NEDO・東北大 円形断面型クローラー開発、全方向に連続移動

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2019年9月3日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東北大学は27日、全方向(360度方向)への連続移動を実現した円形断面型履帯(クローラー)の開発に世界で初めて成功したと発表した。

円形断面型クローラー
円形断面型クローラー

 オムニクローラーが備える高い耐荷重性・走破性に加え、放射状に最密配置したクローラーが駆動することにより、任意方向への連続的な移動を可能にした。柔らかい絨毯をはじめ、点字ブロックの段差や踏切内の線路の溝など、一般の車輪では走りにくい環境でも、クローラーの向きを変えることなく縦・横・斜めの方向にスムーズに移動できる。

 両者は、2015年から「全方向駆動機構を核とした革新的アクチュエーション技術の研究開発」に取り組んできた。今回開発したクローラーは、全方向移動を行うために必要な2つのモーターのほか、平歯車やねじ歯車などの最小限の動力伝達装置からなる単純構成のため、保守性に優れ、小型化が可能な全方向移動機構のベース技術になり得る応用範囲の広い機構となっている。

 3つの機能として、①履帯機構の姿勢や路面の状態によらず、モーターの回転方向を切替える必要がなく継続的に全方向に移動可能②歯車とチェーン、ベルトを用いることで、摩擦伝動によらず高い駆動力の伝達が可能③高い不整地走破性を実現(軸方向の段差乗り越え高さ10mm、その直交方向の段差乗り越え高さ30mm、溝踏破長さ140mm)を併せ持つ。

円形断面型クローラーを搭載した車両
円形断面型クローラーを搭載した車両

 新たに考案した全方向移動用のスクリュー式差動回転機構は、回転軸の動力をねじ歯車によって垂直方向に変換する構造を線対称に配置。これにより、左右2つの入力回転を、全方向駆動機構として必要な前後・左右の移動につながる公転と自転の出力に、極少の伝達部品数で変換させる仕組みを実現した。

 電動車いすをはじめ、移動型ナビゲーションロボットや屋内外の巡回警備ロボットなど、総重量の大きなモビリティー(移動体)用の駆動機構としての用途が期待される。