帝人など 「心・血管修復パッチ」の臨床試験を開始

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2019年6月12日

 帝人と大阪医科大学、福井経編興業の3者は11日、共同開発を進めている「心・血管修復パッチOFT‐G1(仮称)」の臨床試験を開始したと発表した。開発品を使用した第1例目となる手術が、治療実施医療機関で行われた。

 一般に、組織欠損部の補填や狭窄部の拡大などの修復を要する心臓血管手術には、修復パッチが広く使われている。開発品は強度と伸長性を併せ持ち、体内に埋め込んだ材料の一部が自己組織に置換される特徴もあることから、体の成長に合わせて材料の伸長が必要になる小児への使用に適していると考えられる。

 また、こうした特徴から再手術のリスク低減につながり、患者や家族の肉体的・経済的な負担を軽減することが期待できる。

 開発品を使用して実施した第1例目の手術は、生後4カ月の心室中隔欠損症患者の心臓血管手術。患児は順調に回復し、すでに退院しており、今後は外来で経過観察を継続する予定だ。

 開発品は大阪医科大の心臓血管手術に関する豊富な知見、福井経編の優れた経編(たてあみ)技術、帝人のポリマー解析技術を組み合わせたことで創出された医療材料。日本医療研究開発機構(AMED)の医工連携事業化推進事業「術後のQOLを改善させる心・血管修復シートの事業化」の支援を受けて開発を進めている。

 昨年4月には、厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、世界最先端の治療を早期に提供できるよう、さまざまな優遇措置を受けている。国内での開発品の早期の薬事申請と上市を目指しており、将来的には海外での事業化も検討している。

 3者は今後も共同開発に注力し、先天性心疾患の患者の治療とQOL向上に貢献していく。

JSR 慶大からPSC治療に関する研究成果の独占的実施権を取得

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2019年6月12日

 JSRは11日、肝移植以外に有効な治療法が少ない難治性自己免疫性疾患である原発性硬化性胆管炎(PSC)の治療、診断に関わる研究成果の独占的実施権を慶應義塾大学から取得したと発表した。

 また、バクテリオファージ(細菌に感染するウィルスの総称)を用いた細菌感染症治療薬の開発を進めている、イスラエルの創薬ベンチャーのバイオムX社に対し、同研究成果のうちファージセラピーへの応用に限定した独占的再実施許諾を行った。

 慶應義塾大学医学部消化器内科(金井隆典教授)の研究グループは、腸内細菌叢の乱れに乗じて、通常は口腔などに存在するクレブシエラ菌などが腸管内に定着し、腸管バリアを破壊して腸管の外にあるリンパ節に移行することで、肝臓内のTh17細胞と呼ばれる免疫細胞の過剰な活性化を引き起こし、PSCの発症に関与する可能性があることを明らかにした。

 その成果は、1月14日にネイチャー・マイクロバイオロジー誌に掲載され、腸内細菌を標的としたPSCに対する新たな治療薬や診断薬の開発につながることが期待される。

 一方、慶應義塾大学からの独占的実施権取得に基づくバイオムX社への独占的再実施権許諾は、慢性炎症性腸疾患の治療、診断に関わる研究成果(昨年1月30日)に続き、2件目となる。

 JSRは、JSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター (JKiC)での取り組みを通じて、腸内細菌叢の恒常性維持に関わる技術と診断薬の開発を進めていく。

 また、バイオムX社では、PSCの発症に関与していると考えられるクレブシエラ菌を標的とするファージセラピーの開発を進めていく。

 ファージセラピーは、標的とする細菌のみを殺傷できるという特徴がある。抗生物質のように腸内細菌叢の攪乱を起こさないため、抗生物質耐性菌による院内感染などが社会問題化する中、抗生物質に代わる細菌感染治療法として再び注目されてきている。

 JSRグループは、オープンイノベーションにより革新的な材料や製品の開発に取り組んでいく。

 

 

日化協 「安全表彰」「技術賞」「RC賞」の受賞者を選定

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2019年6月6日

 日本化学工業協会(日化協)はこのほど、「日化協安全表彰」「日化協技術賞」「日化協RC賞」の今年度の受賞者を選定した。

 優れた安全活動を実施し、模範となる事業所を表彰する「安全表彰」では、「安全最優秀賞」に昭和電工小山事業所、「安全優秀賞(特別:中小規模事業所)」には、旭化成メタルズ友部工場と昭和ファインセラミックス、三井化学東セロ安城工場、「安全優秀賞(特別:研究所)」には、三井化学アグロ農業化学研究所とJNC横浜研究所が選ばれた。このうち昭和電工小山事業所は、無災害記録時間900万時間、無災害年数7年2カ月を継続中である。

 社会全体の発展や環境の改善に大きく寄与した、革新的で優れた科学技術や製品の創出を表彰する「技術賞」については、カネカが「『カネエースMX』の研究開発と工業化」で「総合賞」、クレハが「高分子量ポリグリコール酸の製造技術開発と新市場開拓」で「技術特別賞」を、それぞれ受賞した。

 カネカはコアシェルゴム粒子(CSR)のエマルジョンから、粉体を経由せずに一次粒子を熱硬化性樹脂に分散させる独自プロセスを開発。この新しい分散技術を利用し、CSRの構造設計・制御技術を組み合わせることで、ブタジエン系CSRのエポキシ樹脂マスターバッチ「カネエースMX」の工業化に成功した。

 クレハは世界で初めてポリグリコール酸(PGA)の工業的な製造技術の開発に成功。最近では、その機械強度と加水分解性を生かして、シェールオイル・ガスの掘削プロセスで使用されるPGA製機器の採用が広がっている。

 レスポンシブル・ケア(RC)活動の普及や活性化に貢献した事業所や部門、グループ、個人を表彰する「RC賞」に関しては、「RC大賞」に花王SCM部門、「RC審査員特別賞」に三菱ガス化学新潟工場第一製造部第一化成課と住友化学レスポンシブルケア部(気候変動対応)、「RC優秀賞」にJSR千葉工場と徳山積水工業、三菱ケミカル茨城事業所環境安全部、「RC努力賞」に住友ベークライト静岡工場ビオトープ委員会、日産化学富山工場が選ばれている。

ソーダ工業会 角倉会長「業界を挙げ環境エネ問題に尽力」

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2019年6月5日

 日本ソーダ工業会は3日、総会後に記者会見を開催した。

 角倉護会長(カネカ社長)は昨年度を振り返り、「業界を取り巻く環境は電力料金やインドへの輸出問題など厳しい状況にあったが、生産(前年度比0.9%減399万7000t)、出荷総数(内需+輸出:同0.4%減401万1000t)とも、ほぼ前年度並みを維持することができた」と語った。

 今年度については「世界情勢が変調しており、われわれの力が及ばないところで景気が左右される可能性がある。特に

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【アジア石化特集・カントリーレポート】石化環境変調で慎重な姿勢に

2019年5月30日

 プラ廃棄問題が共通認識、循環経済への貢献図る

 5月16~17日に台湾・台北で開催されたアジア石油化学工業会議(APIC2019)は、世界各国から関係者1201名が参加。

 「スマート石油化学プロセス-より良い世界を可能にする持続可能な解決策」をテーマに、今後のアジア市場の需給見通しやエネルギー・原料動向、またプラスチック海洋ごみ問題解決を含めたサーキュラーエコノミー(循環経済)への対応など、化学産業が取り組むべきさまざまな課題について活発な議論が交わされた。

 近年、アジア地域のおう盛な需要を背景に好況を享受してきた石化業界は、米中貿易問題を発端に中国経済が減速したため、昨年後半から一気に環境が悪化した。中長期的には市場成長が見込まれているものの、各国では石化設備の新増設が立ち上がりつつあり、需給悪化に懸念が広がっている状況だ。

 そうした中、アジアの石油化学工業が発展するためには、AI・IoT技術を活用したコンビナートの高度化や、社会に貢献できる製品開発が必要であるとの提言がホスト国からなされた。

 一方、海洋ごみなどプラ廃棄が世界で問題視され、化学企業を見る目が厳しくなっている。各国協会の代表スピーチでも、持続可能な社会の実現に向け、リサイクルをはじめとした循環経済に貢献する取り組みの必要性が示された。日本は、以前から取り組んできた廃プラの回収や適切な処理の重要性を訴えている。

 石化業界を取り巻く環境が大きく変化する中で、アジア各国の石化産業が置かれている現状をレポートした。

 

神戸大学など スマートセルで医薬品原料の生産向上に成功

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2019年5月28日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と神戸大学、石川県立大学はこのほど、計算機シミュレーションを用いて微生物の代謝経路と酵素を新しく設計し、医薬品原料の生産性を2倍以上に向上させることに成功した。

 同技術をさまざまなターゲット化合物に応用すれば、既存の手法では生産が難しい有用物質の生産が可能となり、生物機能を活用して高機能な化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」創出が期待される。

 鎮痛薬などの医薬品原料として利用されているベンジルイソキノリンアルカロイド(BIA)は従来、植物からの抽出によって生産されているが、効率面やコスト面での課題がある。近年、大腸菌での生産研究が報告されているものの、生産量が低く実用化に向けては生産性の向上が求められていた。

 これまでの研究から、BIAの前駆体化合物テトラヒドロパパベロリン(THP)を細胞内で生成させる酵素の活性が弱いことが分かっており、このボトルネックの解消がカギとなっていた。

 NEDOと神戸大学、石川県立大学の共同チームは、京都大学の荒木教授が開発したバイオインフォマティクス(生命情報科学)技術による代謝設計ツール「M‐path」を用い、ボトルネックとなる代謝経路をショートカットするとともにBIAの生産性向上に寄与する新規の代謝経路を設計。

 同時に、新規ショートカット経路を構成する酵素を自然界から探索し、構造シミュレーションを活用してアミノ酸配列を改変することで、新規経路だけでなく従来経路もバランスよく併せもつ酵素の作出に成功した。

 さらに、設計した代謝経路と酵素に関連する遺伝子を大腸菌に導入して検証試験を行い、菌内でも両方の代謝経路が効率よく機能し、BIA生合成の代謝中間体であるTHPの生産量を2倍以上増大させることを確認。微生物発酵法によるBIA生産の実現可能性を示唆するものとなった。

 また、生産菌のメタボローム解析を行った結果、生産性のさらなる向上につながる代謝ルールを発見しており、実用化への期待が高まっている。

日本化学工業協会 淡輪会長「科学的な評価でERの有効性を発信」

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2019年5月28日

 日本化学工業協会は24日、都内において定時総会後に懇親会を開催した。

 淡輪敏会長(三井化学社長)は冒頭のあいさつで、「昨年度を振り返ると、世界経済はリスクに覆われていたが、今年度はさらにリスクが高まっている状況だ。緩和の期待もあった米中貿易摩擦も長期化の様相を呈している。また、ブレグジットや中東問題など、リスクを挙げれば枚挙に暇が無い。こうした中、しっかりと経営に当たっていかなければならない」と危機感を示した。

 日化協では、操業・製品に関わる安全の強化、新たな価値の創造と持続可能な社会の構築への貢献、社会とのコミュニケーション強化、の3つの柱で活動を推進している。

 淡輪会長は「昨年はグローバルな課題として、

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プラ工連 「プラ資源循環戦略」の具体策に向け本格始動

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2019年5月24日

 日本プラスチック工業連盟は22日、定時総会での承認ののち、都内で会見を開き、同連盟が舵取りする「プラスチック資源循環戦略」を公表した。プラスチックの最適利用社会の実現に向けた取り組みが、本格的に動き出す。

 姥貝卓美会長(三菱ケミカル特別顧問)は同戦略について、「昨年来進めてきた議論を集約し、『プラスチック最適利用』の方向性と具体策を打ち出すとともに、当連盟が従来から展開している海洋プラスチック問題への取り組みを統合したものだ」と説明した。

 昨年10月には同戦略に関する「基本的な考え方」を公表し、

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日本ポリエチレン製品工業連合会 萩原会長「PEは生活に有益で必要な樹脂」

2019年5月23日

 日本ポリエチレン製品工業連合会(JPPIF)は21日、都内において総会後に懇親会を開催し、関係者約60名が参加した。

萩原会長
萩原会長

 萩原邦章会長(萩原工業会長)は冒頭の挨拶で、「我々プラスチック加工業界の環境を見ると、昨年は原油・ナフサの上昇に伴いレジン価格が上昇しただけではなく、物流費も高騰した。なかなか価格転嫁が進まず、収益的には厳しい年だった。今年1Q(1-3月期)のナフサ価格は下落に転じ上期は一息付けるかと思っていたが、

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VEC 横田会長「優れた環境特性を訴求し、需要増へ」

2019年5月23日

 塩ビ工業・環境協会(VEC)は21日、都内で懇親会を開催し、関係者約110名が参加した。

横田会長
横田会長

  横田浩会長(トクヤマ社長)は冒頭のあいさつで、「昨年度の生産と出荷総計は、いずれも3年連続で160万t台を維持した。こうした堅調な塩ビ(PVC)需要が今後も持続することを期待している」と、塩ビの需給実績を振り返り、今年度への期待感を示した。

 2018年度の生産は165万t(前年度比1.6%減)、国内出荷は104万t(同0.7%減)、輸出は59万t(同0.5%減)、出荷総計は164万t(同0.7%減)だった。

 環境対策については、

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