日本触媒は12日、北海道大学、産業技術総合研究所と共に、NEDOエネルギー・環境新技術先導研究プログラムについて「合金系潜熱蓄熱マイクロカプセルを基盤とした高速かつ高密度な蓄熱技術の研究開発」事業を受託したと発表した。

地球温暖化防止に向けて再生可能エネルギーの活用が進みつつあるが、条件によって変動するため、蓄エネルギー技術を併用する必要がある。蓄熱は蓄電池と比べ安価であるが、熱の発生する時間や場所が必ずしも需要と一致しないため、現状では大量の余剰熱が廃棄されている。蓄熱技術を用いることで、余剰熱を再利用し大幅な省エネにつなげることが可能となる。
今回の事業では、同大・能村准教授の開発した合金系潜熱蓄熱マイクロカプセル(h-MEPCM)を同社の触媒製造技術により成型体に加工。同大ではこの成型体を使ったプロトタイプモジュールの諸物性を評価し、産総研ではデータを基にシミュレーションモデルの構築と応用モジュールの作成を行う。これにより、蓄熱成型体のデバイスとしての性能を取得し、応用展開を促進する計画だ。
h-MEPCMは金属の核をセラミックス(アルミナ)の殻で封じた粒子径30㎛前後の粒子で、核の金属が600℃付近で溶解することにより潜熱として熱を蓄える。高い基礎的熱特性をもつが、実用に向けては粉体を適切な形に成型することが求められていた。
同社は蓄積したノウハウを活用して、種々のサイズのペレット、リング、ハニカムなどの形状をもつh-MEPCM成型体を作成。これにより実用モデルでの諸物性の評価が可能となるため、蓄熱密度、伝熱特性などの基礎物性の取得に加え、出力特性、繰り返し耐久性など使用形態での熱特性の測定を行い、具体的性能を示す。さらに、社会実装を促進するため、想定する用途でのシミュレーションを行い、炭酸ガス抑制効果やコスト削減効果など、既存技術に対する優位性も示していく。
同事業の展開先として、高温産業炉の省エネ技術リジェネバーナーでの利用や電炉排熱の再利用、コジェネレーションの熱電需給調整、EVの暖房用蓄熱などの省エネ用途に加え、再生エネとの組み合わせでは24時間安定発電も可能な集光型太陽熱発電(CSP)、石炭火力の燃焼器を蓄熱体で置き換えた蓄熱発電などの再生エネ安定利用などを想定している。




2020年度の通期の見通しは、売上高2兆340億円、営業利益1400億円、経常利益1420億円、純利益870億円とした。マテリアル領域を中心に新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、残念ながら対前年比で減益となる見通しだ。当社グループの多様性を生かして、新型コロナの影響をできるだけ回避すべく経営に取り組んできた。しかし、行動制限により生産や消費活動が低迷したことにより、マテリアル領域を中心に自動車関連やアパレル関連などの需要が減少したことに加え、石化市況変動の影響を受けた。
昨年を振り返ると、4月が底で4~6月の事業環境は厳しく、7月以降に多少まだら模様ではあったが、マーケットが全体的に回復し始めてきたと感じている。当社が多く関わる自動車関連ビジネスについても、自動車の販売台数は4~6月が底で、7月からは徐々に戻り始めた。足元では中国はほぼ回復してきており、対前年比でもプラスになる見通しだ。米国も思ったほどは悪くはなく、欧州も回復の兆しが見えてきている。
当社も新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたが、結果として上期は計画以上の利益を達成することができた。その要因として、市況の回復に頼るのではなく、構造改革や固定費抑制を徹底したことで、前倒しで効果を発現できたことが大きい。下期については、コロナ禍からの回復を前提に当初予算を策定したが、たとえ回復が遅れたとしても、社会課題解決に寄与する製品の拡販と固定費削減の徹底により、通期業績予想の営業利益700億円は達成できるだろう。