NEDO バイオ製品実用化の資源拡充と生産確立に着手

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2020年9月15日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、炭素循環型社会の実現に向けて微生物や植物を利用したバイオ生産プロセスの開発に着手すると発表した。産業界のCO2削減、炭素循環型社会実現と持続的経済成長の両立という課題に対し、バイオテクノロジーと経済活動を一体化したバイオエコノミーに関連する技術が注目される。

 世界のバイオ産業市場は2030年には200兆円規模に拡大すると見込まれる中、日本は世界最先端のバイオエコノミーの実現を目指し、昨年からバイオ戦略を策定。植物・微生物細胞の物質生産能力を最大限引き出す「スマートセル」でバイオプラスチックや高機能化学品を生産するバイオ生産プロセスは、化学プロセスに比べて消費エネルギーは少なく、カーボンリサイクル技術としても期待される。

 今回、「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」プロジェクトの実施者を公募し、「データ駆動型統合バイオ生産マネジメントシステムの研究開発」「データベース空間からの新規酵素リソースの創出」「遺伝子組み換え植物を利用した大規模有用物質生産システムの実証開発」の3件を採択した。

 バイオ生産プロセスによる物質生産を社会実装するためには、全生産過程のボトルネックの解消が必要だ。微生物や植物を利用した原料から生産までのバイオ一貫生産プロセスの開発に向け、バイオ資源(酵素群・微生物・植物など)の拡充、バイオプロセス工業化に必要な要素技術の開発、各種技術のデータベース化による実生産に適した生産株の育種のための統合解析システムの開発を行う。実生産へ効果的に移行させるバイオファウンドリ基盤(培養・運搬・受託製造など)を整備し、バイオ由来製品の社会実装の加速とバイオエコノミーの活性化を目指す。

「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の概要
「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の概要

ユーグレナなど 観光バスにバイオ燃料の使用を開始

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2020年9月14日

 ユーグレナとジェイアールバス関東は、成田空港を出発する定期観光バスに、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)と使用済み食用油を原料とする次世代バイオディーゼル燃料「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を先月から導入している。バイオ燃料による観光バス運行の取り組みは、JR東日本グループでは初となる。

 JR東日本グループが、ESG経営で事業を通じた持続可能な開発目標(SDGs)達成に取り組む中、JRバス関東は日本をバイオ燃料先進国にすることを目指すユーグレナの「グリーンオイルジャパン」宣言に賛同。同社は、成田空港発の定期観光バスに同バイオ燃料を導入し、CO2排出削減を目指した取り組みを始めた。

 導入路線は「ウェルカム成田セレクトバスツアー・芝山コース」(1台)で、成田空港~芝山仁王尊~道の駅多古あじさい館~房総のむら~成田空港・成田駅を周遊する。9月いっぱいの土日に運行し、10月以降は内容変更の予定。4月から新型コロナウイルス感染症の影響で運休していたが、感染防止対策の上での一部再開に併わせ、同バイオ燃料の導入も開始した。定期観光バスを通じて地域の魅力と日本のサステナブルな取り組みの体感に貢献していく考えだ。

 バイオ燃料は、既存の化石燃料に比べ理論上CO2排出量の少ない再生可能な液体燃料であり、世界中で普及が進む。トウモロコシやサトウキビ、大豆、パームなどの可食原料は食料との競合・森林破壊などの問題が指摘されているが、「ユーグレナバイオディーゼル燃料」はユーグレナ油脂や使用済み食用油などを主原料とするため、食料との競合や森林破壊がなく持続可能性に優れる。既存のエンジンでも使用でき、水素や電気への移行に必要なインフラコストも不要で、利用拡大の可能性は高い。

ユーグレナ グリーンオイルジャパン

ユーグレナ バイオマス50%含有プラスチックを開発

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2020年9月7日

 ユーグレナはこのほど、バイオポリ上越(新潟県上越市)と共同で、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)からバイオ燃料用脂質を抽出した後の残渣(ユーグレナ脂質抽出残渣)を配合したバイオマスプラスチックの開発に成功したと発表した。バイオポリ上越は樹脂の製造からプラスチック最終製品の製造まで一貫して行い、自然素材からプラスチック樹脂を創る高度な混錬加工技術をもつ。

加工前のユーグレナ・ポリプロピレン複合体のペレット
加工前のユーグレナ・ポリプロピレン複合体のペレット

 海洋プラスチックごみなどの社会問題に対し、環境省が昨年策定した「プラスチック資源循環戦略」で、プラスチックの使用量削減、リサイクル推進とともに、植物などの再生可能資源を使ったバイオマスプラスチックの利用推進を掲げ、バイオプラスチックの需要も高まっている。

 今回、パラミロン(ユーグレナ特有のβ‐1,3グルカン)粒子含有の複合体に関する特許技術に基づき、汎用プラスチックのポリプロピレン(PP)とユーグレナ脂質抽出残渣を混錬・均一分散してバイオマス含有率50%のユーグレナ・PP複合体を開発した。

 純石油由来のPPと比べ、最大曲げ応力と曲げ弾性率が高く、強さと硬さが向上。これは、有機物固体であるユーグレナ脂質抽出残渣がフィラーとして働き、PPの力学物性を向上させたことを示している。さらに、一般の射出成型機でフォークなどの加工が可能なことから、食品容器や成型材料などの様々な用途展開が期待される。

ユーグレナ・ポリプロピレン複合体を用いて作成したフォーク、スプーン
ユーグレナ・ポリプロピレン複合体を用いて作成したフォーク、スプーン

 同社はユーグレナなどの微細藻類活用の事業を通じ、社会をよりサステナブルに変革していくことを目指している。石油由来プラスチック量の削減に向け、ユーグレナの特有成分パラミロン使用の機能性プラスチックの開発とともに、バイオマスプラスチックの可能性検討を進めていく考えだ。

 

カネカ 新型コロナ用DNAワクチンの製造体制に参画

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2020年9月4日

 カネカはこのほど、グループ会社カネカユーロジェンテック(ベルギー)が、アンジェス(大阪府茨木市)や大阪大学などが開発を進めている新型コロナウイルス用DNAワクチンの大量生産に向け、タカラバイオを中心とする製造体制に参画したと発表した。同ワクチンは大阪大学とアンジェスのプラスミドDNA医薬品開発の実績をもとに開発され、今年6月から臨床試験を開始。実用化に向けて開発が加速している。

 カネカユーロジェンテックは、1985年から医薬・診断薬、研究試薬用のタンパク質、核酸、ペプチドの製造販売を行っている。世界トップクラスのプラスミドDNA技術をもつことから、同ワクチンの中間体製造を受託した。なお、同社はベルギー政府の要請で、新型コロナウイルス検査用のPCR検査試薬も供給している。

 カネカは、mRNAやプラスミドDNAなど最先端の高度技術を活用し、ワクチンの受託製造や抗ウイルス薬の開発、医療器を用いたソリューション提供などにより新型コロナウイルス問題の課題解決に貢献し、世界を健康にしていく考えだ。

Kaneka Eurogentec社の外観
Kaneka Eurogentec社の外観

出光興産 バイオマス発電用植物の植生と木質ペレット化試験を開始

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2020年9月4日

 出光興産は3日、100%子会社である出光オーストラリアリソーシス(ブリスンベン)を通じ、石炭と混焼が可能なバイオマス発電燃料用植物の植生試験と木質ペレット化試験を開始したと発表した。既存のエンシャム石炭鉱山(クイーンズランド州、権益85%)での資産(鉱山内遊休地、用役設備など)を活用する。

 今回のプロジェクトで栽培するのは、バイオマス発電燃料として使用する「ソルガム」。降雨量が少ない同エリアでの生育に適しており、7月までに順調な生育が確認され収穫を行った。現在、ソルガムの木質ペレット化試験を進めており、今年後半には木質ペレットの半炭化(ブラックペレット化)試験を予定している。

 木質ペレットを半炭化したブラックペレットは、従来の木質ペレットに比べて耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことができるため、石炭火力発電でのCO2排出量低減が期待できる。

 なお、プロジェクトは、同地が石炭の輸出基地に加え、バイオマス発電燃料の大規模商業輸出基地となる可能性があるとして、クイーンズランド州政府から補助金2万豪ドルを受託している。

 出光興産は、エネルギーを取り巻く環境変化を踏まえ、エネルギー源の多様化とベストミックスの構築により、日本のエネルギーセキュリティへの貢献と再生可能エネルギー普及を推進する考えだ。

エンシャム石炭鉱山での植生試験の様子 植物種「ソルガム」
エンシャム石炭鉱山での植生試験の様子 植物種「ソルガム」

カネカ JTと植物バイオテクノロジーの資産譲受に合意

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2020年8月25日

 カネカは24日、日本たばこ産業(JT)と、病害耐性などの有益な性質・特徴を植物に導入する育種技術(組織培養技術、遺伝子導入技術など)といった、植物バイオテクノロジーに関する資産譲受を今月19日付で合意したと発表した。カネカ独自のゲノム編集技術と今回譲り受けるJTの研究開発資産とのシナジーにより、食糧課題に対するソリューションの提供を加速させていく。

 今回の資産譲受は、高効率で幅広い実用作物品種に適用可能なことから高い評価を受けているカネカのコア技術「インプランタゲノム編集技術」と、JTのもつ最先端の研究関連設備、業界内のネットワーク、実績豊富な遺伝子導入の技術力を活用。ゲノム編集作物の研究開発を大幅に加速・効率化し、従来の作物育種を変革することを目的としている。

 今後、新たな体制で研究開発を加速し、遺伝子導入技術の種子企業へのライセンスや、顧客のニーズに合わせた機能性、多収性に優れた作物種子の研究開発受託を強化する。将来的には、成長が期待されるゲノム編集作物の種子事業への参入を目指す。

 カネカは「カネカは世界を健康にする。」という考えの下、食の安心・安全、安定供給に繋がるソリューションを提供している。オープンイノベーションも活用しながら、世界の食糧問題の解決に貢献していく考えだ。

 

ユーグレナとファミリーマート 配送車両にバイオ燃料

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2020年8月24日

 ユーグレナはこのほど、ファミリーマート店舗から出る使用済み食用油(廃食油)を原料の一部に使う「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を同社配送車両で使用する循環型の取り組みを両社共同で実施すると発表した。

 ファミリーマートは今年「ファミマecoビジョン2050」を策定し、持続可能な社会の実現に向け、中長期目標「温室効果ガスの削減」「プラスチック対策」「食品ロスの削減」に基づく数値目標を設定。

 ユーグレナの「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指す「GREEN OIL JAPAN」宣言に賛同し、両社共同で20年、30年先を見据え「ユーグレナバイオディーゼル燃料」の利用・普及拡大へ向けて取り組むことを決定した。なお両社は2014年より、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)配合食品の共同開発も行っている。

 ユーグレナは2018年に、横浜市鶴見区に日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造の実証プラントを竣工。今回の取り組みは同プラントを使用し、ファミリーマートの横浜市内の2店舗から出る廃食油(月約300リットル)を、9月以降から原料の一部として「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を製造する。なお8月下旬から、ファミリーマートの横浜市内の配送車両(1台)でバイオ燃料の使用を開始する。

 バイオ燃料は、化石燃料より理論上のCO2排出量が少なく、再生可能燃料として世界で普及が進む。同プラント製造の「ユーグレナバイオディーゼル燃料」はユーグレナなどの微細藻類油脂や廃食油を主原料とするため、食料との競合や森林破壊などの問題がなく、持続可能性に優れた燃料となることが期待される。

 また、化石由来の軽油用のエンジンにも使え、水素や電気などの代替エネルギー移行に必要な多大なインフラコストも不要なため、石油中心の社会環境で、既存インフラのまま効率的に普及できる。

 なお、この取り組みは、ユーグレナが横浜市と取り組む「バイオ燃料地産地消プロジェクト」活動の一環でもある。両社は今後も、食品での連携のみならずバイオ燃料を通して、人の健康や環境に関するサステナブルな取り組みを実施していく考えだ。

富士フイルム コロナワクチン候補の原薬製造を米社より受託

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2020年8月18日

 富士フイルムはこのほど、子会社のバイオ医薬品の開発・製造受託会社(CDMO)フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ(FDB)が、米国バイオテクノロジー企業ノババックスより新型コロナウイルス感染症のワクチン候補「NVX‐CoV2373」の原薬製造を受託したと発表した。

 ノババックスは、独自のナノ粒子技術で重篤な感染症の次世代ワクチンを開発するバイオテクノロジー企業。新型コロナウイルスの遺伝子情報で作った抗原を有効成分とするワクチン候補の作製に成功し、臨床第Ⅰ相試験をオーストラリアで実施している。7月には、新型コロナワクチン開発を目的とする米国政府による官民連携プロジェクト「Operation Warp Speed」から、16億米ドルの助成を獲得。臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を推進し、1億人分のワクチン供給を目指している。

 FDBは、30年以上にわたる受託実績と高度な生産技術や最新設備をもつバイオ医薬品CDMO。ホルモン製剤や抗体医薬品、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の生産プロセスを開発し、少~大量生産、原薬から製剤・包装の対応能力で受託ビジネスを拡大。新型コロナ感染症の治療推進プロジェクト「COVID‐19 Therapeutics Accelerator」からの新型コロナ治療薬のプロセス開発・製造の受託が決定している。

 さらに今回、ノババックスから、今秋計画の最大3万人規模の臨床第Ⅲ相試験に向けて「NVX‐CoV2373」の原薬製造を受託し、米国ノースカロライナ拠点で原薬製造を開始した。

 FDBは、新型コロナワクチンや治療薬の開発が進展する中、顧客ニーズに合った高品質なバイオ医薬品を迅速かつグローバルに供給し、新型コロナ感染症の拡大抑止や流行終息に貢献していく考えだ。

 

大王製紙 愛媛県三島工場のバイオマス発電を稼働、電力販売を開始

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2020年7月30日

 大王製紙はこのほど、バイオマス発電設備の新設工事が完了し、今月より再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)を利用した電力販売を開始した。

〈バイオマス発電設備〉
バイオマス発電設備

 同社三島工場(愛媛県四国中央市)では、これまでもクラフトパルプ製造工程で発生するパルプ廃液(黒液)を、黒液回収ボイラーで燃焼させるバイオマス発電を行ってきた。今回、黒液回収ボイラーを新設し、発電した電力をFIT制度で電力会社に販売する。

 今回導入した最新鋭の黒液回収ボイラーは効率が5%改善し、一般家庭の約7200世帯分に相当する、年間2万5000tのCO2排出量を削減可能。四国地方の電力需要に占める再生可能エネルギー比率向上に貢献していく。

 大王製紙グループは「世界中の人々へやさしい未来をつむぐ」の下、事業活動を通じて地球環境保全への貢献に取り組む。業界に先駆けて建築廃材を主燃料とするバイオマス発電や、可児工場(岐阜県可児市)での重油からLNGへの燃料転換など、様々な環境対策を進めてきた。今後も、三島工場のバイオガス製造設備新設(今年10月稼動予定)など、再生可能エネルギーを有効利用した環境負荷低減の取り組みを継続していく考えだ。

JBA 「バイオインダストリー大賞」の受賞者を決定

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2020年7月22日

 バイオインダストリー協会(JBA)はこのほど、第4回「バイオインダストリー大賞」の受賞者を決定した。大賞に輝いたのは、北沢剛久氏(中外製薬研究本部創薬薬理研究部長)が率いる中外製薬と、吉岡章氏(奈良県立医科大学名誉教授)らの同大学のグループ。「血液凝固第Ⅷ因子機能を代替するバイスペシフィック抗体医薬の創製による血友病Aの治療革命」の業績に対して贈られた。

 同研究グループは、血友病Aに対し「バイスペシフィック(二重特異性)抗体」で生体内タンパク質の作用を代替するという独創的発想から創薬研究にチャレンジし、「ヘムライブラ皮下注」を開発した。同新薬は従来製剤と比較し、患者と家族のQOLの劇的な向上や症状の軽症化に加え、医療費のコストダウンが期待される画期的な治療薬。昨年までに世界約100カ国で承認されており、その売上は日本円換算で1500億円を超え、極めて高い社会的インパクトのあるブロックバスターとなった。

 創薬研究から臨床開発を一貫して産学連携で進め、抗体医薬生産技術を確立。世界に先駆けた日本発の創薬であり、今後、新たな機能性抗体医薬の創出など国内外のバイオインダストリーの発展に大きく寄与するものと期待されることから、その業績が高く評価された。

 「バイオインダストリー大賞」は2017年、JBAが30周年を迎えるのを機に、次の30年を見据えて〝最先端の研究が世界を創る―バイオテクノロジーの新時代―〟をスローガンに創設。バイオインダストリーの発展に大きく貢献した、または、今後の発展に大きく貢献すると期待される顕著な業績を表彰している。

 今回、科学技術振興機構の顧問・相澤益男氏を選考委員長とする13人の選考委員会により厳正な審査を経て、受賞者1件を決定した。副賞は300万円。贈呈式・受賞記念講演会は今秋10月14日に、国際的なバイオイベント「BioJapan 2020」の会場(パシフィコ横浜)で開催される予定。