《化学企業トップ年頭所感》出光興産 木藤俊一社長

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2021年1月8日

 今年は創業110周年と経営統合3年目を迎える。多様な個性が一体となり、2050年に向けて新たに踏み出す1年にしたい。

 昨年はコロナの猛威による未曾有の危機への対応に明け暮れた。エネルギー需要の落ち込みや自動車、ディスプレイ需要の減少など、ほぼ全ての事業が影響を受けた。その中でエネルギー・素材を安定供給しライフラインを守るため、製造・物流・販売すべてで万全を尽くしサプライチェーンを維持した。

 一方、リモートワークは本社・支店を中心に一気に移行できた。働きがい・生産性・創造性を高めるべく環境整備を継続する。

 収益基盤事業では新SSブランドを今年4月から展開し、利便性の向上とネットワーク機能で地域の移動と暮らしを支える。製造関連もENEOS知多製造所関連の譲受など、近隣製油所の連携や石化との統合で付加価値向上と効率化を目指す。高効率ナフサ分解炉の新設は、構造改革に向けた効率化や省エネルギー化推進の1つだ。石炭事業では、石炭混焼可能なバイオマスの植生試験と木質ペレット化試験を開始した。

 成長事業では潤滑油製造工場と有機EL材料工場を稼働し、SPS製造装置も来年の完工を目指す。固体電解質の小型量産設備の建設など、蓄電池材料事業を次世代コア事業にする。次世代事業では再生可能エネルギーをEVにワイヤレス充電するMaaS事業の実証実験など、事業の創出を目指す。

 さらなる発展のための重点課題は「競争力強化に向けた構造改革」で、早期のコスト削減で競争力を強化する。目先の収支改善だけでなくコスト構造、事業ポートフォリオの変革を進め、組織・人員体制に加え根回しや調整に時間を要する企業文化・風土にもメスを入れ、デジタルを活用してビジネスを変革させる。

 そして「カーボンニュートラルへの取り組み」だ。脱炭素の潮流は当社への逆風に見えるが、我々のCO2に関する多くの知見とインフラを生かし、環境対策を事業活動に統合し競争力を強化し、成長していく好機にしたい。コロナ禍のような大きな環境変化に対しても、将来にわたりサステナブルな企業であり続けるために、当社の人の力を結集し、新たな「希望」につながる1年にしていく。