東亞合成はこのほど、東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明特別教授のグループらとの共同研究により、低コストかつ分散や乳化などの工程でシングルナノセルロースにまで容易に解繊する(解きほぐす)ことが可能な新しい酸化セルロースを開発したと発表した。
パルプなどを原料とし、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液による酸化反応で、非常に緩やかな撹拌混合エネルギーによってシングルナノセルロースにまで解繊される酸化セルロースを開発。顔料の分散や化粧品の乳化に使用される汎用的なホモミキサーで数分間攪拌するだけで、ナノ解繊が進み透明な水分散液となる。これにより、製造時や使用時に必要なエネルギーを大幅に抑えることができ、コストの削減とCO2削減を同時に達成した。
脱炭素化社会の実現に貢献する素材として注目される非可食性バイオマス由来のセルロースナノファイバー(CNF)は、軽量性や強靭性、透明性をもつ素材として、自動車部材などの高機能材料への応用も加速している。一方で、木材などから得られるセルロース繊維を、毛髪の1万分の1の細さに相当するシングルナノセルロースまで解繊するには多大なエネルギーが必要であり、CO2負荷が大きくなるとともに製造コストがかさむことから、CNFの優れた特性を生かした実用例が少ないのが現状だ。
こうした背景の中で、東亞合成では解繊に必要なエネルギーの低減と低コスト化を目指してきた。今後は、既存のCNFと比べて5分の1程度の販売価格を目標にコストダウンと量産化の検討を進め、早期事業化を図る考えだ。次亜塩素酸ナトリウムを製造・販売する同社のリソースを最大限生かし、輸送方法も含めたCNFの新しい利用方法を提案していくとともに、さらに用途開発を進め、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する製品として、バイオ資源の有効活用とCO2削減を目的とした環境に優しい新しい材料を世の中へ提供していく。