三菱マテリアルが研究開発を進めてきたカーボンリサイクルプロセスがこのほど、「二酸化炭素の化学的分解による炭素材料製造技術開発」として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」に採択された。
同社は、2017年よりCO2を炭素材料にリサイクルする技術の研究開発に着手し、翌年CO2を分解して微粒子の炭素ナノ材料を回収することに成功した。同委託事業で要素技術の開発、プロセスの最適化、炭素の用途拡大、経済性検討などを行い、事業性について検討する。期間は今年度からの5年間の予定で、その後は規模を拡大した実証試験を経て、2030年頃の実用化を目指す。
CO2の分解には、水素ガスで活性化した還元剤(粉末状の金属酸化物)を使う。活性化した還元剤とCO2を300℃程度で反応させると、CO2が分解して還元剤に炭素が付着する。その後、炭素を還元剤から分離し、微粒子の炭素ナノ材料(有価物)として回収する。これはカーボンブラック(タイヤの補強材)、電池材料(電極)、構造材料など、多様な用途への応用が期待される。使用済還元剤を再生する過程で水素が生成し、それを還元剤の活性化に使用できる。CO2の利用と水素製造を同時に実現できる画期的なプロセスだ。同技術の実用化を含め、CO2排出量の削減や炭素の有効利用を進め、脱炭素社会の構築に貢献していく考えだ。