宇部興産 CPLの7月契約価格は前月比60ドル高

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2020年7月20日

中国経済の急回復が要因も、足元では調整局面に

 宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、7月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比60ドル高の1150ドル/tで決着した。4月の950ドル/tを底に、3カ月で200ドルも上昇したことになる。スプレッドも、原料ベンゼン価格が小幅上昇だったことから、725ドル/tに拡大しており、CPLメーカーにとって収益が改善してきている状況だ。

 中国では、4月にロックダウン(都市封鎖)が解除されて以降、経済活動が活発化している。CPLも低水準な在庫状態の中、需要が増加したことで5月には需給バランスがタイト化。さらに原料のベンゼン価格が上昇したこともあり、契約価格を押し上げる結果となった。

 中国・SINOPECも、6月(下旬決め)の契約価格を前月比122ドル高(1015人民元高)の1237ドル/t(1万750人民元)で決着。5月の上昇幅をさらに上回る値上げとなった。その流れを受け、宇部興産の7月契約も一段高になったと言える。

 しかし、いったん落ち着いたかに見えていたコロナ感染が再び拡大してきたことで、様相が変化してきた。SINOPECは強気の姿勢を続け、7月の仮価格を250人民元高の1万1000人民元でアナウンスしたが、市場の反応が悪いことから、その後、3度にわたり価格を引き下げている。市場に先行き不透明感が強まったことから、需要家が様子見ムードとなっているようだ。さらに各社が稼働を高めたことで、在庫が積み上がってきたことも要因に挙げられる。

 ナイロンチェーン全体で見ると、稼働率は頭打ちだ。CPLは7月上旬には80%後半と6月初旬の80%半ばからやや上昇しているが、チップは70%弱とステイ、ヤーン(糸)に至っては60%半ば(6月初旬は70%強)にまで低下した。特に、衣料品向けは夏の不需要期に入ったこともあり、原料価格の上昇をカバーできるほど、下流製品の需要は強くないようだ。

 今後については、これまでの価格上昇が一服し調整局面に入ったことから、8月の契約価格は弱含むとの見方が強い。ただ、中国以外のメーカーはコロナ禍の影響を受け供給が不安定な状況。こうした中、冬物衣料向けにナイロン需要が盛り上がってくれば、年後半にかけて価格が上昇してくる可能性もある。いずれにせよ、コロナ禍の動向次第で市場環境が大きく左右されそうだ。

 なお、宇部興産のCPL工場(宇部、タイ、スペイン)の状況については、タイ、スペイン工場はトラブルが解消し、宇部工場は定修が明けたことから、3工場ともフル稼働となっている。