産総研と日亜化学 全方向型標準LED光源の試作に成功

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2021年10月13日

 産業技術総合研究所(産総研)と日亜化学工業は、LEDを使用した全方向に可視波長全域の光を放射する標準光源の試作品を共同開発した。照明産業の持続的な発展への貢献と、照明光源の評価の高精度化が期待される。

 照明光源の明るさの指標である全光束は、標準光源との比較測定で決定される。標準光源には、主に白熱電球形の標準電球が使われるが、全方向光放射に適した形状のフィラメントやガラスバルブなどは熟練職人の手作りである上、LED照明の普及による白熱電球生産の縮小・停止の影響もあり、代替の標準光源が必要とされている。

 標準光源には光強度の安定性や再現性、可視波長全域をカバーするスペクトル、光を全方向に放射する配光性が求められるが、これら全てを高い次元で満足する代替光源はまだない。

 両者は産総研の「スペクトルの定量的精密測定・解析技術」と日亜化学工業の「高度なLED製造技術」を組み合わせ、可視波長全域の光を前面に放射する標準LEDを2016年に開発。そこで培われた光強度安定化技術とスペクトル最適設計技術に特殊な光学系を組み込むことで、可視波長全域の光を全方向に均等に放射する全方向形標準LEDの試作品の開発に成功した。

 複数のLED素子と蛍光体の組み合わせを最適化し、広い可視波長範囲と安定した光強度、十分な光量を得た。温度制御機構で発光部の温度を一定に保つことで、連続点灯、複数回繰り返し点滅、周囲の温度変化に対する光強度の変動は、既存の標準電球と同程度だ。また、光を後方に導くキャップ型の光学系を組み込み、標準電球のフィラメント形状に起因する細かな凸凹のない、滑らかで均等に全空間に広がる配光を得た。

 こうして全光束測定用の標準光源として理想的な配光特性を実現できた。市販の電球形LEDランプの全光束測定を想定し、それと同程度の大きさだ。今後は、全光束値と光源の大きさのバランスを見極めつつ、必要な全光束値を得るための点灯電流レベルに応じた放熱機構を最適化し、実用化を目指す。また全方向形標準LEDでの測定精度を上げるため、全光束や分光測定方法の高度化を進める考えだ。