ショット 超低膨張ガラスなどで日本の宇宙市場開拓へ

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2019年4月26日

 ドイツの特殊ガラスメーカーであるショット(マインツ市)は、宇宙・天文分野での日本市場参入へ本格的に乗り出した。欧米州での数々の実績を背景に、大型望遠鏡や人工衛星をはじめ、日本での幅広い用途開拓を加速していく。

ELTの主鏡に使われるセグメント鏡の5分の1縮小モデル(右)と、軽量化反射鏡基板
ELTの主鏡に使われるセグメント鏡の5分の1縮小モデル(右)と、軽量化反射鏡基板

 同社は、パシフィコ横浜(横浜市西区)で26日まで開催の光技術総合展示会「OPIE19」内の「宇宙・天文光学EXPO」に出展中だ(ブース番号:C26)。

 今回は、同社が注力製品の1つに位置づける超低膨張ガラスセラミック「ZERODUR(ゼロデュア)」を主軸に展開している。

「ゼロデュア」が採用された超大型望遠鏡(ELT)の完成予想イメージ(写真提供 ESOL. Calçada)
「ゼロデュア」が採用されたELTの完成予想イメージ(写真提供 ESOL. Calçada)

 同製品は極めて低い熱膨張係数を実現した製品で、温度変化による膨張はほとんど起きない。この優れた特性によって最高の精度が保証される点が評価され、現在チリのセロ・アマソネス山に建設中の超大型望遠鏡(ELT)の反射鏡基板に採用された。

 展示会に先駆けて行われた記者向け勉強会で、ゼロデュア事業部のトーマス・ヴェスターホフ部長は、開発から50年が経つ今もなお、利用分野を拡大し続ける「ゼロデュア」の魅力について、「高い品質の提供と積み重ねてきた実績」を挙げた。実績に裏打ちされた信頼性から、ユーザー側の「ゼロデュア」に対する認識が浸透しているという。

軽量化「ゼロデュア」反射鏡基板のカットサンプルを手にするヴェスターホフ部長
軽量化「ゼロデュア」反射鏡基板のカットサンプルを手にするヴェスターホフ部長

 例えば航空産業では、企画・設計段階から共同で開発を行うケースもある。高品質維持の面では、製品を製造・販売していく中で蓄積した多くのデータが寄与している。そのデータを基にして生産プロセスの改善などを行い、またユーザーの要望にどう対応すべきか、どのような特性を付与するべきかなど、製品開発につなげている。

 ショットは、宇宙・天文分野に関しては50年を超える経験がある。1968年に直径約4メートルの望遠鏡向け反射鏡基板を製造した初めてのメーカーであり、1969年の人類史上初の有人月面着陸ミッションにも同社の光学ガラスが採用された。

 同社は今後も、高い耐久性・耐熱性・耐化学薬品性を備えた様々なガラス素材と、優れた特性をもつガラスセラミック「ゼロデュア」などの幅広い製品群を通じて、宇宙探査技術の発展に貢献していく考えだ。