東レ UAM向けに炭素繊維複合材料を供給、独社と契約

, , ,

2020年7月20日

 東レはこのほど、UAM(都市航空交通)開発のトップランナーの1社である独・リリウム社と、同社が開発中の「リリウム・ジェット」に使用する炭素繊維複合材料の供給契約を締結したと発表した。

 UAMは、都市部の交通が抱える渋滞・騒音・大気汚染といった課題の解決に繋がる新交通システムとして期待が高まっており、現在は各国で、UAMの商業運航開始に向けた機体や運航システムの開発、法制度の整備が進む。また、UAMは「空飛ぶ車」とも呼ばれ、垂直離着陸が可能な小型電動機を主流に開発が加速。機体の軽量化など様々な要求に応えるため、炭素繊維複合材料の果たす役割が極めて重要となる。

 東レは、UAMメーカーとの協業を深化させながら、機体の高性能化・省エネルギー化・低コスト化に向けた革新的な複合材料の開発を継続しており、今回のリリウム社との取り組みは、この一環として実現された。

 「リリウム・ジェット」は、300kmを60分以内に飛行する5人乗りの垂直離着陸型UAMで、炭素繊維複合材料は胴体、主翼、動翼などに使用される。リリウム社は2025年の商業運航開始に向けて機体の開発を推進中だ。

 東レの炭素繊維複合材料事業は、今年5月に発表した中期経営課題「プロジェクト AP‐G2020」に基づき、UAM用途に向けた事業基盤を戦略的に拡充する方針。UAM特有の諸課題に応える炭素繊維複合材料の開発を通して、都市部の環境問題解決に貢献していく。

 今後も、東レグループ内の連携をさらに強化し市場のニーズに迅速に対応していくことで、素材の力で社会を変革していく考えだ。

環境省 「再生可能エネルギー情報提供システム」を開設

,

2020年7月17日

 環境省はこのほど、平成21年度(2009年度)より実施している再生可能エネルギー導入ポテンシャル情報調査の成果を基に、ウェブサイト「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」(1.0版)を新たに開設した。

 同ウェブサイトでは、全国・地域別の再エネ導入ポテンシャル情報や、導入に当たって配慮すべき地域情報・環境情報・防災情報などを収載している。意見募集の窓口もあり、今後、地方公共団体や再エネ開発事業者から直接ヒアリングする場を設ける予定。

 これらを通じて、同ウェブサイトの改善や新機能の追加を順次実施し、ゼロカーボンシティ実現やRE100、再エネ主力化などをデータ駆動で促進していく考え。収載情報は、①地域別の再エネ導入ポテンシャル情報(太陽光、風力、中小水力、地熱、地中熱、太陽熱)②配慮すべき地域情報・環境情報の整備・可視化(景観、文化財、鳥獣保護区域、国立公園など)③「気候変動×防災」の観点でハザードマップを連携表示(国土交通省などが整備する防災関連情報を反映)。なお、導入ポテンシャルは、あくまで一定の仮定の上での推計値である。

 また推計値を引用する場合は、出典(環境省過年度報告書「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開に関する委託業務報告書」など)や推計条件などの明記が必要。REPOSサイト(http://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/index.html)からアクセスできる。

NEDO AIの社会実装に向け新研究テーマ3件を採択

, ,

2020年7月17日

 NEDOはこのほど、人工知能(AI)技術の社会実装を進めるプロジェクトについて、機械学習の自動化などの開発期間の短縮と、容易な利用・導入を可能にするプラットフォームの構築を目的に、新たに3件の研究開発テーマを採択した。

 NEDOは2018年度から、「次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発」プロジェクトを推進し、生産性や空間の移動分野でAI技術の社会実装を目指している。3年目となる今年度、AIの導入加速化技術として「自動機械学習による人工知能技術の導入加速に関する研究開発」と「オンサイト・ティーチングに基づく認識動作AIの簡易導入システム」の2件を採択。各テーマを通じ、機械学習機能の強化により様々な産業用途に合わせたネットワークモデルの構築を自動的に素早く行う技術や、AI導入作業の簡素化を目的に、繰り返し行う単純作業を知能ロボットに代替させるシステムの開発を図る。

 また、作業判断支援を行うAI技術としては、「最適な加工システムを構築するサイバーカットシステムを搭載した次世代研削盤の開発」の1件を採択。熟練者のもつ暗黙知をデータ化し、熟練者の感覚をマシン挙動と加工変化に置き換えて数値化することで、加工最適化を行えるAI技術を搭載した複数種類の研削盤を開発する。

 これらの研究開発テーマを推進する中で、次世代AI技術の導入期間の10分の1への短縮化を実証し、AI技術の適用領域拡大と人間の発想や創造を支援するプラットフォームの確立を目指す。さらに、短期目標の開発・テストを反復し、迅速に完成度を高めていくアジャイル型の開発手法を導入することで、AI技術の社会実装を加速させてグローバル市場への展開につなげていく考えだ。

 人間では管理できない一段上の生産性向上と平準化により、省エネルギー化やCO2排出削減効果なども期待されている。

ダイセル 熟成にんにく成分の食品素材発売、抗疲労効果

, , ,

2020年7月17日

 ダイセルはこのほど、熟成にんにく(黒にんにく)に含まれる機能性成分「S‐アリルシステイン」(SAC)を含む素材を開発し、販売を開始した。

 SACは抗酸化作用をもつことが知られており、にんにくには微量しか含まれないが、にんにくを熟成させる過程で量が増える希少な成分。これまでSACの高濃度化には長い熟成期間が必要だったが、同社は短期間で得る新規方法を開発し、製品化した。

 同社は臨床試験で、SAC含有食品を4週間継続して摂取することにより、身体作業負荷によって生じた疲労感の回復が促進されることを確認。現在、「抗疲労」の機能性表示の取得に向け、消費者庁に届け出を行っている。同社は今後、SACの抗疲労効果のメカニズムについて、抗酸化を中心にさらなる研究を進めていく。

 また、抗酸化、抗疲労の食品を開発するメーカー向けにこの素材の販売を行うとともに、素材を使った自社ブランドでのサプリメント開発にも取り組んでおり、様々な環境変化の中で疲れを感じている人に役立ててもらえる商品を目指す。引き続き、人々の「美と健康」に関する健康食品素材の開発を進めていく方針だ。

 

ピクトリープ 赤外線カメラにも写る液晶表示装置を開発

, , ,

2020年7月16日

 ピクトリープ(新潟県上越市)はこのほど、画像が赤外線カメラに写る液晶表示装置「赤外LCD」の開発に成功したと発表した。同社は日本化薬グループのポラテクノの子会社。

 従来の液晶表示装置はバックライトが可視光で、偏光板が可視光のみの対応であるため、表示画像は赤外線カメラには写らなかった。今回の赤外LCDは、赤外線カメラからの赤外光を反射する反射板と、赤外領域に対しても偏光機能をもつ赤外偏光板を使用。赤外偏光板は日本化薬とポラテクノが開発した。4インチTFT液晶表示装置で試作した赤外LCDは、可視光カメラにも赤外線カメラにも画像が写ることが確認できた。

 今後、従来の液晶表示装置ではセキュリティー面で使用が困難であった、自動車のデジタルナンバープレートなどへの応用が期待される。

 

DNPと東京大学 スキンディスプレイのフルカラー化に成功

, , , , ,

2020年7月16日

 大日本印刷(DNP)と東京大学の染谷隆夫教授の研究チームは、独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術を進化させ、薄型で伸縮自在なフルカラーのスキンディスプレイと駆動・通信回路および電源を一体化した表示デバイスの製造に成功した。

 薄型で伸縮自在なフルカラースキンディスプレイ。
薄型で伸縮自在なフルカラースキンディスプレイ。

 同装置は、皮膚上に貼り付けたディスプレイに外部から送られた画像メッセージを表示できるコミュニケーションシステム。人に優しいスキンエレクトロニクスによって、スマートフォンやタブレット端末よりも情報への利用しやすさが大幅に向上し、子どもから高齢者まで、全世代のQOL向上への貢献が期待される。

 ウィズコロナ・アフターコロナの社会では、距離を隔てた状況でのコミュニケーションのあり方が重要になる。相手を身近に感じる効果を期待し、体表に近いところで情報を見たり、センシングしたりできる技術として、スキンセンサーやスキンディスプレイの開発が進められている。

 今回の研究のポイントとして、①曲面形状に追従できる伸縮性ハイブリッド電子実装技術で使用できる部品の選択肢が広がり実用化に目途。スキンディスプレイの表現力を高めるフルカラー化に成功した。②配線の信頼性を向上し、駆動・通信回路や電源も一体化したことで、様々なものに簡易に貼り付け可能。③遠隔コミュニケーションでの感情伝達を補う効果として、今までにない姿の応援メッセージを送るなど、情報伝達の利便性を発揮できる、などが挙げられる。

 両者は今後、これらの体表面に近いところで表示するセンシングデバイスのコミュニケ―ションに与える効果について検証する研究も継続。またDNPは、間もなくスキンエレクトロニクスの実用化検証を開始する予定だ。

帝人フロンティア ウイルス2次感染リスクを減らすシェルター発売

, ,

2020年7月16日

 帝人フロンティアはこのほど、ウイルスによる2次感染リスクを低減する陰圧「エアロシェルター」を開発し、8月下旬から販売を開始すると発表した。

陰圧「エアロシェルター」の外観
陰圧「エアロシェルター」の外観

 空気を注入し設営する超軽量大型テントの「エアロシェルター」は、内気圧を外部より約3パスカル低い陰圧状態に保つことで、ウイルスなどに汚染されたテント内の空気の流出を低減する。さらに、空気清浄装置に搭載する酵素HEPAフィルターを通して、テント内部の空気を浄化するとともに、1時間あたり6回以上の換気を確保することで、米国疾病予防管理センター(CDC) のガイドラインをクリアすることが可能だ。

 こうした機能から、感染症の疑いのある患者の検査や診察に適しているほか、発熱者の待機場所や一時的な隔離施設としての利用など感染症対策への貢献が期待される。サイズは、幅8.40m×長さ6.57m×高さ3.9mと広い空間を実現しながらも、本体重量は約38kg(乾燥時)と軽量。ポリエステル100%の素材を使い、7色(蛍光ホワイト、蛍光オレンジ、蛍光イエロー、蛍光グリーン、パープル、サックス、グレー)をラインアップした。本体価格は380万円(税別)。医療機関や官公庁などを対象に、今年度に5機、2025年度に30機の販売を目指す。

陰圧「エアロシェルター」の内観
陰圧「エアロシェルター」の内観

 「エアロシェルター」の他の特長に、空気注入によるテント本体の展開が約5分、空気清浄装置への接続を含めても大人2人で約30分と、迅速な設置への対応がある。また、内部の有効面積約40㎡の標準タイプでは、テント内に医療用ベッド(83cm×191cm)を4台収容できる一方で、平常時は空気を抜くことで70cm×70cm×80cm程度のコンパクトな収納が可能。

 テント内部には、患者同士のプライバシーを保護するファスナー脱着式の間仕切りを備え、独立電源を利用した除菌・防臭・防カビ効果を発揮するLED照明(6本まで)、スポットエアコンの使用を想定した熱風の排気口なども装備する。

出光興産など 産廃中CaでCO2削減、NEDO事業に採択

, , , , , ,

2020年7月16日

 出光興産は15日、連名他社・大学と共同で進めてきた「廃コンクリートなど産業廃棄物中のカルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセスの研究開発」が、NEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/炭酸塩、コンクリート製品・コンクリート構造物へのCO2利用技術開発」プロジェクトにおいて、研究開発委託事業に採択されたと発表した。

 出光興産と5者(宇部興産、日揮グローバル、日揮、成蹊大学、東北大学)は、産業廃棄物を活用し、火力発電所や工場から排出されるCO2を資源へ転換する技術開発を進めてきていた。同事業の委託期間は2020~2024年度の5年間。廃コンクリートなどカルシウムを多く含む産業廃棄物から原料となるカルシウムを抽出し、排ガス中のCO2と反応させて固定化させるプロセスの実用化と普及を目指した技術開発を行う。

 また、カルシウム分の抽出と炭酸塩化の効率を高めるため、加速炭酸塩化技術について試験・評価を実施するとともに、プロセス全体の最適化を図りながら技術を確立させ、CO2削減効果を評価していく。

 今回の事業採択を受け、発電所や工場から排出されるCO2の固定化に係る新たな技術を産学官の協働により開発するとともに、原料調達から用途開発に至るまでの幅広い領域で、社会実装に向けた取り組みを加速する。

 

大林組 地熱発電で水素製造、実証プラントの建設に着手

, , ,

2020年7月15日

 大林組はこのほど、大分県玖珠郡九重町に、地熱発電実証プラント(250kW)と水素製造実証プラント(10N㎥/h)を建設すると発表した。地熱発電電力で作るCO2フリー水素を、様々な需要先へ供給する一連のプロセスを実証する日本初の試みで、大分地熱開発(大分市)の協力で進める。実証プラントの稼働開始は、来年7月の予定。

 同社は太陽光、バイオマス、風力など再生可能エネルギーの利用拡大に取り組んできた。地熱発電は安定供給可能な優れたエネルギー源だが、発電場所は山間部のため送電網の容量が不十分であること、開発期間が長く固定価格買い取り制度の適用が困難といった課題から事業化が遅れている。

 一方、水素は利用時のCO2排出はなく、大容量貯蔵が可能。特に再生可能エネルギーを利用した水電気分解によるCO2フリー水素は、環境負荷低減やエネルギー自給率改善への貢献が大きい。そこで今回、地熱発電電力で作った水素を工場などへ陸送するスキームを実証することとした。 同社ニュージーランドの地熱発電電力・CO2フリー水素サプライチェーン構築の社会実装研究の知見も生かし、地熱発電候補地の選定・調査、発電所建設、水素の製造と供給に至る一連の事業化プロセスを検討する。

 実証では、低温・低圧蒸気でも発電効率の高いバイナリー発電機を使った発電プラントの設計、建設、性能検証を行う。水素製造プラントでは、複数運転モード(水素製造量最大、同製造単価最小、地熱電力比率最大)のエネルギーマネージメントシステムで水素製造の最適化検証を行う。また、GPS端末で水素搬送車両の運行状況を把握し、プラントを効率よく連続運転する制御機能もある。

 実証プラントで製造したCO2フリー水素は、地元工場で燃料電池フォークリフトなどに利用する。また、研究パートナーを広く募り、地熱発電電力や水素の活用方法を検討し、地域住民をはじめ広く再生エネルギーの利用や水素社会の到来を体感できるよう取り組む。

 大林組は今後も、再生可能エネルギーによるCO2フリー水素の製造・輸送・貯蔵・供給のサプライチェーン全体に取り組み、環境や社会の課題解決に向けた活動を進めていく。

 

ユーグレナ 燃料副産物をイチゴ栽培などの有機液肥に

, , , , , , ,

2020年7月15日

 ユーグレナはこのほど、明治大学、戸田建設、ルートレック・ネットワークス、DAインベント、Office FUJIWARAと共同で、微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)を原料とした有機液肥の農作物栽培の実証試験で、従来の化学液肥と同等の収穫量が得られることを確認したと発表した。

 ユーグレナからバイオ燃料用の脂質を抽出すると、ユーグレナ脂質抽出残渣が発生する。残渣の利用開発が資源の有効利用、さらに有価物として販売できればバイオ燃料の生産コスト低減に繋がる。今回有機液肥に注目し、明治大学黒川農場で実証実験を行った。

 牧草や野菜くずを原料とする有機液肥は、原料中の有機酸の影響で、農作物によっては生育障害が起こる。ユーグレナ脂質抽出残渣は、脂質抽出過程で有機酸が減少する。ユーグレナ脂質抽出残渣を原料とした有機液肥(ユーグレナ有機液肥)を、イチゴ栽培で試験した結果、農作物生育への有機酸の被害はなく、従来の植物性原料液肥に比べて有望だった。化学液肥と収量・品質に差がないことも確認された。

 同社では、バイオマスの5F(重量単価順に、食料、繊維、飼料、肥料、燃料)の基本戦略に基づき、ユーグレナなどの微細藻類を活用して、食品や化粧品などのヘルスケア事業、バイオ燃料などのエネルギー・環境事業に取り組んできた。ユーグレナ有機液肥は、肥料(Fertilizer)という新用途での可能性に向け、資本業務提携先の小橋工業など複数のパートナーと共同開発中だ。

 今後も微細藻類やバイオテクノロジーを活用した事業を通じて、サステナブルな社会の実現を目指していく。