東レは25日、中国・香港の将軍澳(チョンクワンオウ)海水淡水化プラント向けに、逆浸透(RO)膜を受注したと発表した。20年以上にわたり世界中の海水淡水化プラントにRO膜を納入し、技術サポートによりプラントの安定運転を支えてきた同社の実績が認められ、今回の受注に至っている。
香港で初となる大型海水淡水化プラントは、造水量が1日当たり13.5万㎥で、香港における飲料水の約5%を賄う。プラントの完成および稼働開始は2023年末を予定しており、造水量は将来的に同27万㎥の規模に拡張する計画だ。
香港の水道水源は、貯水池から20~40%、中国本土・広州の東江から60~80%を得ている。ただ、人口増加や経済成長に伴う水需要の拡大、異常気象や深刻な干ばつに備えるため、安定した水源を確保する必要がある。また、珠江デルタ地域(広州、香港、深圳市、東莞市、マカオを結ぶ三角地帯)の急速な発展による水供給ストレスへの対応も課題となっている。こうした中、厳格な水管理に取り組む香港水務署(水道部)は、水資源を多様化する戦略の一環として、気候変動の影響を受けにくい海水淡水化プラントの導入を進める。
東レは、RO膜および技術サービスを将軍澳海水淡水化プラントに提供することで、香港のインフラ維持に貢献していく。東レは長年、RO膜の生産・販売・技術サポート体制の拡充により、世界中の水処理プラントを支えてきた。その用途は、海水淡水化をはじめ、廃水再利用から工業用途まで多岐にわたる。RO膜の累計出荷数量は、同1億500万?(生産数量ベース)で、生活用水換算で約7.3億人の需要を賄う量に相当する規模にまで拡大した。
東レは「サステナビリティ・ビジョン」や、長期経営ビジョンにおいて、安全な水の提供を取り組むべき課題として掲げる。今後も、最先端の膜技術を提供し続けることや、需要地での技術サービスをより一層強化することで、水需要が拡大するアジア地域をはじめ世界各地の水問題解決に貢献していく。