BASFの1-3月期 コロナ禍でも強み発現し増収減益

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2020年6月1日

 BASFはこのほど、2020年第1四半期(1-3月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比7%増の168億ユーロ、特別項目控除前営業利益は同6%減の16億ユーロだった。今回のコロナウイルス感染拡大で困難な市場環境下にあるものの、多様なポートフォリオが強みとなり、特に川下分野の事業では大幅な改善が見られた。

 セグメント別で見ると、ケミカル事業セグメントとマテリアル事業セグメントの営業利益は同39%減の3億8300万ユーロ。エチレンとプロピレンのバリューチェーンでの粗利、ならびにイソシアネートとポリアミド前駆体の粗利が減少した。パフォーマンスマテリアルズ事業で大幅な増益となったが、モノマー事業の減益を相殺するには至らなかった。

 インダストリアル・ソリューション事業セグメントの営業利益は同3%増の2億7300万ユーロ。ディスパージョン&ピグメント事業が固定費の減少などで大幅増益となり、製紙用薬品、水処理剤事業をSolenisグループに譲渡したパフォーマンスケミカルズ事業の減益を相殺した。

 サーフェステクノロジー事業セグメントの営業利益は同46%増の2億2000万ユーロ。触媒事業は貴金属取引の評価替えにより大幅な増益。コーティングス事業は自動車業界の需要低下により大幅な減益となったが、原材料価格の低下や固定費の減少により一部相殺した。

 ニュートリション&ケア事業セグメントの営業利益は、主にニュートリション&ヘルス事業の大幅な増収により、同14%増の2億5400万ユーロ。コロナ危機の中で需要が増加している顧客産業に、より多くの製品を提供することで対応できた。ケア・ケミカルズ事業は固定費の減少により利益が微増した。

 アグロソリューション事業セグメントの営業利益は、主に新型コロナの感染拡大に伴う早期の需要による増収と固定費の減少により、同9%増の8億900万ユーロだった。

 なお、2月に発表した今年度の売上高・利益の予測は、未達の見通しとなったため撤回。現時点では、拡大範囲、封じ込めの対策などを確実に予測するのは不可能であるため、確実な予想ができるようになった時点で、売上高・利益の今後の推移予測を数値化する予定だ。

BASF 再利用可能なスピンオンフィルターを開発

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2020年4月27日

「Ultramid® Structure LFX」を使用した、再利用可能なスピンオンオイル式フィルター

 ドイツの大手化学メーカーのBASFは、自動車用フィルターメーカーのヘングスト社と連携し、世界初となる再利用可能な自動車用樹脂製スピンオン式オイルフィルターモジュール「ブルー・オン」を開発した。

 「ブルー・オン」はフィルター交換時にモジュールを取り換える必要がなく、再利用とリサイクルが可能であることに加え、金属代替として軽量化にも貢献する。すでに大手自動車メーカーに採用されており、今後、サステナビリティ製品としてスタンダードとなることが期待される。

 自動車業界ではオイルフィルター交換が主要な課題となっている。フィルターユニットはオイル交換時に全体を交換・廃棄され、その数は毎年約20億個に上り、また、残油は有害廃棄物として処理され、大量の廃棄物となる。ただ、フィルターユニットには高い負荷がかかるため、リサイクルするには高い耐久性が求められる。

 そのサステナブルな解決策が、BASFの高性能ガラス長繊維強化樹脂「ウルトラミッド・ストラクチャー LFX」によって実現した。

 「ウルトラミッド・ストラクチャー」グレードは特殊な特性を持ったガラス長繊維強化ポリアミドで、高温での機械的特性に加え、寸法安定性に優れている。ガラス繊維が長いため繊維配向が安定し、射出成形プロセスのパーツ内で3Dネットワークを形成し、非常に良好な表面品質が得られることで、スピンオンの概念を革新的なものにした。

 「ブルー・オン」は3つのコンポーネント(フィルターハウジング、エンジンへの接続エレメント、フィルターエレメント)で構成され、オイル交換時にはフィルターのみが交換可能。樹脂製モジュールはエンジン耐用年数まで使用でき、自動車のライフサイクルの最終段階では、すべてのコンポーネントをほぼ完全にリサイクルできる。さらに、金属製モジュールと比較して23%の軽量化を達成した。

 今回の開発では、両社のパートナーシップが成功への道を開いている。BASFのパフォーマンスマテリアルズ事業部シニア・キー・アカウント・マネージャーのクリスティアン・ジャネバ氏は、「金属製ハウジングと同等の性能を持ちながら省資源である製品の開発をヘングスト社から提案された。当社は、サステナビリティを中心とした総合エンジニアリングパッケージと材料開発により、開発プロセスを建設的に支援した」と述べている。

 なお、「ブルー・オン』は量産開始前の2018年に、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州のイノベーション賞を受賞している。

BASF 革新素材バンパーステー、マツダ車に採用

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2020年4月13日

高い耐熱性と耐久性、ヒマシ油原料で環境貢献

 ドイツの総合化学会社であるBASFは、エンジニアリングプラスチックの中では、ポリアミド(PA)樹脂「Ultramid(ウルトラミッド)」に注力している。

BASFの「ウルトラバランス」が使用された、マツダ車用リアバンバーステー
「ウルトラミッドバランス」が使用された、マツダ車用リアバンバーステー

 PA6、PA66、PA66/6といった、さまざまなコポリマーからなる製品群に加え、PA610やPA6T/6のような特殊ポリアミドも取り揃える。また非強化材だけでなく、ガラス繊維やミネラルによる強化材、さらに特種用途向けに長繊維ガラス強化材などのラインアップがある。

 特徴として、機械強度や剛性、耐熱安定性に優れ、また低温下での耐衝撃性や摺動特性、成形性を発揮する特性を備えていることから、幅広い工業分野で多様な構成部品や機械部品、高品質な電気絶縁材料、特殊部品などに、欠かせない存在として評価が高い。

 中でもPA610「ウルトラミッドバランス」は、ガラス繊維を30%含有していることで、より長期にわたる耐熱性に加え、安定剤とポリマー技術により耐薬品性を持っている。他のPAに比べても吸湿性が低く、湿度の高い環境下でも寸法安定性の維持が期待できる。

 この革新的素材「ウルトラミッドバランス」を使用し、スポーツ用品と自動車部品のグローバルサプライヤーであるモルテン(広島市)が製造する「リアバンパーステー」が、マツダの新型車「MAZDA3」と「CX‐30」に採用されている。

 リアバンパーステーは、自動車の車体下部を保護するための部品。冬季に路上で使用される融雪剤や凍結防止剤に含まれる塩化カルシウム、またサイレンサーによる高熱にさらされるため、ポリプロピレン(PP)や一般的なPAなど従来の素材で作られた部品では、時間の経過とともに劣化や変形が発生してしまう。

 それに対し、「ウルトラミッドバランス」を使用することで、高い耐熱性のほか、オイルやさまざまな溶剤、アルカリ水溶液などに対する高い耐久性をリアバンパーステーに持たせることが可能となった。

 また、PA610は、トウゴマ(植物)から抽出したヒマシ油を精製して作られるセバシン酸が原料。昨今、プラスチックにも環境貢献が求められているが、こうした顧客の要望に応えられることも大きな特徴だ。

 BASFジャパンパフォーマンスマテリアルズ事業部の山本勇執行役員は、「顧客にとって付加価値のあるソリューションを提供するために、われわれの専門性を最大限に生かすことに注力している。今後も顧客と協力し、進化するニーズに対応していく」と述べている。

 

BASF デジタル農業製品に新機能、高収益に貢献

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2020年3月13日

 BASFはこのほど、デジタル農業製品「ザルビオ・フィールド・マネージャー」に新機能を導入した。圃場固有の肥料投与のタイミングと分量の管理、緩衝地帯が自動的に統合された散布マップ、農機無線接続などで、全世界の生産者がモバイル端末で利用できる。生産者とアドバイザーが直接連携できる機能も追加された。

 また、作物ごとの詳細な生育ステージや、病害虫の圃場固有のリスクステータスに関するモバイルアラートなど、圃場固有のリアルタイム情報も含まれている。なお、このリスクステータスは、25年間にわたり市場でテストされたリスクモデルに基づいている。

 「ザルビオ・フィールド・マネージャー」を使う生産者は、高い収益を得ることができる。例えば、2017/2018年に、「ザルビオ・フィールド・マネージャー」の推奨に基づき麦畑を病害から保護した欧州の生産者は、3回の殺菌剤散布で標準的な保護方法を使った農家よりも、一ha当たり平均32ユーロ多く利益を得ることができた。

 さらに、同社は今年、ドイツで「ザルビオ・ヘルシー・フィールド」をはじめとする最新製品も市場に投入し、その後さらに多くの国で展開する予定。「ザルビオ・ヘルシー・フィールド」を使用することで、顧客は圃場内ゾーンごとの病害管理のためのフルサービスを、作物の健康保証とともに受けることができる。

BASF 独に電池材料の新拠点、EV向け正極材を製造

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2020年2月25日

シュヴァルツハイデ工場
シュヴァルツハイデ工場

 BASFはこのほど、ドイツ・シュヴァルツハイデに電池材料の新たな生産拠点を設けることを発表した。欧州の電気自動車(EV)バリューチェーンを支援するための多段階投資計画の一環。

 最新鋭の工場では正極材を製造し、年間約40万台のEVに供給できる規模の初期生産能力を持つ。革新的な正極材により電池の性能を向上させ、環境に優しいe‐モビリティの成功を促進する。シュヴァルツハイデ工場の増設可能な設計とインフラにより、迅速な生産能力の向上が可能になり、欧州のEV市場で高まる顧客の需要に応えることができる。

 同工場では、すでに発表しているフィンランドのハルヤヴァルタの工場で製造した前駆体を使う。両工場の操業開始は再来年を予定している。フィンランドとドイツでの投資により、同社は現在の主要市場であるアジア・米国・欧州地域で現地生産能力を持つ、初の正極材サプライヤーとなる。

 ベースメタル、特にニッケルやコバルトの確保、前駆体の製造、正極材の製造を同一域内で行えるようになり、信頼性と持続性のある、欧州をベースとしたサプライチェーンを持つリーディングサプライヤーとなる。

 また、シュヴァルツハイデの拠点では、エネルギー効率の高いガスと蒸気タービン発電プラントを使用しており、現在、環境効率をさらに高めるために近代化を進めている。電池材料の工場が稼働するまでの間に、再生可能エネルギーとの統合も予定している。

 また、ハルヤヴァルタ工場では、水力や風力、バイオマス発電などの再生可能エネルギー資源を使う。こうした有利なエネルギーミックスにより、CO2フットプリントが非常に低い正極材の提供が可能になる。

 両工場への投資は、欧州の電池生産バリューチェーンに向けた欧州委員会の協議事項に対する同社の支援を強化するもので、EU国家援助規制に基づき、昨年12月9日に欧州委員会によって承認された「欧州共通利益重要プロジェクト」の一環である。

BASF、イタリアの酸化防止剤工場を能増、デボトルで20%

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2020年2月17日

 BASFはこのほど、イタリアのポンテッキオ・マルコーニサイトの酸化防止剤「イルガノックス1520L」の生産能力を、20%拡大する計画を発表した。オペレーションのボトルネックの解消により実施するもので、来年の第1四半期に稼働する予定。

 同社はプラスチック添加剤の世界的なリーディングサプライヤーであり、同製品は酸化防止剤の主要製品ポートフォリオの1つ。生産能力の拡大により、同社は高まる市場需要に対応し、世界中の顧客により良いサービスを提供することを目指す。

 「イルガノックス1520L」は溶液重合や乳化重合、熱可塑性エラストマー、プラスチック、接着剤、シーラント、オイル、潤滑剤といった、幅広い用途に有効な酸化防止剤。単独、少量、あるいは補助安定剤なしで使用され、加工時や長期の熱老化安定性の両方に寄与する、他に類を見ない特長がある。

 必要に応じて、同製品を二次酸化防止剤やベンゾフラノン、光安定剤、機能安定剤など、他の添加剤と併用することもできる。

BASF ポリアミド強化、ソルベイからの買収が完了

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2020年2月13日

 BASFはこのほど、ソルベイのポリアミド(PA66)事業の買収を、1月31日付で完了したと発表した。これにより、BASFのポリアミドのポートフォリオに、市場での認知が高い「テクニール」などの製品が追加され、事業がさらに強化される。

 また、自動運転やe‐モビリティなどの分野で、より優れたエンジニアリングプラスチックスソリューションによって、顧客を支援することが可能になる。さらに、アジア・北米・南米の成長市場へのアクセスも強化される。

 主要原料であるアジポニトリル(ADN)からの一貫生産により、BASFはポリアミド66のバリューチェーン全体を強化し、供給信頼性を向上することができる。同社が取得したポリアミド事業の購入価格は、現金と負債を含めない状態で 13億ユーロ。同事業の2018年の売上高は約10億ユーロだった。同事業はパフォーマンスマテリアルズとモノマー事業本部に統合される。

 今回の取引には、ドイツ・フランス・中国・インド・韓国・ブラジル・メキシコの8つの生産拠点のほか、アジア・北米・南米の研究開発拠点と技術サポート拠点が含まれる。フランスの2つの合弁会社も含まれ、ソルベイがインビスタと共同で、ADNとヘキサメチレンジアミン(HMD)を生産する合弁事業ブタシミーの50%のシェア、BASFとドーモ・ケミカルスが共同でアジピン酸を生産する、新しい合弁事業アルサシミーの51%のシェアをBASFが取得する。

 買収完了に伴い、ソルベイの社員約700人がBASFに移る。なお、フランスの合弁事業アルサシミーには約650人、合弁事業ブタシミーには約400人が在籍している。

 BASFは2017年9月に、関連する競争当局の承認を条件に、ソルベイのグローバルでのポリアミド事業を買収する契約を締結した。昨年1月18日、欧州委員会は一定の条件の下で、ポリアミド事業の買収を承認。この条件により、当初の取引対象の一部である、欧州のソルベイの生産工場とエンジニアリングプラスチック分野のイノベーション・コンピテンシーを、第3者に売却する必要性が生じた。

 その後、ドイツのドーモ・ケミカルスが欧州委員会から買い手として承認され、ソルベイとドーモ・ケミカルスの取引が1月31日に完了した。

BASF シンガポールに新拠点、作物保護製品を生産

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2020年2月6日

 BASFはアジア太平洋地域での農業ソリューションビジネスのための新しい地域生産拠点をシンガポールに立ち上げた。2021年第3四半期に完成予定で、6つの異なる製剤技術を扱うように設計されている。

 同社の特許取得済みの作物保護製品を、成長著しいアジア太平洋地域の生産者に供給する計画。本格稼働時には年間700万ℓ相当の生産能力を持ち、これにより2000万haの圃場をカバーできる。

 また、同施設で25人以上の従業員を雇用する。アジア太平洋地域の米や果物、野菜といった主要作物の生産者が、より持続可能な方法で害虫を駆除しながら、収穫高を高めることができる技術革新に取り組む。

 これらには、同社の新しい有効成分である農業用殺虫剤「Inscalis(インスカリス)」と殺菌剤「Revysol(レヴィソル)」をベースにした作物保護製品が含まれており、持続可能性を踏まえ、有効な方法で害虫や病害をコントロールできるようになる。これら2つの有効成分を含む製品と、研究開発パイプラインから間もなく発売されるいくつかの製品は、同拠点で生産される。

 新生産拠点をシンガポールとした理由について、同社では既存のインフラを活用することで、比較的早く生産に着手できることと、アジア太平洋地域の多くの市場と自由貿易協定を締結するなど、世界トップクラスの物流拠点としての地位を築いていることを挙げている。

BASF ボッシュとデジタル農業での協力拡大

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2020年1月31日

プロジェクトセンター設立、共同開発体制を強化

 BASFの「xarvio(ザルビオ)」デジタルファーミングソリューションと自動車機器メーカーのボッシュは、農業分野でのデジタルソリューションの共同開発体制を強化する。両社はこのほど、 共同研究開発を同じ拠点で行うためプロジェクトセンターを設立した。

 2016年から両社は除草剤の使用量を大幅に削減する、高精度の除草剤散布技術であるスマートスプレーを共同開発しており、2021年の市場投入を予定している。「ザルビオ」は生産者が最も効率的かつ持続可能な方法で作物を生産することができる、作物モデルプラットフォームに基づいたデジタル製品。各圃場(ほじょう)の状況に応じた推奨情報を提供する。

 ボッシュと 「ザルビオ」によるスマートスプレーのコンセプトは、雑草を防除する現場で除草剤を正確に散布することに焦点を当てている。スマートスプレーは雑草と作物を識別し、標的とする雑草に除草剤を散布することができるスマートシステム。散布機が圃場内を走行する過程で、搭載カメラが通過したすべてのエリアの植生を撮影する。

 スマートスプレーの管理システムはセンサー信号をオンラインで分析し、作物と雑草を識別。システムが噴射器を制御し、必要に応じて除草剤を散布する。雑草のない場所には除草剤は散布されず、スキャン・識別・散布の一連の流れは、わずか数ミリ秒で完了し、単一の処理で実行される。

 ボッシュは協同研究開発で、カメラセンサー技術、画像処理とパターン認識、制御装置、システム接続性に重点を置いている。現場での日常的な使用では、スマートスプレー技術を備えた散布機は「ザルビオ」の「FIELD MANAGER(フィールド・マネージャー)」と接続し、様々なパラメーターを用いて、それぞれの作物がどの農薬を、どの程度必要とするかを適切に判断する。

 「フィールド・マネージャー」は生産者が農作業に関連する様々な意思決定を行うことを支援するデジタルソリューション。圃場の活用を最適化し、より効率的で環境に優しい栽培を実現することを目的としている。生産者はいつでも圃場の状況を確認し、各区画で推奨される情報を取得し、それぞれの圃場で推奨される可変散布マップをダウンロードすることができる。

 欧州・南米・北米での試作品による初期の実地試験では、非常に良好な結果を得ており、ボッシュの担当者は「市場投入に向けた次のステップの1つは、より正確に除草剤を散布するために散布器の解像度を最適化すること」と述べている。

 

BASF PPSUで新製品、射出成形の流動性を向上

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2020年1月24日

 BASFは低粘度グレードである「ウルトラゾーンP」の製品ラインアップを拡充している。

 「ウルトラゾーンP2010」は新しいポリフェニルスルホン(PPSU)で、「ウルトラゾーンP」の優れた機械特性を維持しつつ、射出成形での流動性を向上した。これにより、外食産業や航空機内での使用に適した洗練されたデザインの食器や耐熱容器など、より大きく複雑な形状の部品を製造することが可能になった。

 さらに、低い射出圧力と温度で充填できるため、原材料を加工する際のエネルギー消費量と部品重量を減らすことができる。「ウルトラゾーンP2010」ナチュラル(透明色)を、現在グローバルで販売している。

 新素材は高い耐薬品性と134℃までの過熱蒸気滅菌への耐性、耐火性、既存の「ウルトラゾーンP3010」が持つ優れた衝撃耐性と安定性をも兼ね備えている。ノッチ付き衝撃強度は、他の非晶質構造を持つ耐熱素材に比べ約10倍で、高温でも耐性を発揮するため、洗浄と消毒を繰り返してもほとんど影響がない。

 透明高耐熱プラスチックは、EUと米国で食品の接触に対する適合性が認められている。最適な用途の1つが外食産業や航空機用設備。容器や鍋は調理だけでなく、食品の保存や保温にも使用できる。

 ホテルやレストランでは、滅菌と洗浄剤に対する高い耐性が求められ、航空機内では耐火性が特に重要となる。このため、火災時に熱や有害物質の放出が少ない難燃性の特殊プラスチックは、食器だけではなく、座席や照明器具、通気孔、頭上の荷物棚などにも理想的だ。

 「ウルトラゾーン」はポリエーテルスルホン「ウルトラゾーンE」、ポリスルホン「ウルトラゾーンS」、ポリフェニルスルホン「ウルトラゾーンP」を含む、BASFのスルホン系樹脂製品群の登録商標。これらの高性能素材は、電子機器・自動車・航空宇宙産業にとどまらず、ろ過用メンブレンや、温水や食品と接する部品にも使われている。

 「ウルトラゾーン」ブランドは優れた特性により、熱硬化性樹脂・金属・セラミックの代替として利用されている。