ランクセス TMPメルト品、日本市場の販売強化

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2021年7月2日

三菱ガス化が今秋撤退、拡販でシェア獲得を狙う

 ランクセスはこのほど、ポリエステルやポリウレタン、樹脂、合成潤滑油の原料として使用されるトリメチロールプロパン(TMP)について日本市場での販売を強化すると発表した。これまでのフレーク品に加え、メルト(液体)品も年末までの輸入・販売を目指しており、同社の製品を取り扱う化学品商社の豊通ケミプラスを通じて新規顧客向けのサンプル供給を開始した。

 同社はドイツ・ユルディンゲン工場を拠点に、純度99%以上を誇る高品質なTMPを製造。世界第2位の生産能力をもっており、アジア地域をはじめ世界の顧客に対し輸出を行っている。日本についても、これまでフレーク品に特化してドイツ工場から輸出し、化学メーカーに販売してきた。

 昨年の日本市場は、コロナ禍の影響で一時的に需要が低迷した。しかし今年度に入り急速に市場が回復したことを受け、TMPの需要も急増している。さらに、今秋には約1万tの国内需要のうち大半を占める三菱ガス化学が生産を停止することもあり、市場環境が大きく変化することが想定されている。ランクセスは、従来のフレーク品に加え、メルト品の使いやすさを訴求することで供給量を増加させ、拡販によりシェアの獲得を狙う。同社は今後も、日本市場向けの製品ラインアップを充実させ、顧客ニーズに応えていく考えだ。

 ランクセスは、2004年にバイエルから独立したドイツの特殊化学品メーカー。2016年に合成ゴム事業を分離し、現在はアドバンスト中間体、スペシャリティーアディティブス、コンシューマープロテクションとエンジニアリングマテリアルズの4部門の下、10の事業部で構成されている。従業員は約1万4000人で世界33カ国にわたって事業展開しており、昨年度の売上は約8000億円であった。

 地域別の売上高は、欧州・アフリカが半分、米州とアジアが残り半分ずつとなっている。業界別で見ると、自動車、化学品、建設、農業・畜産衛生、栄養・健康・消費財、エネルギー・天然資源・産業用の六分野がほぼ均衡している。最近は特殊抗菌剤や消毒・衛生関連、消費者分野の特殊化学品企業を買収するなど、コンシューマープロテクション部門の強化を図り、またバッテリー向け化学品事業へも参入した。

 なお、日本のランクセスは10事業を展開し、昨年の売上高は約310億円だった。愛知県の豊橋にゴム薬品の製造と水処理関係の技術サービスの拠点を保有している。今後、コンシューマープロテクション、ニューモビリティと添加剤分野に注力し、持続可能な発展を推進する事業活動と社会的責任への取り組み、デジタル化と働き方改革を推進していく考えだ。