竹中工務店など 炭素繊維強化プラを南極観測施設に活用

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2021年8月3日

 竹中工務店と国立極地研究所はこのほど、2022年度から南極内陸部のドームふじ近傍に、屋根の骨組み(架構)に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を活用する氷床掘削施設を設置し効果の検証を開始すると発表した。現在策定中の南極地域観測第Ⅹ期6カ年計画(2022~2027年度)において、南極内陸部(沿岸から約1000Km)のドームふじ近傍での氷床コア(アイスコア)掘削が予定されている。

 掘削施設の建設に必要な部材は、南極観測船「しらせ」で日本から南極大陸沿岸の昭和基地へ輸送し、その後、昭和基地からドームふじへ雪上車で数週間かけて運搬する必要がある。また、現地での組み立ては、限られた人数の観測隊員により進められる。これらのことから、建物の強度を維持しつつも、輸送や組み立ての効率化のために部材の軽量化を図ることが重要な課題となる。

 さらに、現地は年平均気温がマイナス50℃を下回る厳しい気象環境にあり、部材に使用される素材は低温に強いことが必須条件。こうした課題の解決を図るため、両者は、CFRPの①軽量、②高強度、③伸び・縮み・変形しにくい、④錆びない、などの特長を生かし、輸送にかかるエネルギーの削減、現地での組み立ての簡易さ、現地の過酷な気象環境への対応といった観点から、南極の内陸施設におけるCFRPの活用に向けた共同研究を、2019年から推進してきた。

 今回の実証試験では、南極のドームふじ近傍に設置する掘削施設の屋根架構にCFRP素材の部材を適用し、部材軽量化による効果を検証するもので、今年12月に昭和基地まで輸送した後、2022年度にドームふじ近傍の掘削地点に設置、その後、2028年まで現地で経過観察を行う予定だ。

 CFRPは、一般炭素鋼(鉄)と比べて重量が5分の1と軽量でありながらも5倍の引張強度をもつ。試作の結果、屋根架構にCFRPを用いた場合には、従来の鉄骨屋根と比較し約40%の重量削減を見込めることが判明した。これにより、現地で組み立てを行う観測隊員の負担を軽減するとともに、部材の輸送・組み立てにかかるエネルギーを大幅に削減することが期待され、これらの効果は脱炭素社会の実現にも寄与すると考えられる。

 国立極地研究所は今後、南極に設置するほかの観測施設へのCFRPの活用を検討する。一方、竹中工務店は、CFRPの建設利用に関してさらなる検討を進めるとともに、一般建築に向けた適用も推進していく。

日本製鉄など 常圧CO2からプラスチックの直接合成に成功

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2021年8月3日

 日本製鉄、大阪市立大学、東北大学はこのほど、脱水剤を用いずに、常圧CO2とジオールから脂肪族ポリカーボネートジオール(PCD)の直接合成を行う触媒プロセスの開発に世界で初めて成功したと発表した。なお、今回の研究成果は、「Green Chemistry(IF=10.18)」にオンライン掲載されている。

 PCDはプラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体であり、現在、ホスゲンや一酸化炭素を原料にして合成されているが、これら原料は有毒なため、グリーンケミストリーの観点から原料を代替する技術の開発が求められている。代替原料にCO2を用い、ジオールと反応させてPCDを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されているものの、高収率を得るには、高圧CO2や脱水剤を用いる必要があった。

 こうした中、今回の研究で見出だした手法はこれら課題を克服するもので、酸化セリウム触媒を用い、ジオールに常圧のCO2を吹き込むことにより、生成した水を反応系外に除去することが可能になり、目的のPCDを高選択率かつ高収率で得ることに成功した。

 同技術により、添加剤を用いず、常圧のCO2を化学変換できる新しい触媒プロセスを提供する。また、沸点が水の沸点よりも十分高い基質であれば適用可能であると考えられ、LIBの添加剤やポリマー合成用原料として有用な有機カーボネート、カーバメート、尿素などの合成にも展開できると想定される。CO2から様々な化学品合成ルートを確立することで、CO2の化学固定化に寄与する触媒プロセスになることが期待される。

 3者は今後、実用化に向けた固体触媒の改良、スケールアップを含めたプロセス検討を行いながら、さらに研究開発を進めていく。

積水化成品工業 植物由来原料使用したポリマー微粒子を開発

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2021年8月3日

 積水化成品工業は2日、持続可能社会に貢献する植物由来の原料を使用したポリマー微粒子「テクポリマー BIO EF-Cシリーズ」を開発したと発表した。

「テクポリマーBIO EF-Cシリーズ」 特長

 「テクポリマー」は、独自の重合技術を用いたポリマー微粒子で、液晶ディスプレイの光拡散剤や、化粧品の添加剤、塗料の艶消し剤など、様々な用途で使用されている。一方、廃プラ問題による環境汚染や気候変動による地球温暖化への対策が世界全体で課題となっており、SDGsの取り組みを推進し、脱炭素社会を目指して、環境負荷を低減する素材の開発が求められている。

 同社は、これまでも環境に配慮した「テクポリマー BIO」を展開し、生分解性微粒子である「EF-Aシリーズ(水中分解性)」や「EF-Bシリーズ(土壌分解性)」を市場投入しており、今回、植物由来原料を使用し、従来シリーズよりも耐久性に優れ、塗料などの添加剤として扱いやすい「EF-Cシリーズ」を新たに開発した。

 特長として、バイオマス度50%のポリマー微粒子(国内外のバイオマスマーク申請中)、耐溶剤性や耐久性に優れるほか粒子径などのカスタマイズ対応も可能、ソフトな触感や復元性をもつ軟質粒子であり艶消しに加えて塗料の触感改良にも使用できる、などが挙げられる。

 同社は「EF-Cシリーズ」について、自動車内装材の塗料用途や照明カバーの光拡散剤などを想定分野としており、「テクポリマー」全体の販売計画として2025年度に売上高70億円を掲げている。今後も、塗料用途をはじめとする幅広い分野での展開を図り、持続可能社会への貢献に努めていく考えだ。

三井化学 太陽光発電オンライン診断専用サイトを開設

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2021年8月3日

 三井化学は2日、10㎾から2㎿程度の中小規模太陽光発電事業者を主たるターゲットに、適切な発電量の予測を目的とした、オンライン診断専用WEBサイト(https://www.mci-solarpvhealth.com/jpn/)を開設したと発表した。今回のWEBサイト開設により、ユーザー自身が情報入力することで、最短3分での診断書発行が可能になる。なお、同診断事業は、今年4月から先行サービスを開始し、すでに100件の診断を実施している。

太陽光発電オンライン診断
太陽光発電オンライン診断

 オンライン診断の強みとして、①これまで発電収支の予測手段がなかった中小規模の事業者を対象とするサービス、②事業者が最短3分で診断書発行が可能、③同社のノウハウと正確な気象データを背景としたAIによる確度の高い診断、などが挙げられる。

 同社グループでは、三井化学東セロで30年以上製造・販売している太陽光パネル用封止材の劣化予測技術、2014年から「田原ソーラー・ウインド発電所」(愛知県田原市)での事業者として開発・運営してきた経験、市原工場茂原分工場や袖ケ浦センターの試験用発電所でのデータ蓄積、といった太陽光発電に関する知見をもつ。同社はこれらの知見や信頼を生かし、日本の再生可能エネルギー利用拡大に対応することで、今後も社会課題の解決に貢献していく。

 

三菱ケミカル 植物由来の透湿性フィルム発売、環境に貢献

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2021年8月3日

 三菱ケミカルは2日、植物由来原料を用いた透湿性フィルム「Green KTF」の販売を開始したと発表した。同フィルムは、同社が新たに開発した独自製法で実現しており、世界的に見てもユニークな製品となる。

植物由来の透湿性フィルム ※写真は従来品

 「KTF」は、天然物由来の炭酸カルシウムと、石油由来のポリエチレン(PE)を主原料とする微多孔質のフィルム。水蒸気より大きく水滴よりも小さい孔径を有することにより、湿気は通すが水は通さない性質をもち、主に紙おむつをはじめとする衛生材料のバックシートや高機能防護服の基材などに使用されている。近年、アジア地域などの発展に伴い需要が増加しており、今後も堅調に推移することが見込まれている。

 今回販売を開始した「Green KTF」は従来の「KTF」と同等の性能を有しながら、植物由来のPEを原料に用いることで、製造時のCO2の排出量を約30%削減。もう1つの主原料である炭酸カルシウムも含め、約9割が天然物由来となるため、環境負荷を低減させている。

 同社は三菱ケミカルホールディングスグループが掲げる中長期経営基本戦略「KV30」のもと、サーキュラーエコノミー実現に向け、バイオマスプラスチック製品の拡充を進めている。今後も、高い機能と環境性能を併せもつ製品の開発・提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していく。

日本酸素ホールディングス タイ東部の空気分離装置が稼働を開始

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2021年8月2日

 日本酸素ホールディングスは29日、アジア・オセアニア事業会社の1つNIPPON SANSO(THAILAND)が、タイ東部ラヨーン県で建設を進めていた空気分離装置が完成し、操業を開始したと発表した。タイでは、持続的成長を可能とするための経済発展計画「タイランド4.0」が進められている。

タイ東部ラヨーン県 空気分離装置
タイ東部ラヨーン県 空気分離装置

 同構想の中核である「東部経済回廊(EEC)」は、タイ東部の3県(チョンブリ県・ラヨーン県・チャチュンサオ県)を経済特区として開発する計画で、同地区を中心に産業ガス需要の持続的増加が期待されている。

 NIPPON SANSO(THAILAND)では、空気分離装置をバンコク周辺地区で2工場、タイ北部のチェンマイ周辺地区で1工場稼働させ、バルクガス事業を展開してきた。

 今回、両地区での需要増と安定供給強化に対応するため、7月からラヨーン工場の操業を開始した。これにより同社は、大口需要顧客へのガスのパイピング供給と併せて、液化ガスの販売による事業基盤の拡充と事業拡大を図っていく。

 

NEDO、地熱発電の導入拡大、14の研究開発に着手

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2021年7月30日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど「地熱発電導入拡大研究開発」において、重点課題である「地熱資源のポテンシャル拡大」と「地域共生・環境保全」、「発電原価低減化」の解決につながる研究開発に着手すると発表した。NEDOは今回の研究開発を通じて大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新たな地熱開発や地熱発電所の性能向上を後押しする。

 2018年に閣議決定された「第五次エネルギー基本計画」では、地熱発電は発電コストが低く、安定的な発電が可能なベースロード電源と位置づけられた。同時に、エネルギーミックスの中で2030年度に最大で発電容量155万㎾、発電電力量113億㎾hの導入が掲げられている。

 こうした背景から、NEDOは2019年度に国内外の地熱開発・地熱技術開発動向を調査し、2030年の導入目標達成と2050年の社会実装にあたり求められる技術開発テーマを探索・検討し3つの技術開発の重点課題を挙げた。

 これらの課題解決に向け、NEDOは2021年度から新たな研究開発プロジェクト「地熱発電導入拡大研究開発」を立ち上げる。同研究開発によって将来の大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新規地熱開発や既存の地熱発電所の性能向上を促進し、国内における地熱発電のさらなる導入拡大を推進する。

 今回採択した14件の研究開発テーマでは、まず地熱発電ポテンシャルが高いと想定される火山地帯の地表から3~5㎞深部にあると推定される高温・高圧の超臨界水を活用。従来の地熱発電よりも大規模な出力が期待できる超臨界地熱発電の実現に向けた有望地域の地熱資源量の調査と、探査技術の開発を行う。

 また、国立・国定公園内での地熱開発や、開発地域のステークホルダーとの合意形成を可能にするための環境保全対策技術開発に取り組む。さらに、IoTやAIの活用によって地熱発電設備や地熱貯留層の管理を効率化・最適化し、既存発電設備における発電量の引き上げや、新規地熱開発時の発電量向上、コスト削減につながる高度な管理技術の開発を目指す。

NEDO 燃料電池の新たな研究開発着手、普及を加速

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2021年7月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、燃料電池の飛躍的な普及拡大に向け、新たに24件のテーマを採択したと発表した。

 2020年度から実施中のテーマを踏まえて、今後さらに補強すべき分野として、セパレータやガス拡散層(GDL)などの先端的な研究開発のほか、農機や建機、港湾荷役機器、ドローンなど多様な用途での燃料電池の活用を目指す実証事業に着手する。

 燃料電池は、燃料がもつ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、原理的に高いエネルギー効率を得られる。また発電時にCO2を発生させないため、GHG排出抑制への貢献が期待されている。

 日本では家庭用燃料電池エネファームを2009年に、燃料電池自動車(FCV)を2014年に世界に先駆けて市場投入した。しかし、今後の自立的な普及拡大に向けて高効率・高耐久・低コスト化が必要となり、また、製品を市場投入したことで多数の課題が顕在化している。

 こうした中、NEDOは、2019年1月にトヨタ自動車や本田技術研究所、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)らとともに「FCV課題共有フォーラム」を開催し、各々で協調して取り組むべき課題の抽出・共有を行った。

 また、経済産業省とNEDOは同年6月に「水素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィーク」を開催し、産学官全体にわたる技術開発の活性化に向けて議論した。

 これらの議論を踏まえて策定された「水素・燃料電池技術開発戦略」に基づき、NEDOは2030年以降燃料電池を飛躍的に普及拡大させるため、2020年度から燃料電池システムに関する大規模な研究開発事業である「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」を実施。

 そして今回、燃料電池のさらなる高度化に向けて、現在のテーマではカバーされていない分野を対象に追加公募を実施し、24件の新規テーマを開始する。

 同事業の推進を通じ、日本の燃料電池技術の競争力をさらに強化し、世界市場で確固たる地位を確立するとともに、水素社会の実現に貢献する。

 

ENEOS 非接触POSなどSSで新サービス実証開始

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2021年7月29日

 ENEOSはサービスステーション(SS)の利便性向上を目指し、Dr.Driveセルフ荻窪店(東京都杉並区)で業界初の取り組みとなる非接触POSの導入をはじめ、リモート接客、デジタルサイネージといった新デジタル技術サービスの実証実験を開始する。

非接触POSのイメージ
非接触POSのイメージ

 同取り組みは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてさらに高まる利用者の非接触・非対面ニーズや、恒常的な人手不足の解消という運営店のニーズへ対応を目的としている。

 非接触POSの実証では、「空中ディスプレイ+赤外線センサー一体型」機器と「赤外線センサー後付け外設端末」の二種類を設置。空中ディスプレイは、空中に映し出されたバーチャルPOS画面の操作を赤外線センサーで感知するもの。既存の機器には、画面上に赤外線センサーを設置し、操作画面の数㎝手間で指の動きを感知させることで、画面に直接触れることなく注文が行えるようにする。

リモート接客の利用風景
リモート接客の利用風景

 一方リモート接客は、エネオスカードやENEOSでんきの入会手続きを、SSスタッフに変わりリポートオペレーターが対応することで、店舗の省力化を図る。高度な説明が伴う商材についてもリモートオペレーターが説明を行う。

 また、採光式デジタルサイネージを店舗内入口付近の窓側に設置する。外の光を取り込み室内の明るさを保ちながら告知を展開。ポスターや看板などの廃棄物削減と交換作業の手間を省き、より効率的で効果的な告知を目指す。こうしたデジタル技術活用の有効性、操作性、耐久性、認知度合いなどを検証していく。

 

住友化学 米国で新規植物生長調整剤の農薬登録を取得

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2021年7月29日

 住友化学は27日、米国において新規植物生長調整剤「アクシード」の農薬登録を取得したと発表した。

 「アクシード」は、同社が「A2020(2020年代の前半に登録申請を開始するパイプライン)におけるバイオラショナルの1つとして開発した植物生長調整剤に分類される摘果剤。効果的な剤の種類が乏しいモモやネクタリンを含む核果樹のほか、リンゴでは栽培初期から後期まで幅広い期間で適用が可能だ。

 同剤を処理すると、有効成分であるACCが植物中で落果を促進する物質(エチレン)へと変換され、収穫時の果実に残らない。また、手作業への依存度が高い摘果作業を代替できるため、栽培の省力化および果実の質の向上につながる。

 同剤の米国での登録は、同社と米国グループ会社による10年以上をかけたバイオラショナルのグローバルな研究開発の集大成。同剤は、100%子会社であるVUSA(米国カリフォルニア州)内にあるSSBU(サステナブル・ソリューション・ビジネスユニット)を通じて、2021年度内をめどに米国で販売を開始する予定。また、カナダでの登録に向け、現在当局による審査が進んでいるほか、この先、欧州や中南米などでも登録申請を計画している。

 住友化学は、引き続き、生物多様性に配慮した持続的な農業に貢献するため、バイオラショナルと、格段に環境負荷を低減する革新的な化学農薬の研究開発に注力し、新たなソリューションを農業生産者に提供することで、世界的に需要の高まる安全・安心な食料の安定供給に貢献していく。