日本触媒 環境に優しいハイブリッド亜鉛蓄電池を開発

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2020年2月20日

開発した亜鉛電池用セパレーター
開発した亜鉛電池用セパレーター

 日本触媒は19日、独自技術により開発した「亜鉛電池用セパレータ」と「亜鉛負極」に、活性炭を組み合わせることにより新しい亜鉛蓄電池「カーボン‐亜鉛ハイブリッド畜電池」を開発したと発表した。

 この新規蓄電池は、主な構成要素が水・炭・亜鉛と資源的に豊富でかつ毒性のない材料で作れることが特徴。水系電池であるために燃える心配がなく、かつ出力性能・低温性能に優れている。

 また、課題とされてきた寿命についても、1万サイクル以上の長寿命性能を実現。従来、鉛蓄電池が使用されている車載バッテリーなどへの展開のほかに、活発化する自然エネルギーの電力貯蔵などの新しい用途展開が期待される。

 亜鉛蓄電池は、小型・軽量化により市場が拡大しているリチウムイオン電池に対し、高い安全性、高い環境調和性、元素戦略的利点もあり、次世代蓄電池の一翼を担うことが期待されている。しかし、最大の弱点は寿命で、乾電池には使えても蓄電池として使えないことが常識だった。

 これは、充放電を繰り返すと、亜鉛電極からデンドライト(針状結晶)が対極へ向かって成長し、正極と負極が短絡しやすいことが原因。そこで、同社は鉱物粉末をシート化した独自構造のセパレーターと、デンドライトによる短絡を抑制しさらに充放電サイクル劣化を抑える独自の亜鉛負極材料を創出。これら要素技術を組み合わせて「カーボン‐亜鉛ハイブリッド畜電池」を開発した。

 正極には活性炭を用い物理容量である電気二重層容量を利用し、負極には亜鉛を使用して電気化学反応を行うため、物理容量と化学容量のハイブリッド電池となっている。電気二重層キャパシタ(EDLC)の長所である高出力特性・長寿命特性を持ちながら、亜鉛負極で理論的に静電容量が二倍になり、カーボン‐亜鉛間に起電力を持てるため高容量化を実現した。

 さらに、亜鉛負極側を薄く設計できるため、正極活性炭をより多く搭載でき、EDLCの5~10倍の容量になることで鉛蓄電池同等の容量性能を得ている。

 一方、新規蓄電池は、キャパシタの高出力をそのままに、マイナス20℃以下の低温でも充放電駆動が可能なことが特徴。亜鉛は、電気化学反応が非常に高速で行える物質であるため、キャパシタの高速応答に追従できるとともに、低温~高温まであらゆる温度環境下で動作ができる。さらに、今回開発したセパレータ/亜鉛電極を用いることで長寿命化も達成した。

 すでに1万サイクル以上の寿命性能を観測しており、数百サイクル程度で交換寿命がくる鉛蓄電池と比較すると百倍以上となっている。今回のハイブリッド亜鉛蓄電池と亜鉛電池用セパレータは、東京ビッグサイト(青海展示棟)で開催される「第11回国際二次電池展」(26~28日)の同社ブースにて展示される。

日本触媒 高効率のアルカリ水電解用セパレーターを開発

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2020年2月18日

日本触媒が開発した新セパレーター
日本触媒が開発した新セパレーター

 日本触媒は17日、独自の有機無機複合技術とシート成形技術により、グリーン水素(再生可能エネルギー由来の水素)の製造に好適な、乾式でハンドリング性の良い、ガスバリア性に優れた、高効率のアルカリ水電解用セパレーターを開発したと発表した。このセパレーターにより、グリーン水素の普及をサポートし、CO2排出量削減に貢献する。

 地球温暖化防止のため、CO2排出量削減の取り組みが世界中で推進されているが、その一環として、水素で駆動する燃料電池が、車載用や家庭用などで利用が始まっている。現在、水素の代表的な製法はメタン水蒸気改質法だが、水素製造時にCO2が排出される欠点がある。

 そこで製造時にCO2を排出しない製法として、再生可能エネルギーを用いたアルカリ水電解が、近未来の水素供給法として世界各国で大規模実証プロジェクトが推進されている。

 アルカリ水電解用のセパレーターは、水素製造効率に大きく影響するキーマテリアルで、生成した水素と酸素を透過しないこと(高ガスバリア性)、および低い膜抵抗(高イオン伝導性)が要求される。

 高温・高濃度のアルカリ水という過酷な条件下で耐久性のある実用的なセパレーターは限られていたが、同社は独自の有機無機複合技術とシート成形技術により、これらの性能を両立したアルカリ水電解用セパレーターを開発することに成功した。

 このセパレーターを用いることにより、消費電力の抑制や、生成水素の純度向上といったメリットが期待される。なお今回の研究成果は、東京ビッグサイト(青海展示棟)で開催される「国際二次電池展」(2月26~28日)の同社出展ブースで展示される。

日本触媒 全固体電池用電解質膜の高性能化に成功

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2020年2月14日

 日本触媒は13日、全固体リチウムポリマー電池用電解質膜の高性能化に成功したと発表した。

 ポリマー電解質を用いた全固体電池は、有機溶媒を使用せず高温で安定なことから、長寿命、高安全性などの特徴を持つ。しかし、ポリマー電解質はリチウムイオンの伝導性に乏しく、電池温度を50℃以上に加温する必要があった。

 今回開発した新規電解質膜は、室温でも高いリチウム伝導性を保有。電池の作動温度を室温近くまで下げることが可能になり、全固体ポリマー電池の新しい用途展開が期待される。

 同社は、ポリエチレンオキシド(PEO)を主骨格とするリチウムポリマー電池用の固体電解質を開発し、2013年頃から商業生産を開始した。

 一般的に、PEOのポリマー電解質は、リチウムイオン電池の非水電解液と比較するとイオン伝導度が1桁以上低く、さらにリチウムイオン輸率(イオン伝導度の内、リチウムイオンが担う割合)が0・1~0・2と低いことから、室温ではリチウムイオンが電解質中を動く速度が非常に遅くなる。そのため、安定した性能を得るには、電池を50℃以上に加温し、リチウムイオンを動きやすくする必要があった。

 ポリマー電解質のリチウムイオン輸率を向上させる取り組みは多数報告されているが、総じて性能を改善するには至っていない。こうした中、同社は、ポリマー電解質の高性能化を実現するために、独自に開発した新しいイオン伝導のメカニズムを採用した。

 電解質膜中のリチウムイオンを伝搬しやすくした新規電解質膜は、POE系電解質膜と比較すると、同等のイオン伝導度を示しながら、リチウムイオン輸率を五倍以上向上させることに成功。また、リチウム金属に対しての安定性と、4V級正極活物質でも充放電できる耐酸化還元性を持っている。

 今回の技術を用いて作製したラミネート型全固体リチウムポリマー電池は、POE系のポリマー電池と比較して、40℃では2倍以上、25℃では5倍以上の放電特性が得られる。性能が飛躍的に向上したことで、従来の全固体ポリマー電池と比較して、充電時間の短縮や、エネルギー密度の向上、電池を加温するための熱源を減らせるなど、多くの改善効果が見込める。

 同社は、今回の技術を、全固体ポリマー電池用の電解質膜として、さらには無機電解質の界面形成材などへの活用も目指して、サンプル出荷を進めて用途開拓を行う。なお、今回の研究成果は、東京ビッグサイトで開催される「国際2次電池展」(2月26~28日)の出展ブースにて展示される。

コンバーティングテクノロジー総合展 機能性材料が集結

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2020年2月7日

三菱ケミカルのブース
三菱ケミカルのブース

 フィルムやシート、紙などの技術と材料、装置が一堂に会する総合展示会「コンバーティングテクノロジー総合展2020」が、先月29~31日に東京ビッグサイトで開催された。その中の構成展「新機能性材料展」と「JFlex」から、化学メーカー4社の展示を紹介する。

 三菱ケミカルはエポキシ樹脂の新しい応用として、開発品の高分子エポキシフィルムと伸縮性エポキシフィルムを中心に出展した。いずれも高熱性・高絶縁性などエポキシ樹脂固有の特徴を備えつつ、表面処理不要で様々なインクを塗布・印刷でき、無色透明で低位相差といった優れた光学特性も持っている。さらに、それぞれ高い可撓性と伸縮性があることから、ウエアラブルデバイスやセンサーなどとして活用が見込まれており、そうした製品例を展示していた。

 三井化学は機能紙研究会のブースで、ポリオレフィンを噴射生成した多分岐構造の繊維「SWP」を紹介。他素材と組み合わせることで、新たな機能を発現させることができる。最も分かりやすい例は

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日本触媒の4-12月期 販売数量減などで減収減益

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2020年2月5日

 日本触媒が4日に発表した2019年度第3四半期連結決算(IFRS)は、売上収益が前年同期比12%減の2271億円、営業利益は同49%減の106億円、税引前利益は同46%減の138億円、親会社四半期利益は同51%減の94億円となった。

 売上収益は原料価格や製品海外市況下落に伴い販売価格が低下したことや、景気減速による需要低迷などを受けて販売数量が減少したことで減収。利益面については、加工費が増加したことや販売数量が減少したことに加え、原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きく、スプレッドが縮小したことなどにより営業減益。税引前利益は営業利益や持分法による投資利益の減少などで減益となった。

 セグメント別では、基礎化学品事業は売上収益が同14%減の920億円、営業利益は同53%減の44億円。販売価格の低下や販売数量減などにより、アクリル酸及びアクリル酸エステルや酸化エチレン、エチレングリコールなど、いずれも減収だった。営業利益は加工費が増加したことや一部の製品で生産・販売数量が減少したことに加え、原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きく、スプレッドが縮小したことなどが響いた。

 機能性化学品事業は売上収益が同13%減の1269億円、営業利益は同54%減の48億円。水溶性ポリマー、樹脂改質剤及び塗料用樹脂は販売数量増で増収となったが、それ以外の高吸水性樹脂、特殊エステルなどは減収。営業利益は基礎化学品事業と同様の要因により減益となった。

 環境・触媒事業は売上収益が同12%増の82億円、営業利益は販売数量が増加したことなどにより、同35%増の7億円。プロセス触媒は減収だったが、脱硝触媒、排ガス処理触媒、燃料電池材料及びリチウム電池材料は販売数量増などで増収となった。

 通期の業績予想については、第1四半期発表時点で下方修正した予想をさらに修正した。売上収益は前年比10%減の3050億円(前回予想比200億円減)、営業利益は同58%減の110億円(同65億円減)、税引前利益は同55%減の145億円(同)、親会社当期利益は同60%減の95億円(同)。需要の落ち込みが継続していること、製品海外市況の低迷や原料価格上昇によるスプレッドの縮小などが見込まれるため。

日本触媒 有機ELフィルム光源で「光る輪島塗」を共同制作

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2020年1月29日

 日本触媒は28日、輪島キリモト(石川県輪島市)と共同で、紙より薄い「iOLEDフィルム光源」と、日本古来の伝統工芸技術である「螺鈿(らでん)」を掛け合わせた他に類のない光る輪島塗「余光(よこう)」を制作したと発表した。

iOLEDフィルム光源
iOLEDフィルム光源

 「iOLED フィルム光源」は、有機ELの長年の課題であった、大気中の酸素や水分による素子の劣化を日本触媒とNHKとの共同開発による材料および素子技術「iOLED技術」により克服し、厚さ0.07㎜と紙より薄く、高い柔軟性を実現している。

 昨年6月より、日本触媒と輪島キリモトは、アートディレクターの四尾龍郎氏とともに「iOLED」と輪島塗のコラボレーションを開始。今回、螺鈿が発光する「iOLED」×輪島塗盃「余光」が完成した。

発光する「余光(よこう)」
発光する「余光(よこう)」

 表面を薄くくり抜いた器に、貝殻薄片と「iOLEDフィルム光源」を貼り付け一体化したものをはめ込み、その表面に漆を一層塗りしている。漆を薄く何度も塗り重ねていくことで強く美しい塗膜を生み出すことが輪島塗の大きな特徴であり、螺鈿で扱う貝殻薄片もできるだけ薄いことが条件となるが、「iOLEDフィルム光源」が厚さ0.07㎜と紙よりも薄いため貝殻薄片との一体化が実現した。

 輪島キリモト8代目の桐本滉平氏は、「日本触媒の開発した「iOLED」という光源とのコラボレーションは、伝統工芸と最新テクノロジーの融合という前代未聞の挑戦だった。「iOLED」が限りなく薄いおかげで、薄い貝殻との一体化が可能となり、伝統的な技法でありながらも、自ら発光する新たな螺鈿の発明が実現した。完成した盃を見た時、手のひらの上に月を見たような感動を覚えた」とコメントしている。

 なお、共同制作した「iOLED」×輪島塗盃「余光」を、東京ビッグサイトで開催される「新機能性材料展2020」(1月29~31日)の同社ブースに展示する。

《化学企業トップ年頭所感》日本触媒 五嶋祐治朗社長

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2020年1月10日

 昨年を振り返ってみると、甚大な自然災害に見舞われ、また世界経済も減速基調となり、当社の業績にも少なからず影響が出た。このような予測困難な環境下で、リスクを最小限に抑えるための「備え」が、いかに大切かを痛感した年であったように思う。

 このような状況の下、当社は昨年11月に、三洋化成工業と経営統合の最終合意を交わした。この経営統合の大きな目的は、将来への「備え」そのものだ。今後、さらに激化するであろう、世界的な市場競争の中で、生き残り、勝ち残るための「守りの備え」と、さらなる成長、飛躍を目指した「攻めの備え」の両面の「備え」を持つことにある。

 新会社の社名は、800件を超える社内募集の中から、「Synfomix(シンフォミクス)」とした。シンフォミクス発足にあたり、次の3つを伝える。1つ目は「持続可能な社会の創造に貢献しよう」ということ。

 シンフォミクス・グループは、様々な可能性を掛け合わせ、未知の領域へ常に挑戦し、革新的でユニークな価値を生むことで、生活のあらゆる場面を豊かにし、未来のため、持続可能な社会の創造へ貢献することを目指す。「シンフォミクス」の名前が世界中で鳴り響くよう、新会社グループ一体となって持続可能な社会の創造に貢献しよう。

 2つ目は「両社の強みを融合しよう」ということ。日本触媒の競争力ある素材のバリューチェーンと、三洋化成の顧客の課題に応えるソリューションビジネスを融合することで、強みのある事業を複数保有する、グローバルに存在感のある化学メーカーを目指す。今まで1社ではできなかったことも、シンフォミクス・グループなら必ず達成することができると確信している。

 3つ目は「違いを認め合い、違っていることを生かそう」ということ。お互いに相手を理解しようと努め、様々な意見や考え方があるということを認め合おう。そして、違った考え方を掛け合わせることで、新たな考え方や仕事のやり方を生み出していこう。

 新たな挑戦に期待を抱き、気概をもって取り組めるよう、まずは心構えから、「備えよ、For the new company」。今年も安全・安定操業をしっかりと継続し、皆さんとともに健康で幸多い年となることをお祈りする。

日本触媒 台風19号災害の被災地・被災者に義援金

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2019年12月2日

 日本触媒はこのほど、台風19号災害による被災者の救援や被災地の復興に役立ててもらうための義援金として、日本赤十字社を通じ500万円の支援を行うことを決定したと発表した。また、加えて、労働組合と連携して従業員から災害募金を集める。同社は「被災地の1日も早い復興をお祈り申し上げます」とコメントしている。

日本触媒・三洋化成 経営統合に関する最終契約を締結

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2019年12月2日

 日本触媒と三洋化成は29日、それぞれの臨時取締役会で、共同株式移転の方式により両社の親会社となる統合持株会社「Synfomix」を設立し、経営統合を行うことを決議、両社間で対等の精神に基づいた最終契約を締結したと発表した。

 両社は今年5月、経営統合の検討に関する基本合意書の締結を発表し、経営統合に向けた詳細な検討と協議を進めていた。株式移転比率は、日本触媒1.225、三洋化成が1となっている。

 今回の経営統合は、国内外の競争当局の承認を前提とするものであり、両社の定時株主総会での、株式移転計画書の承認を受けた上で行われる予定。また、両社は同株式移転の効力発生日の2年後をめどに、統合持株会社および両社の合併を実行することを基本方針としている。

 ただ、具体的な方針については、効力発生日以降に設置する各種委員会などでの協議を踏まえ、事業上の合理性を考慮した上で、今後両社の協議にて決定する。なお同日、三洋化成は、高吸水性樹脂事業を営む連結子会社SDPグローバル(出資比率:三洋化成70%、豊田通商30%)の完全子会社化を発表。経営統合による統合効果の最大化を図るため、豊田通商のすべての株式を取得する。