帝人フロンティア 超極細繊維使った新タイプの耐切創性手袋を開発

2019年6月6日

 帝人フロンティアはこのほど、ミドリ安全と共同で、外部接触面に超極細繊維「ナノフロント」を使用した耐切創性手袋「カットガード132NF(エヌエフ)」を開発したと発表した。すべりにくさと異物混入防止性を両立した新タイプの製品で、3日からミドリ安全が販売を開始した。

 「ナノフロント」を使用した生地の表面には、ナノサイズの凹凸があり、これにより通常の繊維生地に比べて表面積が大きくなることから、高い摩擦力を発揮。コーティングタイプの手袋と同様のすべり止め効果や作業性が得られ、その効果は水を扱う状況でも持続する。

 ノンコーティングタイプのため異物混入防止性が高く、精密機械や食品加工などの生産現場でも、ウレタン樹脂が混入する心配がない。手袋に厚みができないので、使い捨て手袋の下に着用して使用することが可能。また、すべり止め効果に優れることから、重ねて着用する際も手袋内でずれが生じづらい。

 自動車や精密機械、食品加工などの工場、設備のメンテナンス、建設などの作業現場では、切創事故の防止を目的として耐切創性手袋が広く使われており、最近は特に作業性の向上や、異物混入リスクの排除などの機能を兼ね備えたものが求められている。

 耐切創性手袋には、すべり止め効果を目的に手のひら部分をウレタン樹脂で覆ったコーティングタイプ、使い捨て手袋の下に着用する想定でウレタン樹脂を使用しないノンコーティングタイプがある。しかし、コーティングタイプはすべり止め効果に優れるものの、ウレタン樹脂が剥がれ落ちて異物混入につながったり、手袋の厚みにより作業効率が落ちたりするなどの問題があった。

 一方、ノンコーティングタイプには、すべり止め効果がないため作業がしづらい、使い捨て手袋の下に着用する際に手袋内でずれが生じてしまう、などの問題があった。

 両社は外部接触面に超極細繊維「ナノフロント」を使用することで、すべり止め効果と異物混入防止性を両立した。標準価格は一双750円(税別)。販売目標は2019年度が3000万円、2020年度が5000万円。

三菱ケミカル バイオエンプラが温浴施設用照明セードに採用

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2019年6月4日

 三菱ケミカルは3日、同社のバイオエンジニアリングプラスチック「デュラビオ」が、コイズミ照明の温浴施設用照明セードに採用されたと発表した。先月から販売を開始している。

 照明セードにはガラスのほか、エンプラなどが使われてきたが、ガラスは割れた際に飛散の危険性があることや、エンプラは耐候性が弱く変色しやすいことなど、それぞれ課題があった。

 「デュラビオ」は再生可能な植物由来原料であるイソソルバイドを用いたバイオエンプラで、耐衝撃性・耐候性などの点で、従来の一般的なエンプラに勝る、優れた性能を有している。

 三菱ケミカルは今回、これらの特徴をもちながら、光を拡散することのできる、照明セードに適したグレードの開発に成功した。加えて、新洸化成がもつインジェクションブロー成形技術と組み合わせることで、コイズミ照明の照明セードとしての採用を実現した。屋内外の温浴施設だけでなく、耐久性を必要とする他の照明用途への展開が見込まれる。

 三菱ケミカルは、三菱ケミカルホールディングスグループが掲げる「KAITEKI」の実現に向け、今後も「デュラビオ」をはじめとする植物由来プラスチックの研究開発・用途展開を加速させ、環境にやさしく付加価値の高い製品の供給を通じ、循環型社会の構築やSDGsの達成に貢献していく。

 

東レ 5G向け電子部品に適した低誘電損失PI材料開発

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2019年6月3日

 東レはこのほど、大容量データの高速安定通信技術として普及しつつある5G通信や、自動運転などに用いられるミリ波レーダー向け電子部品に適したポリイミド(PI)材料を開発した。

 5G通信やミリ波レーダーには、従来から使用されている6GHz以下の周波数バンドに加え、ミリ波領域といわれる20GHz以上の新たな周波数帯での通信が必要。この技術の実用化には、高い周波数帯域での通信に適した誘電特性と、半導体実装に耐えられる耐熱性、銅配線との接着性などの物性値を満たす材料開発が求められる。

 フッ素樹脂系やビスマレイミド系などの既存材料は、半導体・電子部品に必要な主要物性値に課題があり、従来のPIは誘電特性に課題があった。高周波において誘電損失を低下させるには、高分子構造において分極を小さくすること(誘電率に対応)と、分極の動きを抑えること(tanδに対応)がカギとなる。

 同社は、長年蓄積してきた機能性PI設計技術を駆使し、精緻な分子設計と極限追求により、電気エネルギーの損失を0.001(20GHz)に抑える低誘電損失PIの開発に成功。LCPなど誘電特性の高い樹脂と比べても高耐熱性、機械物性、接着性の面で優位性があり、また低コスト化も実現した。

 現在、同材料をベースに、感光性付与、シート化などの開発を推進。同材料の適用により電気エネルギーの損失を抑え、大容量データの高速通信安定化や、ミリ波レーダーの距離測定性能向上、部品の小型化などが可能となる。

 同社は、5G通信時代に適した各種樹脂を事業化しており、今回開発した材料を新たにラインアップに加え、次世代の通信技術を支える半導体デバイス、電子部品などでの採用を図っていく。

 なお、新規開発品は滋賀事業場の既存設備で生産を行い、今後、増産や新たなプロセスが必要となれば設備投資を行う予定。事業規模については、5G通信が2020~21年頃に本格化すると見られることから、2022年度に売上高10億~30億円程度を目指していく考えだ。

帝人フロンティア 半導体製造向け超極細繊維の研磨パッドを開発

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2019年5月28日

 帝人フロンティアはこのほど、半導体用シリコンウエハーの製造で、品質の安定とコスト削減の両立を実現する、超極細繊維「ナノフロント」を使用した研磨パッドを開発したと発表した。半導体メーカーとフラットパネルディスプレイメーカーをターゲットとして、今年度中に販売を開始し、2025年度に売上10億円を目指す。

 同社が開発した研磨パッドは、「柔軟性」と「吸水性」のあるポリマーを原料として製造した「ナノフロント」製不織布に、ポリウレタン樹脂を含浸させたもので、多くの特長をもつ。

 ①パッド部分に使用した「ナノフロント」は表面に吸水性があり、繊維間の空隙数が多いことから、パッド表面が砥粒(研磨材の粒子)の付着性と砥粒研磨液の保持性に優れる。

 ②これにより、研磨液の砥粒濃度を下げても、パッドに高い密度で砥粒が付着するため、充分な研磨効率を発揮する。

 ③「ナノフロント」の柔軟性により、シリコンウエハーの鏡面仕上げも同時に行える。

 ④「ナノフロント」を使用した不織布は表面積が非常に広く、液中の砥粒の凝集を抑制する効果があり、研磨品質の安定化に寄与する。

 開発の背景には、近年のスマートフォンやEVなどの普及に伴う半導体の高性能化や低価格化があり、シリコンウエハー製造での品質の安定とコスト削減のニーズが高まっている。

 また、シリコンウエハーに求められる表面の平坦性や鏡面性といった品質特性を発現させるためには、異なる硬度のパッドを使用した研磨作業が必要で、そのために工程が複数にわたらざるを得なかった。

 加えて、シリコンウエハーの製造に使用する砥粒の研磨液が製造コストの中で大きな割合を占めることから、研磨品質を維持しつつ、砥粒研磨液の使用量を削減することが課題となっている。

 同社は今後、さらに「ナノフロント」のポリマーの種類や、ポリウレタンの含浸技術、研磨液との相乗効果などに着目しながら、さまざまな市場ニーズへの対応を目指し、研磨パッドの製品バリエーションを拡大していく。

 

昭和電工 寒冷地でも施工可能なコンクリート構築物修復材を開発

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2019年5月24日

 昭和電工は23日、寒冷地などの低温環境下でもコンクリート製の各種インフラ構築物の補修施工が可能な修復材「ショウリペア CR‐1000シリーズ」「リポキシ CR‐1500シリーズ」を開発したと発表した。

 高度成長期に建設されたインフラ施設は老朽化が進み、建て替えや補修の必要性が高まっている。建て替えは高コストであるため補修のニーズが高いものの、既存の修復材は、低温環境下で各種コンクリート構築物を補修する際は施工後にヒーターで加熱する特別な養生が必要で、寒冷地では冬期の補修作業が困難になる課題があった。

 今回開発した修復材は、いずれも氷点下でも施工後の給熱養生が不要で、既存品の3分の1以下の24時間以内に通常使用できるレベルまで硬化するため、寒冷地での冬期施工、工事期間の短縮による工事費用の削減や、施工箇所の早期解放による利便性の早期回復が期待できる。現在、岩手県遠野市と同市内の建設会社である栄組の協力を得て、同開発品の橋梁補修での有効性を確認する実証実験を実施している。

 同社グループは、すべてのステークホルダーを満足させるという経営理念のもと、「事業活動を通じたSDGs課題解決への貢献」を中核課題の1つに掲げてCSR活動を推進。同開発品はSDGs目標「住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献する。

 今後も社会的価値の高い事業・技術開発を推進してさまざまな課題の解決に取り組み、グループ一丸で豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献していく。なお、これらの開発品は6月5~6日に開催される「建設技術公開EE東北’19」で紹介する(昭和電工ブース:B‐65)。

帝人 NMN含有サプリの販売を開始、NOMON第1弾製品

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2019年5月22日

 帝人はこのほど、販売会社NOMONを通じ、ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)含有サプリメント「NADaltus(ナダルタス)」の販売を開始した。

 NOMONは、帝人が提供する健康維持に有用で科学的根拠をもつ食品や飲料といった、ニュートラシューティカル製品の販売を目的に今年2月に設立した新会社。同製品が第1弾となった。

 「ナダルタス」は、1カプセルあたり125mgのNMNを含有。原料調達から製造、販売に至る全工程を日本国内で行っている。30カプセル入りで、税込み価格は15万円。NOMONの公式オンラインストア(http://www.nomonshop.jp/)で販売を行う。

 NMNは、身体の機能を保つのに必要な生体内物質NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)の前駆体。ヒトが体内に保有する物質で、母乳やブロッコリーなどの野菜にも含まれる。摂取により、加齢に伴い減少する生体内物質が維持され、健康的に身体のコンディションを保つ効果が期待されている。

 帝人グループはNOMONが提供する製品を通じて、全ての人が自分らしい人生を全うするプロダクティブ・エイジングの実現と、世界中の人々のQOL向上に貢献していく考え。

 

帝人ファーマ 酸素濃縮装置を上市、多様な新機能搭載

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2019年5月8日

 帝人ファーマはこのほど、患者の酸素吸入の有無が確認可能となる呼吸検知機能をはじめ、さまざまな新機能を搭載した酸素濃縮装置「ハイサンソi」を上市した。

 患者の利便性を第一に設計したことで、従来の装置に比べて小型・軽量化、静音化を実現しただけでなく、装置本体のフィルターの手入れが不要となった。さらに、省電力化により電気代の負担軽減も期待でき、処方酸素流量についても、低流量(0.25ℓ/分)から高流量(5.00ℓ/分)まで、一台で幅広く対応することができる。

 また、新たに呼吸検知機能を搭載したことで、これまでの装置の運転状況に加え、カニューラを通して、患者が酸素濃縮装置から酸素を吸入していることが確認可能。これらのデータを、医療機関が装置の運転状況をモニタリングできるシステム「HOT見守り番Web」と連携させることで、医療関係者が患者の自宅での療養状況を確認できるようになった。現在、国内で在宅酸素療法を受けている患者は増加傾向にあり、今後高齢化が進む中で、さらに患者の数が増えることが予想されている。

 一方、酸素濃縮装置を使用するにあたり、日常の手入れなどの負担が原因で治療を継続できなくなるケースも少なくないことから、装置の機能強化や利便性の向上などにより、療養時の負担を軽減するニーズが高まっている。

 同社は「ハイサンソi」が患者の療養時の負担軽減や治療の継続につながることを期待し、在宅酸素療法のさらなる支援に注力する。また、今後もIoT基盤の構築を図り、革新的な在宅医療関連製品・サービスの開発を推進することで、患者のQOL向上に貢献していく。

カネカ 5G対応部材向けの超耐熱ポリイミドフィルムを開発

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2019年5月8日

 カネカはこのほど、5G高速高周波対応の超耐熱ポリイミド(PI)フィルム「ピクシオ SR」を開発したと発表した。今年発売の5G対応スマートフォンのフレキシブプリント回路基板用部材に採用が決定している。

超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオSR」
超耐熱ポリイミドフィルム「ピクシオSR」

 5Gは2020年に本格的に実用化され、2023年には5G対応機種がスマートフォン生産台数の約3割を占めると推定されている。そのため高周波帯での伝送損失が低い回路基板のニーズはますます高まっていくことが見込まれる。

 「ピクシオ SR」は、独自のポリイミド分子設計技術によって5Gの高周波帯に対応する低伝送損失を実現するとともに、銅箔との接着面に熱可塑性ポリイミド層を用いることで優れた加工性を持つ製品。デジタルデバイスの高機能化を支える製品として販売を拡大し、2023年に売上高150億円を目指す。今後、5Gの急速な普及に伴い、通信システムを支えるポリイミド材料のさらなる需要拡大が見込まれる。

 同社は、超耐熱ポリイミドフィルムに加え、フレキシブルディスプレイ用透明ポリイミドフィルム、TFT基盤向けポリイミドワニス、超高熱伝導グラファイトシートなどの開発に注力しており、IoT/AI時代の実現に向けて各種ポリイミド製品でさまざまなソリューションを提供していく。

 

帝人 マキタと共同開発のファンジャケットが販売好調

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2019年5月8日

 帝人が昨年から展開をはじめた、内圧式ファンジャケットが好調だ。今年はさらに新たなデザインを加え、ラインアップを拡充している。同社が電動工具メーカーのマキタと共同開発したファンジャケットは、二層構造の生地の間に外気を取り込み、ジャケット全体に空気を循環させる内圧式クーリング構造を採用し、従来にはないベストタイプのデザインを実現したもの。

 今年は同製品に加え、ユーザーの使用場面に合わせ、袖の部分の取り外しが可能な2WAYタイプと、全身に風が流れるツナギタイプの2種類を新たに開発。ポケット内でバッテリ操作ができるように、ジャケットの内側から左右ポケットに電源ケーブルを通せる方式にした。

 また、迷彩柄などのカラーバリエーションを増やすとともに、5L~7Lの大型サイズをラインアップ。さらにフルハーネス安全帯や草刈り機などの使用に対応したタイプなど、より使用者のニーズに合わせた仕様を取り揃えた。

 今年は、デサントジャパンからスポーツアパレル分野に向けて販売開始されるほか、ユニフォーム分野でも、物流・建設業の池田興業をはじめとして採用が拡大しており、同社は今年、昨年比四倍以上の販売を見込んでいる。

 帝人は働き方改革の一環として、各企業の労働環境の改善に向けて今後も労働現場のニーズを追求し、未来の社会を支えるソリューション提供に取り組んでいく。

 

東レ 環境低負荷と高撥水性能を両立した新素材を開発

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2019年4月24日

 東レはこのほど、環境低負荷な撥水剤を使用しながらも、高い撥水性能をもつテキスタイル「ナノスリットナイロン」を開発したと発表した。

「ナノスリットナイロン」の原糸断面
「ナノスリットナイロン」の原糸断面

 同素材には、同社独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」により実現した特殊な微細スリットをもつ原糸を使用。この原糸構造によって形成するテキスタイル表面の微細な凹凸と、スリット内部に形成された撥水層により高い撥水性能を付与することに成功した。

 同社は、「ナノスリットナイロン」を防水透湿素材「エントラント」や「ダーミザクス」をはじめ、各種テキスタイルブランドの素材バリエーションとして、2020年秋冬シーズン向けから展開を開始する。

 高い撥水性能を生かし、アウトドアやスキーなどのアクティブスポーツ向けのアウターから、ファッション性と機能性が求められるアスレジャー用途のアウター、スイムウェア向けなどに販売していく。2020年度に20万m、2025年度には100万mの販売を目指す。

 従来の撥水テキスタイルに使用されるフッ素系撥水剤は、化学構造の安定性から自然界で分解されにくく、人体への蓄積や自然環境への残留が懸念されるPFOA(パーフルオロオクタン酸)が含まれている。昨今は、環境意識の高まりから、特にスポーツ分野では、PFOAを含まない環境低負荷の撥水剤を用いた素材へのニーズが高まっている。

 しかし、PFOAを含まないC6タイプや非フッ素といった環境低負荷な撥水剤は撥水性能とその耐久性が低く、本格的なアウトドアやスポーツシーンなどでの使用が難しいという課題があった。

 同社は、昨年に「2050年に向け東レグループが目指す世界」、その実現に向けた「東レグループの取り組み」、「2030年度に向けた数値目標(KPI)」を盛り込んだ、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定した。

 革新技術・先端材料の提供によって、世界が直面する「発展」と「サステナビリティ」の両立をめぐるさまざまな難題に対し、本質的なソリューションを提供していく考えだ。