新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、北海道苫小牧市でのCO2回収・貯留(CCS)大規模実証試験で、昨年11月にCO2の累計圧入量が目標値である30万tを達成したと発表した。
今回、そこで得られた成果と課題を、機械工学、化学工学、地質学、地球物理学など幅広い分野の専門家による議論を踏まえて「苫小牧におけるCCS大規模実証試験30万t圧入時点報告書(総括報告書)」を取りまとめた。
CCS(CO2 Capture and Storage)は、工場や発電所などから排出されるCO2を大気放散する前に回収し、地下へ貯留する技術のこと。昨年6月に閣議決定した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の中で、「とりわけ石炭火力発電については、商用化を前提に、2030年までにCCSを導入することを検討する」と位置づけられている。
経済産業省は、12年度から「CO2削減技術実証試験事業」を日本CCS調査に委託し苫小牧市での実証試験を開始。18年度からはNEDOに移管され「CCS研究開発・実証関連事業/苫小牧におけるCCS大規模実証試験」として推進してきた。12年度からの4年間は必要な設備の設計・建設や調査を実施。16年度からは、年間10万t規模で海底下約1000mと約2400mの各地層へのCO2圧入を始め、昨年11月に累計圧入量が目標の30万tに達した。
今回の「総括報告書」は、同実証試験の目的と結果概要、分離・回収・圧入設備、圧入井と圧入・貯留およびモニタリングと海洋環境調査の結果、平成30年北海道胆振東部地震の影響、コスト試算、社会的受容性の醸成と法規制対応から成り、得られた知見と残された課題をまとめている。
今後、NEDOは、貯留地点周辺地域での微小振動観測や海洋環境調査、圧入したCO2の移動や広がりのモニタリングなどを継続する。また、同設備を有効活用し、メタノール合成などのカーボンリサイクル実証を行い、苫小牧でのCCS/カーボンリサイクル実証拠点化を進める考えだ。