《アジア石油化学工業会議(APIC)2018》(下)

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2018年9月3日

 ▽タイ=2017年エチレン生産は7%増、EEC第2期に積極投資

 タイの17年のGDP(国内総生産)成長率は、前年比0.6ポイント上昇し、3.9%となった。欧州やアジアの消費が拡大する中、輸出が継続して伸長し、国内でも個人消費や投資が増大したことが上昇要因。18年のGDPは、世界の経済成長の加速、政府支出、公共投資の加速など、いくつかのプラス要因によって、4.6%成長を見込んでいる。

 タイの石油化学産業は、東部のマプタプットに集中しており、石化製品3000万tのほぼすべてをカバーし、17年は拡大基調となった。特に自動車分野は生産台数が198万台と前年比4万台増加し、また食品包装分野でも需要が引き続き伸長した。

 17年のエチレン生産は設備の拡張により、7%増の457万5000tとなった。18年は誘導品生産の影響で、エチレン消費は2%減の447万1000tを見込んでいる。プロピレンは、誘導品需要から17年の生産は5%増の260万t。下半期から新生産設備の稼働も始まった。18年もポリプロピレン(PP)需要が伸び、生産は2%増が見込まれている。

 17年のブタジエンの生産は、自動車向け需要が伸び6%増の26万2000tとなり、18年も微増となりそうだ。一方、17年の主要ポリマーの生産量は、前年比で3%増加した。国内市場と輸出市場で需要が伸び、特にPPとPVC(塩化ビニル樹脂)が好調だった。

 PPの国内需要は、パッケージング部門の伸びにより6%増加。またPVCは、CLMV諸国(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)の建設需要の高まりから43%増と大幅に増加した。

 合成ゴムについては、18年の見通しでは、E‐SBRの内需は輸送・物流政策の支援により、17年に比べ改善される見込み。BRの内需も、国内自動車産業からの強い需要により増加が予想されている。

 タイでは政府がチャチュンサオ、チョンブリー、ラヨーンの3県を東部経済回廊(EEC)地域と指定。約30年前から開発が進み、現在では自動車産業が集積しているイースタン・シーボード工業団地は「東洋のデトロイト」と呼ばれ、マプタプット工業団地には石化コンビナートが形成されている。

 現在進行中の第2期計画では、次世代自動車や電子、ロボットなど先端分野に投資が行われており、EECを国際社会へのゲートウェーにしていく考えだ。

 APICのオープニングアドレスで、FTIPC会長は「東部沿岸開発の活性化と強化を目指し、EECに先進的なロボットなど新しいS字カーブ型産業を育成する。そのため官公庁と民間セクターの間でさらに高いレベルのコラボレーションが必要」との見解を示した。

 ▽シンガポール=インダストリー4.0に対応、来年炭素税も導入

 シンガポールの17年のGDPは、4226億7910万シンガポールドル、成長率は3.6%となり前年から1.6ポイント増加した。製造業の生産高は3210億7800万シンガポールドル、成長率は17.4%と過去2年のマイナス成長から大幅に改善している。一方、17年の化学産業の生産高は827億シンガポールドルとなり、前年比で18.8%増と、こちらも2年連続の2桁マイナスから大幅に改善した。

 同国の化学産業は、

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《アジア石油化学工業会議(APIC)2018》(上)

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2018年8月31日

 8月20~21日にマレーシア・クアラルンプールで開催されたアジア石油化学工業会議(APIC)2018は、過去最高となる合計2011人が参加。「コラボレーションによる価値を創造」をテーマに、好調な事業環境の今後の見通しや、新たなイノベーション創出のための協調、さらには海洋ごみ問題など、化学産業が取り組むべき様々な課題について活発な議論が交わされた。

 近年、アジアでは中間層の拡大により需要が増加しており、各国の石化業界は収益を確保している。ただ、米国と中国の貿易摩擦が深刻化することに対し、マーケットへの悪影響を懸念する声も多数あり、各国が注視している状況だ。そうした中、アジアの石油化学工業が発展するためには、個々が持つ情報や技術を共有し「協調」することで、新たな価値を生み出すことが重要であるとホスト国からの強い訴え掛けがあった。

 一方、海洋ごみなどプラスチックの環境問題がクローズアップされ、化学企業への風当たりが強くなってきたことで、環境問題への意識も高まっている。各国協会のスピーチでも、持続的な社会への貢献のため、化学産業が環境問題に取り組んでいく必要性が示された。この問題には、日本は以前から取り組んでおり、プラスチックのリサイクルの知見や実績を保有していることから、今後、リーダーシップを発揮することが期待されている。

 アジアを取り巻く環境が大きな変化に直面する中で、アジア各国の石化産業が置かれている現状をレポートした。

▽日本=需要堅調で設備高稼働、安全・環境といった課題に注力

 日本の17年の実質GDP(国内総生産)成長率は、1.6%となった。海外経済が回復したことを背景に、一般機械や自動車を中心に輸出が伸長した。企業収益が改善したことで生産性向上のための設備投資が行われ、また、個人消費も緩やかな回復となった。

 今年については、「2020年東京オリンピック・パラリンピック」に関連するインフラ需要の増加などポジティブな要因があり、景気は回復基調が見込まれている。

 しかし、北朝鮮問題や中東リスクに加え、中国経済減速、米国や欧州の不安定な政策など世界経済を下押しする要因がある。また、労働人口減少により、いくつかの産業では経済成長が落ち込む可能性も出てきており、先行き不透明な状況だ。

 17年のナフサクラッカーの平均稼働率は96.8%と前年比0.7ポイント上昇し、2年連続で95%を上回った。エチレン生産量は、653万tと前年から4%増加。また、内需(エチレン換算)も5%増の505万7000tと、3年ぶりに500万t台を回復している。その要因として、2016年までのエチレン生産能力の削減に対し、予想以上に内需が活発となり、また外需が堅調だったことが挙げられる。

 2018年については、アジアと日本の需要は引き続き堅調となる見通し。米シェール由来石化製品がアジアの需給バランスに与える影響が懸念されるが、今年はクラッカーの定修が集中するため影響は限定的となりそうだ。

 日本の石化産業は、これまで様々な課題解決に注力してきた。生産能力の最適化では、エチレンクラッカー閉鎖の動きは一段落したが、ポリオレフィンを中心とした誘導品の設備集約は進行中。汎用品から高付加価値品へのシフトでは、誘導品メーカーは、高機能製品のラインアップを拡大する動きが加速している。また、コスト競争力の強化も注力すべき課題だ。

 18年以降、北米シェール系石化製品の流入や、中国の石炭化学の台頭により、激しい世界競争に直面する事態が予測されており、生き残りを図るため、クラッカーや誘導品プラントのコスト競争力を今まで以上に高める必要がある。

 施策として①石油精製所との垂直連携やコンビナート内外での水平連携の強化②クラッカーからの未利用留分の有効利用と新製品の開発③高効率と低コストを達成するため老朽化プラント対策④省エネルギー追求によるコスト削減、などが必要となるだろう。

 そして、安全と環境を守るための施策に注力することも業界全体のテーマだ。石化企業は、供給責任を果たすため、安全・安定操業を最優先としている。安全を強化するために企業は、安全文化の醸成やIoTやAIなど新しいテクノロジーの利用など、様々な方法で管理責任を増加させている。

 さらに近年では、地球温暖化といった環境問題解決への貢献も求められてきた。中でもプラスチックの海洋ごみ問題が欧州を中心にクローズアップされ、化学業界の対応に注目が集まっている。

 APICのオープニングアドレスでJPCAの森川宏平会長は「海洋廃棄物とマイクロプラスチックの問題に対処する重要なポイントは、プラスチック廃棄物が海洋に流出するのを許さないことだ」とし、「プラスチック廃棄物を回収し、効果的に使用するための枠組みを迅速に確立する必要がある。そのために、各国の経験やベストプラクティスを共有することが非常に重要だ」と述べている。

▽韓国=合成樹脂と合繊原料が回復傾向、輸出は米中向けに伸長

 17年の韓国のGDP成長率は前年比0.3%増の3.1%となった。建設業の好調さを背景に国内需要が回復した一方、中国経済の減速と原油価格の下落により輸出の伸びが鈍化した。

 18年の韓国経済は、安い原油価格が汎用品の価格を安定させ、雇用や企業生産の増加など緩やかな回復の兆しを見せている。ただ、海外において保護主義や中国経済の成長率など不確定要素がある。また、国内でも内需の大幅な伸びは期待できず、輸出の減速も継続しており、GDP成長率は政府予想の3.0%を下回る見通しだ。

 一方、17年の主要石化3部門(合成樹脂、合繊原料、合成ゴム)の生産と需要は、輸出入の増加や好調な対面業界によって増加傾向となった。生産量は、合成樹脂と合繊原料の生産増加により前年比4.3%増の2197万6000t。輸出は、最大の輸出先である中国が輸入を強化したことで同5.7%増の1139万t。国内需要は、建設業界の合成樹脂需要が強く、同3.6%増の1163万1000tとなった。

 全体の稼働率は合成樹脂と合繊原料の稼働が上がったことで、89.5%と1.7ポイント改善した。合成樹脂は収益性が高く、稼働率も94.8%と0.5ポイント上昇し、合繊原料も中国市場への輸出が増加したことで稼働率は4.7ポイント改善し82.7%となった。

 18年の石化業界は、

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ジェイ・プラス 可塑剤を9月10日出荷分から値上げ

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2018年8月31日

 ジェイ・プラスは30日、アジピン酸系可塑剤とトリメリット酸系可塑剤を9月10日以降の納入分から、いずれも18円/kg以上値上げすると発表した。

 対象製品はアジピン酸系可塑剤の「DOA」「DINA」「D610A」、トリメリット酸系可塑剤の「TOTM」。

 原油・ナフサ価格の上昇を受け原燃料費が上昇、物流費など諸経費も上昇している。これらのコスト増を自助努力で吸収するのが困難になっていることから、安定供給を果たすため価格を改定することにした。

帝人ファーマ 韓国でCPAP治療装置のレンタル事業を開始

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2018年8月31日

 帝人ファーマは30日、韓国で睡眠時無呼吸症候群の、持続陽圧呼吸療法(CPAP)治療装置のレンタル事業を開始したと発表した。同国でCPAPが7月2日から公的保険適用となったのを受け、同社グループの韓国合弁会社Yuyu Teijin Medicare Inc.(YTM社)を通じて事業を行う。

 睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気や集中力の低下につながることから、交通事故や医療事故、産業事故のリスクを高めるとされている。近年の研究では、高血圧や脳卒中の発症率との関連性も報告されるなど、治療意義の高い疾患で、日本では1998年から公的保険の適用となっている。

 韓国でも、2016年に睡眠時無呼吸症候群の検査・治療などで、医療機関を受診した患者が約三万人に及ぶとされており、公的保険の適用を期待する声が高まっていた。

 帝人ファーマは2006年に韓国の医薬品メーカーであるYuyu Pharma,Inc.との合弁により、YTM社を設立して以来、同国で在宅医療事業を展開。在宅酸素療法用の酸素濃縮装置のレンタル事業では、トップシェアの地位を確保している。

 今回、CPAPが公的保険適用となったことにより、YTM社が現地で構築している強固なネットワークと、帝人ファーマが日本のCPAP事業で培った技術やノウハウを活用し、さらなる事業拡大を図っていく。

帝人フロンティア 撥水・ストレッチ機能持つ新素材を開発

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2018年8月31日

 帝人フロンティアは30日、撥水性とストレッチ性を兼ね備えた新素材「ミノテックST」を開発したと発表した。2019年春夏向けから販売を開始する予定。

 中肉素材を中心に、ファッションボトム用途やアウター用途などに向けて商品企画を提案する。今年度は1億円、再来年度には10億円の売上を目指す。

 生地の表面を水滴よりも小さい凸構造とすることで、水滴を転がり落とす。初期の撥水性は4級以上で、耐久撥水性としては約20回の洗濯で3級程度となっている。

 撥水機能を持たせた生地は、糸を高密度に配列する必要があるため、伸長性を付与することは困難とされていたが、生地設計により、伸長率10%のストレッチを可能とした。また、生地をストレッチした状態でも、凸構造と凹構造を維持できるように糸を配しているため、ストレッチ状態でも撥水性を保つことができる。

 近年、突然の大雨が増加していることから、衣料素材に対する撥水機能のニーズが高まっており、ファッションアウター向けとして、撥水性に優れる生地の採用が広がっている。

 また、ストレッチ性が要求されるボトムや、スリムシルエットのアウターなどにも撥水性のニーズが高まりつつあり、ストレッチ機能と撥水機能を兼ね備えた素材の開発が求められている。

 これに対し、同社ではすでに展開している撥水性ファブリック「ミノテック」をベースに、構造体設計を工夫することで、ミノテックSTを開発した。

トクヤマ 高純度窒化アルミニウム粉末の設備を増強

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2018年8月31日

 トクヤマはこのほど、高純度窒化アルミニウム粉末の需要増に対応するため、徳山製造所(山口県周南市)で製造設備の増強を決定したと発表した。

 放熱材事業の主要製品の高純度窒化アルミニウム粉末は、伸長著しい放熱市場での需要拡大が見込まれている。同社は放熱材事業を中期経営計画で成長事業として位置づけており、市場のニーズに対応するため、製造設備を増強することで事業拡大を図る。

 高純度窒化アルミニウム粉末の製造設備は徳山製造所徳山工場内に建設し、2020年4月の営業運転開始を予定。今回の増強により、高純度窒化アルミニウム粉末の生産能力は40%増強されることとなる。

 同社はこの増設を通じて、高純度窒化アルミニウム粉末の供給体制をより一層拡充し、さらなる安定供給を図るとともに、幅広い用途展開を推進していく考えだ。