カーボンニュートラル実現には化学産業が原動力
日本化学工業協会は19日、定例となる森川宏平会長(昭和電工社長)の会見を開催した。10-12月期の主要化学企業の実績について森川会長は、「化学企業も回復の傾向が表れてきている。売上高は前年比で7四半期連続の減収となったが、営業利益は9四半期ぶりに増益となった。汎用化学品はスプレッドが低水準にあるものの、市況の改善により市況が回復している。特殊化学も自動車および電子材料の市場環境がさらに改善した」と総括した。今後の見通しについては「仮に緊急事態宣言が解除されたとしても、大きな回復があるとは見ていない。昨年後半から継続している緩やかな回復傾向が、この先も続くのではないか」との見方を示した。
一方、カーボンニュートラル(CN)実現に向け、カーボンプライシング(CP)の議論が始まっている。森川会長は「CNについては、世界全体で取り組むべき問題だ。化学産業はプロセス転換を含めイノベーションに取り組むことで、CN実現の原動力になれるとの自覚を持っている」とした上で、CPについては、「国の研究会で「成長に資する日本のCP戦略」が議論されているが、CPはそれ自体が目的ではなく、CNを実現するための手段として捉えるべきだ。CNはサプライチェーン(SC)やライフサイクル(LC)全体で取り組む必要があるが、CPについても同じ視点で考えるべきだろう」と指摘した。
さらに、「CNは技術開発や制度設計が必要であり、投資が求められる。各SCにおいてCNを社会実装するために必要な資金としてCPを位置付けるべきではないか」との考えを示した。
また、同協会が取り組むケミカルリサイクル(CR)については、「技術確立と並行して、社会実装に取り組まなければ、(CNで目指す)2050年までに間に合わない」と強調。産官学の連携については、「CRの社会実装には、やるべきことが山積しているが、これを別々に取り組んでいてはトータルのシステムとしてうまく機能しないだろう。産官学が同じ目標に向かって、共通認識を持って進めていくことが大切であり、そういう体制づくりが求められる」と示唆した。
続いて、日化協の主要活動実績を紹介。保安防災活動では、安全表彰会議の「保安防災労働衛生活動ベストプラクティス集」第2版の発行、保安事故防止検討ワーキンググループの「保安事故防止ガイドライン」増版3の発行について説明した。
また同日、「第7回 日化協LRI賞(長期自主研究活動)」の受賞者が、川崎医科大学衛生学の西村泰光准教授(テーマ「悪性中皮腫発症に関わる石綿曝露が及ぼす免疫抑制影響の解析」)に決定したと発表。森川会長は「化学物質に関わる研究活動は地味であるが、化学産業の基盤を支える重要な取り組みだ。国際的な課題は時代によって変化するが、日化協では人の安心・安全につながる研究を支援し、様々な課題解決に取り組んでいく」と語った。