大日本印刷(DNP)はこのほど、独・va‐Q‐tec AG社と、ボックスを開けることなく、中に入っている製品に貼付されたICタグの情報や温度センサーを外から読み取ることで、ボックスの内容物の確認や温度管理ができる電波透過型の断熱ボックスを共同で開発した。両社は2020年に、この電波透過型断熱ボックスを、適切な温度管理が求められる医薬品などの輸送用に発売する。
医薬品の卸会社などは、卸センターから支店、支店から薬局に製品を輸送する際、内容物の確認を行っている。医薬品などは運搬時に指定温度を確保する必要があるため、断熱性の高い輸送用のボックスを利用するが、従来の断熱ボックスは、水蒸気や酸素などを通しにくいアルミなどの金属を蒸着したフィルムを含む真空断熱パネルを使用しており、その金属が電波を遮断してしまうため、ICタグや温度センサーの無線通信での読取りができなかった。
そのため、内容物の確認のために断熱ボックスを開けなければならず、内部の温度をいかに維持するかという課題があった。こうした課題を解決するため両社は、DNPがエレクトロニクス分野や産業用途で培った水蒸気や酸素などへの高いバリア性をもつ「DNP透明蒸着フィルムIB‐Film」や真空断熱パネルで培ったノウハウを活用し、va‐Q‐tecが真空断熱ボックス技術を活用することで、電波の透過を可能にして、ICタグや温度センサーの無線通信を利用できる断熱ボックスを開発。
中に入れる全ての医薬品に貼り付けたICタグの情報を外から読み取ることで、その都度断熱ボックスを開けることなく内容物やボックス内の温度が確認できるため、医薬品の品質安定とすり替えなどの偽薬防止対策に活用できる。
今後、両社は、医薬品卸会社など輸送時に適切な温度管理を必要とする用途向けに電波透過型断熱ボックスを販売し、2020年度に年間で10億円の売上を目指す。