「2019年欧州発明家賞」の非ヨーロッパ諸国部門を受賞した。授賞式は20日(現地時間)にウィーンで行われた。
吉野氏は、「このたび欧州発明家賞を受賞してたいへん光栄です。EPO長官の『LIBの開発が世界を変えた』というコメントがとてもうれしかった」と受賞の喜びを語った。
欧州発明家賞は、技術的・社会的・経済的に優れた発明に対して欧州特許庁が毎年付与しているもので、2006年に設立された。非ヨーロッパ諸国部門を含む産業部門・研究部門・中小企業部門・功労賞の5つの部門賞と、一般投票の結果で決まる「ポピュラープライズ」がある。
日本人の受賞は3件目。過去には、2014年の原昌宏氏と開発チームによるQRコード(ポピュラープライズ)の開発、2015年の飯島澄男氏と開発メンバーによるカーボンナノチューブ(非ヨーロッパ諸国部門)の発見・開発での受賞がある。
受賞対象となったLIBは、1983年に開発されて以降、繰り返し充電できる安全な電池として、90年代初めから始まったデジタル化やIT革命、モバイル社会を支えてきた。
近年では、電気自動車への搭載など、地球温暖化対策の中で自然エネルギーの供給安定性を解決する手段として活用が注目されており、今後もさらに社会での重要性が増していくことが見込まれている。
「(今回の受賞で)旭化成の名がEU内で大きくPRできたこともうれしい限りです。一連のセレモニーを通じて、欧州の人たちの環境問題に対する意識の高さを改めて感じました」(吉野氏)。
旭化成は今後も、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供し、世界の人びとの〝いのち〟と〝くらし〟に貢献していく。