需要はやや弱含み、新型ウイルス影響も懸念材料
ポリスチレン(PS)メーカー3社の原燃料高に対応した値上げが出揃い、4月1日の実施に向けユーザーとの交渉が本格化している。改定幅は、東洋スチレン、PSジャパン、DICとも「6円/kg以上」で打ち出した。
PS価格は、原料ベンゼンACPやナフサ価格、また為替を前提に、四半期ごとに価格の見直しを行っている。昨年は1Q(1-3月期)にACPが大きく下がったことを受け、4月の価格改定で大幅に値下がりした。その後、ベンゼンとナフサが一段高となったため7月の改定は値上げとなったが、10月と今年1月の改定では2期連続のステイとなっていた。
しかし、中東リスクの高まりやOPEC減産により、原油価格が年末にかけて高騰。そのため1Q(1-3月期)のACPは、前期に比べ平均で23.3ドル高となり、国産ナフサ価格も5、6000円程度の大幅上昇が見込まれている。
こうした状況を踏まえ、PSメーカー各社は4月からの値上げを発表。ユーザーへの安定供給を行い、再投資可能な事業とするためにも、今回の値上げ交渉を速やかに決着させていく考えだ。
一方、近年、好調を維持していたPSの事業環境はやや陰りが見え始めている。昨年の内需は、前年比3%減と2年連続の減少となり、今年1月の内需も5%減と落ち込んだ。
食品包装向けは、総菜などを買って家で食べる「中食」や、少人数向けの「個食化」のブームにより堅調を維持してきたが、コンビニなどがフードロス削減に取り組んだ影響で需要が弱含んでいる。また、電機・工業用や雑貨・産業用も昨年後半以降に力強さが見られていない。さらに輸入品も、昨年は前年比約8000t増の3万7400tと再び勢いが強まっており、国内品にとって脅威になりつつある。
こうした中、今年は夏にオリンピック・パラリンピックを控え、需要の盛り上がりが期待されていた。ただ、新型コロナウイルスの影響によって消費が落ち込む可能性も出てきており、今後の市場動向が注目される。