BASF 高耐候安定剤がPE製の滑り台を紫外線から保護

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2019年12月3日

 BASFはこのほど、高耐候安定剤「Tinuvin(チヌビン)」が、スイコー(兵庫県尼崎市)の直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)製滑り台に採用されたと発表した。

BASF
帯電防止性能を有したスイコーの滑り台

 回転成型により製造したこの滑り台は、帯電防止性能を備え、安全性と耐久性が向上し、炎天下でも変色しない。L-LDPE製の滑り台は本来、紫外線劣化を起こしやすく、変色や物性低下が生じる。この課題を解決するため、製造工程でポリマー樹脂に「チヌビン」を添加することで、滑り台の色を明るいまま保持することが可能になった。

 スイコーの強みは回転成形技術で、成形体外表面の紫外線劣化を診断する技術ももつ。この紫外線劣化診断技術により、滑り台の適切な交換時期を推奨でき、遊具の安全性がより向上する。

 公園遊具にはさまざまな素材が使用されているが、金属製の滑り台は夏場に高温となるため、理想的な素材とは言えない。また、繊維強化プラスチック(FRP)製や鉄製の滑り台は、定期的に再塗装することが必要で、亀裂を予測することが困難だ。

 一方、L-LDPE製の滑り台はメンテナンスが容易な上、単一材料のプラスチックとしてリサイクルも可能なので、ニーズが増加している。

産総研など 機能性酸化物ナノ粒子の高速合成法を開発

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2019年12月2日

 産業技術総合研究所と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は共同で、粒子径の揃った機能性酸化物ナノ粒子を高速に合成する手法を開発した。

 急速加熱が可能なマイクロ波反応容器を用いた水熱合成法により、光学特性が環境温度に依存して可逆的に変化する、サーモクロミック特性を示す二酸化バナジウム(VO2)ナノ粒子を、従来の30分の1程度の短時間で合成できる。さらに、粒子径が揃い、粒子径の小さなVO2ナノ粒子の合成も可能になった。

 VO2は次世代自動車のスマートウィンドウ用途での活用が期待されている。次世代自動車の航続距離を伸ばすには、冷暖房負荷を減らす必要があるが、視認性を確保するため、可視光域は調光せず、近赤外光域の熱線だけを調光する特性が求められる。また、設置やコスト面から自律的に調光する材料が望まれており、それがサーモクロミック特性をもつVO2である。

 ただ、通常加熱の水熱合成法では、溶液の温度を急速に上昇させることが困難である上、溶液温度が空間的に不均一になるため、サーモクロミック特性を示すVO2ナノ粒子を合成するには、30時間程度の時間を要し、粒子径の揃った小径のナノ粒子の合成は困難であった。

 マイクロ波を用いた水熱合成法では、極めて短時間で均一に溶液の温度を上昇させることができ、通常加熱よりも合成温度を高温にできるものの、通常加熱の水熱合成で用いてきた原料溶液では、目的外の結晶相も形成されてしまうため、良好なサーモクロミック特性を示すVO2ナノ粒子が合成できなかった。

 そこで、均一加熱・急速加熱・高温加熱という、マイクロ波水熱合成法の利点に適した原料溶液を調製することで、合成に要する時間を1時間以内まで短縮。さらに、短時間で合成が終了するため、粒子の成長を抑えられ、従来よりも小粒子径で粒子径が揃ったナノ粒子が合成できるようになった。

 なお、この研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の受託事業による支援を受けて行った。

 

帝人フロンティア スポーツ・アウトドア衣料向け織物を開発

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2019年11月28日

 帝人フロンティアはこのほど、スポーツ・アウトドア衣料向け織物「シャドウリップ」を開発したと発表した。軽量性と高い引き裂き強度をもちながら、凹凸がないフラットな外観とソフトな風合いを併せもつ。摩耗や引っ掛かりに対する耐久性にも優れ、環境にも配慮している。2021年春夏のスポーツ・アウトドア衣料に向けた重点プロモート素材と位置づけ、用途を限らず幅広く展開し、積極的に拡販を図る。

 スポーツアパレル市場では、スポーツ・アウトドアとライフスタイルが融合したファッションスタイルが拡大しており、これに伴い、優れた機能性だけでなく、新しい外観や質感を併せもつ商品に対するニーズが高まっている。

 スポーツ・アウトドア衣料で、軽量で引き裂き強度に優れた素材としては、通常、強度をもたせるために太い糸を格子状に配列する織り組織から成る、リップストップ生地が使われている。

 しかし、この生地には外観に格子柄の凹凸があり、風合いが硬めであるとともに、凸部分の摩耗や引っ掛かりがあるという改善点がある。また、リップストップ生地では、性能や外観・風合いなどで斬新な差別化を図ることが難しいため、新たな織物設計に対するニーズが高まっていた。

 こうした中、同社は高強力ポリエステルの細いタイプの糸を使用し、これを適正な配列と織り密度により設計することで、「シャドウリップ」を開発した。

 糸の太さを均一にすることで、フラットな外観とソフトな風合いを表現。細く製糸した原糸の使用で軽量性を、高強度ポリエステル素材「パズモ」使用により優れた引き裂き強度を、凹凸のないフラットな表面により優れた耐摩耗性・抗スナッギング性を実現した。

 また、構成する糸の配列変化や機能糸との交織による多様な生地設計と、再生ポリエステルとの交織による環境に配慮した生地設計により、多様性と環境対応も付与している。

 今後、スポーツ・アウトドア衣料以外に、ファッション衣料、学生服・ユニフォームなどの機能衣料向けにも幅広く用途展開することで、初年度の2020年度に10万m、3年後の2022年度には40万mの販売を目指している。

旭化成ファーマ 骨粗鬆症治療剤の新剤形が薬価収載、来月11日から発売

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2019年11月28日

 旭化成ファーマは27日、骨粗鬆症治療剤「テリボン」の新剤形である「テリボン皮下注28.2㎍オートインジェクター」(一般名:テリパラチド酢酸塩)が、同日に薬価収載されたと発表した。薬価は6,018円。発売は来月11日を予定する。

 今回の発売により、従来の用時溶解バイアル製剤「テリボン皮下注用56.5㎍」に加え、在宅自己注射が可能なオートインジェクター製剤が新たにラインアップされる。

 同新剤は、高齢の患者でも簡便に自己注射できるように配慮したオートインジェクター製剤で、キャップを外し、オートインジェクターの先端を投与部位に押し当てるツーステップ操作で注射が完了するもの。注射針が針カバーに隠れていることから、自己注射に対する不安の軽減も期待されている。

 1回使い切りのため、注射針を付け替える必要がなく衛生的であり、さらに、注射後は針カバーをロックする機構を採用し、針刺し事故の防止対策を工夫した。

 同社は、骨粗鬆症患者に、安心・安全で簡便に自己注射ができるオートインジェクター製剤を新たな治療選択肢として提供し、今後も骨粗鬆症の治療に貢献していく考えだ。

ポリプラスチックス ブリスター特性に優れたLCPを開発

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2019年11月27日

 ポリプラスチックスは26日、ブリスター特性に優れた液晶ポリマー(LCP)「ラペロスLCP」を開発し、ブリスター発生を制御する最新技術を発表した。

 LCPは、高流動性、高寸法精度に加え、高耐熱性を兼ね備えたスーパーエンジニアリングプラスチック。その特性から小型化、表面実装(SMT)化が進むスマートフォンなどのコネクタ市場で幅広く採用されている。また、近年ではIoTの活用や5Gの実用化に向け、自動車分野、家電・OA分野でもLCPの検討や採用が拡大している。

 その一方で、SMT方式ではんだ付けする際に、260℃まで加熱された部品表面に微細な「ふくれ=ブリスター」が発生して問題となる場合がある。今回の「ラペロスLCP」の開発グレードは、従来の材料に比べて大幅なブリスター抑制効果が確認されており、生産性の向上が期待できる。

 またLCPが多く採用されているコネクタのような厚みに変化がある部品では、段差の不安定界面の形成を決定する拡張流動の大きさには、材料のスウェル特性(膨張現象)が大きな影響を与える。スウェル特性は、ポリマー種、フィラー種によって大きく異なることから、グレード選定の際には考慮すべき点だ。

 同社では、この知見をもとに、急激な肉厚変化部で発生するブリスターを抑制するグレードの開発に成功した。

ADEKA ナス由来成分で血圧や気分改善効果を実証

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2019年11月26日

 ADEKAはこのほど、信州大学や北海道情報大学などと、日頃からストレスを感じているⅠ度高血圧者と血圧が高めの健常人(正常高値血圧者)を対象とした臨床試験(プラセボを用いた二重盲検ランダム化比較試験)により、ナス由来コリンエステルを含むナス搾汁粉末の継続摂取による血圧改善効果と気分改善効果を確認したと発表した。

 この研究成果は、ナスの食品機能性を高水準の臨床試験で証明した世界初の成果で、栄養学の分野で評価の高い国際学術誌「Nutrients」に掲載された。

 同研究は、農業・食品産業技術総合研究機構の生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)の委託プロジェクトである、革新的技術開発・緊急展開事業「新規機能性成分によるナス高付加価値化のための機能性表示食品開発」で創出した研究成果の一部。

 わが国の農林水産業の国際競争力強化に向け、ナス栽培農家の所得向上という明確な開発目標の下、栽培作物ではナスにだけ新規機能性成分・コリンエステルが豊富に含まれるという信州大・中村造蔵准教授の発見に基づいて、ナス生産者・企業・大学・研究機関がナス高機能化コンソーシアムを組んで、社会実装を視野に入れたナス・イノベーションに、2017年度から3年間にわたり取り組んできた。

 コンソーシアムには、ナス生産者として倉澤農園、研究機関として信州大、北海道情報大、農研機構、高知県農業技術センター、企業としてADEKAのほか、サラダコスモが参画。また、研究成果の普及とナス製品開発販売のために、安芸農業振興センター、高知県農業協同組合、三井食品工業、島貿易、ウェルナス(信州大発ベンチャー)が協力機関として参加している。

 同研究成果をもとに、ナス由来コリンエステルを関与成分とする機能性表示食品(生鮮ナスおよびナス加工品・サプリメントなど)の開発を加速させ、製品化と販売を視野に、引き続き官民学共同チーム一丸となって進めていく。なお、今回の研究成果については、アグリビジネス創出フェア2019(11月20~22日:東京ビッグサイト)で紹介を行った。

出光興産・東レ 有機ELで世界最高の発光効率と寿命を達成

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2019年11月26日

 出光興産と東レは25日、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料と赤色蛍光材料を用いた有機EL素子を開発し、実用化領域に近い、世界最高レベルの発光効率46cd/Aを達成したと発表した。

 出光興産が発光効率と寿命を両立させることができる新規のTADF材料を、東レが従来に比べて発光スペクトル幅の狭い新規の高色純度の赤色蛍光材料を、それぞれ開発することに成功したことによるもの。同技術は有機ELディスプレイの低コスト化や省電力化、広色域化に寄与する。

 有機ELディスプレイは赤色・緑色・青色の発光素子からなり、現在、赤色発光素子には主にリン光発光材料が使用されている。リン光発光材料は、電力を光に100%変換することができ、発光効率を向上させることができるが、素材にレアメタルを使用しているため高コストであり、発光スペクトル幅が広く色純度が低いことも課題。これに対し、近年、TADF材料が注目されている。

 TADF材料を活用した技術は、リン光発光材料と同様に電力を光に100%変換できることに加え、発光スペクトル幅の狭い蛍光材料を組み合わせることで高色純度を達成する特長を持つ。また、素材にレアメタルを使用しないため、材料コスト削減を図ることができる。両社は、2017年の有機EL材料に関する技術提携に関する合意以来、互いが保有する有機EL材料や技術、知見などを活用し、新規材料開発で協力してきた。

 今回、両社で開発したTADF材料を利用した赤色有機EL素子が、現在主流の赤色リン光素子と同等レベルに迫る結果を得たことは、新たな技術の早期実用化に向けた大きな進歩となる。今後は、モバイルやテレビ用途などへの採用を目指し、開発を強力に推進して行く考えだ。なお、今回の成果は、今月27日から札幌コンベンションセンターで開催される「26th International Display Workshops」にて両社で共同発表する予定。

宇部興産・山口東京理科大 細胞培養関連テーマで共同研究

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2019年11月20日

 宇部興産はこのほど、山口東京理科大学(山陽小野田市)と包括連携下の共同研究実施第1弾として、多孔膜素材を用いた培養幹細胞の長期維持機構の解明に関する研究を開始すると発表した。なお、両者は今月15日付で共同研究契約を締結している。

 宇部興産・化学カンパニー研究開発本部の萩原研究室では、超耐熱性多孔薄膜「ポリイミド(PI)多孔質膜」を基質に応用した細胞培養法に関して研究を重ねてきた。その結果、ヒトおよび動物細胞の高効率大量培養が、このPI多孔質膜を用いて実行可能であることを見出だし、一連の発明を特許として出願、新規事業開拓に向けバイオ医薬品向けタンパク質産生などの産業利用を目指した取り組みを展開している。

 これらの発明の1つとして、再生医療などで注目を集めるヒト間葉系幹細胞への応用に関して、通常の培養方法では細胞の老化によって失われる幹細胞の性質を、PI多孔質膜を用いることによって数カ月から1年以上の長期培養でも維持可能であることを発見した。産業での活用に向け、この現象のメカニズム解明や各種用途への適用性開拓など、さらなる研究開発が重要となる。

 一方、山口東京理科大学・薬学部再生医療学分野の嶋本顕教授は、早老症の研究に長期にわたって取り組み、細胞の寿命とテロメアの関係を始めとした細胞老化のメカニズムについて、多くの研究成果を報告してきた。そして疾患特異的iPS細胞の樹立やモデル動物への展開といった幅広い研究経験を踏まえて、同大学では再生医療の視点から幹細胞の老化について研究を開始している。

 この両者の共同研究により、双方の経験やノウハウを活用しながらPI多孔膜を用いた培養ヒト幹細胞の長期維持の解析を進め、研究を加速させることが今回の新規連携の目標となる。両者の隣接市という立地の利点も活用しながら密度の高い研究連携を展開し、将来的には再生医療でニーズが高まる高品質幹細胞の大量生産や幹細胞エクソソームの安定供給などへの応用を展開する。

システムギア 防爆関連で2新製品を開発、来年4月に発売

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2019年11月19日

 システム機器開発をはじめ、ソフトウェアやソリューション、サービスの提供を行う、システムギアはこのほど、防爆関連製品「防爆アースクリップEXP‐A01」と「小型防爆ネットワークカメラEXP‐C01」を開発した。

防爆アースクリップ EXP-A01
防爆アースクリップ EXP-A01

 同社は今年8月、日本システム開発を存続会社とし、システムギアホールディングス、中央情報システム、システムギアソフテックのグループ4社が合併し経営基盤を強化、商号を「システムギア」に変更した。グループ統合後、初となる両製品は、いずれも来年4月の発売を予定し、初年度に300台の販売を目指す。価格はオープン価格。

 「防爆アースクリップEXP‐A01」は、国内防爆製品の先駆けとしてLED仕様の接地(アース)確認ランプを搭載し、接地ミスによるヒヤリ・ハットを防止する。接地をクリップ先端のLEDの点灯で知らせ、接地をしっかりと目視で確認できる(特許取得)。

 接地方法は、単純接地(本体―接地間は固定で使用)、本体接地(本体をアース板に接地)、二線接地(アース線まで断線確認)、台車設置(台車を含むアース確認)の4つのパターンが可能だ。アルカリ乾電池式。国内検定の本質安全防爆形を取得予定(Zone 0対応予定)。

 石油化学プラント・ガソリン給油所のほか、塗料製造現場、半導体工場のアルコール洗浄プロセス、揮発材を活用する化粧品・食品の製造プロセスなど、様々な現場に存在する「爆発事故につながる危険場所」での作業に必須のツールとなる。

小型防爆ネットワークカメラ EXP-C01
小型防爆ネットワークカメラ EXP-C01

 「小型防爆ネットワークカメラEXP‐C01」は、安全性の向上と業務効率化を同時に図れる防爆カメラ。本体サイズ幅65㎜×高さ65㎜×奥行125㎜は、設置型の防爆カメラとして国内最小クラスを実現した。LANケーブルを利用したPoE給電に対応し、電源工事は不要。角度を自在に調整できることから、天井・壁面など、場所を選ばない設置が可能だ。

 石油化学プラントや都市ガス、LPガス業界などでの利用(現場監視による点検作業の効率化とトレーサビリティの確保など)のほか、最新の画像認識技術と組み合わせた無人監視システムにより、サイトグラス(フローサイト)の液量監視や液面(界面)状態の監視も行える。水素対応の防爆検定取得予定で、水素インフラへの活用として水素ステーションなどの設備監視にも対応する。

 両製品は、20~22日に幕張メッセで開催の「第1回防爆・防災リスク対策展」で初展示される(ブース番号:5F‐07)。

BASF PAがマッスルスーツに採用、軽量化に寄与

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2019年11月19日

 イノフィス(東京都新宿区)はこのほど、BASFのポリアミド樹脂「Ultramid(ウルトラミッド)」を採用したアシストスーツ「マッスルスーツEvery(エブリィ)」を発売した。

 マッスルスーツは重いものを運ぶ時などに腰への負担を軽減するが、さらなる軽量化によるユーザーへの負荷低減が求められていた。「ウルトラミッド」を採用することで、マッスルスーツの堅牢性と機能性を損なうことなく、重量を低減させた。さらに両社が協業して射出成型を適用することで、組み立て工程を簡素化し、製造コストの大幅な削減が実現した。

 イノフィスは東京理科大学発のベンチャー企業。2014年からマッスルスーツの販売を始め、累計出荷台数は4000台を超えており(今年4月現在)、アシストスーツ業界の大ヒット商品となっている。