産総研 有機シラン合成用高効率ロジウム錯体触媒を開発

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2021年6月9日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」について、産総研が有機ケイ素原料を効率的に合成できるロジウム錯体触媒を開発したと発表した。副生成物の発生が少なく精製工程が簡略化でき、シランカップリング剤の基幹原料を収率99%以上で合成できる。

 シランカップリング剤は無機材料と有機材料を結合する性質をもち、高機能複合材料に広く利用されている。様々なシランカップリング剤を安価に供給することで、エコタイヤや半導体封止樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)などの高機能複合材料の低価格化が期待できる。多くのシランカップリング剤の基幹物質となるクロロプロピルシランは、白金やイリジウム錯体触媒を使って、ヒドロシランと塩化アリルの反応により合成されるが、収率は70~80%程度で、複数の副生成物が生成する。

 今回、触媒構造と生成物の関係に着目。新しい触媒はロジウム金属とフッ素を含み、2つのリン原子がロジウム金属に結合する配位子を組み合わせた。副生成物を生成する触媒構造は不安定なことから、主成分を生成する安定な触媒構造に変化するため、副生成物の生成反応が大幅に抑制される。微量のロジウム錯体でも、目的のクロロプロピルシランを実験室レベルで99%以上の収率で単一合成できた。触媒量5㏙の場合、触媒回転数(触媒が不活性化するまでの触媒1分子当たりの反応回数)は14万回に達し、工業触媒として十分な耐久性をもつことが確認された。

 産総研は引き続き同事業でシランカップリング剤反応のスケールアップ実験を行い、工業的な実施可能性を検証する。また触媒性能の解析を進めて、高機能で安価な有機ケイ素材料の提供を目指す。