日本化学工業協会 安全表彰の事例掲載、ベストプラクティス集発行

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2021年4月7日

 日本化学工業協会はこのほど、2013~2019年度の7年間に日化協の安全表彰を受賞した事業所の活動内容(32社140事例)をまとめた事例集「保安防災・労働安全衛生活動ベストプラクティス集(Ⅱ)」を発行した。

保安防災・労働安全衛生活動 ベストプラクティス集(Ⅱ)
保安防災・労働安全衛生活動 ベストプラクティス集(Ⅱ)

同事例集は、ベテラン社員の退職による年代構成の変化への対応、生産性の向上に取り組む上での安全対策の改善と維持など、安全活動が行われている事例を内容によって、「安全基盤」に関する項目(安全情報、災害・事故の想定と対応、リスクアセスメント、安全設計、変更管理、教育)と、「安全文化」に関する項目(マネジメント、積極関与、相互理解、危険認識、動機付け、学習伝承)の2つに大別し、利用者が必要な事例を探しやすい構成となっている。

 日化協は、1977年度から安全表彰制度を実施。受賞した事業所の活動内容を、日化協ウェブサイトの会員ページに掲載するとともに、「安全シンポジウム」を開催し公表している。また、2013年度には、その活動内容をまとめた事例集「ベストプラクティス集」を発行するなど、日化協会員に留まらず、化学産業をはじめ製造業全般に広く共有してきた。

 日化協は、今回の事例集が活用され、優れた安全活動を共有することにより、わが国製造業の安全活動向上に役立つことを期待している。

 

三菱ケミカル グローバル・コモンズ保全、東大と研究を開始

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2021年4月1日

 三菱ケミカルと東京大学は31日、グローバル・コモンズ(人類の持続的発展の共通基盤である地球環境システム)を守るための化学産業の役割に関する共同研究を4月1日から開始することで合意したと発表した。

 直面している地球環境危機を乗り越え、持続可能な未来を創っていくためには、経済社会の在り方や生活様式を大きく変えていく必要がある。こうした大きな変革に、素材産業である化学産業の果たすべき役割は極めて大きい。さらに、民間企業のみならず、中立的な立場にある大学がその知を結集して、共に取り組んでいくことが重要になる。今回の共同研究で、東京大学が昨年開設したグローバル・コモンズ・ センターと三菱ケミカルは、持続可能な経済社会を築くための化学産業の役割について2年間の予定で研究を行う。

 具体的には、プラネタリー・バウンダリーズ(地球上で人類が生存するための九つの限界値)の範囲内で活動するサステナブルな社会・経済の実現を目指して、化学産業自らの環境負荷低減に加えて、他の産業や消費者のために化学産業が果たすべき役割、解決すべき課題を検討し、ビジョンを描く。特に生産・消費(サーキュラーエコノミー)、エネルギー、食料、都市などの主要経済システムの転換に対して化学産業が貢献できることを研究する。

 今回の研究の特長は、専門性をもつ外部の知も結集して取り組むことにより、欧州をはじめとする海外での最新の取り組みも参考にしながら、主要化学品の原料からリサイクル・廃棄までの定量的なモデルを構築・活用して、日本の化学産業の取るべき道筋を明らかにするところにある。化学からのグローバル・コモンズ保全への貢献、そして社会・経済システム転換の道筋に関する今回の研究成果を、変革を起こすために残された時間があと10年しかないと警告されている中で、サステナブルな社会・経済の実現加速のために社会へ広く共有、発信し、社会変革を駆動していく考えだ。

(左から)藤井輝夫東京大学次期総長 、石井菜穂子ダイレクター、和賀昌之社長 、 五神真総長
(左から)藤井輝夫東京大学次期総長 、石井菜穂子ダイレクター、和賀昌之社長 、 五神真総長

日化協 森川会長「事業環境は緩やかな回復が継続」

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2021年3月22日

カーボンニュートラル実現には化学産業が原動力

 日本化学工業協会は19日、定例となる森川宏平会長(昭和電工社長)の会見を開催した。10-12月期の主要化学企業の実績について森川会長は、「化学企業も回復の傾向が表れてきている。売上高は前年比で7四半期連続の減収となったが、営業利益は9四半期ぶりに増益となった。汎用化学品はスプレッドが低水準にあるものの、市況の改善により市況が回復している。特殊化学も自動車および電子材料の市場環境がさらに改善した」と総括した。今後の見通しについては “日化協 森川会長「事業環境は緩やかな回復が継続」” の続きを読む

日本化学会 第101春季年会はオンラインで開催

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2021年3月11日

 日本化学会は9日、第101春季年会(19~22日)の概要について記者会見を開催した。昨年の第100春季年会は、新型コロナウイルス感染拡大により中止となっていたが、今年はオンライン(Zoom)での開催となる。

 大月穣実行委員長(日本大学理工学部・教授)は、「年会改革を行った新たな春季年会だ。講演はタイプ別に再編し、分野横断的な多様な研究交流の機会創出を目指す」と語った。そして「アドバンスト・テクノロジー・プログラムは、

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旭化成 延岡市と健康長寿のまちづくり開始、骨折を予防

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2021年1月27日

 旭化成は26日、創業の地である宮崎県延岡市で健康長寿社会の実現に向けた取り組みを今月末から開始すると発表した。延岡市が目指す「健康長寿のまちづくり」と旭化成グループが目指す地域社会での「サステナビリティの実現」という方針が一致し、共同で「骨粗鬆症による骨折の予防を目的とした健康長寿のまちづくり」に取り組んでいく。

まちぐるみで骨粗鬆症を見守る体制(延岡モデル)のイメージ
まちぐるみで骨粗鬆症を見守る体制(延岡モデル)のイメージ

 わが国では、骨粗鬆症の患者が約1280万人いると見られているが、骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がないことも多く、適切な予防や治療がなされないケースも少なくない。骨粗鬆症による骨折者数は、この20年間で患者数が約2倍に増加しており、高齢化に伴い今後も増加することが見込まれている。骨粗鬆症による骨折は患者本人や家族のQOLを低下させる要因にもなり、経済的な負担も少なくない。

 こうした中、同社の延岡支社と延岡市は昨年12月、骨粗鬆症による骨折予防を目的とする「自分の足で100年歩ける健康長寿のまちづくりに関する協定」を締結。その協定に基づき、骨疾患治療薬の開発・製造を手掛ける旭化成ファーマがもつ多くの知見や、旭化成のデータ解析などの技術を、高齢化が進む社会課題の解決手段として有効活用し、延岡市や研究機関(国立循環器病研究センター、宮崎大学、東京大学)の専門家との連携を通じて、地域の人々の健康長寿社会の実現に向けて取り組む。

 期間は、今月末~2026年末の6年間を予定。内容は2年ごとに、第1期:現状把握のための調査と課題解決の仮説を策定、第2期:地域を限定した実地での試行と課題検証、第3期:延岡市全域で事業として施行し成果の確認と事業継続性などの最終評価を実施、の3期に分けて段階的に実行する。

 この取り組みによって、延岡市では、「まちぐるみで骨粗鬆症を見守る体制(予防、早期発見・治療)(延岡モデル)」を実現することで、広く市民のQOLが維持されるとともに、地域の医療費、介護費の抑制を目指す。また旭化成は、将来的に同モデルを他の地域へ広げるとともに、応用可能な他の疾患への展開も検討していく。

 

JaIME 中学理科の映像教材制作、プラへの理解促進

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2021年1月25日

 海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)はこのほど、 新しい学習指導要領(平成29年告示)に対応した中学理科教育用映像教材として、「プラスチックとわたしたちの暮らしⅡ」を制作・発行した。

プラスチック製品の役割やリサイクルについて理解を深める、中学理科教育用映像教材
プラスチック製品の役割やリサイクルについて理解を深める、中学理科教育用映像教材

 同教材は、平成20年告示の学指導要領にあわせ制作した「プラスチックとわたしたちの暮らし」(企画:日本化学工業協会)の改訂版として、映像資料のDVDと指導資料のCD-ROMの2枚セットとなっている。DVDでは、本編は「プラスチックとグルメ」「プラスチック、分類チャレンジ!」「ペットボトル6つの謎」など5編、特典映像「リチウムイオン二次電池の開発」「プラスチック実験集」など3編からなり、総視聴時間は88.5分。授業での使いやすさを考慮し、それぞれが1編8~15分程度の1話完結で構成されている。

 同教材はコンセプトを、「プラスチックは、限りある資源から創られたものであり、多様かつ有用な機能から生みだされる新たな価値の創造により、持続可能な社会に貢献する可能性をもっていること」とし、プラスチックへの理解を深めるのが目的。中でも、①教育現場でのプラスチックについての科学的な見方や見識、プラスチック製品に関する理解②新たな価値創造の具体例を示し、低炭素社会に合った、持続可能な社会の構築に貢献していることへの理解③化石燃料由来であることから、使用後の有効利用までを含め、限りある貴重な資源としての理解促進に力点を置き制作した。

 中学校の理科教員向けの映像教材として、2021年度から始まる新しい学習指導要領での授業の、第3学年の「化学変化とイオン」「化学技術と人間」などの複数の単元での使用を想定している。なお、JaIME事務局の日化協や塩ビ工業・環境協会(VEC)などのウェブサイトから、DVDの映像資料とCD‐ROMの指導資料を視聴・閲覧できる。

三菱ケミカルホールディングス 統合報告書がWICIの優良企業賞を受賞

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2021年1月25日

 三菱ケミカルホールディングスの統合報告書「KAITEKI レポート2020」がこのほど、WICIジャパン統合リポート・アウォード2020の「優良企業賞(シルバー・アウォード)」を受賞した。同社が同賞を受賞するのは初となる。

統合報告書
統合報告書

 WICIジャパンは、統合報告の普及活動を日本で推進する方策として、WICIジャパン「統合報告優良企業賞」表彰制度を2013年に創設し、昨年10月には、表彰制度の名称を「WICIジャパン統合リポート・アウォード」に名称を変更した。創設以来、毎年上場日本企業が発行した統合報告書を対象に評価を行っており、今回で8回目の表彰となる。

 今回、三菱ケミHDが発行した「KAITEKI レポート2020」が、「統合報告書としての完成度が高い、または、財務・非財務の情報が十分に記載されており、統合報告としての重要な内容要素が織り込まれ、他の企業の統合報告の範となりうる企業」として高く評価された。

 同レポートでは、2050年の未来像からバックキャストし、2030年のあるべき企業像と成長の道筋を明確にした中期経営基本戦略「KAITEKI Vison 30」や、中期経営計画「APTSIS20」の下で取り組んでいた事業ポートフォリオ経営を中心とした事業活動の進捗と今後の成長戦略などを報告。さらに、トップメッセージ、コーポレートガバナンス、環境・社会への取り組みなど、ESGファクターの情報発信を一層強化した。

 同社は今後も、株主・投資家をはじめとするステークホルダーに取り組みをより理解してもらうために、同レポートのさらなる改善・充実に努めていく。

日本化学会 吉野彰研究助成の対象者を伊福健太郎氏に決定

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2021年1月19日

 日本化学会はこのほど、2020年度の吉野彰研究助成対象者を伊福健太郎氏に決定したと発表した。伊福氏は京都大学 大学院生命科学研究科 総合生命科学専攻 全能性統御機構学分野の准教授。研究テーマは「実用藻類ツノケイソウのゲノム情報とゲノム編集を用いた光合成の効率化」で、助成金として200万円が贈られる。

 吉野彰研究助成とは、リチウムイオン電池開発で革新的な功績により、2013年度にロシアの「The Global Energy Prize」を受賞した吉野彰氏(旭化成名誉フェロー、日本化学会名誉会員)が、その報奨金をエネルギー、環境、資源分野の研究活動の活性化のために有効に使いたいとの思いから日本化学会に寄附し、その基金を基に創設された。

 

プラ循環協 2019年版フロー図、有効利用85.3%

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2021年1月18日

サーマルリサイクルが60%、発電焼却率が増加

 プラスチック循環利用協会は、「2019年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」のフロー図を公表した。

2019年マテリアルフロー図
2019年マテリアルフロー図

 廃プラの有効利用率は、マテリアルリサイクル(MR)が減少した分を、ケミカルリサイクル(CR)とサーマルリサイクル(TR)の増加でカバーし、前年比1.7ポイント増の85.3%に改善している。なお、今年も精度向上のため各種係数を見直しており、2015年まで過去4年間の値も再計算し経年比較を行った。

 2019年の「樹脂生産量」は、前年比17万t減少の1050万tとなった。「国内樹脂製品消費量」は同8万t増の939万tとなったが、中国が廃プラの輸入を規制したことで、国内の再生樹脂投入量が増加したことが背景にある。「廃プラ総排出量」は、同11万t減の850万t。内訳では、包装・容器用途の増加により「一般系廃棄物」が同7万t増の412万tとなった反面、家電・自動車由来の廃プラ量の減少により「産業系廃棄物」は18万t減の438万tだった。

 処理処分方法別では、MRは海外向けのPETボトル再資源化量が減少し、同2万t減の186万t。またMRの利用先を見ると、輸出79万t、国内利用(循環)100万tだった。2017年までは輸出が国内利用を大きく上回っていたが、中国がプラくずの輸入規制を強化した2018年に輸出と国内利用が均衡し、2019年は逆転した。CRは同1万t増の27万t。産廃系でコークス炉化学原料化が増加した。TRは同6万t増の513万t。一般系で発電償却費量が増加したことが寄与している。

 これらの結果、「有効利用廃プラ」量は同5万t増の726万t、廃プラの有効利用率は前年比べ1.7ポイント増の85.3%(MR21.8%、CR3.1%、TR60.4%)となり、「未利用廃プラ」(単純焼却、埋め立て処分)量は同16万t減の125万tとなった。

 なお、修正した処理処分比率の経年変化(2015~2019年)を見ると、2019年の有効利用は、2015年比で5.6ポイント増加した。MR利用量、TR利用量(固形燃料、セメント原燃料、発電焼却量)が増加したことが、有効利用率の向上につながる結果となった。

 一方、廃プラの有効利用による2019年のエネルギー削減効果(削減貢献量)は、前年並みの185PJ(ペタジュール)となった。これは家庭消費総エネルギー量では304万世帯分に相当する。内訳としては、一般系廃棄物が80PJ(全体の43%)、産業系廃棄物が105PJ(同57%)だった。

 また、CO2削減効果は前年比10万t増の1559万tとなった。これは家庭からのCO2排出量では362万世帯分に相当する。内訳は一般系廃棄物が576万万t(全体の37%)、産業系廃棄物が983万t(同63%)だった。

 

《化学企業トップ年頭所感》塩ビ工業・環境協会 斉藤恭彦会長

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2021年1月15日

 2020年の塩ビ業界は、内需はやや頭打ちとなる一方、中国・インドなどの旺盛な世界需要にけん引されて、生産全体としては引き続き堅調に進展した。暦年の生産量は約160万tと、塩ビ樹脂各社ともおおむねフル稼働を維持し、本年もこの状況を維持できると予想している。また、ウィズコロナ時代の新たな生活様式の一環として、塩ビ製の板やフィルムが飛沫感染防止用の間仕切りに利用され、さらにフェイスガードや使い捨て手袋にも塩ビ製品が活用されるなど、新たな用途も含めて需要増につながりつつあることは喜ばしい。

 こうした背景の下、当協会では、広報活動として、2019年度に実施した「PVC AWARD 2019」の受賞作品や前述のウィズコロナ製品、さらに豪雨被害の軽減に役立つ塩ビ製品などを、広報誌や協会ウェブサイトなどでPRした。

 小中学生に将来のキャリアを考えるためのヒントを与える教材「おしごと年鑑」では、各種塩ビ製品やリサイクル性能を紹介し、若年層への広報にも注力した。エコプロなどの各種展示会のウェブ開催にも対応し、塩ビ製品やその特徴などを紹介する動画コンテンツを積極的に制作し出展したほか、協会ウェブサイトのリニューアルを行った。今後もコンテンツの充実を図るとともに、塩ビ製品の優れた特徴などを積極的にアピールしていく。

 建材関連では、樹脂窓の普及や窓周辺での新たな塩ビ製品の開発に注力し、樹脂製建具の促進耐候性試験のJIS化や樹脂窓の防火認定合理化に向けた活動により、ビルへの樹脂窓普及を促進した。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、その優れた省エネルギー性能の訴求を通じ樹脂窓の普及をさらに推進していく。

 一方で、昨今益々その重要性が高まるリサイクルに関しては、引き続き「樹脂窓リサイクル検討委員会」を中心に活動を進めている。2020年度は、早くから樹脂窓の普及が進んできた北海道の行政関係者やリサイクル業者との情報交換や海外の実態調査を、ウェブ会議も活用しつつ行い中長期のロードマップ策定作業を進めている。また、プラスチック混合廃棄物からの塩ビ樹脂の分別や塩素の分離に関する基礎的な研究も支援できるよう、リサイクル支援制度の対象を拡大した。

 本年も、塩ビ樹脂が様々な場面で優れた性能を発揮し、健康で快適な暮らしの実現や環境問題の解決など、社会に大きく貢献し得る素材であることを広く知っていただき、より一層の普及を促進する活動を積極的に進めていく。