東工大など 金属硫化物CO2還元電極触媒の設計指針

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2022年3月15日

 東京工業大学と理化学研究所、海洋研究開発機構の共同研究グループはこのほど、金属硫化物を使ったCO2電解還元触媒の新たな設計指針を見出だした。

 CO2から有用化学物質をつくるCO2の電気化学的還元が注目されるが、

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NEOD 高効率なAI処理のプロセッサー設計を開発

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2021年9月8日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、東京工業大学との研究チームがエッジ機器で高効率な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)推論処理を行うプロセッサーアーキテクチャーを開発し、大規模集積回路(LSI)を試作したと発表した。

 今後、同技術の活用により、例えばスマートフォンの先進的な拡張現実(AR)アプリケーションやロボットの柔軟な動作制御など、電力供給量などの制約が厳しいエッジ機器でも高度なリアルタイムAI処理の単独での実行が期待できる。

 従来の深く枝刈り(プルーニング)されたCNNの推論処理では、メモリへのアクセスが不規則になるため計算効率が低下するという課題があった。こうした中、NEDOと東工大の研究チームは、既存のCNNモデルを変形して高精度で高効率な処理ができる形式に変換するアルゴリズムを開発。さらに、このアルゴリズムを効率的に処理するための、入力データの平面シフトを扱う整形機構と直積型並列演算アレイを中核としたアーキテクチャーを提案した。

 これにより試作LSIによる実測で、最大26.5TOPS/Wという世界トップレベルの実効効率を達成。今回の開発により、クラウド側で実行していた高度なリアルタイムAI処理をエッジ側で実行でき、AIサービスのプライバシー確保やクラウドへの通信量の削減などが期待できる。

 研究チームは今後、同研究の試作チップで実証した技術をさらに発展させ、枝刈り後の精度向上のための学習技術や、RISC-V(リスクファイブ)プロセッサーなどとのシステムレベル統合技術の開発など、より高精度・高効率なニューラルネット推論チップの実現を目指し、スマートフォンやロボットなどのエッジ機器での高度なAIアプリケーションの実現を目指す。

 

宇部興産など 世界初 深海でセメントの力学特性を計測

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2021年3月30日

水深約3500m の海域にセメント硬化体と計測機器を設置

 宇部興産、港湾空港技術研究所、海洋研究開発機構、東京工業大学および東京海洋大学の研究グループはこのほど、深海インフラ構築に向けたセメント硬化体の力学特性の評価手法を確立し、実海域でのデータ計測を世界で初めて開始したと発表した。

 深海でセメント硬化体の内部に生じる圧力やひずみを実際の深海底で連続計測することで、将来的に深海で使用するインフラ材料の開発や構造物の設計手法の構築に役立つことが期待される。なお同研究は、科学雑誌「ジャーナル・オブ・アドバンスド・コンクリート・テクノロジー」に掲載された。

セメント硬化体の力学特性の評価手法

 同研究は、短期間および長期間の高水圧によって、セメント硬化体がどう変形するかを明らかにすることが目的。従来は、深海から回収した後の硬化体の変化を測定していたが、回収時の圧力変化により硬化体に変化が生じる可能性もあり、深海で起こった現象を正確に把握できなかった。また、深海と同等の高水圧の水槽を利用した実験でも、実際の構造物のスケールで起こりうる現象や潮流・生物付着などの影響が再現できない。

 こうした中、研究チームは硬化体内部に生じる圧力やひずみを深海底で連続計測する方法を確立。これにより、深海で起こっている現象だけを抽出してデータを分析、考察することが可能となった。研究グループは、昨年7月に駿河湾沖70Kmに位置する南海トラフ北縁部、水深約3500mの海域に硬化体と計測装置を設置。今年度中に回収し、計測結果を解析する予定だ。

 海洋国家の日本にとって、積極的な海洋利用は重要な課題の1つ。深海での海洋インフラの建設には、設計の自由度や汎用性が高いセメントの利用が検討されている。またセメントは、日本でほぼ100%自給できる石灰岩から製造され、安定的に供給できるというメリットもある。

 これまで、深海の極限環境がセメント構造物にどのような影響を及ぼすか評価されていないが、最新の研究では、深海で著しく劣化したことが報告され、既存の知見や設計手法だけでは深海インフラを構築できないことが明らかになってきた。深海インフラの構築に向けて、まずは基礎データの収集が重要となっている。

東京大学など、高次トポロジカル絶縁体で次世代省エネに一歩

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2021年1月26日

 東京大学と東京工業大学の研究グループはこのほど、産業技術総合研究所(産総研)、東京大学大学院、大阪大学大学院らの研究グループと共同で世界初の高次トポロジカル絶縁体の実現を擬一次元積層物質の実験で明らかにしたと発表した。

 高次トポロジカル絶縁体は、近年理論的に存在が予想された新しい量子相だ。結晶内部は絶縁体だが表面の特定の稜線が金属化し、スピンの向きのそろった電子が一次元で安定して流れる(スピン流)。電子の「電荷」と「スピン」の性質のうち、「電荷」を利用するのがエレクトロニクスだが、スピントロニクスは「電荷」と「スピン」の両方を活用する次世代省エネ技術の1つで、高性能ハードディスクなどに応用されている。原子層物質と呼ばれる薄いシート状物質を「積み木」のように積み上げることで、新奇な電気・磁気的性質を生み出せる。

 トポロジカル絶縁体は結晶の表面全体が金属化するのに対し、高次トポロジカル絶縁体は試料の稜線だけが金属的であることが予想されていたが、三次元結晶では未確認だった。今回、トポロジカル原子層を自在に組み換えられる擬一次元ビスマスハライド(ヨウ素、臭素化物)に着目し、積層の取り方によって様々なトポロジカル量子相を実現できる物質設計指針を提案した。また、角度分解光電子分光法による電子状態の直接観測で、Bi4Br4(ビスマス臭化物)が世界初の高次トポロジカル絶縁体であることを実証した。

 Bi4Br4は奇数番目と偶数番目の層が交互に180度反転しながら積み上がり、結晶表面には無数の階段構造が形成し1つ1つに稜線ができる。結晶内電子が感じる対称性が通常と異なるため、結晶の稜線だけが金属となり高次トポロジカル絶縁体状態となることが分った。また、稜線に沿って流れる電流の総量は大きいため検知できた。

 今後、積層の取り方による物質設計指針により、従来のトポロジカル絶縁体とは異なる新奇な性質が見出だされることが期待される。また、接着テープなどで積層物質からトポロジカル性質の薄片を取り出せるため、省電力スピン流デバイスや量子計算デバイスへの応用が期待される。

 

東工大ら 強誘電体の薄膜化で不揮発性メモリの応用期待

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2020年10月13日

 東京工業大学と産業技術総合研究所、東北大学はこのほど、最高の強誘電性をもつ窒化アルミニウムスカンジウム=(Al,Sc)N=について、Sc濃度を下げると強誘電性が増加しかつ10㎚の薄膜でも強誘電性を保持することを世界で初めて確認したと発表した。低消費電力で動作する不揮発性メモリへの応用が期待される。

 強誘電体は、電圧の印加方向に従って安定な結晶状態(分極状態)を取り、電源切断後もその分極状態を保持する物質。無電力で分極状態を保持するため、不揮発性メモリ(無電源の記憶保持素子)を作製できる。酸化ハフニウム系などの強誘電体が交通系ICカードなどに広く実用化されているが、複雑形状の基板への3次元膜の作製が難しく、一部の用途に限られてきた。

 現在スマートフォンの高周波フィルターに使われている(Al,Sc)Nは、膜厚150㎚で高い強誘電性を示すが、メモリ動作の低消費電力化のために薄膜化した場合、「サイズ効果」による強誘電性の喪失が懸念されていた。

 (Al,Sc)Nは気相のScとAl金属を窒素ガスと反応させて作るが、今回ScとAlの比率を変えて試料を作製。その結果、Sc濃度が低いほど残留分極値(電源切断後に残る静電容量)が大きく、抗電界(分極状態の反転に必要な電圧)と最大電界(印加できる電圧)の差が広がり、分極状態を安定して繰り返し反転できることも分かった。薄膜化についても、膜厚48㎚まで残留分極値は変わらず、9㎚でも強誘電性を示すことを非線形誘電率顕微鏡法で確認した。

 (Al,Sc)Nは最大級の強誘電性を持ち、使用温度は最も高く、作製も容易。動作電力は最小で、データ保存にも電力消費しない不揮発性メモリである。さらに3次元形状への成形が不要で電極で挟むだけの単純構造のメモリができ、コスト削減につながる。今後、広い用途のメモリへの応用が期待できる。さらに(Al,Sc)Nの圧電性に分極方向の制御も加わり、従来にない新規応用も期待できる。

 

出光興産と東工大 出光協働研究拠点を同大キャンパスに開設

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2020年4月7日

 出光興産と東京工業大学は、次世代材料の創成を目的として、今月1日に「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」(出光協働研究拠点)を東工大すずかけ台キャンパス内に開設した。両者は、2000年代初頭から高分子材料分野を中心に幅広い領域で共同研究に取り組み、新規繊維・フィルム材料開発をはじめとして優れた成果を上げてきた。

 今回新設した「出光協働研究拠点」は、これまでの個別共同研究の枠を超え、「組織」対「組織」の連携により大型で総合的な研究開発を推進し、新たな価値創造を目指した次世代材料の創成と人材育成に取り組む。同研究拠点は、「東京工業大学オープンイノベーション機構」の支援の下、高分子分野の基盤技術の強化・拡充と、次世代モビリティ・高速通信などの領域で社会変革を実現する革新的な技術開発に関する研究活動を行う。また、高分子以外の幅広い分野を含むテーマ探索も推進する。

 なお、高分子関連分野では、高分子構造・物性、成形加工を専門とする東工大物質理工学院の鞠谷雄士教授と出光の代表共同研究員である末次義幸Ph.D.が組織を共同運営する。

 両者は、幅広い分野で高機能材料事業(潤滑油・機能化学品・電子材料・アグリバイオなど)を展開する出光の強みと、物質・材料をはじめとする広い領域にわたり、高度な学術的知見と最先端の科学・工学技術を持つ東工大の強みを融合し、新たな価値創造に挑戦していく。

出光興産次世代材料創成協働研究拠点の体制 イメージ図
出光興産次世代材料創成協働研究拠点の体制 イメージ図

 

東工大など 軽量・安全な水素担体を開発、光照射で水素放出

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2019年12月3日

 東京工業大学と筑波大学、高知工科大学、東京大学物性研究所の共同研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1対1のホウ化水素シートが、室温・大気圧という非常に穏やかな条件下で光照射のみで水素を放出することを見出だしたと英科学誌に発表した。

 これを応用することで爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来の水素キャリア(担体)よりもはるかに安全に達成することが期待される。今回はさらに、計算科学による電子構造の観点から、光照射による水素放出のメカニズムを解明することにも成功した。

 同研究では、第一原理計算に基づく仮設通り、ホウ化水素シートへの紫外線の照射で水素が生成されることを確認。ホウ化水素シートの質量の8%にあたる水素を放出した。従来の水素吸蔵合金の質量水素密度は、高いものでも2%程度。また、シクロメチルヘキサンのような有機ハイドライドも有望な水素キャリアとして知られているが、その質量水素密度は6.2%で、水素放出には300℃以上の加熱が必要だった。

 ホウ化水素シートはもともと「ボロフェン」という通称名で理論的に存在が予測されていた、原子一層~数層分の厚さからなる二次元物質で、2017年9月に同研究グループが初めて室温・大気圧下での合成に成功。

 今回、同研究グループらが報告したホウ化水素シートは、軽元素のホウ素と水素からなり、その質量水素密度は8.5%と極めて高い。既往の水素キャリアと比べて極めて大量の水素を、光照射という極めて簡便な操作で放出できることから、現行の燃料電池車に搭載される高圧水素タンクに代わる、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアとしての応用が期待されている。

 なお同研究成果は、10月25日付の『Nature Communications』に掲載された。

 

AGC 東工大と「マテリアル協働研究拠点」を設置

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2019年7月1日

 AGCはこのほど、東京工業大学と「AGCマテリアル協働研究拠点」を7月1日に開設すると発表した。東工大すずかけ台キャンパスに約66㎡の専用スペースを確保するとともに、AGCから共同研究員を派遣し、組織対組織の連携を進めていく。なお、設置期間は2022年6月30日まで。

 両者は、これまでガラス・セラミックス・有機材料など多くの領域で共同研究を進め、優れた成果を創出してきた。協働研究拠点とは、企業と東工大がこれまでの個別研究という枠組みを超え、組織同士で大型の連携を実現する新しい制度。

 今回開設する研究拠点では、東工大が物質・材料を含む幅広い領域で保有する学術的知見と、AGCが培ってきた技術力を連携させ、これまでの個別研究では難しかった組織対組織の総合的な研究開発を行う。

 また、新研究テーマや新事業分野の創出を行うべく、AGCと東工大双方の人材から構成される新研究テーマ企画チームを設置し、研究の企画機能を担う。

 同拠点開設に伴い、まずは「マルチマテリアル領域」として5つの研究室と共同研究を開始するとともに、次の領域設置も見据えた「NEXTテーマ候補」として2つの研究室(科学技術創成研究院菅野了次研究室、物質理工学院一杉太郎研究室)と共同研究を開始。

 「マルチマテリアル領域」では、AGCの保有するガラスやフッ素系材料など様々な材料を複合化・最適化することで、次世代モビリティや高速通信、エレクトロニクスなどの領域で必要となる高機能材料や革新技術・プロセスの開発を深化させ、ソリューションを創出する。

 一方、「NEXTテーマ候補」では、革新的・挑戦的な研究テーマについて、課題の抽出と解決、実現に向けたコンセプト検証を行う。

 AGCと東工大は、協働研究拠点の設置により研究者の密接な交流と研究開発ネットワークを構築し、新テーマ創出・開発・検証・社会実装のプロセスを効果的に進めるとともに、人材育成とイノベーション創出に寄与することを目指す。