総合化学大手 2019年度業績、年後半に失速
2020年5月20日
2020年5月20日
2020年5月18日
旭化成は15日、スパンボンド不織布を製造する延岡エルタス工場(宮崎県延岡市)の撤収を決定したと発表した。
同工場は、2001年より製造を開始し、19年間にわたり、主におむつを中心とした衛生材料向けに国内顧客へ不織布製品を提供してきた。しかし、昨年9月に延岡市で発生した竜巻が工場を直撃し、甚大な被害を受けたため製造の停止を余儀なくされていた。
復旧に向け検討を重ねてきたが、復旧費用が大きいこと、設備の老朽化が進んでいること、また再開まで1年以上の期間を要することなどを勘案した結果、復旧を断念し工場を撤収することを決定した。販売活動については今年9月末までに終了し、従業員については、原則として他の既存事業に再配置することを予定している。
同社は、中期経営計画において、経営資源の優先投入や再配分を進めることで事業ポートフォリオの転換を図り、サステナブルで高付加価値な事業体となることを目指している。同時に、グループビジョンにおいて、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を掲げており、ポリプロピレン・スパンボンド不織布の衛生材料事業は、グループの価値提供注力分野と定める「Life Material」のひとつ。
今後、同事業については、旭化成スパンボンド(タイ)を中心にさらなる事業の拡大に努め、世界の人びとの〝いのち〟と〝くらし〟に貢献していく考えだ。
2020年5月13日
2020年5月12日
旭化成は11日、国内市場での公募形式によるグリーンボンド(無担保普通社債)の発行を予定していると発表した。なおグリーンボンドは、発行年限5年、発行額は100億円となっている。今年6月以降に発行し、同社が所有する水力発電設備の改修工事の資金にする計画だ。
同社グループは、「健康で快適な生活」「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョンとして掲げ、自然環境や地域社会との調和を図りながら事業活動を行ってきた。
2019年度からの3カ年の中期経営計画「Cs+(シーズプラス)for Tomorrow 2021」では、「サステナビリティ」を経営の重点要素と位置づけ、Care for Earthのキーワードの下、さらに取り組みを加速している。
その中で、再生可能エネルギーの長期的な活用に向け、宮崎県延岡地区の工場群に電力を供給している水力発電所設備の更新と能力向上を実施。再生可能エネルギーは地球環境改善に資するものであることから、地球環境に対する同社の姿勢をより明確に示すために、今回、工事資金をグリーンボンドの発行により調達し工事を推進することとした。
グリーンボンドは、同社が所有する五ヶ瀬川発電所と馬見原発電所の2カ所の水力発電所の改修工事費用を対象としている。同社は現在、大正時代に建設した水力発電所による電気を延岡地区の工場群へ送電し、事業活動に活用。今回の改修工事は、老朽化と耐震性の点から、寿命が到来しつつある水力発電設備を更新し、あわせて高効率化することにより、今後数十年から100年にわたる、再生可能エネルギーのさらなる利用を実現する。
同社はこれからもクリーンなエネルギーの積極的活用を継続することで、自然環境に配慮した事業活動を行い、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。
2020年5月12日
旭化成は11日、中国での同社のリチウムイオン二次電池(LIB)用セパレータ特許権侵害に対する主張が認められ、深圳市旭冉電子などに対して、特許権を侵害する製品の販売差止および損害賠償金の支払いを命じる判決が今年4月に言い渡されたと発表した。
旭化成は、中国深圳市のLIB用セパレータの販売会社である深圳市旭冉電子および深圳市旭然電子を共同被告として、2018年に、旭化成が保有するLIB用セパレータに関する中国特許権(特許第ZL200680046997・8号)に基づき、旭冉電子などが販売する「単層W‐scope」電池用セパレータ製品の中国での販売差止と損害賠償を求め、深圳市中級人民法院に提訴していた。
旭化成は今後も知的財産を重視し、必要と判断した場合には具体的な措置を積極的に講じていく考えだ。
2020年5月7日
旭化成は28日、「ナイロン原料用シクロヘキセン製造技術の開発」の業績が評価され、永原肇顧問が、令和2年春の「紫綬褒章」を受章することが決定したと発表した。紫綬褒章は「学術芸術上の発明改良創作に関し事績著明なる者」に対して授与される。
永原顧問が開発したナイロン原料用シクロヘキセンの製造方法は、従来法に対して、省資源、省エネルギー、廃棄物ゼロを実現し、より安全でCO2排出量約30%削減をもたらすプロセス。昨今、環境・エネルギーの視点から自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場は拡大しているが、同製造プロセスは環境負荷軽減に大きく寄与し、今期の受賞はその業績が評価された。
ナイロンの中間原料はシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物。この中間原料の従来の製造方法であるシクロヘキサンの空気酸化法は、当時は、「原料のうち約20%が要処理廃棄物となる」「爆発に対する安全上の配慮が必要である」などの問題点があり、化学工業界の懸案の1つだった。
永原顧問は、これらの問題を克服するため、シクロヘキサノールの前駆体となるシクロヘキセンを得るために、ベンゼンの部分水素化という熱力学的に極めて困難な反応に取り組んだ。亜鉛化合物を助触媒とする新規なルテニウム粒子触媒を見出だすとともに、気相―油相―水相―固体の4相からなる特殊な反応場を用い、触媒・原料・生成物などの溶解・拡散・抽出を制御する技術を確立することで、この反応を成功に導き、工業化までを実現した。
旭化成は、今後も自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場が拡大している状況下で、ナイロン樹脂事業と繊維事業の拡大に貢献していく考えだ。
2020年4月24日
2020年4月24日
2020年4月22日
旭化成は21日、清酒の「におい」データからアルコール度数を推定・可視化する実証実験を行うと発表した。清酒の製造販売を行う吉乃川(新潟県長岡市)、物質・材料研究機構(NIMS:茨城県つくば市)、NTT東日本・新潟支店(新潟県新潟市)が参画し、来月下旬をめどに実施。清酒製造時の「におい」をデータ化し、ICT(情報通信技術)を活用したデータ分析により、清酒事業者の業務低減や清酒の品質向上に取り組んでいく考えだ。
第1弾となる今回の実証実験は、清酒を発酵させるタンクの上部に「におい」センサーを取り付け、24時間タンク内の「におい」を収集し、データ化。そのデータを分析することでアルコール度数を推定し、可視化する。
「におい」データの状況とアルコール度数は、通信ネットワークを介して遠隔地でも確認できるようにし、作業効率化と品質の安定化を図っていく。測定時に蓋の開け閉めや、計測のための抽出作業を行う必要がないため、衛生環境を維持できる特長がある。加えて、取得した「におい」データから、アルコール度数以外の各種成分の含有状況や発酵時の「におい」の変化などを分析することで、清酒の発酵具合や品質のモニタリング、その他「におい」データから得られる価値を検証する取り組みも、併せて実施する。
吉乃川では高品質な清酒を製造するため、発酵過程での温度やアルコール度数などの各種主要成分の計測や、経験者らが「におい」で発酵の進行具合を確認するなど、日々の発酵状態を細かく把握・分析しているが、それらの工程を、効率的かつ衛生的に行うための方法を模索していた。
一方で、旭化成とNIMSは、「におい」をデータ化するMSS(膜型表面応力センサー)を用いた嗅覚IoTセンサーを開発し、社会実装に向けた多種多様な環境下での有効性の実証実験を推進。NTT東日本は、地域の様々な企業や団体に対して、ICTを活用した課題解決を行っている。
こうした中、各社が連携を図り、「におい」データに含まれる様々な情報を分析し、「におい」データの意味や価値、今後活用できる業務などを共同で検証していく。データから清酒に含まれる特定物質の検出や、香味の高低や強弱の把握を行い、AIやIoTなどを活用して「におい」をよりきめ細やかに把握することで、味わい深く香味豊かな清酒の製造を目指していく。
2020年4月15日
旭化成はこのほど、着用により冷却効果を得られるストッキング(冷却ストッキング)のメカニズムを、世界で初めて数値流体力学(CFD)と表面形態の連成解析により定量的に解明したと発表した。
同社生産技術本部の生産技術センターCAE技術部が解析によるシミュレーションを行い、結果は同パフォーマンスプロダクツ事業本部の繊維技術開発総部商品科学研究所で実験・検証。なお今回の結果は、「Nature」出版グループの学術誌「Scientific Reports」に掲載されている。
一般的にストッキングは足を温めるために履くが、通常の繊維材料は断熱性があり、体熱が放散するのを防ぐ。一方、特殊構造を持ったニットストッキングの着用で、一定の冷却効果を得られることも分かっていた。
例えば冷却ストッキングの冷却機能は、感覚として冷たいと感じる(接触冷感)既製品とは異なり、着用により体表面を物理的に冷やすという効果を発現する。その効果は、かねてよりサーマルマネキンを用いた放熱実験によって確認されていたが、体表面を物理的に冷却するメカニズムについてはこれまで不明だった。
この現象を解明するために、CFDで解析する流体/固体熱連成解析で冷却ストッキング表面に形成される突起構造(リブ)を定量的に数値モデル化し、リブ表面(ストッキング表面の周期的なマイクロメートルスケールの突起物構造)の自然対流を分析。
その結果、冷却効果を発現するのは、マイクロメートルスケールのリブであることが判明した。一般的に衣服を着用すると保温効果が発現するが、このマイクロメートルスケールのリブは、リブからの放熱が自然対流によって促進され、冷却効果が発現される。
今回の解析手法による解明は、工業的、学術的にも有用な成果であり、このメカニズムの解明によって、繊維や生地の構造により繊維製品に冷却機能を付与できることが明らかになった。今後、ますます温暖化が進む環境下で、快適な生活を提供できる繊維製品の開発などの進展が期待される。
旭化成は、今後も繊維のテクノロジーをはじめ、同社がこれまで培ってきた技術とCAE(Computer Aided Engineering)技術の融合による新しい付加価値の提供に努め、「世界の人びとの〝いのち〟と〝くらし〟」に貢献してく考えだ。