東レ 核酸医薬品がFDAのオーファンドラッグの指定に

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2019年2月12日

 東レはこのほど、核酸医薬品・東レ開発コード「TRK‐250」が米国食品医薬品局(FDA)によるオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を受けたと発表した。同剤は同社が特発性肺線維症(IPF)患者を対象に、米国での第1相臨床試験を実施中のもの。

 このたび同社が資本提携する、核酸原薬製造や核酸医薬開発・支援を行うボナック(福岡県久留米市)が、同剤についてFDAからIPFを適応とするオーファンドラッグの指定を受けた。これにより、米国で7年間の排他的先発販売権が付与されるほか、臨床研究費用の税額控除や申請費用の一部免除などの優遇措置が受けられる。

 IPFは、不可逆的に肺の線維化が進行し、予測できない多様な臨床経過をたどる予後不良の疾患。そのため、医療現場での治療選択肢の幅を広げるために、新たな作用機序をもつ新薬の開発が求められている。同剤は、肺の線維化に関与する主要な増殖因子であるTGF-β1タンパク質の発現を遺伝子レベルで選択的に阻害することで、線維化の進行を阻止する核酸医薬品。

 また、ボナック独自の核酸医薬技術を採用したユニークな1本鎖長鎖構造をもち、従来の核酸医薬の課題である体内での安定性を向上させた。さらに吸入剤として肺に直接投与することで、標的組織への効率的な送達が期待される。

 両社は今回の指定を受け、同剤の開発をいっそう加速させていく。IPF患者への1日も早い提供のため、2020年代後半の上市を目指す。

帝人 急性期脳梗塞の新治療薬を目指し臨床試験を開始

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2019年2月7日

 帝人は6日、ヒト(同種)歯髄由来幹細胞(DPC)を用いた再生医療等製品「JTR‐161」が、第1例目となる被験者に投与されたと発表した。同治験製品は、JCRファーマ(兵庫県芦屋市)と共同開発を進めているもので、このたび急性期脳梗塞患者を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験で被験者の組み入れが開始された。今回の試験は、静脈内投与した際の安全性と有効性を、探索的に検討することを目的としている。

 帝人グループでヘルスケア事業を展開する帝人ファーマが治験依頼者として実施し、試験に用いる治験製品はJCRファーマが製造を行う。「JTR‐161」は、人の抜歯体から単離したDPCを原材料とする再生医療等製品。抜歯体を利用するため、骨髄などに比べて細胞採取時の侵襲性が低く、国内で細胞ソースを調達できるのが特徴となっている。

 また、ヒト(同種)歯髄由来幹細胞は、体内に投与しても拒絶反応が起こりにくいとされており、同治験製品は、免疫調整因子産生による炎症抑制や、栄養因子産生による臓器保護・再生促進などの効果が期待されている。

 帝人とJCRファーマは、2017年7月に、日本国内でのDPCを用いた急性期脳梗塞を適応症とする同治験製品の共同開発契約と実施許諾契約を締結し、研究開発を進めてきた。両社は、「JTR‐161」が急性期脳梗塞の新たな治療選択肢となることを期待し、患者のQOL向上を目指すために同製品の一日も早い上市に向けて連携強化を図っていく。

旭化成ファーマ レジオネラ症の迅速診断キットを販売開始

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2019年1月29日

 旭化成ファーマは28日、体外診断用医薬品「リボテスト」シリーズの新製品として、レジオネラ・ニューモフィラのすべての血清型(1~15)を検出できるレジオネラキット「リボテスト レジオネラ」の国内販売を2月1日から開始すると発表した。 販売はアリーアメディカルと、極東製薬工業の2社が行う。

「リボテスト レジオネラ」製品写真
「リボテスト レジオネラ」製品写真

 リボテスト レジオネラは旭化成が開発した抗体技術(L7/L12)を用い、旭化成ファーマが製品化したレジオネラ症の診断補助のための迅速診断キット。

 レジオネラ症はレジオネラ・ニューモフィラに代表されるレジオネラ属菌に起因する感染症で、レジオネラ属菌は土壌、河川などの環境中に存在し、アメーバなどに寄生して増殖する。症状によりポンティアック熱型と肺炎型に分類され、肺炎型は進行が速く、2~10日の潜伏期の後に呼吸器症状が現れ、しばしば48時間以内に重症化する。そのため、早期診断と適切な初期治療が求められている。

 従来の迅速診断キットはレジオネラ・ニューモフィラ血清型1のみを検出する目的で使用されていることから、レジオネラ・ニューモフィラの血清型(1~15)が検出可能なキットの開発が望まれていた。

 旭化成ファーマは同製品の販売を通じ、レジオネラ症の迅速診断に大きく貢献していく考え。

旭化成ファーマ 関節リウマチ治療薬のAI製剤を発売

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2018年12月13日

 旭化成ファーマはこのほど、関節リウマチ治療薬「ケブザラ」の新剤形、「ケブザラ皮下注150㎎オートインジェクター、同200㎎オートインジェクター」(一般名:サリルマブ〈遺伝子組み換え〉)を発売した。

150㎎キット
150㎎キット

 効能・効果は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ。用法・用量は、通常、成人には1回200㎎を2週間隔で皮下投与する(患者の状態により1回150㎎に減量すること)となっている。薬価は、150㎎1キットが4万4945円、200㎎1キットは5万9509円。製造販売元はサノフィ。

 同剤の発売により、「ケブザラ皮下注」には従来のシリンジ製剤に加え、オートインジェクター(AI)製剤が新たに加わった。シリンジ製剤と同様、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤。同剤は、リウマチ患者が扱いやすい形状・機能を追求したユーザー中心設計のコンセプトで設計された。

 本体は、人間工学に基づき設計された握りやすい形状で、関節のこわばりや痛み、変形を訴える患者にとっても扱いやすくなっている。本体内にはあらかじめ1回量の薬剤が充填されている。リング式のキャップを外し、本体を皮膚に押し当てるだけで、注射針が患者の目に触れることなく自動的に皮膚に刺さり、薬液が注入される。

 また、視認性の良い薬液確認窓から薬剤の注入の状況が目視でき、薬剤注入の始まりと終わりを音で知らせる機能もあるので、患者自身が安心して自分で注射できる設計となっている。

 同社は、AI製剤という新しい治療の選択肢を提供することで、日本の関節リウマチ患者や医療関係者への一層の貢献を図る。今後も、同剤を含む「ケブザラ皮下注」の適正使用の推進と情報提供を続けていくとともに、患者のQOLの改善に注力していく考え。

 

宇部興産 塩野義製薬と新規抗RSウイルス薬創製で共同研究

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2018年12月11日

 宇部興産は10日、塩野義製薬の新規抗RS(respiratory syncytial)ウイルス薬創製に関する創薬プログラムで、共同研究契約を締結したと発表した。

 両社は低分子創薬に強みをもつ。感染症を重点疾患領域とする塩野義製薬の創薬力と、有機合成力に支えられた宇部興産の化合物デザインをもとに、SAR(Structure‐Activity Relationship:構造活性相関)研究での相乗効果を高めることで、新規抗RSウイルス薬の開発候補化合物の早期創出を図る。

 RSウイルス感染による呼吸器感染症は、2歳頃までにほぼ100%の人が少なくとも一度は罹患し、生涯にわたり感染を繰り返す疾患。特に生後数週間~数カ月間の時期では、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす恐れがあることが、国立感染症研究所から報告されている。抗RSウイルス薬は未だ存在しないため、アンメット・メディカルニーズが高く、有効・安全性の高い治療薬が求められている。

 

旭化成ファーマ 関節リウマチ治療薬の在宅自己注射が保険適用に

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2018年12月4日

 旭化成ファーマは3日、関節リウマチ治療薬「ケブザラ皮下注150㎎シリンジ、同200㎎シリンジ」(一般名:サリルマブ/遺伝子組み換え)が、1日から在宅自己注射指導管理料対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用になったと発表した。また併せて、同日から投薬期間制限が解除された。

150㎎シリンジ
150㎎シリンジ

 ケブザラはインターロイキン 6(IL‐6)受容体に対するヒト型モノクローナル抗体で、関節滑膜での炎症に重要な役割を果たしていると考えられているIL‐6の作用を抑制する薬剤。同剤はサノフィ社とRegeneron社が共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州をはじめ日本を含む世界19カ国で発売されている。

 日本ではサノフィ社が昨年9月に「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果で製造販売承認を取得し、11月に薬価基準に収載、今年2月から旭化成ファーマが発売している。

 関節リウマチの治療は長期に及ぶことがあり、患者の治療と日々の生活との両立を図る点で、通院の負担がより少ない治療が望まれるケースがある。旭化成ファーマは、ケブザラの在宅自己注射が保険適用になったことと、投薬期間制限の解除によって、患者や医療関係者に、より一層貢献できるものと考えている。

 なお、新医薬品は、厚生労働省告示第107号に基づき、薬価収載後1年を経過する月の末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている。

住友ベークライト 抗体医薬品向け全自動糖鎖調製装置を発売

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2018年11月21日

 住友ベークライトはこのほど、抗体医薬品の糖鎖分析のためのサンプル調製を行う全自動糖鎖調製装置「GlycoAutoPrep」=写真=の販売を9月から開始したと発表した。

全自動糖鎖調整装置「GlycoAutoPrep」 同社が参画する次世代バイオ医薬品製造技術研究組合(MAB組合)の研究テーマとして、同社製品の抗体糖鎖分析キットを用いた抗体糖鎖サンプル調製の自動化の実現に取り組み、同装置を製品化・上市した。

 抗体精製から蛍光標識糖鎖の調製までを完全自動化するため、製薬企業などで行われている抗体の糖鎖分析の時間短縮や効率化が期待される。

 近年活発に開発が行われている抗体医薬品では、抗体に結合した糖鎖が医薬品としての効果や安定性に関与することが知られており、抗体医薬の糖鎖分析は、研究・開発から製造・品質管理に至るまで様々なステージで幅広く必要とされる。

 また、抗体医薬などの後続品であるバイオシミラーの開発でも、先行品との糖鎖の比較試験が品質管理項目の1つになっている。

 抗体は抗体産生細胞の培養液中に含まれるが、培養液には抗体以外のタンパク質や培地由来の物質などの夾雑(きょうざつ)物が多く含まれている。そのため、糖鎖分析をするまでに、①培養液からの抗体精製②抗体からの糖鎖切り出し③糖鎖精製④糖鎖の蛍光ラベル化といった複数の工程が必要となる。

 従来はこれら①~④の工程を単独で行うことが多く、それぞれ数時間~1日程度の時間がかかり、トータルで1~2日程度を要するため、迅速化・簡便化が求められていた。

 これらの課題を解決するため、同社では2016年に「抗体の糖鎖分析キットEZGlyco mAb‐N kit with 2‐AB」を発売。同キットは上記①~④の工程を約2時間半で完了できるもので、国内外の製薬企業などでの活用が進んでいる。

 一方で、同キットはマニュアル操作で使用するもののため、取り扱う抗体サンプル数が多くなると対応が難しくなるという課題があり、自動化の要望を受けていた。

 同社は今後、国内製薬企業などへの販売を行い、海外への準備も進めていく。また、同装置とキットとを組み合わせたシステムを顧客に提供することで、糖鎖分析のトータルソリューションプロバイダーとして事業を拡大していく考え。

東ソー 世界初の抗体医薬品活性分析用カラムを発売

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2018年11月2日

 東ソーは1日、独自に開発した世界初の抗体医薬品活性分析用アフィニティークロマトグラフィーカラム「TSKgel FcR-ⅢA-NPR」の国内販売を、同日から開始すると発表した。海外向けの販売開始は来年1月を予定している。

 新製品はヒトFcγレセプターⅢaをリガンドとして固定化した、微粒子分離剤を充填したアフィニティーカラム。抗体のN-結合型糖鎖に起因するFc領域の構造変化を識別し、ADCC活性の異なる抗体を分離することができる。ADCC活性が高い抗体は分離剤に強く保持される。

 遺伝子組換え技術を利用した分子改良により、FcγレセプターⅢaの安定性が大幅に向上。精製などの試料前処理が不要で、抗体分子を直接、短時間(約30分)で分析することが可能だ。

 抗体医薬品はがんや自己免疫疾患(リウマチなど)の治療薬として世界中で広く利用されており、高い治療効果と低い副作用が特徴。バイオ医薬品の中で最も高い成長率が予測されている。

 抗体医薬品の糖鎖構造の違いにより、免疫細胞表層に存在するタンパク質であるFcγレセプターⅢaとの親和性(結合の強さ)が異なり、抗体活性(例えばがん細胞などを破壊するADCC活性)が異なることが知られている。

 バイオ医薬品産業は、日米欧に加え、中国・インドなどの新興国で急速に拡大している。同産業の中でも需要が最も旺盛な抗体医薬品の研究開発・製造で、ADCC活性など原薬となる抗体の活性を分析することは、必須で最も重要な項目となっている。

 同社は、抗体医薬品の研究開発・製造で、抗体分析に最適なHPLC/UHPLC用カラムを品揃えしており、今後も新製品の上市などにより、バイオサイエンス事業のさらなる収益力強化を図る。

 なお、同研究の一部は、日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代医療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」の支援によって行われた。

帝人ファーマ 睡眠時無呼吸症候群検査の評価装置を販売

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2018年11月1日

 帝人ファーマは31日、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の最新型ワイヤレス精密検査機器「Nox A1システム」(一般的名称:睡眠評価装置)について、国内での独占提供を本格的に開始すると発表した。

製品本体
製品本体

 同装置はアイスランドの医療機器メーカーのノックス・メディカル社が製造するもの。SASの検査には、簡易検査と精密検査があるが、同装置はSASの疑いがある人の精密検査(確定診断)に用いられる。

 Nox A1システムは本体重量が92gと帝人ファーマの従来製品に比べて小型・軽量で、使いやすさを重視した設計のため、被検者の装着時の負担を軽減する。これにより睡眠を妨げることなく、日常に近い環境で検査を受けることが可能となった。

 また、専用アプリをインストールしたタブレット端末を使用し、ワイヤレスで簡便に睡眠や呼吸状態をモニタリングできるため、医療者の負担軽減にもつながることが期待されている。

 従来、SASの精密検査では、複数の機器がケーブルで接続されることなどにより、被検者にとってストレスになることがあった。また、検査の準備に手間を要したり、周辺機器が大型のため検査できる場所が限られたりするなど、医療機関が睡眠時無呼吸検査を導入する際に障壁となるケースがあった。

 なお、販売価格は、標準仕様が330万円(税別)、オンライン仕様が390万円(税別)。タブレットは別途手配が必要。帝人ファーマは同装置の販売により、SASの検査から治療に至るまでの製品やサービスをさらに拡充していく。今後も新たな製品やサービスの開発を通じ、SASの診療の質の向上、患者のQOL向上に貢献し続けていく考えだ。

旭化成ファーマ 骨粗鬆症治療剤の製造販売を承認申請

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2018年10月31日

 旭化成ファーマは30日、骨粗鬆症治療剤「テリボン皮下注28.2µgオートインジェクター(予定)」一般名:テリパラチド酢酸塩)について、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を効能・効果として、日本での製造販売承認申請を行ったと発表した。

 同社が2011年11月から製造販売している現行製剤「テリボン皮下注用56.5µg」と同じテリパラチド酢酸塩を含有する製剤。用法・用量は「通常、成人には、オートインジェクター1本(テリパラチドとして28.2µgを含む)を1日1回、週に2回皮下注射する」として申請を行った。

 同剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者を対象に実施した国内第3相骨量試験(MN-10-T-306試験)で、現行製剤に対する非劣性が検証された。また、1回投与量を現行製剤の半量としたことで、悪心・嘔吐などの副作用の発現が少なくなることも期待される。

 現行製剤の用法・用量は「通常、成人には、テリパラチドとして56.5µgを1週間に1回皮下注射する」。同社は、骨粗鬆症患者に対し新たな治療の選択肢を提供することで、今後も骨粗鬆症の治療に貢献していく考えだ。