ランクセスは28日、1,6-ヘキサンジオール(HDO)について、世界的に値上げすると発表した。改定幅は「300ユーロ/t」で即時に適用される。
1,6-HDOは、高性能コーティングや繊維、接着剤、ポリウレタン、ポリカーボネートジオールの重要な前駆体であり、エポキシ樹脂の反応性希釈剤としても使用されている。同社は、過去数ヵ月間のエネルギーコストの大幅な上昇に対応するため、今回の値上げを決定した。
2021年9月30日
2021年9月28日
ランクセスはこのほど、熱管理性能を備えたレーダーセンサーの新たなコンセプトを開発した。
熱伝導性プラスチックと金属冷却素子の組み合わせで、組み立てが容易で素材選択の自由度が高い。次世代自動車の主要機能である運転支援システムは距離制御、車線変更監視、衝突回避、死角監視システムなどで構成される。レーダー波による車両周囲360度の監視には、レーダーセンサーは不可欠。センサーは防塵・防水の完全密閉システムであり、内部からの効果的な放熱が困難で、電子機器の性能とセンサーの耐久性を損なう恐れがある。
同コンセプトは、フロントカバー(レドーム)、レーダー吸収体、アンテナと、冷却素子を一体化したバックカバーなどで構成。主にポリ塩化ビフェニル製だが、高いレーダー波透過性が必要なレドームには、低誘電率(Dk)・低損失係数(Df)のポリブチレンテレフタレート(PBT)「ポカン」が適する。
バックカバーは、ポリアミド(PA)6と金属冷却素子の、プラスチック金属ハイブリッドだ。射出成形により、補強リブや冷却リブ、コネクタ用スロット、さらに歪みのないケーブル取り付けなどが一体化。電子部品が発生する熱は、金属冷却素子の表面に薄く形成されたプラスチックを通じてアセンブリ全体から効率的に放散され、その効果は熱伝導性PA6「デュレタンBTC」で確認済みだ。
また金属製冷却素子は、レーダーセンサー内の電子機器を電磁放射から保護する。個々の部品はスナップフィットとホットリベット、2成分射出成形のOリングとシールリップで組み立てるため、ネジを使用する従来法に比べて安価で時間も短縮され、部品を溶接する必要がないため、異種のコンパウンドも使用できる。同社は、「HiAnt」ブランドの下、材料やアプリケーション、プロセスの技術開発のノウハウを結集し、コンセプト設計、材料最適化、機械的・レオロジー的シミュレーション、コンポーネントテスト、生産立ち上げなど、あらゆる開発段階でパートナーをサポートしている。
2021年9月27日
ランクセスはこのほど、難燃性ポリアミドおよびポリエステルコンパウンドの射出成形中に直面する典型的な課題を再現した、電気・電子産業向け部品の試作用射出成形金型を開発した。
ハイパフォーマンスマテリアルズ・ビジネスユニットのカタリーナ・シュッツ氏は「この金型を使用することで、新しい難燃剤と加水分解安定化剤の現実的な分析を行う。当社の目的は、製品開発段階でも必要に応じて処方を適用できるように、事前に特殊な加工特性を特定することだ。そして、当社の難燃性プラ加工業者に、量産のための特定処理の推奨事項を提供したい」と述べている。
難燃性を備えた熱可塑性樹脂の多くは、添加剤が使用されているため、標準製品よりも加工範囲が狭まるが、「この試作用金型により、これらの課題を実用的な方法で再現し、改善方法を見つけられる」と強調した。
今回開発した射出成形金型は、異なる用途の様々な側面を一体化した、高機能で、筐体のようなデモンストレーション部品。同ユニットの電気・電子アプリケーション開発者であるサラ・ルアーズ氏は、「機械的、電気的、および難燃性のテストにも使用でき、様々なプロセスパラメータや実際の形状に応じて材料の性能を評価できる」と述べている。
プロジェクトパートナーを対象としたこれらのサービスは総合サポートサービス「HiAnt」の一部。このサポートは、コンセプト設計、材料の最適化、機械・レオロジー的シミュレーションから量産の開始まで、アプリケーション開発のすべての段階を網羅している。
一方、同ユニットでは効果的なサポートを提供するため常にプロセスツールを拡張しており、今後は樹脂・金属ハイブリッド部品の試作金型も稼働させる予定。ルアーズ氏は、「オーバーモールドされた金属の挿入を特徴とするプラスチックコンポーネントは、大きな温度変動にさらされると、応力亀裂を受けやすくなる。新しいハイブリッド金型を使用して、材料の耐亀裂性を調査し改善したい」と述べている。また材料、コンポーネントの形状、プロセスパラメータなどの要因に応じて応力亀裂を予測するシミュレーションモデルの検証も計画している。
2021年9月17日
ランクセスは、ドイツのマンハイム拠点で淡色硫黄系極圧添加剤の製造能力を数千t増強する。市場の需要増に応じた設備拡張で、投資額は数千万ユーロ、稼働開始は2023年初めの予定だ。これにより極圧添加剤市場のリーダーシップを強化し、世界市場での成長機会でビジネスを拡充する考えだ。
淡色硫黄系極圧添加剤「アディティン EP」は無色無臭で、主に金属加工潤滑剤として金属表面の摩耗を低減し、高圧などの過酷な条件下でも金属間の凝着を防止する。菜種油やそのエステル誘導体など、ドイツ国内で調達された再生可能原料をもとに製造されている。
生態毒性学的な優位性により、環境残留性と生物蓄積性が高く欧州化学物質庁(ECHA)で高懸念物質(SVHC)リストに分類されている中鎖塩素化パラフィン(高圧潤滑剤)の代替として浸透しつつある。
2021年9月14日
ランクセスはこのほど、同社で2番目の規模の大型買収となる米エメラルド・カラマ・ケミカル社の買収を完了したと発表した。
エメラルド・カラマ・ケミカル社は米国に本社を置く特殊化学品メーカーで、従業員約470人、米国、オランダ、英国に生産拠点をもち、昨年の売上高は約4億2500万米ドル、特別項目を除いたEBITDAは約9000万米ドルだった。企業価値は10億7500万米ドル、負債類似項目控除後の買収額は約10億4000万米ドルで、流動資産から資金を調達した。売上の約75%はパーソナルケア製品や化粧品用製品、高級フレグランス、食品・飲料などに使用されるコンシューマー向け特殊化学品で、アーシー、フローラル、フルーティー、スパイシー、ハーバルなどの30以上のアロマケミカルが含まれる。
コンシューマープロテクション部門下に新設するフレーバー&フレグランス・ビジネスユニットに組み込み、バリューチェーンを強化する。残り25%は主にプラスチック、塗料、コーティング、接着剤業界の高成長産業用途向けの特殊化学品であり、ポリマー添加剤ビジネスユニットに統合される。
ランクセスは魅力的な成長率が期待できる市場でのポジションを強化し、飲料・食品産業、あるいは洗浄剤・化粧品用製品で利益率の高い応用分野を開拓しており、安定と収益性を高めるための重要なエンジンだとし、今後3年以内に相乗効果によるEBITDAの上積みとして約3000万米ドルを見込んでいる。
2021年9月9日
ランクセスはこのほど、東北復興支援の一環で岩手県下閉伊郡山田町の小学生を対象に、化学実験教室「つくってまなぼう! わくわく実験教室」をセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと共催した。子どもたちが楽しみながら化学を学べることを目的に、今年で8回目の開催となる。
8月5日に山田町ふれあいセンター「はぴね」で、地元の小学1年生から6年生までの17人の児童が参加。新型コロナの感染リスクを最小限に抑えるため、昨年同様、山田町の会場とランクセス東京オフィスをオンラインで繋ぎ、画面を通して実験を進めるリモート開催となった。
今年は「暑い夏をエコに涼しく楽しく! 自分だけの保冷剤をつくろう!」をテーマに、地球で起こっている様々な環境問題や身近に取り組める地球温暖化対策について学ぶとともに、電気を使わずに涼しく過ごす方法の1つとして、高吸水性ポリマーを使って保冷剤を作る実験を行った。参加した子どもたちからは「すんごく楽しかった」「高吸水性ポリマーに水を入れてもめばゼリーのようになったところが面白かった」「楽しく保冷剤を作れて、地球温暖化について知れてよかった」などのコメントが寄せられた。
同社は、東日本大震災で被災した子どもたちの支援を目的に、2011年からセーブ・ザ・チルドレンの活動を支援し、さらなる支援の拡充を目指して2014年から宮城県内、2017年からは岩手県内で化学実験教室を開催している。長引くコロナ禍でも学びの機会が失われないよう、また環境や化学に興味をもつ機会となることを願っての開催となった。今後もすべての子どもたちに質の高い教育の機会を提供するという持続可能な開発目標に向かって、教育分野への支援を続けていく考えだ。
2021年9月9日
ランクセスは今月2日付で無機顔料製品の価格を世界的に改定し、同日以降の出荷分から即時に適用すると発表した。対象製品と値上げ幅は、酸化鉄顔料が「200ユーロ/t以上」、酸化クロム顔料が「300ユーロ/t以上」、フェライトが「250ユーロ/t以上」で、ユーロ圏以外では相当する現地通貨での相当額となる。さらに、仕向け地によっては、輸送コストの増加分を補うために、追加手数料がかかる場合があるとしている。
同社の酸化鉄顔料と酸化クロム顔料は、主に「バイフェロックス」および「カラーサーム」の商標名で販売され、建材、塗料・塗装、プラスチックなどの着色剤として幅広く展開。また、高い着色力をもつ同社の無機顔料は、持続可能な厳しいガイドラインに基づいて製造されている。
2021年9月3日
ランクセスはこのほど、2021年第2四半期(4-6月期)の業績を発表した。売上高は前年同期比28%増の18億3000万ユーロ、特別項目を除いたEBITDAは24%増の2億8000万ユーロ、純利益は7億ユーロ減の1億ユーロだった。
これは前年同期にカレンタ社株式売却による純利益の大幅増があったため。販売量はパンデミック前のレベルに戻り、原材料価格の急激な上昇には販売価格の調整で対応できた。為替と輸送費とエネルギーコストの大幅増は利益に影響した。
一方エメラルド・カラマ・ケミカル社の買収は、コンシューマープロテクション分野のフレーバーや香料向け製品、食品・飲料と洗浄剤・化粧品向けの防腐剤製品など、新たな応用分野の開拓につながり、通期業績への寄与を見込んでいる。
部門別に見ると、アドバンスト中間体部門は増収減益。販売量増加と販売価格の引き上げによる増収の一方、エネルギーと輸送コストの上昇で減益となった。
スペシャリティアディティブス部門は増収増益。為替のマイナス影響はあったが、販売量の大幅増加と、原材料費上昇を反映した販売価格の引き上げが寄与した。
コンシューマープロテクション部門は増収減益。サルティゴの農薬事業と物質保護剤ビジネスユニットの消毒剤の好需要による販売量増加と、買収したINTACE社とテセオ社の事業が寄与したが、為替のマイナスとエネルギー・輸送コストの上昇が減益要因となった。
エンジニアリングマテリアルズ部門は増収増益。為替はマイナスに影響したものの、自動車産業向け販売量の大幅増加に加え、販売価格も上昇し増収に貢献した。輸送とエネルギーのコスト上昇や主要サプライヤーの一社が利用できなかった影響はあったが増益となった。
2021年度通期予想は、第2四半期の好業績と8月に買収を完了したエメラルド・カラマ・ケミカル社による約3500万ユーロの上積みを見込み、特別項目を除いたEBITDAを、前回発表値から5000万ユーロ引き上げた10億~10億5000万ユーロに上方修正した。
2021年7月2日
三菱ガス化が今秋撤退、拡販でシェア獲得を狙う
ランクセスはこのほど、ポリエステルやポリウレタン、樹脂、合成潤滑油の原料として使用されるトリメチロールプロパン(TMP)について日本市場での販売を強化すると発表した。これまでのフレーク品に加え、メルト(液体)品も年末までの輸入・販売を目指しており、同社の製品を取り扱う化学品商社の豊通ケミプラスを通じて新規顧客向けのサンプル供給を開始した。
同社はドイツ・ユルディンゲン工場を拠点に、純度99%以上を誇る高品質なTMPを製造。世界第2位の生産能力をもっており、アジア地域をはじめ世界の顧客に対し輸出を行っている。日本についても、これまでフレーク品に特化してドイツ工場から輸出し、化学メーカーに販売してきた。
昨年の日本市場は、コロナ禍の影響で一時的に需要が低迷した。しかし今年度に入り急速に市場が回復したことを受け、TMPの需要も急増している。さらに、今秋には約1万tの国内需要のうち大半を占める三菱ガス化学が生産を停止することもあり、市場環境が大きく変化することが想定されている。ランクセスは、従来のフレーク品に加え、メルト品の使いやすさを訴求することで供給量を増加させ、拡販によりシェアの獲得を狙う。同社は今後も、日本市場向けの製品ラインアップを充実させ、顧客ニーズに応えていく考えだ。
ランクセスは、2004年にバイエルから独立したドイツの特殊化学品メーカー。2016年に合成ゴム事業を分離し、現在はアドバンスト中間体、スペシャリティーアディティブス、コンシューマープロテクションとエンジニアリングマテリアルズの4部門の下、10の事業部で構成されている。従業員は約1万4000人で世界33カ国にわたって事業展開しており、昨年度の売上は約8000億円であった。
地域別の売上高は、欧州・アフリカが半分、米州とアジアが残り半分ずつとなっている。業界別で見ると、自動車、化学品、建設、農業・畜産衛生、栄養・健康・消費財、エネルギー・天然資源・産業用の六分野がほぼ均衡している。最近は特殊抗菌剤や消毒・衛生関連、消費者分野の特殊化学品企業を買収するなど、コンシューマープロテクション部門の強化を図り、またバッテリー向け化学品事業へも参入した。
なお、日本のランクセスは10事業を展開し、昨年の売上高は約310億円だった。愛知県の豊橋にゴム薬品の製造と水処理関係の技術サービスの拠点を保有している。今後、コンシューマープロテクション、ニューモビリティと添加剤分野に注力し、持続可能な発展を推進する事業活動と社会的責任への取り組み、デジタル化と働き方改革を推進していく考えだ。
2021年6月25日
ランクセスはこのほど、2021年度第1四半期の業績を発表した。グループ連結売上高は新型コロナウイルスのパンデミックの影響をまだ受けていない前年同期比で微減の16億9300万ユーロ、特別項目を除いたEBITDAは微減の2億4200万ユーロ、純利益は前年並みの6300万ユーロと堅調だった。
販売量は自動車産業の需要伸長でエンジニアリングマテリアルズ部門を中心に前年同期を上回ったが、米国での天候不良による製造停止の影響でアドバンスト中間体部門とスペシャリティアディティブス部門、コンシューマープロテクション部門で相殺された上、為替とエネルギーコスト増がマイナスに作用した。その一方で成長・拡大を積極的に推進した。
コンシューマープロテクション部門では仏INTACE社の買収で紙・パッケージ向け抗菌剤領域を、テセオ社の買収で家畜衛生市場向け製品を大幅に拡大した。また、米エメラルド・カラマ・ケミカル社の買収により、食品産業や畜産衛生といった新たな応用分野での拡大を図り、中国・天賜材料との協業でLIB用電解質フォーミュレーションを製造する予定だ。
セグメント別に見ると、アドバンスト中間体部門は増収減益。良好な需要で販売量は増加したが、販売価格の引き下げや、為替と米国寒波による製造停止のマイナス影響を補えなかった。
スペシャリティアディティブス部門は減収減益。米国寒波による製造停止と航空業界の需要低迷で販売量は減少し、為替もマイナスに作用した。
コンシューマープロテクション部門は増収増益。販売価格の引き下げにもかかわらず、堅調な農薬事業と消毒剤の好需要による好業績で高い数値を維持した。
エンジニアリングマテリアルズ部門は増収増益。自動車産業の好需要の恩恵は、輸送費とエネルギーコストの上昇分を上回った。
なお、2021年度通期の業績については、好業績の第1四半期を受けて予測値を引き上げ、特別項目を除いたEBITDAは現時点で9億5000万~10億ユーロを見込んでいる。