花王など AIを使う素材開発手法で開発期間を大幅短縮

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2021年1月21日

 花王はこのほど、奈良先端科学技術大学院大学と共同で材料工学分野にディープラーニング技術を適用する手法を開発し、「第43回ケモインフォマティックス討論会(オンライン開催)」で発表した。今まで長期間を要した素材開発の高速化に寄与し、さらにAIの予測の解釈を明らかにすることで新しい素材開発の手掛かりとなることも期待される。

 商品開発には優れた素材の開発が必要だが、今まではトライアンドエラーの繰り返しで、莫大な時間と費用が掛かっていた。ディープラーニングによるAI予測では、大量の化学反応プロセスデータの取得に多くの費用が掛かり、実用化には至っていない。今回、触媒と樹脂を例に、少量データで活性やガラス転移点の予測ができるディープラーニング技術を開発し、予測に至る解釈の方法も確立した。

 まず、界面活性剤製造などに用いる2級アミンとアルコールの反応で、反応時の銅触媒の微細構造を電子顕微鏡で撮影。一部切り出し・複写などの処理で143枚の写真を1万枚に増やし、その活性度の違いを学習させて活性予測モデルを作成した。作成した予測モデルは非常に高精度であった。活性箇所の画像を作成したところ、触媒のマクロポア(50㎚以上)周辺の構造が活性に影響していることが予想された。高活性触媒の開発が期待される。

 次にポリエステル樹脂の化学構造からガラス転移点を予測するモデルを作成した。不足するデータ量は一般公開される外部の化学構造データベースで補い、予測モデルを作成した。さらに、ガラス転移点に影響を与える官能基を画像化した。予測モデルはガラス転移点を精度よく予測し、またベンゼン環に対する官能基の置換位置(オルト位、メタ位、パラ位)がガラス転移点に大きく影響することが分かった。この知見を生かして、ガラス転移点をコントロールできると考えられる。

 ディープラーニング技術で少量のデータからでも予測モデルを作成する技術を開発し、画像により予測を解釈する方法も確立した。ほかの様々な素材開発にも応用が可能で、今後はデータ科学と研究者の知見を融合させて効率的な素材開発が可能になることが期待される。

 

BASF タイにASEAN向け技術開発センターを開設

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2021年1月21日

 BASFはこのほど、タイ・バンプーの既存のポリウレタン(PU)システムハウスに隣接して「ASEANテクニカル・ディベロップメント・センター」を開設した。最先端のプレポリマーリアクター技術で硬化剤(B剤)を生産する。硬化剤は製品開発効率を上げ、PU素材や溶剤をより早く市場へ投入するために重要だ。

 このリアクター技術で生産能力が向上し、すべてのグレードで最も厳しい顧客ニーズにも対応でき、PU製品のカスタマイズも可能だ。技術開発を促進し、中国、韓国、ドイツのBASF技術サポートネットワークを強化し補完する。

 同センターでは、より高度な試験やソフトウェア機能など、新しいサービスもアップグレードした。顧客をサポートし、主要産業やアプリケーションで、ASEANの成長を支援する。同社は、ASEANの自動車、コンシューマー、建設およびインダストリアル市場の需要拡大に対応するため、PUシステムハウスの生産能力を増強し、総面積2700㎡のシステムハウスに撹拌槽やリアクター、貯蔵用タンクを追加してきた。

 ASEANの自動車市場は、差別化製品と新たなアプリケーションで生産台数ベースで成長を続けている。タイとインドネシアは東南アジア最大の自動車産業で、ベトナムは世界最大のフットウェア輸出国の1つであり、多くのメーカーが製造拠点を東南アジアに移転するのに伴い、産業の成長が期待されている。

 同センターは、PUシステムハウスの拡充とともに、より信頼性の高い供給、技術的な専門知識と革新力で、ASEAN地域に貢献していく考えだ。

出光興産 地域課題解決の取り組み、JST公募PJに採択

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2021年1月21日

 出光興産はこのほど、産学公で共同研究する、鹿児島県種子島地域での「資源を循環させる地域イノベーションエコシステム研究拠点」の取り組みが、科学技術振興機構(JST)が公募する「共創の場形成支援プログラム」の育成型(共創分野)プロジェクトとして採択されたと発表した。

 共同研究は、東京大学を代表機関とする複数の機関と協働で、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づくビジョンの実現に向け取り組むもの。産学公の共創により、バックキャスティングの手法を用いることで、複雑化する種子島の地域課題の解決を図るだけでなく、他の地域への展開を図り拠点ビジョンを実現する。

 JSTの同プログラムは、SDGsに基づく将来のあるべき社会像(拠点ビジョン)の実現に向け、大学などを中核とする産学連携を基軸に、自治体、市民など多様なステークホルダーとの共創を図り、具体的かつ実現可能な駆動目標(ターゲット)を達成する研究開発を推進。今回採択された取り組みは、活動を展開する具体的な地域の1つである鹿児島県種子島の1市2町(西之表市、中種子町、南種子町)を中心に、拠点ビジョン「理想の概念・論拠・情理に基づいたイノベーションエコシステムで地域資源が循環するシステムを開発できる産学公共創の実現」の下、参画機関が共同研究を行う予定。

 具体的な研究内容は、①地域資源の循環利用で到達できる物質・エネルギーシステムの設計②地域経済循環の可視化に基づく技術と地域システムのマッチング③最先端知に基づくビジョンと地域のCo-learning④論理・論拠・情理に基づく地域資源を活用する物質・エネルギーシステムの実証・実装、となっている。

 同社は今回の取り組みを通じ、参画機関と共創し地域課題解決に有効なソリューションの実証・展開を目指す。取り組みに当たっては、全国約6400カ所のSSネットワーク運営により蓄積した地域課題に関する知見と、地域社会に根差した事業を展開する特約販売店との連携を生かし、モビリティ分野や分散型エネルギー分野などで地域に貢献する。

資源を循環させる地域イノベーションエコシステム研究拠点
資源を循環させる地域イノベーションエコシステム研究拠点
出光興産の取り組み
出光興産の取り組み

 

宇部興産 深海でのセメント系材料の劣化機構、世界初発表

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2021年1月21日

 宇部興産は20日、深海でのセメント系材料の劣化機構について、調査・分析した研究結果の論文が世界で初めて国際学術誌に掲載されたと発表した。今回の研究は、港湾空港技術研究所と共同で行い、深海でセメントモルタル試験体の暴露試験を実施している。この研究結果は深海でのセメント系材料の活用方策や、海洋インフラの建設技術確立に貢献することが期待される。

セメント系材料 深海底から回収した試験体
セメント系材料 深海底から回収した試験体

 深海は人類最後のフロンティアと呼ばれ、近年、海洋資源の開発や海洋エネルギー(洋上風力・潮力など)の利用開始など、世界的に海洋開発の気運が高まっている。将来的に深海域では海洋構造物の建設が予想され、汎用性が高く耐久性に優れるセメント系材料の利用が見込まれる。

 今回の研究では、深海域でのセメント硬化体の力学特性や水和物の変化を把握することを目的に、沖縄県多良間島沖約60㎞の海底約1680mで、同試験体の暴露試験を実施。水圧約17M㎩、水温約4℃と、浅海域と比べて非常に過酷な設置環境であり、608日後に回収した試験体の表層は、手で触ると一部がはがれ落ちるほどに柔らかい組織に変化していた。

 また、圧縮強さ試験の結果、暴露前と比較して著しい強度の低下を確認。分析した結果、試験体を構成する主要な成分であるカルシウムが浅海域では予想できないほど著しく溶脱していることが明らかとなった。さらに、海水中の炭酸イオンや硫酸イオン、マグネシウムイオンが浸入し、新たに脆弱な水和物を生成したことで表層の形状が変化し、強度の低下など物理的特性の変化をもたらしたと結論づけた。

 今回の研究では、主に化学的な劣化に着目したが、深海域で高水圧が試験体に与える影響とそれに伴う化学的な劣化との関係については、さらに詳しく検証していく予定だ。

 今後、深海でセメント系材料を利用するために、材料設計や施工方法、構造物の設計手法など、多岐にわたる研究開発および技術の確立が必要になると想定される。両者は、国内外の大学や研究機関との連携を拡充しつつ、さらなる研究開発と技術の確立を進めていく考えだ。

日本ゼオン 単層CNTを使用した導電性シリコンゴムを開発

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2021年1月21日

 日本ゼオンは20日、単層カーボンナノチューブ(CNT)を使いシリコンゴムの導電性を大幅に向上させるマスターバッチ(MB)を開発したと発表した。このMBを用いたコンパウンドは、パーキンソン病や本態性振戦の症状を軽減する医療機器への応用を目指しており、米国NovationSi社と共同研究を進めている。

 今回、日本ゼオンが開発したシリコンMBは、人体に神経調節療法を実行する医療機器の部材として使用される。シリコンゴムに単層CNT「ZEONANO SG101」を練り込むことで導電性が付与されるが、シリコン分散液メーカーであるNovationSi社はさらにこのMBを用い、「PURmix 高濃度ゴム(HCR)ヘルスケアコンパウンド」を開発。単層CNTをコンパウンドに効果的に分散させることにより、硬化物の導電特性が大幅に向上することが確認されている。

 パーキンソン病、本態性振戦はいずれも身体の震えを症状とする疾患で、悪化すると生活にも支障が出るケースがある。特に本態性振戦は症例が多く、40歳以上の4%が発症すると言われている。この疾患の抑制について、このシリコンゴムは米国FDAの認可をすでに取得しており、臨床試験では、多くの患者が震えの軽減を示したことが判明した。

 なお、開発されたMBはグループ会社のゼオンナノテクノロジーが販売。HCRヘルスケアコンパウンドはNovationSi社が、「PURmix」ブランドで米国向けに限定販売する予定。この革新的技術が、神経疾患に苦しむ人々のQOL向上に寄与することが期待される。

 

三菱マテリアル バイオガス発電プラントから電力供給開始

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2021年1月20日

 三菱マテリアルの連結子会社ニューエナジーふじみ野(NEFC、埼玉県ふじみ野市)が地球クラブと再生可能エネルギー電気特定卸供給に関する契約を締結し、先月から特定卸供給を開始した。

 NEFCは食品工場や小売店などの食品関連事業者から排出される食品廃棄物を処理し、得られたバイオガスで発電し、その電力をFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)で売電している。地球クラブは再生可能エネルギーの発電と利用を一体的に推進するため、2014年に日本生活協同組合連合会が設立した子会社で、生活協同組合コープみらいをはじめとする各生活協同組合の事業所と組合員を対象に電気小売業を行っている。

 NEFCで原料となる食品廃棄物には、コープデリ生活協同組合連合会の物流センターや生活協同組合コープみらいの店舗などの関連施設から発生するものも含まれ、発電した電力は地球クラブを通じて関連施設に供給される。

 同契約締結により、食品廃棄物から作った再生可能エネルギーを食品廃棄物の排出元に供給するという循環型リサイクルシステムを構築した。食品廃棄物の計画処理量は40t/日で、発電出力は550kWだ。

 三菱マテリアルグループは「人と社会と地球のために」という企業理念の下、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」となることをビジョンとし、同事業を通じて循環型社会の構築に貢献していく考えだ。

NEFCバイオガス発電プラント全景
NEFCバイオガス発電プラント全景

 

住友ベークライト リサイクル可能モノマテリアルフィルム開発

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2021年1月20日

 住友ベークライトはこのほど、リサイクルに適し熱成形(深絞り包装)が可能なポリエチレン(PE)モノマテリアル構成の包装用フィルムの開発に成功した。資源利用の効率化や環境配慮型技術の拡大、廃棄物の大幅削減に貢献できる。

 近年、プラスチック全般に環境負荷低減が求められ、環境省の「プラスチック資源循環戦略」の1つに「2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクルすること」が掲げられている。包装用フィルムには様々な用途・要求があり、PEフィルムにナイロンなどの異種材料を積層して機能を高め、対応してきた。しかし、各種材料の分離は困難で、リサイクルできないことが課題であった。

 今回、密度、分子量、構造などが異なるPEを積層することで、耐熱性、耐ピンホール性に優れたPEモノマテリアルフィルムを開発した。深絞り包装、イージーピール機能、ボイル殺菌、製袋加工が可能。使用後は破砕・溶融することで再度PEとして利用できる。冷凍・チルド食品の個包装用フィルム、医療機器・衛生用品の包装用フィルムとして、「容器包装のリサイクルしやすさ」を向上させる。

 今後、同社の多層フィルム・シート「スミライト」CELのラインアップに加え、さらに酸素バリア性を向上したモノマテリアル材料の開発を進める。2025年度に年間10億円の売上を目指す。

宇部興産 電動トグル式射出成形機、大型機の販売開始

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2021年1月20日

 宇部興産グループで機械事業の中核会社である宇部興産機械はこのほど、電動トグル式射出成形機「HH(ダブルH)」シリーズに、型締力1300tサイズの大型機を開発し販売を開始したと発表した。これまでは中型機のみだったが、1000t以上の大型機へ展開することで、同シリーズの優れた性能を幅広い顧客に提供することが可能となった。

 同シリーズは、宇部興産機械が昨年8月に吸収合併したU‐MHIプラテック(旧三菱重工プラスチックテクノロジー)と共同開発し、2018年に販売開始した融合機。型締力350tから850tまでの中型機六種類のラインアップだったが、その後さらに技術開発を重ね、宇部興産機械が最も得意とする大型機にも展開した。自動車、二輪、家電、産業資材、住宅設備など、国内外の幅広いニーズに応える商品群が揃ったことで、顧客の生産活動により一層貢献することが期待される。

 新製品の主な特長としては、①従来機より15%短縮した業界最速のドライサイクル、②業界最小となる12mの機長を実現、③可塑化性能を従来機より20%向上、などが挙げられる。また、オプションとして、④高付加価値・高機能化成形技術の「DIEPREST」、金型ガス抜き成形技術の「AIRPREST」を進化させより多くの製品に展開、⑤IoT対応のMAC‐IX制御装置を標準搭載し、独立二画面の抜群の操作性、カード・セキュリティ機能を向上、などの実現が挙げられる。

HHシリーズ 1,300t大型機
HHシリーズ 1,300t大型機

 

三菱ガス化学 トリニダード・トバゴのメタノール設備稼働

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2021年1月20日

CGCL社のメタノールプラント

 三菱ガス化学、三菱商事、三菱重工エンジニアリングは19日、トリニダード・トバゴ共和国で、国営ガス会社NGCおよびMassy社と共同出資しているCGCL社でメタノール/ジメチルエーテルプラントの商業運転を昨年12月に開始したと発表した。CGCL社は2013年に設立。同国の天然ガスを主原料として、メタノール生産量が年産100万t、ジメチルエーテル同2万tの生産能力をもつプラントの建設を進めてきていた。なお、総投資額は約10億ドル(約1040億円)。

 メタノールは多くの川下製品をもつ基礎化学品の1つで、接着剤、農薬、塗料、合成樹脂、合成繊維の原料といった幅広い用途に使用されている。最近では重油に代わる船舶燃料など、環境に優しいエネルギーとしての用途への注目も高まっている。さらに、メタノールはCO2からも製造が可能。有望な水素キャリアでもあることから将来の低炭素社会、持続可能な社会発展に貢献することが期待されている。また、スプレー噴射剤など日用品用途に使用されるジメチルエーテルも、LPG代替、自動車および発電向けディーゼル燃料代替など次世代クリーンエネルギーとして注目されている。

 現在のメタノール世界需要は年間約8100万tだが、今後もGDPの伸びに沿って需要は堅調に成長していくことが見込まれる。3社は同事業を通じて、世界的に伸長するメタノール需要を満たすとともに、同国ならびに周辺カリブ海諸国の経済成長に貢献することを目指していく。

太陽石油 独立リーグ愛媛球団の地域貢献活動に協賛

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2021年1月19日

 太陽石油は、四国アイランドリーグ所属の愛媛マンダリンパイレーツによる地域貢献活動に協賛した。

 先月11日に、球団選手による小学校訪問活動「小学校投稿見守りたい」が実施された。これは、選手たちが年間50校を目標に愛媛県内の小学校を訪問し、「交通安全指導」や「声かけ挨拶運動」などの登校時の安全見守りを行うもので、一昨年から数年をかけて県内約280校のすべての小学校を訪問しようという活動。

 また、日ごろの登下校時の安全指導に役立ててもらうため、訪問したすべての小学校に対し、同社ブランドキャラクター「ソラトくん」と球団キャラクターの「マッピー」が描かれた横断旗と横断幕を進呈している。

 さらにこの日は、四国事業所の地元今治市内の保育所で、河原監督と2人の選手による「モアベースボールプロジェクト」活動を実施。この取り組みは、監督と選手が愛媛県内の幼稚園や保育園の園児たちに、ボールの投げ方やボールと触れ合うことの楽しさを教える活動で、ティーバッティングやキャッチボールのほか、的当て(ストラックアウト)が行われた。

 園児たちは、応援に駆けつけた「ソラトくん」とともに、青空の下、ボールやバットを使った楽しいひと時を過ごし、また、園児全員にオリジナルのカラーボールがプレゼントされた。

 同社は今後も、四国事業所が所在する地元愛媛県での社会貢献活動の一環として、次世代を担う子どもたちの豊かな心の育成のためにこうした活動をサポートしていく。

地元球団と地域貢献活動
地元球団と地域貢献活動