新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、鹿島建設とゼネラルヒートポンプ工業が共同で豊田自動織機大府工場(愛知県大府市)に天空熱源ヒートポンプ「SSHP」システムを設置し実証試験を開始したと発表した。
現在、再生可能エネルギーの利用は太陽光発電や風力発電などの電気利用が主で、賦存量の大きい地中熱や太陽熱などの熱利用は設備導入コストが大きく、普及を妨げている。
今回、「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」の一環で、上流(設計)から下流(運用)に関連するコンソーシアム体制を構築し、システムの最適化によるコスト削減とCO2削減を目指す。目標は、2030年度までにトータルコスト20%減・投資回収年数14年以下、2030年までにそれぞれ30%減・8年以下だ。
「SSHP」は、多様な再エネ熱を熱源水ループで連結する水熱源ヒートポンプ。再エネ熱を最大限活用し、日射量や外気条件によってはコンプレッサーを運転せずに太陽熱・空気熱で直接熱源水を加熱するなど、最も高効率・経済的な運転を自動で行う。実証施設は同工場・厚生棟の食堂で、冷暖房や給湯といった多目的な熱需要に対応する。既存のガスヒートポンプエアコンを撤去し、新たに開発した「SSHP」と地中熱利用給湯用ヒートポンプチラー、汎用の地中熱・水熱源ヒートポンプなどで構成され、実証試験では空調負荷の約30%をまかなう見込みだ。
両社は、日建設計総合研究所と名古屋大学と共同で運転データの収集解析に取り組む。実証運転を通じて「SSHP」と給湯用ヒートポンプチラーの効率とシステム全体の性能評価を進め、機器容量の最適化によるイニシャルコストの低減や運転制御の高効率化でランニングコストを低減し、実用化に向けた技術の確立を目指す。