帝人 繊維複合材料使い折りたたみ可能な構造体開発

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2019年9月6日

 帝人と帝人グループで先端的なコンポジット製品の設計、加工技術開発、試作を手掛けるジーエイチクラフトは、FRP(繊維複合材料)を用いて、折り紙のように折りたたむことができる構造体「ORIBAKO」(折箱)を開発した。

「ORIBAKO」のヒンジ部分(左上)と大型構造物の試作品
「ORIBAKO」のヒンジ部分(左上)と大型構造物の試作品

 「ORIBAKO」は、FRP製のパネルとヒンジ(ちょうつがい)を貼り合わせた多面体の構造物。FRP製であるため軽量で、運搬や設置場所での展開・設置・撤収、保管などを容易に行うことができる。

 そして、ヒンジ部分に柔らかい樹脂を使用したFRPを用い、伸縮性や曲げに対する優れた剛性、耐久性、密閉性を付与することにより、小さな箱物や簡易的な建造物など様々な大きさ・形状の構造体を折り紙のように簡単に折りたたみ、繰り返し使用することができる。

 また、帝人が長年培ってきた独自のFRP技術を駆使し、パネル部分とヒンジ部分とを一体化させて気密性を担保することで、段差のないシームレスな表面を実現。さらには、用途に合わせてパネルとヒンジに用いる素材の組み合わせを変えることにより、吸音性や断熱性、衝撃吸収性、振動吸収性といった特性を付与することも可能だ。

 両社は、6日までパシフィコ横浜で開催中の「SAMPE Japan 先端材料技術展 2019」で、「ORIBAKO」製の大型構造物の試作品を初展示。これは、CFRP(炭素繊維複合材料)製のパネルにGFRP(ガラス繊維複合材料)のヒンジを貼り合わせた約11?の簡易型ブースで、約40㎏と軽量であるため、重機や工具を使用することなく大人二人で簡単に設営することができる。

 両社は、今後、「ORIBAKO」の改良を重ね、使用する素材のバリエーションを拡充することにより、天井にソーラーパネルを搭載したエネルギーの自給が可能な簡易的な室内スペースや、密閉性が求められる物品などにも対応可能な輸送用のコンテナなどの幅広い用途に向け、2022年までに実用化を目指す。

 帝人グループは、多様化する社会のニーズに応えるため、今後も設計・デザイン・成形プロセスを開発することにより、高機能素材や複合化技術を強みとしたマルチマテリアルでの事業展開を強化し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していく。

DNP 植物原料50%使用のラミネートチューブを開発

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2019年9月5日

 大日本印刷(DNP)はこのほど、植物由来の原料を50%使用し、チューブ胴体の薄層化によりプラスチック使用量を削減することで、環境に配慮したラミネートチューブを開発したと発表した。

新開発のラミネートチューブ
新開発のラミネートチューブ

 今回開発したラミネートチューブは、チューブ胴体の全ての層と、肩にあたる部分と注出口に植物由来原料を使用し、キャップを除く全体のうち約50%を植物由来原料で代替した。

 さらに、使用中の自立性や使いやすさを維持しながら胴体の薄層化を実現するため、材料設計に工夫を凝らすことで、従来製品に比べてプラスチック使用量を大幅に削減。これにより、CO2排出量を従来比約35%削減した。

 同社が展開する環境配慮パッケージシリーズ「GREEN PACKAGING」の主要製品群の1つが、今回の「DNP植物由来包材バイオマテック」シリーズ。サトウキビから砂糖を精製した際の副産物(廃糖蜜)などの植物由来原料を1部に使用したバイオマスプラスチック製品だ。

 植物は生育の過程で、光合成によってCO2を空気中から取り込むため、パッケージ使用後の焼却時に出るCO2と相殺することが可能で、製品ライフサイクル全体でCO2の削減に貢献する。同シリーズについては、2010年から開発に着手し、現在、食品や日用品などの包装材で広く使用されている。

 同社は、「持続可能な原料調達」「CO2の削減」「資源の循環」という3つの価値を追求することで、循環型社会の実現と環境負荷の低減に向け取り組んでいる。今回開発したラミネートチューブをトイレタリー・化粧品や食品メーカーに販売し、来年度に年間20億円の売上を目指す。

 

三菱ケミカルホールディングス 豚の音声検知システムを共同開発 

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2019年9月5日

 三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は4日、Hmcomm(東京都港区)・宮崎大学と、豚の音声を収集し健康状態や母豚の発情兆候・哺乳回数を検知するシステムの開発を目指して共同研究を開始すると発表した。

 MCHCは2017年に先端技術・事業開発室内に未来市場グループを設置し、先進的な顧客ならびにパートナーと連携して新規事業を開拓。10~20年後のMCHCグループのビジネスポートフォリオの拡大とグローバルなプレゼンスの強化に寄与することをミッションとしている。その中で将来予想される食糧難に向けて畜産分野の安全・安心を提供する様々なソリューション提案を目指している。

 Hmcommは産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャー企業として、産総研独自の音声処理技術を用いた要素技術の研究/開発と、ソリューション/サービスを提供。これまでにも異音検知プラットフォームを活用した豚の健康管理に関する実証試験を実施するなど、音から価値を創出し、革新的サービスを提供することで社会に貢献することを目指している。

 今回開始する共同研究では、宮崎大学住吉フィールドおよび南さつま農業協同組合加世田農場で飼育する母豚や肥育豚の音声を収集し、Hmcommのディープラーニングによる異音検知プラットフォーム「FAST‐D」を活用。

 AIに学習させることで、熟練者と同等以上のレベルで「豚の呼吸器系疾病の兆しの早期検知」「発情兆候の検知」「哺乳回数の測定」を行い、熟練差のノウハウの平準化を推進する。またこの音声検知システムを構築することで、より少人数での効率的な畜産業務の実施が期待される。

 今後もMCHCグループは、持続的な社会の実現のため、人・社会・地球が抱える課題解決に向けてグループの総合力でソリューションを提案し、社会に価値を提供し続けていく。

JSR 強度・耐摩耗性・耐久性に優れるSBRを開発

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2019年9月4日

 JSRは3日、乗用車タイヤ用に強度・耐摩耗性・耐久性を大幅に改善したスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を新たに開発し、販売を開始したと発表した。

 100年に1度の大変革期と言われる自動車業界ではCASEなどの技術革新が急速に進んでいる。そうした中、タイヤには、従来のCO2排出量低減に向けた低燃費性能の向上に加え、高強度・高耐摩耗性・高耐久性といった多様な性能も求められてきている。

 今回開発したSBRは、同社が長年蓄積してきた独自の分子設計技術と水素添加技術を組み合わせ、不飽和結合数を最適化。その結果、ゴム分子同士の絡み合い数の増加、架橋した際の応力集中の分散が可能となり、従来の低燃費タイヤ用溶液重合SBR(S-SBR)対比の強度を約2倍に向上させた。

 タイヤのトレッドコンパウンドに使用した場合、S-SBR搭載タイヤに比べて、低燃費性能・グリップ性能を維持したまま耐摩耗性を50%以上も改善する評価結果を獲得。また、水素添加技術により不飽和結合を低減しているため、熱や光などによる経時的な性能低下を防ぎ、大幅な耐久性の向上にも寄与する。

 変革期を迎える自動車業界の中で同製品は、優れた破壊強度・耐摩耗性・耐久性を生かしてタイヤトレッド部材の軽量化や、省燃費化、省資源化といった多様なニーズへの対応を可能にする材料だ。

 なお、10月8~10日に米・クリーブランドで開催されるInternational Elastomer Conferenceでは、同製品に関する学術発表を予定している。同社は今後も、企業理念「Materials Innovation マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」に立脚し、ユーザーにさらなる付加価値を提供していく考えだ。

NEDO・東北大 円形断面型クローラー開発、全方向に連続移動

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2019年9月3日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東北大学は27日、全方向(360度方向)への連続移動を実現した円形断面型履帯(クローラー)の開発に世界で初めて成功したと発表した。

円形断面型クローラー
円形断面型クローラー

 オムニクローラーが備える高い耐荷重性・走破性に加え、放射状に最密配置したクローラーが駆動することにより、任意方向への連続的な移動を可能にした。柔らかい絨毯をはじめ、点字ブロックの段差や踏切内の線路の溝など、一般の車輪では走りにくい環境でも、クローラーの向きを変えることなく縦・横・斜めの方向にスムーズに移動できる。

 両者は、2015年から「全方向駆動機構を核とした革新的アクチュエーション技術の研究開発」に取り組んできた。今回開発したクローラーは、全方向移動を行うために必要な2つのモーターのほか、平歯車やねじ歯車などの最小限の動力伝達装置からなる単純構成のため、保守性に優れ、小型化が可能な全方向移動機構のベース技術になり得る応用範囲の広い機構となっている。

 3つの機能として、①履帯機構の姿勢や路面の状態によらず、モーターの回転方向を切替える必要がなく継続的に全方向に移動可能②歯車とチェーン、ベルトを用いることで、摩擦伝動によらず高い駆動力の伝達が可能③高い不整地走破性を実現(軸方向の段差乗り越え高さ10mm、その直交方向の段差乗り越え高さ30mm、溝踏破長さ140mm)を併せ持つ。

円形断面型クローラーを搭載した車両
円形断面型クローラーを搭載した車両

 新たに考案した全方向移動用のスクリュー式差動回転機構は、回転軸の動力をねじ歯車によって垂直方向に変換する構造を線対称に配置。これにより、左右2つの入力回転を、全方向駆動機構として必要な前後・左右の移動につながる公転と自転の出力に、極少の伝達部品数で変換させる仕組みを実現した。

 電動車いすをはじめ、移動型ナビゲーションロボットや屋内外の巡回警備ロボットなど、総重量の大きなモビリティー(移動体)用の駆動機構としての用途が期待される。

クラレなど ウェアラブル電子制御冷暖房ジャケットを開発

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2019年9月3日

 クラレはWINヒューマン・レコーダーと、電子制御冷暖房装置を搭載したジャケットを開発した。建物や自動車などの空間全体ではなく、体だけを効率的に冷やしたり暖めたりすることができる。

 従来の冷暖房システムに比べエネルギー効率が向上し、消費エネルギーを削減できるため、地球温暖化問題にも貢献する。富士通ゼネラルとWIN社が販売する予定で、2020年夏からの試験販売を目指す。

 このウェアラブル電子制御冷暖房ジャケットは、環境温度に対し、-5~-15℃程度の冷却機能をもつ。 可動時間は約2~4時間。ジャケットの表層には「クラリーノ」、裏地にはダブルラッセルを使用している。

 Tシャツの上からの着用を想定しており、適度なクッション性とストレッチがあるため、幅広いシーンに対応可能だ。並行して、導電性繊維や面ファスナー「マジックテープ」に導電性を付与したジャケットの設計にも取り組んでいく予定。スポーツや極暑対策、老人介護、屋外作業、救助隊作業などの用途を想定している。

 地球全域の温暖化問題の対策には、建物や自動車全体を冷却する従来の空調システムに加え、体だけを選択的に冷却するシステムが有効で、快適性と省エネの両面から、今後このようなシステムの普及が予想される。

 今回開発したウェアラブル電子制御冷暖房装置は「局所適合環境を持ち歩く」環境ウェアラブルを実現する、新しい発想の電子機器。人体の血液の流れが集中する頸部を冷暖することによって、体温を適切にコントロールすることができる。

 制御デバイスはペルチェ素子(冷暖機能をもつ半導体)と、腰または背中に装着するラジエータ部、バッテリー部、コントローラー部から構成される。頸部表面温度を適温範囲で設定でき、過冷却と低温熱傷を防止する。

ハネウェル 空調用新冷媒への移行で中国企業と提携

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2019年8月28日

 米ハネウェルはこのほど、中国の三花ホールディングスと、既存・新規空調機器の冷媒を、ハネウェルの「ソルスティスN41(R‐466A)」に移行することで提携したと発表した。

 三花ホールディングスは、冷凍冷蔵空調機器向け制御装置と各種部品の世界的なメーカー。R-466Aは据付型空調システム用途で、従来のR-410A冷媒の代替として開発された、低GWP(地球温暖化係数)で不燃性の冷媒。今年末の上市を予定している。

 「ソルスティスN41」はR-410Aを代替する冷媒として、初めてASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)34分類A1クラス(不燃性)と低GWPを両立した。不燃性であることから、従来の不燃性冷媒であるR-410Aの機器設計を大幅に変更する必要がなく、燃焼性冷媒使用によるリスク対策として一般的に求められるセンサー類やバルブ類が不要であることが、各国・地域の法規制で示されている。

 初期の検証では、R-410A代替として.「ソルスティスN41」を用いた場合、設備業者に対する燃焼性冷媒への移行取扱トレーニングが不要であることも示されており、資格をもつ施工技術者人材の不足に対する大きなメリットになる。

 ハネウェルは「ソルスティス」「ゼネトロン」ブランドにより、世界中で冷凍冷蔵やビル冷暖房、カーエアコン向けなどの幅広い冷媒を開発・製造・供給している。ハネウェルとサプライヤーパートナーは、ハネウェルのハイドロフルオロオレフィン(HFO)技術に基づく、次世代製品の研究開発と製造供給体制の整備に向け、9億ドルの投資プログラムを実施した。

 三花ホールディングスは空調・冷凍冷蔵機器・家電・カーエアコン・冷熱管理産業に向け、制御装置や部品を供給するグローバルメーカーで、冷凍冷蔵空調と自動車産業向けに、年間5000万台以上の電子弁・機械弁を供給している。

BASFジャパン 防水・コンクリート防食被覆の新工法を発売

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2019年8月27日

 BASFジャパンは、「MASTER BUILDERS ポゾリス」ブランドから、防水・コンクリート防食被覆工法(プライマーとボディコートのセット)「マスターシール7000 CR」を新たに発売した。タンクや下水管などを含む、過酷な排水インフラ環境の課題に対処する独自の特性を備えているのが特長だ。

 下水中の嫌気的な環境では、硫酸塩還元細菌により硫化水素が生成される。気相中に拡散した硫化水素は、硫黄酸化細菌により硫酸を生成し、コンクリート躯体の構造的損傷を引き起こす原因となる。

 新製品は優れた耐薬品性とひび割れ追従性を兼ね備え、廃水や酸からコンクリートや鉄筋を保護するだけでなく、構造物のライフサイクルを延命する。新製品のもう1つの重要な利点は、下地や施工環境での優れた耐湿性。手塗りまたは吹付けにより簡単に施工でき、湿潤下地面にも使用できる。

 さらに速硬化性により、20℃で施工完了後、24時間程度で解放できることから、工期を短縮し、最小限の設備停止期間で現状を復旧させることが可能だ。

 新製品は「MASTER BUILDERS ポゾリス」ブランドによる、耐久性の高い建設に向けた同社の新技術Xolutec(ゾルテック)を駆使している。この新技術は現在のウレタン(PU)やウレタンアクリル(PUA)の製品の先を行く技術として、数年をかけて開発された。

 ゾルテックは、樹脂構成要素と分子間相互作用を最適化し、強化された架橋ポリマーネットワークを創出する。この技術により、長期間のメンテナンスサイクルを実現し、ライフサイクルコスト低減に貢献する、多様なソリューションに向けたユニークな材料特性をもった製品が提供可能になった。

 新製品はアミン構造を持たないため超低臭型工法で、日本下水道協会防食マニュアルのC種・D種に適合した性能があり、技能員の作業環境と安全性に寄与する。

積水化成品 高湿度下でも性能保持するゲル素材を開発

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2019年8月27日

 積水化成品は26日、高湿度下でも性能を保持するゲル素材「テクノゲル」LSグレードを開発したと発表した。

 「テクノゲル」はポリマーマトリックスの中に、水や保湿剤などの溶液や電解質を保持させた、肌にやさしく安全性に優れたゲル素材。生体電極の部材として、皮膚とのインターフェイスに広く使われている。

 近年、メディカル・ヘルスケア分野では発汗が想定される運動時のウェアラブル用途や、高湿度が条件となる保育器内の乳幼児センシング用途、生体情報モニタリング用途で、安定した計測を長時間持続できる部材が求められてきた。

 同社では、これまで技術的に困難であった高湿度下で粘着力を保持させるため、吸湿性の抑制と導電性の維持という、相反する特長を持たせることに成功。長時間使用しても皮膚から剥がれにくい新グレードを開発した。

 「テクノゲル」を素材として提供するだけでなく、「テクノゲル」を使用した生体電極パッドの設計から生産までを国内で実施。また、グローバルな生体電極の生産体制構築を推進している。

 今後も、高湿度下で長時間の使用が可能な新グレードの特長を生かし、日々進化するメディカル・ヘルスケア分野での顧客ニーズに応えていく。なお、「テクノゲル」全体の販売計画として2021年度に35億円を目標としている。

産総研と阪大 世界最薄のフレキシブル生体計測回路を開発

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2019年8月26日

 産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学の関谷毅教授らの研究グループは、世界最薄・最軽量の生体計測用信号増幅回路の開発に成功した。

産総研用 写真 有機トランジスタを厚さ1マイクロメートルのプラスチックフィルム上に集積
有機トランジスタを厚さ1マイクロメートルのプラスチックフィルム上に集積

 生体の微弱な信号を、装着感なく、正確に計測できる差動増幅を薄くて柔らかい有機回路で実現。歩行などの外乱ノイズを除去できる機能を搭載したことで、手軽で高精度の生体計測が可能になり、高度な生体計測など新たな価値創造が見込まれる。

 例えば、計測回路の装着性と密着性が向上したことで、スポーツ時の激しい体の動きを伴う場面でも生体計測が容易になる。また、得られるリアルタイムで長時間の生体計測データを利用することで、病気の早期発見や治療の効率化、高齢者や患者の見守り、運動負荷の監視などへの活用が期待されている。

 同開発は、阪大産業科学研究所の関谷教授、植村隆文特任准教授(産総研特定フェロー兼任)を中心とした研究グループと、産総研が阪大内に設置した「産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ(PhotoBIO‐OIL)」によるもの。両者の先端技術を融合することで、多彩な生体分子を計測する次世代バイオセンシングシステムの研究開発を行っている。

胸に貼ったフレキシブル生体計測回路
胸に貼ったフレキシブル生体計測回路

 ヘルスケアや医療用途の生体計測回路はこれまで、シリコントランジスタに代表される硬い電子素子で構成されていた。しかし、硬い電子素子が柔らかい肌などの生体組織に触れると炎症を起こしやすいため、日常生活での長時間の生体信号計測は困難だった。

 同研究グループは、電気が流れる半導体部分が有機材料の有機トランジスタを使用。柔軟な電子素子を、厚さ1㎛の薄くて柔らかいプラスチックフィルム上に集積し、装着感のないフレキシブル生体計測用回路を開発した。

 作製した回路は差動増幅回路とよばれる2つの入力端子をもつ信号処理回路。従来の1つの入力端子しかもたないシングルエンド型の増幅回路と比較すると、微弱な生体電位を増幅できるだけでなく、外乱ノイズを取り除くことも可能になった。

 人への生体計測の実施では、重要な生体信号である心電信号のリアルタイム・低ノイズ計測を実証した。両者は高精度な生体計測を通じ、医療費削減や人々のQOL向上といった、様々な社会課題の解決に貢献していく考えだ。研究成果は16日の英国科学誌「ネイチャー・エレクトロニクス」(オンライン)に発表した。