帝人ファーマ 献血ベニロン‐Iで厚労省から効能・効果の追加承認

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2019年8月28日

 帝人ファーマはこのほど、静注用人免疫グロブリン製剤「献血ベニロン‐I」の静注用500㎎・1000㎎・2500㎎・5000㎎について、厚生労働省から「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の筋力低下の改善」の効能・効果の追加承認を取得した。

 「献血ベニロン‐I」は、帝人ファーマとKMバイオロジクスが共同で開発した完全分子型静注用人免疫グロブリン製剤で、これまでに「低又は無ガンマグロブリン血症」など6つの効能・効果で承認を取得している。日本国内で実施した第Ⅲ相試験の結果に基づき昨年9月に承認申請を行い、製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。

 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎は、2カ月以上にわたり徐々に進行する末梢神経の炎症性疾患。主な症状としては、手や足の筋力が低下する運動障害や歩行障害、手のしびれ、触った感覚が鈍くなる感覚障害が挙げられ、その他、疲れやすさや手足の震えなどの症状が現れるケースもある。

 発症の明確な原因は不明だが、末梢神経に対する免疫異常により、神経線維を覆う膜構造(ミエリン)が破壊されることで、様々な症状につながると考えられている。2014年度の国内の患者数(医療受給者証保持者数)は4633人で、発症頻度は男性が女性の約1.5倍とされている。

 治療法としては、副腎皮質ステロイド療法や血漿浄化療法、免疫グロブリン療法が第1選択となっている。免疫グロブリン療法は免疫システムの異常を調節するとされており、今回の追加承認取得により、同療法で使うことができる免疫グロブリン製剤の選択肢が増えることになる。

BASFジャパン 防水・コンクリート防食被覆の新工法を発売

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2019年8月27日

 BASFジャパンは、「MASTER BUILDERS ポゾリス」ブランドから、防水・コンクリート防食被覆工法(プライマーとボディコートのセット)「マスターシール7000 CR」を新たに発売した。タンクや下水管などを含む、過酷な排水インフラ環境の課題に対処する独自の特性を備えているのが特長だ。

 下水中の嫌気的な環境では、硫酸塩還元細菌により硫化水素が生成される。気相中に拡散した硫化水素は、硫黄酸化細菌により硫酸を生成し、コンクリート躯体の構造的損傷を引き起こす原因となる。

 新製品は優れた耐薬品性とひび割れ追従性を兼ね備え、廃水や酸からコンクリートや鉄筋を保護するだけでなく、構造物のライフサイクルを延命する。新製品のもう1つの重要な利点は、下地や施工環境での優れた耐湿性。手塗りまたは吹付けにより簡単に施工でき、湿潤下地面にも使用できる。

 さらに速硬化性により、20℃で施工完了後、24時間程度で解放できることから、工期を短縮し、最小限の設備停止期間で現状を復旧させることが可能だ。

 新製品は「MASTER BUILDERS ポゾリス」ブランドによる、耐久性の高い建設に向けた同社の新技術Xolutec(ゾルテック)を駆使している。この新技術は現在のウレタン(PU)やウレタンアクリル(PUA)の製品の先を行く技術として、数年をかけて開発された。

 ゾルテックは、樹脂構成要素と分子間相互作用を最適化し、強化された架橋ポリマーネットワークを創出する。この技術により、長期間のメンテナンスサイクルを実現し、ライフサイクルコスト低減に貢献する、多様なソリューションに向けたユニークな材料特性をもった製品が提供可能になった。

 新製品はアミン構造を持たないため超低臭型工法で、日本下水道協会防食マニュアルのC種・D種に適合した性能があり、技能員の作業環境と安全性に寄与する。

積水化成品 高湿度下でも性能保持するゲル素材を開発

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2019年8月27日

 積水化成品は26日、高湿度下でも性能を保持するゲル素材「テクノゲル」LSグレードを開発したと発表した。

 「テクノゲル」はポリマーマトリックスの中に、水や保湿剤などの溶液や電解質を保持させた、肌にやさしく安全性に優れたゲル素材。生体電極の部材として、皮膚とのインターフェイスに広く使われている。

 近年、メディカル・ヘルスケア分野では発汗が想定される運動時のウェアラブル用途や、高湿度が条件となる保育器内の乳幼児センシング用途、生体情報モニタリング用途で、安定した計測を長時間持続できる部材が求められてきた。

 同社では、これまで技術的に困難であった高湿度下で粘着力を保持させるため、吸湿性の抑制と導電性の維持という、相反する特長を持たせることに成功。長時間使用しても皮膚から剥がれにくい新グレードを開発した。

 「テクノゲル」を素材として提供するだけでなく、「テクノゲル」を使用した生体電極パッドの設計から生産までを国内で実施。また、グローバルな生体電極の生産体制構築を推進している。

 今後も、高湿度下で長時間の使用が可能な新グレードの特長を生かし、日々進化するメディカル・ヘルスケア分野での顧客ニーズに応えていく。なお、「テクノゲル」全体の販売計画として2021年度に35億円を目標としている。

産総研と阪大 世界最薄のフレキシブル生体計測回路を開発

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2019年8月26日

 産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学の関谷毅教授らの研究グループは、世界最薄・最軽量の生体計測用信号増幅回路の開発に成功した。

産総研用 写真 有機トランジスタを厚さ1マイクロメートルのプラスチックフィルム上に集積
有機トランジスタを厚さ1マイクロメートルのプラスチックフィルム上に集積

 生体の微弱な信号を、装着感なく、正確に計測できる差動増幅を薄くて柔らかい有機回路で実現。歩行などの外乱ノイズを除去できる機能を搭載したことで、手軽で高精度の生体計測が可能になり、高度な生体計測など新たな価値創造が見込まれる。

 例えば、計測回路の装着性と密着性が向上したことで、スポーツ時の激しい体の動きを伴う場面でも生体計測が容易になる。また、得られるリアルタイムで長時間の生体計測データを利用することで、病気の早期発見や治療の効率化、高齢者や患者の見守り、運動負荷の監視などへの活用が期待されている。

 同開発は、阪大産業科学研究所の関谷教授、植村隆文特任准教授(産総研特定フェロー兼任)を中心とした研究グループと、産総研が阪大内に設置した「産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ(PhotoBIO‐OIL)」によるもの。両者の先端技術を融合することで、多彩な生体分子を計測する次世代バイオセンシングシステムの研究開発を行っている。

胸に貼ったフレキシブル生体計測回路
胸に貼ったフレキシブル生体計測回路

 ヘルスケアや医療用途の生体計測回路はこれまで、シリコントランジスタに代表される硬い電子素子で構成されていた。しかし、硬い電子素子が柔らかい肌などの生体組織に触れると炎症を起こしやすいため、日常生活での長時間の生体信号計測は困難だった。

 同研究グループは、電気が流れる半導体部分が有機材料の有機トランジスタを使用。柔軟な電子素子を、厚さ1㎛の薄くて柔らかいプラスチックフィルム上に集積し、装着感のないフレキシブル生体計測用回路を開発した。

 作製した回路は差動増幅回路とよばれる2つの入力端子をもつ信号処理回路。従来の1つの入力端子しかもたないシングルエンド型の増幅回路と比較すると、微弱な生体電位を増幅できるだけでなく、外乱ノイズを取り除くことも可能になった。

 人への生体計測の実施では、重要な生体信号である心電信号のリアルタイム・低ノイズ計測を実証した。両者は高精度な生体計測を通じ、医療費削減や人々のQOL向上といった、様々な社会課題の解決に貢献していく考えだ。研究成果は16日の英国科学誌「ネイチャー・エレクトロニクス」(オンライン)に発表した。

NEDO 汎用元素のみの熱電発電モジュール開発に成功

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2019年8月23日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、環境調和性に優れる鉄‐アルミニウム‐シリコン系熱電材料を高性能化させ、低温熱源を用いてIoT機器の駆動やBLE通信が可能となる発電量を得ることに成功し、同熱電材料を使った熱電発電モジュールを世界で初めて開発した。

開発に成功した鉄-アルミニウム-シリコン系熱電発電モジュール(1cm角サイズ)
開発に成功した鉄-アルミニウム-シリコン系熱電発電モジュール(1cm角サイズ)

 同開発は、物質・材料研究機構(NIMS)、アイシン精機、茨城大学が参画するプロジェクト。21日に都内で行われた記者会見で、NEDO省エネルギー部の吉岡恒部長は「熱を電気に直接変換する熱電素子は、テルル系化合物を使ったものが知られているが、テルルは非常に毒性が強い上にレアメタル(希少金属)だ。それに対して今回開発した熱電素子は、汎用元素の鉄、アルミニウム、シリコンといった

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BASF 豪・害虫獣医師会から新微生物殺虫剤の登録取得

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2019年8月23日

 BASFはオーストラリア害虫獣医師会から、新しい微生物殺虫剤「ベリファー」の登録を取得した。利用可能なあらゆる防除技術を活用する、総合的病害虫管理の手法で使う場合、温室などの設備内で散布される殺虫剤に対して、害虫が抵抗性をもつことを防ぐ。

 オーストラリアでは初めての種類の微生物殺虫剤で、植物表面に有益な真菌の胞子を放出することによって作用する。アザミウマ、コナジラミ、アブラムシ、コダニが菌類の胞子に接触すると、胞子が発芽し、菌類が害虫の体内に入り込み、24~28時間以内に個体を完全に脱水させる。

 害虫の卵・幼虫・若虫・成虫に有効で、天敵などの有用昆虫の周囲で使用しても安全だ。これにより、生産者は害虫防除で、複数の方法を用いるという選択肢を得ることになる。

 BASFオーストラリア・ニュージーランド生物ポートフォリオのウィル・フィン・マネージャーは「『ベリファー』は生産者の化学農薬への依存を減らし、有益な昆虫の解放を促進する補完的な方法として使用されるだろう」と述べている。

 速効性があり、作物への残留リスクがなく、あらゆる栽培段階の害虫の異なる発生レベルでも、他の防除手段と組み合わせてその効果を最大限活用することができる。施設を改良するため100万豪ドルの投資が完了した後、サマーズビーにある同社の最先端生産拠点で生産される予定だ。

ちとせグループ 大規模化を可能にする藻類培養設備を開発

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2019年8月23日

 バイオベンチャー企業群のちとせグループ(藤田朋宏CEO)はこのほど、マレーシアのサラワク州で、世界最大級となる藻類培養設備(1000㎡)の設計と監修を行ったと発表した。

マレーシア・サラワク州に設立した世界最大級の藻類培養設備
マレーシア・サラワク州に設立した世界最大級の藻類培養設備(1000平方メートル)設備の高さは1メートル強。年間5~6tの藻類ができる

 同設備は、三菱商事とサラワク州の州立研究機関であるサラワク生物多様性センター(SBC)が共同で同地に設立したもの。両者は2012年10月から、現地の有用な藻類の収集と実用化を目指したプロジェクトを開始した。ちとせグループは、三菱商事の技術アドバイザーとして参画し、2013年から現場での同プロジェクト運営やSBC研究員への技術指導を行っている。

 今回、ちとせグループが設計・監修を行った藻類培養設備は、熱帯環境下での効率的な藻類の培養と大規模化を叶える3次元型(=縦型)の培養設備。吊り下げた薄型で透明な袋の中に淡水を入れ、藻類を培養する形だ。

 縦型培養設備の利点は、省スペースかつ設備の両側面から太陽光を取り入れられることにある。また、大規模化が容易な構造にし、建設コストも大幅に抑えられる設計になっている。

 同設備は昨年11月に竣工。その後に継続的な培養試験を行うなどして商業化を図り、現在は、培養した藻類をエビの養殖・孵化場へ提供し、飼料や水質調整剤としての活用も開始した。今回の設備規模では、年間5~6t(乾燥重量)の藻類が収穫でき、大豆に比較すると単位面積あたり約20倍の生産性になるという。

 ちとせグループは、主に日本と東南アジアに全11社を展開するバイオベンチャー企業群。「経済的合理性を常に視野に入れながら進めるバイオ分野の技術開発力」と、「バイオ技術の本質と限界を理解した上で事業化への道筋を引く事業開発力」を武器に、農業・医療・食品・エネルギー・化学などの領域に新たな価値を生み出す活動を行っている。昨年は、三井化学との協業でバイオベンチャーを2社設立し、持ち寄った両社の技術シーズを基に早期事業化を推進中だ。

 ちとせグループは持続可能な社会の実現には、化石資源中心の消費型社会からバイオマス資源起点の循環型社会へと利用資源を切り替えていくことが必要だと考える。その中で藻類は、他のバイオマス資源と比べ生産性が非常に高く、使用淡水資源も最小限で済むほか、多様な産業分野での用途が期待されていることから、化石資源代替として最大の潜在性を示すバイオマス資源だと位置付ける。

 今後も、大量培養のための設備と培養技術のノウハウを生かし、熱帯環境下での藻類培養設備のさらなる大規模化と培養の効率化・生産コストの削減を追求し、脱化石資源に向けた藻類バイオマス産業の構築を目指していく。

帝人 スーパー大麦と水溶性食物繊維使用のカレーを発売

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2019年8月22日

 帝人はこのほど、事業展開している機能性食品素材のマーケティング活動を加速するため、スーパー大麦「バーリーマックス」と水溶性食物繊維「イヌリア」を使用した新製品「食物繊維にこだわったスーパー大麦キーマカレー(イヌリン入り)」を開発し、販売を開始した。

 「バーリーマックス」は、βグルカンやフルクタンなどの水溶性食物繊維や、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を豊富に含む非遺伝子組み換え大麦。帝人は、2015年にオーストラリアのヘルシー・グレイン社と、日本における「バーリーマックス」の独占共同開発契約を締結し、日本での臨床試験や素材特性を生かした製品開発などを行い、販売を拡大している。

 一方、「イヌリア」はオランダの食品素材メーカーであるセンサス社が製造するイヌリン。主にキク科の野菜であるチコリから作られた天然由来の水溶性食物繊維で、帝人は昨年、日本における独占販売契約を締結し、国内で「イヌリア」ブランドの製品開発や顧客開拓などマーケティング活動を展開している。

 今回、販売を開始する「スーパー大麦キーマカレー(イヌリン入り)」は、「バーリーマックス」と「イヌリア」の双方を配合した初めての製品で、1袋(1人前)に1日の摂取目標量である20g以上の食物繊維を含有。また、動物性原料を使用しておらず、肉の代わりに「バーリーマックス」を配合してヘルシーに仕上げた。

 帝人は、新製品の販売開始を契機として、機能性食品素材ビジネスの拡大に向けてマーケティング活動を強化していく。また、1人ひとりが生まれてから最後の日を迎えるまでの人生を支えることを目指し、今後も機能性食品素材の開発・販売に注力することで、世界中の人々のQOL向上に貢献していく考えだ。

ユニチカ 耐腐食性のあるポリエステル樹脂接着剤を開発

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2019年8月20日

 ユニチカは19日、銅などの金属とポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルムに良好な接着性を示すとともに、金属の腐食による接着性の低下を防ぐポリエステル樹脂接着剤を開発したと発表した。

 同開発品の特長は、従来は別工程だった防錆処理と接着層塗工を一度の塗工で同時に行えること。工程簡略化につながるほか、メッキレスで金属の腐食を抑制できる環境にも配慮した製品だ。同社の飽和共重合ポリエステル樹脂「エリーテル」の耐腐食性グレードとして新たにラインアップする。

 近年の急速なエレクトロニクス化により、さまざまな分野で高度な電子機器を搭載するケースが増えている。自動車や通信端末などでは、小型化にも対応できる強力な接着性だけでなく、屋外など過酷な環境で使用するための腐食に対する耐性も求められ、これらの機能が両立できる材料が望まれている。

 こうしたニーズが高まる中、同社の「エリーテル」が長年培ってきた、ポリエステル樹脂設計技術やワニス調合技術、量産製造技術を駆使することで、接着性と耐腐食性を両立する接着剤の開発に成功した。

 優れた接着性をもつ同開発品は、銅やアルミニウム、ステンレス鋼などの金属、PETやポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの樹脂フィルムに対して良好な接着性を示す。また、優れた耐腐食性も併せ持ち、メッキ処理を施すことなく金属の腐食を抑制することができる環境配慮型製品だ。

 同開発品がもつ特長から、フレキシブルフラットケーブル(FFC)では、PETやポリイミドなどの絶縁被覆樹脂とメッキレス銅線との接着性や耐熱性、フィラー配合性を生かした難燃性が評価され、現在FFCの量産化検討が実施されている。

 同社は今後、耐腐食性と接着性の両方を兼ね備えたさまざまな部材への需要を取り込み、同開発品の売上高を2021年度に1億円まで成長させていく考えだ。

JNC 高性能な有機ELディスプレイ用青色発光材を開発

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2019年7月16日

 JNCは16日、関西学院大学の畠山琢次教授とJNC石油化学の共同研究チームが、量子ドットやLEDを超える色純度を持つ有機EL(OLED)ディスプレイ用青色発光材料の開発に成功したと発表した。

 OLEDディスプレイは液晶ディスプレイに代わるFPDとして実用化が進んでいるが、有機系発光材料は、発光の色純度が低い(発光スペクトル幅が広い)という欠点がある。

 色純度が低いと、ディスプレイに使用する際に、光学フィルターにより発効スペクトルから不必要な色を除去して色純度を向上させる必要があり、結果としてディスプレイの輝度や電力効率が大きく低下してしまう。

 また、フィルターによる色純度の向上には限界があるため、ディスプレイの広色域化が難しいという問題もあり、色純度が高い発光材料の開発が望まれていた。

 畠山教授らは、発光分子の適切な位置に2つのホウ素と4つの窒素を導入し、共鳴効果を重ね合わせることで、発光スペクトルの広幅化の原因である伸縮振動の抑制に成功し、窒化ガリウム系LEDやカドミウム系量子ドットを超える色純度を持つ有機系青色発光材料(ν‐DABNA)の開発に成功した。

 同研究チームは、2016年にν‐DABNAのプロトタイプとしてDABNAの開発に成功しており、ハイエンドスマートフォンのOLEDディスプレイに実用されている。

 今回開発したν‐DABNAは、DABNAを大きく上回る色純度と発光効率を示しており、OLEDディスプレイの高色域化、高輝度化、低消費電力化、ブルーライトの低減などが期待できる。また、市販のディスプレイでボトルネックとなっている青色発光素子の性能が向上することで、素子構造と製造工程の合理化が可能となり、ディスプレイの低コスト化にも貢献できる。

 同研究を通じて確立した分子設計によって、今後、さらにすぐれた特性を持つ発光材料を開発することも可能になる。なお、同研究成果は、7月15日(英国時間)に英国科学誌「Nature Photonics」のオンライン速報版で公開されている。