NEDO セメント工場のCO2再資源化技術開発に着手

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2020年7月2日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、セメント製造プロセスで排出されるCO2を再資源化し、セメント原料や土木資材として再利用する技術開発と実用化に向けた実証試験の助成先として太平洋セメントを採択したと発表した。実施期間は2020~21年度、予算は16億5000万円。セメント工場での1日10t規模のCO2分離・回収の実証試験は国内初の試み。

 セメント産業のCO2排出量は、国内では電力、鉄鋼に次いで多く総排出量の約4%であり、排出削減対策は重要な課題だ。このうちの約6割は、セメントの中間原料であるクリンカの製造過程で、原料の石灰石が分解して発生する。今年1月策定の「革新的環境イノベーション戦略」の中で、削減効果が大きく、日本の技術が貢献できるテーマの1つとして、「CO2を原料とするセメント製造プロセスの確立」が設定された。そうした中、セメント製造工程中のCO2を再資源化し、セメント原料や土木資材として再利用する技術の開発と実用化に向けた実証試験事業「炭素循環型セメント製造プロセス技術開発」に着手した。

 研究開発項目は、①セメントキルン排ガス中のCO2の分離・回収、②廃コンクリートや生コンクリートスラッジなどの廃棄物の再資源化によるCO2の排出削減、③セメント製品へのCO2の固定化である。具体的には、セメント工場内のセメントキルン排ガスから10t/日のCO2を分離・回収する実証試験と、CO2を廃コンクリートや生コンクリートスラッジにより炭酸塩として固定化し、原料石灰石の代替や道路舗装用の路盤材などの土木資材として再資源化する要素技術開発になる。

セメント工場(太平洋セメント熊谷工場)
セメント工場(太平洋セメント熊谷工場)

 同事業により、最適なCO2分離・回収システムとCO2再利用の「カーボンリサイクル」技術を確立し、2030年度までに国内セメント工場への導入を目指す考えだ。なお、この分野での2050年の世界全体のCO2削減量は約43億tと期待されている。

NEDO 羽田空港地域で自動運転の実証実験を開始

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2020年6月23日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、羽田空港地域で、自動運転技術を活用した次世代公共交通システムの実現に向けた実証実験などを開始した。

 NEDOが管理法人を務める戦略的イノベーション創造プログラム第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」では、交通事故の低減や交通渋滞の削減などの社会的課題の解決を目指して、自動運転実用化に向けて産学官共同で取り組むべき共通課題(協調領域)の研究開発を進めており、同実証実験はその一環。昨年10月から、臨海副都心地域の公道で実験用車載器を搭載した自動運転車を走行させ、信号灯火色などの交通インフラが提供する情報の有効性検証などを行っている。

 今年3月からは羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路で、合流支援情報などを活用したインフラ協調型システムの実証実験を開始した。6月からは、羽田空港第3ターミナルと羽田空港跡地第1ゾーンを結ぶ公道で、磁気マーカー、高度道路交通システム(ITS)無線路側機を活用した公共車両優先システム(PTPS)、信号情報提供、高精度3次元地図などを利用した実証実験をスタート。バスの定時性の向上、磁気マーカーを活用した自動運転の実現、緩やかな加減速やバス停への正着制御などによる安全で快適な走行など、運転自動化「レベル4」相当の次世代型公共交通システムの実現を目指す。

 今後、東京臨海部での実験走行のデータを分析し、技術、精度、社会的受容性に関する課題解決への取り組みを促進し、実用化と普及の加速を図る。羽田空港地域での実証実験の成果を基に、次世代型公共交通システムを展開して、高齢者や交通制約者などの移動の確保やドライバー不足の改善・コスト低減などの社会的課題の解決に貢献していく考えだ。

NEDO 人工光合成、収率ほぼ100%の光触媒開発

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2020年6月12日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、三菱ケミカルや三井化学などが参画する人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)はこのほど、紫外光領域ながら世界で初めて100%に近い量子収率(光子の利用効率)で水を水素と酸素に分解する粉末状の半導体光触媒を開発した。信州大学、山口大学、東京大学、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究によるもの。これまでの光触媒では量子収率が50%に達するものはほとんどなく、画期的な成果といえる。

 ソーラー水素の実用化に向けた大幅なコスト削減には、太陽光エネルギーの変換効率向上が必要だ。そこには、利用光の波長範囲を広げることと、各波長での量子収率を高めることの2つの要素がある。前者は光触媒のバンドギャップ(電子励起に必要なエネルギー)の幅がカギになり、後者は触媒調製法や助触媒との組み合わせで決まる。今回は後者に注力し、ほぼ100%の量子収率を達成するとともに、触媒の構造・機能・調製方法などを明らかにした。

 代表的な酸化物光触媒SrTiO3(Alドープ)を、フラックス法により2種の結晶面を持つ粒子にすると、光で励起された電子と正孔が各結晶面に選択的に移動する異方的電荷移動という現象が起こる。この特性を利用して、各結晶面に水素生成助触媒(Rh/Cr2O3)と酸素生成助触媒(CoOOH)を光電着法により選択的に担持した。

 その結果、光励起した電子と正孔は再結合せずに各助触媒に選択的に移動するため、吸収光のほぼ全てを水分解反応に利用することに成功した。光励起された電子と正孔の一方通行移動は植物の光合成で行われているが、複雑なタンパク質構造によるため、人工的な再現は非現実的だった。今回の光触媒の構造は簡易であり、高活性光触媒の設計指針となる。

 今回は紫外光しか吸収しないため、降り注ぐ太陽光エネルギーの一部しか利用できない。可視光を吸収するバンドギャップの小さな光触媒に応用することで、太陽エネルギーの利用度は上がる。バンドギャップの小さな化合物での水分解にはさらに高度な触媒性能が求められるが、今回の触媒設計指針を応用することにより、製造プラントの省スペース化や製造コストの低減が期待される。

 NEDOらは、引き続き光エネルギー変換効率の向上を進め、人工光合成技術の早期実現を目指していく考えだ。

NEDO CO2回収・貯留大規模実証試験の総括を報告

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2020年6月9日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、北海道苫小牧市でのCO2回収・貯留(CCS)大規模実証試験で、昨年11月にCO2の累計圧入量が目標値である30万tを達成したと発表した。

 今回、そこで得られた成果と課題を、機械工学、化学工学、地質学、地球物理学など幅広い分野の専門家による議論を踏まえて「苫小牧におけるCCS大規模実証試験30万t圧入時点報告書(総括報告書)」を取りまとめた。

 CCS(CO2 Capture and Storage)は、工場や発電所などから排出されるCO2を大気放散する前に回収し、地下へ貯留する技術のこと。昨年6月に閣議決定した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の中で、「とりわけ石炭火力発電については、商用化を前提に、2030年までにCCSを導入することを検討する」と位置づけられている。

 経済産業省は、12年度から「CO2削減技術実証試験事業」を日本CCS調査に委託し苫小牧市での実証試験を開始。18年度からはNEDOに移管され「CCS研究開発・実証関連事業/苫小牧におけるCCS大規模実証試験」として推進してきた。12年度からの4年間は必要な設備の設計・建設や調査を実施。16年度からは、年間10万t規模で海底下約1000mと約2400mの各地層へのCO2圧入を始め、昨年11月に累計圧入量が目標の30万tに達した。

 今回の「総括報告書」は、同実証試験の目的と結果概要、分離・回収・圧入設備、圧入井と圧入・貯留およびモニタリングと海洋環境調査の結果、平成30年北海道胆振東部地震の影響、コスト試算、社会的受容性の醸成と法規制対応から成り、得られた知見と残された課題をまとめている。

 今後、NEDOは、貯留地点周辺地域での微小振動観測や海洋環境調査、圧入したCO2の移動や広がりのモニタリングなどを継続する。また、同設備を有効活用し、メタノール合成などのカーボンリサイクル実証を行い、苫小牧でのCCS/カーボンリサイクル実証拠点化を進める考えだ。

 

NEDO 新型コロナ感染症例情報の検索エンジンを公開

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2020年5月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とプレシジョンはこのたび、共同研究先である自治医科大学とともに新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)に特化した症例検索エンジンを開発し、日本医師会COVID‐19有識者会議のウェブサイトで公開した。これによりCOVID‐19症例の可視化・分析が可能となり、COVID‐19に取り組む医療関係者の情報共有や診断・治療法の開発への貢献が期待される。

 NEDOは、業界横断型人工知能(AI)システムの開発と業界共用データ基盤の開発を通じて、幅広いデータ連携による価値創出の促進を目的に「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」を推進している。

 今回、開発中のアルゴリズムを用いてCOVID‐19症例の検索エンジンを開発した。COVID‐19は人類がはじめて経験する疾患であり、多くの症例報告を収集し、わかりやすく整理した上で患者の傾向を分析することが急がれる。

 すでに日本感染症学会のウェブサイト内の「COVID‐19症例提示」で貴重な情報が提供されているが、その中で著者の許諾を得た約70症例の報告を構造化しデジタルデータベース化した。それらCOVID‐19の症例を、検索エンジンを用いて可視化、分析することで、個々の報告の文脈と臨床所見の関係性がわかりやすく表示され、非専門家でも活用しやすくなった。

 今後、医療の専門家と非専門家が協力して行う診断・治療法の開発の推進が期待される。

昭和電工 AIでフレキシブル透明フィルムの開発を迅速化を実証

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2020年4月15日

 昭和電工はこのほど、産業技術総合研究所(産総研)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)と共同で、フレキシブル透明フィルムの開発に人工知能(AI)を活用することにより、要求特性を満たすフィルムの開発の実験回数を25分の1以下に低減できることを実証したと発表した。

フレキシブル透明フィルムの用途例
フレキシブル透明フィルムの用途例

 今回の開発は、NEDOの「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の委託事業として実施。超超PJでは、経験知による従来の材料開発からの脱却を目指し、AIやマルチスケールシミュレーションを積極的に活用することで、従来と比較して実験回数を削減し、開発期間を大幅短縮することを目指している。

 昭和電工など4者は、モバイル機器などの開発に欠かせないフレキシブル透明フィルムの設計にAIを活用し、要求特性を満たすポリマーの探索に取り組んでいる。

 はじめに熟練研究員が27種類のフィルムを作成し、その原料の分子構造、モル比などの化学的な情報をECFP(Extended Connectivity Circular Fingerprints)という手法を応用して説明変数に落とし込み、目的変数にはトレードオフの関係にあり並立の難しい物性である換算透過率、破断応力、伸びの3項目を選択し、作成したフィルムの実測データをAIに学習させた。

AI予測を行い作製したフレキシブル透明フィルム(引張試験中の写真)
AI予測を行い作製したフレキシブル透明フィルム(引張試験中の写真)

 その後、説明変数を網羅的に割り当てたデータを用意して、偏差値概念を導入したAIにこれら3項目が等しい割合で最大となる配合を予測させ、その予測の通りに3種類のフィルムを作成し、AI学習データを作製した熟練研究員が自己の知見に基づき作成した25種類のフィルムの物性値とを比較した。 

 この結果、AIが予測した配合で作成した3種類のフィルムの物性値は、いずれも比較実験として熟練研究員が作成した25種類のフィルムの物性値よりも優れていることが判明。研究員による開発に比べて25分の1以下の実験回数でより高い物性値のフィルムを得られたことから、大幅な開発期間の短縮が可能なことが実証できただけでなく、研究員の経験知をもとに作成した製品を超える製品が開発できる可能性があることも実証した。

 今後は同技術をさらに高度化させ、要求特性を満たしながらより良い物性値となる配合比をAIが提案できるように開発を進めていく。なお、同件の詳細は、超超PJ成果報告会のウェブサイトに発表された。

NEDO 2020水素元年、3つの大型プロジェクトが本格始動

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2019年12月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、水素利活用推進の気運が世界的に高まる中、日本が引き続きこの分野でのリーダーシップを発揮し続けるため、様々な技術開発プロジェクトを推進している。

次世代電池・水素部の大平総括研究員紙面用
次世代電池・水素部の大平総括研究員

 その中で来たる2020年には、世界初の国際間水素サプライチェーンプロジェクトの実証試験が始動し、世界最大級のPower to Gasプロジェクトの研究施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)が試験運転を開始する。

 次世代電池・水素部の大平英二統括研究員が「水素プロジェクトにとって節目の年となる」と語るように、

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NEDO バイオプラとプラ・アルミ資源循環に着手

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2019年11月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術戦略研究センター(TSC)は1日、「資源循環(プラスチック、アルミニウム)」と「バイオプラスチック」の2つの注目技術分野について、最新動向や課題、市場予測をまとめた「TSC Foresight」を公表した。

 TSCでは、今後の日本にとって需要になると思われるさまざまな技術分野について、世界の状況や市場動向、各国の強みといった多面的な側面を調査・分析した上で、各戦略の策定を行っている。

 「資源循環(プラスチック、アルミニウム)」分野では、現在、大量に利用され、今後も利用が伸びることが予想されるプラスチックとアルミニウムに対し、廃棄物の高度選別技術や新しい材料再生技術を用いることで資源の再利用拡大を図っていく。

 また、アルミニウムを1㎏再生することで11.7kgのCO2削減ができ、プラスチックでも同様に5㎏のCO2削減ができることから、CO2削減効果の側面からも、両素材のリサイクルは非常に大きな効果が期待されている。

 同日に開催された記者会見で、環境・化学ユニットの山下勝主任研究員は、戦略のポイントとして「高性能な選別・分離による資源化率の向上」「水平リサイクルによる再生材の高付加価値化」「回収処理方法などの法整備」「産学官の協調」など挙げた。

 プラスチック・リサイクルの2030年近傍の将来像では、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの比率を大幅に拡大し、材料・原料化率を高めることで、再生樹脂の拡大を図る。一方、「バイオプラスチック」分野では、主に海洋生分解性プラの技術開発に重点を置いている。

 バイオエコノミーユニットの瓦田研介ユニット長は「プラスチック問題の解決は、NEDOとしてはイノベーションによる新しい素材の開発を通じ、新しい切り口で考えていく」との方向性を示した。

 今年度「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」公募採択テーマの課題「海洋プラスチックごみ問題を解決する海洋分解性プラスチックの技術開発」について、三菱ケミカルなどが行う「ポリアミドを基軸とする新規海洋分解性材料の開発」、北海道大学などの「CO2原料から新規PHAブロック共重合体の微生物合成」など、6つのテーマが7月からスタートしている。

 これらの新素材開発に並行し、「標準化」「普及啓発」「普及促進を目的とした規制」といった政策サイドと一体となった取り組みを進め、海洋生分解性プラの新市場創出を図る。

NEDO CO2を有効利用するメタン合成試験設備が完成

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2019年10月31日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、国際石油開発帝石、日立造船とともに、CO2と水素からメタンを合成する試験設備=写真=を、国際石油開発帝石・長岡鉱場(新潟県長岡市)の越路原プラント敷地内に完成させた。

NEDO メタン合成 写真1 メタネーション試験設備 NEODは、CO2有効利用技術開発事業に取り組んでいる。同試験設備では、越路原プラントで天然ガス生産時に付随して出されるCO2と、水の電気分解によって製造された水素を合成することによりメタンを製造する。

 メタンを合成する反応器には、日立造船が開発した熱回収効率が高く、メタン合成能力の大型化に適したプレート型を採用。事業所内で分離・回収したCO2を用いたプレート型での試験は世界初の試みで、将来の大型化を見据えた取り組みとなる。

 試験設備のメタン合成能力は、1時間当たり8N㎥。今年度末までをめどに各種試験と連続運転を実施。今後の本格運転では、メタン合成プロセスの反応温度、反応圧力、反応負荷などのパラメータを種々変化させた最適化などの技術課題の評価・検討を行い、カーボンリサイクル技術の1つである、CO2を原料にメタンを生成する「メタネーション」技術の確立を目指す。

 事業規模は、2017~19年度の期間全体で約13億9千万円。火力発電などから排出されるCO2の削減は、気候変動対策として重要であり、またCO2を資源と捉えて、これを回収し、有効利用する「カーボンリサイクル技術」の開発も求められている。

 カーボンリサイクル技術としては、燃料や化学原料などの有価物へ再利用することが有用と考えられており、その中でもメタンは天然ガスの主成分で、エネルギーキャリアとして高いポテンシャルを持つほか、天然ガス(都市ガス)で使われている既存インフラを利用できるなど、大きな利点があると期待されている。

NEDO 防犯映像をAIで検索・分析するサービス開発

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2019年10月18日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は17日、都内で記者会見を行い、小売店の防犯カメラ映像から来店客の行動や商品を検索・分析するサービス「AI Search(AIサーチ)」を開発したと発表した。

渡邊プロジェクトマネージャー
渡邊プロジェクトマネージャー

 ロボット・AI部の渡邊恒文プロジェクトマネージャーは「NEDOでは『次世代人工知能・ロボット中核技術開発』プロジェクトを進めている。今回の技術は2017年のAIコンテストで採択されたもので、さらにブラッシュアップしたことで今日の発表に至った」とし、「AIの社会実装を加速するためには、技術開発と

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